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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1213950
審判番号 不服2007-29660  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-01 
確定日 2010-03-25 
事件の表示 特願2002-345565「無線装置およびアンテナ指向性制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月24日出願公開、特開2004-180110〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成14年11月28日の出願であって、平成19年6月29日付けで拒絶理由通知がなされ、同年9月3日付けで手続補正がなされたが、同年9月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年11月27日付けで手続補正がなされたものである。


第2 平成19年11月27日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年11月27日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正内容
平成19年11月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」と呼ぶ。)は、特許請求の範囲の請求項2を、下記の<補正前の請求項2>から<補正後の請求項2>に変更する補正事項を含むものである。

<補正前の請求項2>
「【請求項2】 複数のアンテナからなるアレーアンテナを備え、前記アレーアンテナの指向性を制御するアダプティブビームフォーミングおよびアダプティブヌルスティアリングにより端末へ送信する電力の制御を行い、端末との間で無線通信する無線装置におけるアンテナ指向性制御方法であって、
前記複数のアンテナの各々のアンテナに対して夫々設定された重み係数の比を維持した状態で、前記設定された各重み係数のうち、最大の重み係数の絶対値により、前記重み係数を成分とする送信重みベクトルをスケーリングするように制御することを特徴とするアンテナ指向性制御方法。」

<補正後の請求項2>
「【請求項2】 複数のアンテナからなるアレーアンテナを備え、前記アレーアンテナの指向性を制御するアダプティブビームフォーミングおよびアダプティブヌルスティアリングにより端末へ送信する電力の制御を行い、端末との間で無線通信する無線装置におけるアンテナ指向性制御方法であって、
前記複数のアンテナの各々のアンテナに対して夫々設定された、前記アダプティブビームフォーミングおよびアダプティブヌルスティアリングにより端末への所定の放射パターンを形成するための重み係数の比を維持した状態で、前記設定された各重み係数のうち、最大の重み係数の絶対値により、前記重み係数を成分とする送信重みベクトルをスケーリングするように制御することを特徴とするアンテナ指向性制御方法。」

2.本件補正に対する判断

本件補正のうちの上記補正事項は、請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数のアンテナの各々のアンテナに対して夫々設定された重み係数の比」を「複数のアンテナの各々のアンテナに対して夫々設定された、前記アダプティブビームフォーミングおよびアダプティブヌルスティアリングにより端末への所定の放射パターンを形成するための重み係数の比」に限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項2に記載された発明(以下、「本願補正発明」と呼ぶ。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。

2-1.先願明細書記載発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の他の出願(以下、「先願」と呼ぶ。)であって、本願の出願後に出願公開された特願2001-366658号(特開2003-169009号公報)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「先願明細書」と呼ぶ。)には、次の事項が記載されている。

「【0022】一般的に、無線装置では、1本のアンテナで送信できる電力は一定レベルに規制されている。このため、図7のように複数のアンテナを用いて送信するアダプティブアレイ基地局では、アンテナごとのウェイトの大きさにより、送信電力の大きさ、すなわち移動局側での受信電力の大きさが変化することになる。
【0023】たとえば1本のアンテナの送信できる最大電力が40mWとした場合、基地局の4本のアンテナの送信ウェイトの大きさがすべて等しければ、4本のアンテナすべてから40mWの電力で信号を送信することができ、移動局に対し最大電力で信号を送信することができる。
【0024】これに対し、たとえば4本のアンテナの送信ウェイトの大きさの比がそれぞれ4:3:2:1であれば、最大電力の40mWで送信することができるアンテナは、送信ウェイトが最大の1本のアンテナに限られ、残りのアンテナはそれぞれの送信ウェイトの大きさの比に応じた30mW、20mW、10mWの電力で送信することができるにすぎない。」

そして、上記記載事項を技術常識に照らせば、上記記載は、「アダプティブアレイ基地局が所望の指向性パターンを維持したままで移動局に最大電力で信号を送信するためには、アレイアンテナを構成する複数のアンテナの各々に対して設定された各送信ウェイトの大きさの比を維持した状態で、前記各送信ウェイトのうちの最大の送信ウェイトの大きさにより、各送信ウェイトを成分とする送信ウェイトベクトルをスケーリングする必要がある」ことを示していると認められる。
また、アダプティブアレイ基地局の無線装置がそのような必要を満たすように構成されるべきことは当然のことである。

してみれば、先願明細書には以下の発明(以下、「先願明細書記載発明」と呼ぶ。)が実質的に記載されているといえる。
「複数のアンテナからなるアレイアンテナを備え、端末へ送信する電力の制御を行い、端末との間で無線通信する無線装置における送信ウェイトの決定方法であって、
前記複数のアンテナの各々のアンテナに対して夫々設定された送信ウェイトの大きさの比を維持した状態で、前記設定された各送信ウェイトのうち、最大の送信ウェイトの大きさにより、前記送信ウェイトを成分とする送信ウェイトベクトルをスケーリングする送信ウェイトの決定方法。」

