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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1213933
審判番号 不服2006-26385  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-23 
確定日 2010-03-25 
事件の表示 平成10年特許願第155263号「皮膚外用剤」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月 7日出願公開、特開平11-335225〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年5月19日の出願であって、その請求項1に係る発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】コウジ酸及びその誘導体より成る群から選ばれる1種又は2種以上と、ユキノシタ(Saxifraga stolonifera Meerb.又はS.sarmentosa L.f.)を除くユキノシタ属に属する植物,イワユキノシタ属に属する植物及びジンチョウゲ科に属する植物より選ばれる1種又は2種以上の植物の抽出物とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。」

2.引用例の記載の概要
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開昭64-83009号公報(以下、「引用例A」という。)、及び特開平5-139951号公報(以下、「引用例B」という。)には、以下の事項が記載されている。

引用例A;

(a-1)「1 コウジ酸またはそのエステルと生薬とを有効成分とするメラニン生成抑制外用薬剤。」(特許請求の範囲の請求項1、1頁左下欄4?5行)
(a-2)「コウジ酸またはそのエステルがメラニン生成抑制作用を有していることは知られている(特開昭53-18739号公報、特開昭56-7776号公報、特開昭56-79818号公報、特開昭59-33207号公報など)。
これらのコウジ酸またはそのエステルは、メラニンの生成機構におけるチロシンをドーパ、ドーパをドーパキノンに変換する酵素であるチロシナーゼの活性を抑制する作用があり、その結果メラニンの生成を抑制する。
本発明者らは、より有効なメラニン生成抑制作用をうるべく、コウジ酸またはそのエステルを基本にして種々の誘導体を合成したり他の薬剤との調合を試みたところ、意外なことに生薬を配合することより、相剰的にメラニンの生成が抑制されることを見出し、本発明を完成した。」(1頁左下欄下から2行?同頁右下欄15行)
(a-3)「コウジ酸またはそのエステルがメラニン生成抑制作用を有していることは知られており、一方、桂皮、当帰、甘草、霊芝、カマラおよび桑白皮という生薬が美白作用を有していることも知られている。しかし、驚くべきことに、これらの異なる有効成分を配合するときは、単に2つの効果を足した相加効果ではなく、後述するごとく、それぞれの効果を上形る相剰的な効果かえられる。その作用機作は明らかてはないが、一方の作用機作でカバーできない部分を他方が補完する相補的な作用に加えて、何らかの微妙な相関作用が生じているものと考えられる。
本発明における一方の有効成分であるコウジ酸またはそのエステルとしては、一般式:
(構造式略)
(式中、R^(1)およびR^(2)は同じかまたは異なり、水素原子または炭素数3?20個のアシル基である)で示されるものが好ましい。
エステルとしては、コウジ酸モノブチレート、コウジ酸モノカプレート、コウジ酸モノパルミテート、コウジ酸モノステアレート、コウジ酸モノシンナモエートまたはコウジ酸モノベンゾエートなどのモノエステル、コウジ酸ジブチレート、コウジ酸ジパルミテート、コウジ酸ジステアレートまたはコウジ酸ジオレエートなどのジエステルが好ましい。モノエステルはコウジ酸の5位の水酸基がエステル化されているものが好ましい。エステル化するとメラニン生成抑制作用はコウジ酸と同等であるが、pHや光に対する安定性が向上する。」(2頁左上欄1行?同頁右上欄14行)
(a-4)「他の有効成分である生薬は、桂皮、当帰、甘草、霊芝、カマラおよび桑白皮が好ましく、それぞれ水、エタノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどの溶媒あるいはこれらの混合液で抽出したもの、またはその乾燥物など通常の形態で用いられる。」(2頁右上欄15?20行)
(a-5)「本発明の外用薬剤は、メラニンの生成を抑制し美白または日焼防止を目的とする用途であればクリーム、化粧水、バック、パウダーなどの化粧料のほかに乳剤、ローション剤、リニメント剤、軟膏剤などの医薬部外品など種々の外用形態に製剤でき、それぞれの製剤において常用されている基剤、賦形剤、安定剤、顔料、香料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、金属封鎖剤、有機酸などを適宜配合してもよい。」(2頁左下欄4?12行)
(a-6)「つぎに本発明のメラニン生成抑制外用薬剤を実施例に基づいて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
コウジ酸と第1表に示す生薬とを同表に示す濃度に添加した10%ウシ胎児血清を含有するイーグルMEM培地にマウス黒色種由来のB-16培養細胞を播種し、37℃、5%CO条件下で5日間培養したのち細胞をトリプシンで分散し、1,000rpm×5分間で遠心分離して細胞を集め、その黒色度を目視で判定した。
判定の基準はつぎのとおりである。
-:メラニン生成抑制物質を添加しなかったものと同程度
+:わずかに白色化
++:かなり白色化
+++:ほとんど白色化
結果を第1表に示す。

