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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200520859 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1213931
審判番号 不服2006-690  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-11 
確定日 2010-03-25 
事件の表示 平成 9年特許願第265980号「皮膚外用剤」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 4月20日出願公開、特開平11-106323〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年9月30日の出願であって、拒絶理由通知に応答して平成17年10月28日受付けで手続補正書と意見書が提出されたが、平成17年12月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成18年1月11日付けで拒絶査定不服審判が請求され、平成18年4月29日受付で請求理由の手続補正書(方式)が提出され、その後、当審からの拒絶理由通知に応答して平成21年12月21日受付の意見書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年10月28日受付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 コウジ酸および/またはその誘導体と、下記化合物1ないし化合物6からなるシリコーン結合型紫外線吸収剤の1種または2種以上を配合したことを特徴とする皮膚外用剤。
【化1】

で表される3,4,5-トリメトキシケイ皮酸-3-メチル-4-(メチルビス(トリメチルシロキシ)シリル)ブチル;
【化2】

で表される1-(メチルビス(トリメチルシロキシ)シリル)-4,4’-ビス(4-メトキシケイ皮酸メチル)ブタン;
【化3】

で表される4-(3-メトキシ-4-(3-(ウンデカメチルテトラシロキシル)プロポキシ)ベンジリデン)-2,5-ジオキソ-1-イミダゾリジンプロピオン酸メチル;
【化4】

で表される1-(メチルビス(トリメチルシロキシ)シリル)プロピル-4-(3,4-ジメトキシベンジリデン)-2,5-ジオキソイミダゾール;
【化5】

で表される4-(3,4-ジメトキシベンジリデン)-2,5-ジオキソ-1-イミダゾリジン-2-メチルプロピオン酸-4-(トリス(トリメチルシロキシ)シリル)プロピル;
【化6】

で表される2-メチル-3-(メチルビス(トリメチルシロキシ)シリル)プロピオン酸(2-ヒドロキシ-3-ベンゾイル)フェノキシエチル;」

3.引用例の記載の概要
当審で通知した拒絶の理由に引用された本願出願前の刊行物である特開平9-175976号公報(以下、「引用例A」という。)には、次の技術事項が記載されている。なお、下線は当審で付記したものである。

(a-1)「【請求項1】コウジ酸および/またはその誘導体とUV-A領域に紫外線吸収特性を有する下記一般式(1)で表わされるアミノ酸誘導体の少なくとも一種を配合したことを特徴とする皮膚外用剤。
【化1】

(但し、式(1)において、Rは水素原子又は-CH_(2) CH_(2) CO_(2) Xである。Xは炭素数1ないし10のアルキル基である。)」(特許請求の範囲の請求項1、2頁1欄2?12行、同頁2欄1?2行参照)
(a-2)「【0012】コウジ酸誘導体としては、例えば、特公昭60-10005号公報、特公平1-45472号公報、特公平3-74229号公報等に開示されたもの、または特公昭58-22151号公報、特公昭58-22152号公報等に開示されているコウジ酸のエステル化物およびコウジ酸の2位の-CH_(2) OH基に糖類を結合させたコウジ酸誘導体など公知のものを単独または二種以上を組合せて用いることができる。」(3頁4欄8?15行参照)
(a-3)「【0019】・・・本発明の外用剤を調製する場合、通常に用いられる種々の公知の有効成分、・・・を本発明の目的を損なわない範囲でその時々の目的に応じて適宜添加して使用することができる。更に、前述の医薬品、医薬部外品、化粧品には公知の有効成分に加え、油脂類などの基剤成分・・・など種々の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で併用することができる。」(4頁5欄20行?同頁6欄9行参照)
(a-4)「【0021】〈試験〉製剤安定性試験
試験方法
表1(別表)に示した処方条件で各々のクリーム製剤(pH約4.5)を調製した。これを4オンスローソク瓶に充填後、紫外線を照射しながら、50℃の過酷な温度条件で2ヶ月間保存した。2ヶ月後、式差(ΔE)を測定した(式差計:日本電色工業Z-1001DP使用)。その際、外観変化(紫外線吸収剤の析出の有無、乳化安定性)の観察、コウジ酸の残存率の測定(常法によりHPLCを使用し、試験開始時を100として算出)、使用感の評価も行った。
【0022】
【表1】

