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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01R |
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管理番号 | 1213942 |
審判番号 | 不服2007-20211 |
総通号数 | 125 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-07-19 |
確定日 | 2010-03-25 |
事件の表示 | 特願2002-104940号「電子制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月17日出願公開、特開2003-297497号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年4月8日の出願であって、平成19年6月11日付けで拒絶査定がなされ(同年6月19日発送)、これに対し、同年7月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成21年10月20日付けで当審にて拒絶理由通知がなされ、同年12月21日付けで手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年12月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。 「電子回路を構成する基板と、樹脂ケースと、前記基板及び前記樹脂ケースを固定するベースと、前記基板に外部信号を伝える複数のコネクタとを備え、 前記コネクタのコネクタ端子は、外部信号を入力する外部接続部と、前記基板に外部信号を伝える内部接続部とを有する電子制御装置において、 前記コネクタ端子は、上下2段の配列をなし、且つ下段側のコネクタ端子の外部接続部と内部接続部を直線状に配置し、 前記コネクタ端子の前記内部接続部と前記基板とは、ワイヤボンディングにより電気的に接続され、 前記ベースは、凸形状を有し、 前記基板は、前記ベースの前記凸形状の上に固定され、 前記複数のコネクタは、前記ベースを挟んで互いに対向する位置に設けられていることを特徴とする電子制御装置。」 3.引用例の記載事項 当審の拒絶の理由に示された、本願の出願前に頒布された特開2002-76205号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 (1-ア)「半導体及び電子部品が搭載されたセラミック基板とコネクタの外部電極端子リードとを金属線ワイヤボンデイングによって接合する方式から構成される自動車用エンジンコントロールユニットにおいて、該コネクタの端子リードが少なくとも2段以上で構成されたものを有し、しかも該コネクタの電極端子リードの最上段が該セラミック基板の最上面と同じ高さもしくはそれ以下の高さになるように配置して組み立てられた特許請求の範囲第9項記載の自動車用エンジンコントロールユニットの実装構造。」(請求項10) (1-イ)「図6に示すように金属放熱板6をプレス加工または切削加工により、セラミック基板搭載部分を上部へ折り曲げまたは嵩上げする方法を採用することができる。」(段落【0048】) (1-ウ)「【実施例1】図1において、60×65mmの多層セラミック基板1上にSn/Ag系はんだペースト材2を印刷する(a)。・・・(中略)・・・。さらに、アルミニウムなどの金属放熱板6上に、上記の方法で部品搭載完のセラミック基板を圧着した後、加熱硬化により接着し(e)、次に樹脂コネクタ7と該金属放熱板6とをシリコーン系接着剤を用いて140℃30分で同時接着させ一体化する(f)。樹脂コネクタの外部端子8とセラミック基板との接続は線径300μmのアルミワイヤ9を用いて室温で超音波方式による接合によって行う(f)。」(段落【0056】) (1-エ)「【実施例10】図6に示すように、上下2段の外部端子リードを有し、しかも上段の電極端子リードが電子部品搭載済みのセラミック基板の最上面と同じ高さの位置に配置した樹脂コネクタ、及びプレス加工によりセラミック搭載部分を嵩上げしたアルミニウム放熱板を用いる他は、実施例1と同様の方法で自動車用エンジンコントロールユニットを作成した。」(段落【0083】) 上記記載(1-ア)?(1-エ)の記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。 「セラミック基板1と、前記セラミック基板1を接着する金属放熱板6と、前記セラミック基板1に外部信号を伝える樹脂コネクタ7とを備え、 前記樹脂コネクタ7の外部端子8は、外部信号を入力する外部接続部と、前記セラミック基板1に外部信号を伝える内部接続部とを有する自動車用エンジンコントロールユニットにおいて、 前記外部端子8は、上下2段の配列をなし、 前記外部端子8の前記内部接続部と前記セラミック基板1とは、金属線ワイヤボンデイングにより電気的に接続され、 前記金属放熱板6は、セラミック搭載部分を嵩上げした形状を有し、 前記セラミック基板1は、前記金属放熱板6の前記セラミック搭載部分を嵩上げした形状の上に接着されている自動車用エンジンコントロールユニット。」 同じく当審の拒絶の理由に示された、特開平6-224314号公報(以下「引用例2」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。 (2-ア)「実施例1 図1は本発明に係る半導体装置の第1の要部構成例を断面的に示したもので、8は外部接続用ターミナル9が一列に側壁を貫通して設けられた筒型の樹脂製ケース本体、10は前記筒型の樹脂製ケース本体8の一端開口部を封止して底壁面を成す金属ベースである。また、11は前記筒型の樹脂製ケース本体8内の金属ベース10面に装着・配置された厚膜回路板、たとえば AlNを支持基板として成る厚膜回路板、12は前記厚膜回路板11にマウントされ、かつ厚膜回路板11に電気的に接続された半導体素子を含む電子部品、13は前記電子部品12をマウントした厚膜回路板11の入出力端子 11aを、前記外部接続用ターミナル9に電気的に接続する接続リード部であり、前記筒型の樹脂製ケース本体8の他端開口部は、図示されない封止体で封止されている。」(段落【0012】) (2-イ)「上記インサート成型により製造した外部接続用ターミナル9および金属ベース10を一体的に具備・装着させた樹脂製ケース本体8内の金属ベース10面に、表面側に半導体素子を含む電子部品12をマウントした厚膜回路板11を固定・配置した後、その厚膜回路板11の入出力端子11aと前記外部接続用ターミナル9との間を、たとえばワイヤボンディングによる接続リード13で電気的に接続する。」