」(2頁右下欄5行?3頁末行、第1表)

引用例B;
(b-1)「ユキノシタ(Saxifraga stolonifera Meerb.),ジンコウ(Aquillaria agallocha Roxburgh),ウーロンチャ(Thea sinensis L.var.viridisSzkzyl),及びマロニエ(Aesculus hippocastanumL.)の抽出物において、高いチロシナーゼ活性阻害効果を見い出した。こ
れらの抽出物においては、皮膚刺激性,感作性といった皮膚への悪影響もなく、また化粧料に配合したときも、チロシナーゼ活性阻害作用の不活化は起こらず、品質も安定していた。
従って、ユキノシタ(Saxifraga stolonifera Meerb.),ジンコウ(Aquillaria agallocha Roxburgh),ウーロンチャ(Thea sinensis L.var.viridisSzkzyl),及びマロニエ(Aesculus hippocastanum L.)より選択した1種叉は2種以上の植物の抽出物を配合することにより、作用が穏和で且つ十分な美白効果が期待でき、しかも安全性,安定性の高い美白化粧
料を完成するに至った。」(段落【0008】【0009】、2頁2欄1?9行)
(b-2)「これら植物抽出物の美白効果を、チロシナーゼ活性の阻害率により評価した。評価は次のようにして行った。
まず、乾燥した植物細片10gを50重量%エタノール100ml中に入れ、室温で1週間抽出を行った。この植物抽出物を精製水にて100倍希釈して試料溶液を調製した。次に、チロシナーゼ(50000units,シグマ社製)を精製水で600倍希釈して、酵素溶液とした。基質溶液は、チロシン50mgを精製水100mlに溶解して調製した。
酵素反応は、試料溶液2ml,1/15Mリン酸緩衝液(pH6.8)2ml,基質溶液0.5ml,酵素溶液0.5mlを混合し、37℃にて1時間インキュベートして行わせた。反応後、475nmにおける吸光度(As)を測定した。さらに、試料溶液の代わりに精製水を添加した系,及び基質溶液の代わりに精製水を添加した系において同様に反応させ、それぞれの場合における吸光度(Ab及びA0)を測定した。チロシナーゼ活性阻害率は、数1により求めた。
【数1】

測定結果を表1に示した。表1より明らかなように、本発明で使用する植物抽出物は、いずれも有意に高いチロシナーゼ活性阻害率を示し、チロシンからのドーパクロムの生成を低下させて、有効な美白効果を発揮することが示された。・・・

」(段落【0010】?【0013】、2頁2欄25行?3頁3?4欄12行)
(b-3)「本発明に係る美白化粧料は、柔軟性化粧水,収斂性化粧水,洗浄用化粧水等の化粧水類、エモリエントクリーム,モイスチュアクリーム,マッサージクリーム,クレンジングクリーム,メイクアップクリーム等のクリーム類、エモリエント乳液,モイスチュア乳液,ナリシング乳液,クレンジング乳液等の乳液類、ゼリー状パック,ペールオフパック,粉末状パック等のパック類、及び洗顔料類といった種々の製剤形態とすることができる。」(段落【0015】、3頁3欄19?27行)
(b-4)「さらに、保湿剤,抗炎症剤,紫外線吸収剤等の他の有効成分を併用することもでき、日焼け止め化粧料,皮膚保護用化粧料,荒れ肌改善用化粧料等の薬用化粧料・・・として提供することもできる。」(段落【0016】、3頁4欄13?17行)

3.対比・判断
本願の請求項1に係る発明は、「コウジ酸及びその誘導体より成る群から選ばれる1種と、ジンチョウゲ科に属する植物より選ばれる1種の植物の抽出物とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。」を含むものである。
そして、「ジンチョウゲ科に属する植物より選ばれる1種の植物」には、本願明細書に、「ジンチョウゲ科に属する植物としては、・・・ジンコウ(Aquillaria agallocha Roxb.)が挙げられる。」(段落【0010】)と記載されているとおり、ジンコウが含まれる。
そうすると、本願の請求項1に係る発明は、「コウジ酸及びその誘導体より成る群から選ばれる1種と、ジンコウの抽出物とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。」(以下、「本願発明」という。)を含むものである。そこで、以下、この本願の請求項1に係る発明に含まれる「本願発明」について検討する。
一方、引用例Aには「コウジ酸またはそのエステルと生薬とを有効成分とするメラニン生成抑制外用薬剤。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている(摘記事項(a-1))。