【0023】試験結果
表1に示したように、本発明の製剤は、紫外線吸収剤の析出もなく乳化安定性も極めて良好であった。また、製剤中におけるコウジ酸の熱に対する着色・分解がなく安定で、使用感も良好な状態が維持されていた。」(4頁6欄14行?5頁7?8欄41行、表1参照)
(a-5)「【0025】
〈処方例2〉クリーム(2) (重量%)
1.コウジ酸 5.00
2.4-(3,4-ジメトキシフェニル)メチレン-2,5-
ジオキソ-1-イミダゾリジンプロピオン酸
2-エチルヘキシルエステル 1.00
3.4-tert-ブチル-4’-メトキシ
-ジベンゾイルメタン 0.50
4.ホホバアルコール 1.00
5.1,3ブチレングリコール 0.50
6.ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン 3.00
・ポリオキシプロピレン共重合体)
7.ホホバ油 7.00
8.デカメチルシクロペンタシロキサン 3.00
9.オクタメチルシクロテトラシロキサン 3.00
10.ジメチルポリシロキサン 5.00
11. アスコルビン酸ナトリウム 0.04
12.1%ヒアルロン酸ナトリウム水溶液 2.00
13.エデト酸二ナトリウム 0.01
14.精製水 適 量 」(6頁9?10欄7?25行参照)

4.対比、判断
引用例Aには、上記摘示の記載(特に摘示(a-1)参照)からみて、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「コウジ酸および/またはその誘導体とUV-A領域に紫外線吸収特性を有する下記一般式(1)で表わされるアミノ酸誘導体の少なくとも一種を配合したことを特徴とする皮膚外用剤。
【化1】

(但し、式(1)において、Rは水素原子又は-CH_(2) CH_(2) CO_(2) Xである。Xは炭素数1ないし10のアルキル基である。)」

そこで、本願発明と引用発明を対比する。
(イ)引用発明の一般式(1)で表わされるアミノ酸誘導体は、その一般式(1)の化学構造からみて、ヒダントイン誘導体であることは明らかである。そして、本願発明の<化合物3>ないし<化合物5>は、【化3】ないし【化5】で示された、特定のシリコーン系ヒダントイン誘導体であるから、ヒダントイン誘導体である。
(ロ)引用発明の「UV-A領域に紫外線吸収特性を有するヒダントイン誘導体」は、本願発明の「ヒダントイン誘導体である紫外線吸収剤」に対応し、また、引用発明の「少なくとも一種」は、本願発明の「1種または2種以上」と同義である。
(ハ)引用発明の「コウジ酸誘導体」は、引用例Aに「コウジ酸誘導体としては、例えば、特公昭60-10005号公報、特公平1-45472号公報、特公平3-74229号公報等に開示されたもの、または特公昭58-22151号公報、特公昭58-22152号公報等に開示されているコウジ酸のエステル化物およびコウジ酸の2位の-CH_(2) OH基に糖類を結合させたコウジ酸誘導体など公知のものを単独または二種以上を組合せて用いることができる。」(摘示(a-2))と記載され、また、本願明細書に、「コウジ酸誘導体としては、例えば、特公昭60-10005号公報、特公平1-45472号公報、特公平3-74229号公報、特公昭58-22151号公報、特公昭58-22152号公報に開示されているコウジ酸のエステル化物およびコウジ酸の2位の-CH_(2) OH基に糖類を結合させることによって、コウジ酸分子を安定化させたコウジ酸誘導体など公知のものを単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。」(段落【0013】)と記載されていて、両者は同一の特許公報を引用していることからみて、本願発明の「コウジ酸誘導体」に相当する。