(段落【0017】) 図1によれば、外部接続用ターミナル9が、外部接続部と内部接続部を直線状に配置したことが示されているといえる。 上記記載(2-ア)?(2-イ)の記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例2には、「圧膜回路板11と、樹脂製ケース本体8と、前記圧膜回路板11及び前記樹脂製ケース本体8を固定する金属ベース10と、前記圧膜回路板11に外部信号を伝えるコネクタとを備え、 前記コネクタの外部接続用ターミナル9は、外部信号を入力する外部接続部と、前記圧膜回路板11に外部信号を伝える内部接続部とを有する半導体装置において、 前記外部接続用ターミナル9は、外部接続部と内部接続部を直線状に配置し、 前記外部接続用ターミナル9の前記内部接続部と前記圧膜回路板11とは、ワイヤボンディングにより電気的に接続されている半導体装置。」が記載されているといえる。 4.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「セラミック基板1」は、本願発明の「電子回路を構成する基板」に相当し、以下同様に、「接着」は「固定」に、「金属放熱板6」は「ベース」に、「外部端子8」は「コネクタ端子」に、「自動車用エンジンコントロールユニット」は「電子制御装置」に、「金属線ワイヤボンデイング」は「ワイヤボンディング」に、「セラミック搭載部分を嵩上げした形状」は「凸形状」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「樹脂コネクタ7」は、本願発明の「樹脂ケース」及び「コネクタ」に相当する。 そこで、本願発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。 (一致点) 「電子回路を構成する基板と、樹脂ケースと、前記基板及び前記樹脂ケースを固定するベースと、前記基板に外部信号を伝えるコネクタとを備え、 前記コネクタのコネクタ端子は、外部信号を入力する外部接続部と、前記基板に外部信号を伝える内部接続部とを有する電子制御装置において、 前記コネクタ端子は、上下2段の配列をなし、 前記コネクタ端子の前記内部接続部と前記基板とは、ワイヤボンディングにより電気的に接続され、 前記ベースは、凸形状を有し、 前記基板は、前記ベースの前記凸形状の上に固定されている電子制御装置。」 そして、両者は次の点で相違する(対応する引用発明の用語を( )内に示す)。 (相違点1) 本願発明では、下段側のコネクタ端子の外部接続部と内部接続部を直線状に配置しているのに対して、引用発明では、下段側のコネクタ端子(外部端子8)の外部接続部と内部接続部の配置について不明確である点。 (相違点2) 本願発明では、コネクタを複数備え、該複数のコネクタはベースを挟んで互いに対向する位置に設けられているのに対し、引用発明では、コネクタ(樹脂コネクタ7)を複数備えていない点。 5.判断 上記相違点について検討する。 (相違点1について) 本願発明と引用例2に記載された技術事項とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用例2に記載された技術事項の「圧膜回路板11」は、本願発明の「電子回路を構成する基板」に相当し、以下同様に、「樹脂製ケース本体8」は「樹脂ケース」に、「金属ベース10」は「ベース」に、「外部接続用ターミナル9」は「コネクタ端子」に、「半導体装置」は「電子制御装置」に、それぞれ相当する。 したがって、引用例2には、「電子回路を構成する基板と、樹脂ケースと、前記基板及び前記樹脂ケースを固定するベースと、前記基板に外部信号を伝えるコネクタとを備え、 前記コネクタのコネクタ端子は、外部信号を入力する外部接続部と、前記基板に外部信号を伝える内部接続部とを有する電子制御装置において、 前記コネクタ端子は、外部接続部と内部接続部を直線状に配置し、 前記コネクタ端子の前記内部接続部と前記基板とは、ワイヤボンディングにより電気的に接続されている電子制御装置。」が記載されていると言い換えることができる。 そして、引用発明と引用例2に記載された技術事項とは、共に、 電子回路を構成する基板と、樹脂ケースと、前記基板及び前記樹脂ケースを固定するベースと、前記基板に外部信号を伝えるコネクタとを備え、 前記コネクタのコネクタ端子は、外部信号を入力する外部接続部と、前記基板に外部信号を伝える内部接続部とを有する電子制御装置において、 前記コネクタ端子の前記内部接続部と前記基板とは、ワイヤボンディングにより電気的に接続されている電子制御装置 という点で技術分野が共通している。 したがって、引用発明において上記引用例2に記載された技術事項を適用することにより、下段側のコネクタ端子を含めたすべてのコネクタ端子の外部接続部と内部接続部を直線状に配置するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (相違点2について) 基板に外部信号を伝えるコネクタを複数備え、該複数のコネクタがベースを挟んで互いに対向する位置に設けられているものは、例えば特開平10-334204号公報の段落【0041】-【0042】及び【図5】に記載されているように本願出願前周知の技術事項である。 したがって、引用発明において上記周知の技術事項を適用することにより、基板に外部信号を伝えるコネクタを複数備え、該複数のコネクタがベースを挟んで互いに対向する位置に設けるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明による効果も、引用発明、引用例2に記載された技術事項及び周知の技術事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された技術事項及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 そうすると、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-01-19 |
結審通知日 | 2010-01-26 |
審決日 | 2010-02-09 |
出願番号 | 特願2002-104940(P2002-104940) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01R)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井上 哲男 |
特許庁審判長 |
岡本 昌直 |
特許庁審判官 |
佐野 遵 稲垣 浩司 |
発明の名称 | 電子制御装置 |
代理人 | ポレール特許業務法人 |
代理人 | ポレール特許業務法人 |