本願発明と引用発明を対比する。
本願発明の「コウジ酸及びその誘導体」は、本願明細書には、「コウジ酸の誘導体としては、コウジ酸モノ酪酸エステル,コウジ酸モノカプリン酸エステル,コウジ酸モノパルミチン酸エステル,コウジ酸モノステアリン酸エステル等のコウジ酸のモノ脂肪酸エステル、コウジ酸ジ酪酸エステル,コウジ酸ジパルミチン酸エステル,コウジ酸ジステアリン酸エステル,コウジ酸ジオレイン酸エステル等のコウジ酸のジ脂肪酸エステル、コウジ酸モノ桂皮酸エステル,コウジ酸モノベンジル酸エステル等のコウジ酸と芳香族カルボン酸とのエステル、・・・を用いることができ」(段落【0007】)と記載されているとおり、コウジ酸の誘導体としてそのエステルを含む。
また、引用発明の「外用薬剤」は、引用例Aには、「本発明の外用薬剤は、メラニンの生成を抑制し美白または日焼防止を目的とする用途であればクリーム、化粧水、バック、パウダーなどの化粧料のほかに乳剤、ローション剤、リニメント剤、軟膏剤などの医薬部外品など種々の外用形態に製剤でき、それぞれの製剤において常用されている基剤、賦形剤、安定剤、顔料、香料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、金属封鎖剤、有機酸などを適宜配合してもよい。」(摘記事項(a-5))と記載されているとおり、皮膚外用剤である。
さらに、本願発明の「ジンコウの抽出物」は、生薬である(例えば、特開平9-176024号公報、【特許請求の範囲の請求項2】、特開平9-110708号公報、段落【0007】、特開平3-90018号公報、5頁左上欄7?14行、及び特開昭64-38014号公報、特許請求の範囲参照)。
したがって、本願発明と引用発明は、「コウジ酸及びその誘導体より成る群から選ばれる1種と、生薬とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)
生薬が、本願発明では、「ジンコウの抽出物」であるのに対して、引用発明では、「ジンコウの抽出物」に特定されていない点。

以下、この相違点について検討する。
引用発明は、コウジ酸またはそのエステルに生薬を配合したメラニン生成を抑制する皮膚外用剤である。
引用例Aには、コウジ酸またはそのエステルは、メラニンの生成機構におけるチロシンをドーパ、ドーパをドーパキノンに変換する酵素であるチロシナーゼの活性を抑制する作用があり、その結果メラニンの生成を抑制すること、コウジ酸またはそのエステルに、美白作用を有する桂皮、当帰、甘草、霊芝、カマラおよび桑白皮という生薬を配合することにより、メラミン生成抑制効果において、相乗的な効果が得られることが実施例とともに記載されている(摘記事項(a-2)、(a-3)、(a-6))。
一方、引用例Bには、ジンコウの抽出物について、高いチロキシナーゼ活性阻害活性を有し、皮膚刺激性,感作性といった皮膚への悪影響がなく、また化粧料に配合したときも、チロシナーゼ活性阻害作用の不活化は起こらず、品質も安定していることが記載されている。そして、ジンコウの抽出物を配合することにより、作用が穏和で且つ十分な美白効果が期待でき、安全性,安定性の高い美白化粧料とすることができることが記載されている(摘記事項(b-1)?(b-4))。
してみると、引用発明において、コウジ酸またはそのエステルに配合する生薬として、高いチロキシナーゼ活性阻害活性を有し、メラミン生成を抑制することが期待され、美白化粧料としての使用に好適なジンコウの抽出物を採用してみることは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本願発明の効果も当業者が予測し得る範囲内のものである。
また、請求人は平成19年9月25日受付の審判請求理由に係る手続補正書の、「【本願発明が特許されるべき理由】」において、本願の発明は、コウジ酸に特定の植物の抽出物を配合することにより、コウジ酸の経時劣化が防止されるという引用例には記載されていない効果を奏するものであり、この効果は本願明細書の段落[0051]ないし[0053]に記載されていると主張している。
しかしながら、上記の段落[0051]、[0052]記載は、実施例11,12に関するものであるが、実施例11、12は、パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル、オキシベンゾンあるいはアスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩といった安定化のための成分を配合し、化粧品として必要な安定性が担保できるように処方した日焼け止め用乳液や美白用ハンドクリームであり、段落[0053]も化粧料として処方された「本発明の実施例」についての一般的な記載にすぎず、本願の発明は、コウジ酸に特定の植物の抽出物を配合することにより、コウジ酸の経時劣化が防止されるという効果を奏するものであるとの請求人の主張は採用できない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、引用例A及びBに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-20 
結審通知日 2010-01-26 
審決日 2010-02-08 
出願番号 特願平10-155263
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清野 千秋  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 弘實 謙二
伊藤 幸司
発明の名称 皮膚外用剤  
代理人 庄子 幸男  
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