してみると、両発明は、
「コウジ酸および/またはその誘導体と、ヒダントイン誘導体からなる群より選ばれた紫外線吸収剤の1種または2種以上を配合したことを特徴とする皮膚外用剤。」
で一致し、以下の相違点で相違する。
<相違点>
紫外線吸収剤に関し、本願発明は、<化合物3>ないし<化合物5>で示されたシリコーン系ヒダントイン誘導体の1種または2種以上であるのに対し、引用発明は、前記3種類の特定のシリコーン系ヒダントイン誘導体でない点
(なお、紫外線吸収剤については、<化合物1>,<化合物2>,<化合物6>も本願発明での選択肢であるが、<化合物3>ないし<化合物5>を選択した場合について、以下検討を進めることとする。)

そこで、この相違点について検討する。
引用例Aには、「本発明の外用剤を調製する場合、通常に用いられる種々の公知の有効成分を本発明の目的を損なわない範囲でその時々の目的に応じて適宜添加して使用することができる。更に、前述の医薬品、医薬部外品、化粧品には公知の有効成分に加え、油脂類などの基剤成分など種々の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で併用することができる。」(摘示(a-3))と記載され、シリコーン基剤(ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体,デカメチルシクロペンタシロキサン,オクタメチルシクロテトラシロキサン,ジメチルポリシロキサン)を配合した処方例(摘示(a-5)の処方例2参照)が記載されていることから、引用発明は、シリコーン基剤を配合する態様を含むものである。
ところで、紫外線吸収剤の配合される化粧料には、その効果を持続させる必要上、汗や水浴によって容易に流れ落ちしない耐水及び耐油性に優れたジメチルシロキサン等のシリコーン系基剤が広く使用されているが、既存の紫外線吸収剤はシリコーン系基剤に対する相溶性が著しく低く、シリコーン系基剤を配合した外用剤においては、従来の紫外線吸収剤の配合が困難となり、その使用量も極く少量に限られ、紫外線吸収剤のもつ機能が十分に発揮されないという欠点があるところ、シリコーン系ヒダントイン誘導体の紫外線吸収剤が、「シリコーン油に溶解し」、「シリコーン系基剤には特に制限はないが、例えばジメチルポリシロキサン、メチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサン等の環状ポリシロキサン、ポリエーテル脂肪酸変性ポリシロキサン、高級アルコール変性ポリシロキサン、アミノ酸変性ポリシロキサン等が用いられ」、「25℃において、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンに対する溶解性試験を行った。いずれにおいても、10重量%以上溶解し、優れた溶解性を示」す化合物であることが本願の出願前に周知の技術事項である(例えば、当審の拒絶理由に提示された特開平6-329639号公報の特許請求の範囲の請求項1?3、段落【0001】、【0004】?【0008】、【0018】、【0018】?【0029】、【0054】、同じく特開平7-97383号公報の特許請求の範囲の請求項1?3、段落【0001】、【0004】?【0008】、【0019】、【0023】?【0028】、【0054】、同じく特開平7-97384号公報の特許請求の範囲の請求項1?3、段落【0001】、【0004】?【0008】、【0021】、【0025】?【0029】、【0046】を参照)から、シリコーン基剤に対する紫外線吸収剤の相溶性の向上を図ることは、紫外線吸収剤を配合した皮膚外用剤において求められる当然の技術的課題といえる。
してみると、引用発明でシリコーン基材を配合する場合の態様において、さらなる溶解性の改善のために、紫外線吸収剤である一般式(1)のアミノ酸誘導体、即ちヒダントイン誘導体の代わりに、前記紫外線吸収効果を有するシリコーン系ヒダントイン誘導体を用いることは、当業者が容易に思い至る程度のことといえ、その際、紫外線吸収効果を有するシリコーン系ヒダントイン誘導体として、本願の出願前に既に知られている化合物である<化合物3>(前記特開平6-329639号公報の段落【0029】の【化5】)、<化合物4>(前記特開平7-97383号公報の段落【0028】の【化7】)、<化合物5>(前記特開平7-97384号公報の段落【0029】の【化7】)などを用いることに格別の創意工夫が必要であったとは認められないし、本願発明において主張する紫外線吸収剤の溶解性の問題や析出の問題が生じないことも予想されることと認められる。