2-2.本願補正発明と先願明細書記載発明との対比
本願補正発明と先願明細書記載発明とを対比すると、以下のことがいえる。
(1)先願明細書記載発明の「アレイアンテナ」は本願補正発明の「アレーアンテナ」に相当する。
(2)アダプティブアレイ基地局において送信ウェイトを決定することは、アンテナの指向性を決定することに他ならず、その決定結果によりアンテナの指向性が制御されるのであるから、先願明細書記載発明の「送信ウェイトの決定方法」は本願補正発明と同様に「アンテナ指向性制御方法」とも呼称し得る。
(3)先願明細書記載発明の「送信ウェイト」は本願補正発明の「重み係数」に相当し、「送信ウェイトの大きさ」は「重み係数の絶対値」に相当する。

したがって、本願補正発明と先願明細書記載発明の間には、以下の一致点、相違点があるといえる。
ただし、後述するように、その相違点は一応の相違点ではあるものの、その存在をもって本願補正発明を先願明細書記載発明と実質的に異なる発明であると評価するに足りるほどの相違点ではない。

(一致点)
「複数のアンテナからなるアレーアンテナを備え、端末へ送信する電力の制御を行い、端末との間で無線通信する無線装置におけるアンテナ指向性制御方法であって、
前記複数のアンテナの各々のアンテナに対して夫々設定された重み係数の比を維持した状態で、前記設定された各重み係数のうち、最大の重み係数の絶対値により、前記重み係数を成分とする送信重みベクトルをスケーリングするように制御するアンテナ指向性制御方法。」の点。

(相違点)
本願補正発明は、「アレーアンテナの指向性を制御するアダプティブビームフォーミングおよびアダプティブヌルスティアリングにより端末へ送信する電力の制御を行う」ものであり、本願補正発明の「重み係数」は、「アダプティブビームフォーミングおよびアダプティブヌルスティアリングにより端末への所定の放射パターンを形成するための」ものであるのに対し、先願明細書記載発明は、「アレーアンテナの指向性を制御するアダプティブビームフォーミングおよびアダプティブヌルスティアリングにより端末へ送信する電力の制御を行う」ものとは限らず、先願明細書記載発明の「送信ウェイト」は、「アダプティブビームフォーミングおよびアダプティブヌルスティアリングにより端末への所定の放射パターンを形成するための」ものとは限らない点。

2-3.上記相違点についての判断
先願明細書記載発明のような「複数のアンテナからなるアレイアンテナを備え、端末へ送信する電力の制御を行い、端末との間で無線通信する無線装置」において、「アレイアンテナの指向性を制御するアダプティブビームフォーミングおよびアダプティブヌルスティアリングにより端末へ送信する電力の制御を行う」機能を有するものは、原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-271846号公報や、前置報告書で審査官が例示した特開2002-314470号公報にも示されるように周知であること、先願明細書記載発明を該周知の機能を有するものとすることに対する阻害要因は一切考えられないこと、先願明細書記載発明を該周知の機能を有するものとする場合に、先願明細書記載発明の「送信ウェイト」を「アダプティブビームフォーミングおよびアダプティブヌルスティアリングにより端末への所定の放射パターンを形成するための」ものとできない理由も全くないこと、等の事情を総合的に勘案すると、上記相違点の存在をもって、本願補正発明を先願明細書記載発明と実質的に異なる発明であると評価することはできない。

2-4.まとめ
以上によれば、本願補正発明は、先願明細書記載発明と実質的に同一の発明であるというべきである。
また、本願発明の発明者は上記先願明細書記載発明の発明者と同一でなく、本願の出願時に、その出願人は上記他の出願の出願人と同一でない。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、平成19年9月3日付けの手続補正書の請求項2に記載されたとおりのものであり、上記「第2」の「1.」の<補正前の請求項2>に転記したとおりのものである。

2.先願明細書記載発明
原査定の拒絶の理由に引用された先願、及び先願明細書の記載事項は、上記「第2」の「2.」の「2-1.」の項に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2.」で検討した本願補正発明から、「複数のアンテナの各々のアンテナに対して夫々設定された重み係数の比」を「複数のアンテナの各々のアンテナに対して夫々設定された、前記アダプティブビームフォーミングおよびアダプティブヌルスティアリングにより端末への所定の放射パターンを形成するための重み係数の比」に限定する限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記「第2」の「2.」の項に記載したとおり、先願明細書記載発明と実質的に同一の発明であるから、本願発明も同様の理由により、先願明細書記載発明と実質的に同一の発明である。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、先願明細書記載発明と実質的に同一の発明であり、しかも、本願発明の発明者は上記先願明細書記載発明の発明者と同一でなく、また、本願の出願時に、その出願人は上記先願の出願人と同一でないので、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-20 
結審通知日 2010-01-26 
審決日 2010-02-09 
出願番号 特願2002-345565(P2002-345565)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原田 聖子稲葉 崇  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 池田 聡史
田口 英雄
発明の名称 無線装置およびアンテナ指向性制御方法  
代理人 志賀 正武  
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