ここで、本願発明は、「本発明の外用剤を調製する場合、・・・公知の有効成分に加え、油脂類などの基剤成分・・・など種々の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で併用することができる。」(本願明細書段落【0032】)と記載され、「シリコーン基剤(ジメチルシロキサン・メチル(ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体) 3.00重量%、デカメチルシクロペンタシロキサン 3.00重量%、オクタメチルシクロテトラシロキサン 3.00重量%、及びジメチルポリシロキサン 5.00重量%)」を配合した処方例(同段落【0042】の<処方例2>クリーム(2)参照)が記載されていることからみて、シリコーン基剤を配合する上記態様を含むものであり、そのような態様について検討対象とすることに何ら支障はないものといえる。
更に、本願明細書には、<化合物3>?<化合物5>のヒダントイン誘導体を用いた処方例は記載されているが、単に本発明の目的において満足する効果を有するとされているだけで、具体的な評価が記載されておらず、格別の効果を奏しているとは認められない。そこで、例えば、審判請求理由(平成18年4月29日受付の手続補正書参照)において本願発明の作用・効果を主張するために取り上げられている(ヒダントイン系とは紫外線吸収剤の種類が異なるが)具体的な評価がされているベンゾフェノン系の2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン(比較例4)とシリコーン結合型のベンゾフェノン化合物6(実施例6)とを対比すると、紫外線吸収剤の析出の有無と乳化状態に関し差異が認められる(色差や使用感については顕著な差異は認められない)が、そのような差異は、上記検討したシリコーン基剤とヒダントイン誘導体の紫外線吸収剤を用いるような系においては、紫外線吸収剤の相溶性がシリコーン結合型とすることにより改善されるとの観点から予想される程度のことと認められる。なお、ヒダントイン系の紫外線吸収剤を用いた引用発明でも、既にコウジ酸の着色・分解がないことが示されている(摘示(a-4)参照)。

よって、本願発明は、周知技術を勘案し、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものと認められ、格別予想外の作用効果を奏しているとは認められない。

なお、請求人は、平成21年12月21日受付の意見書において、「指摘されている周知の事実は、シリコーン基剤を配合した外用剤には、シリコーン結合型紫外線吸収剤の配合量を増量することができることを示唆するものであり、コウジ酸類配合製剤特有の上記技術的課題を解決することを示唆するものではありません。しかも、本願発明においては、たまたま、処方例2において、シリコーン基剤を含む例が示されているとしても、そのほかの処方例からも分かるように、基剤にシリコーンが含まれていなくても、コウジ酸類配合製剤に特定の上記紫外線吸収剤を配合することにより、前述した、上記技術的課題を解決しえるものであります。」と主張する。
しかし、周知例の紫外線吸収剤の配合量の増大は、相溶性の改善の一側面を表すものにすぎず、上記容易性の判断に影響するものではない。また、前記検討の如く本願発明の一態様であるシリコーン基剤を用いヒダントイン系紫外線吸収剤を用いる場合にコウジ酸類配合製剤特有の技術的課題がありそれが解決されたことを示すデータは示されていない。そして、シリコーン基剤を用いる場合も本願発明の一態様であることは既に検討したとおりであり、そのような態様について本願発明で除外されているわけではないから、前記請求人の主張はその前提において誤っている。
よって、前記請求人の主張は失当であり、採用できない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-20 
結審通知日 2010-01-26 
審決日 2010-02-08 
出願番号 特願平9-265980
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼岡 裕美  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 弘實 謙二
井上 典之
発明の名称 皮膚外用剤  
代理人 庄子 幸男  
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