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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1213963
審判番号 不服2008-9089  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-10 
確定日 2010-03-25 
事件の表示 特願2007-226205「球技用バット」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月10日出願公開、特開2008- 619〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、特許法第44条第1項の規定の適用を求めて平成17年3月24日に出願された特願2005-85444号(以下「原出願」という。)の一部を新たな特許出願とするべく平成19年8月31日に出願したものであって、平成19年10月12日付けで明細書及び特許請求の範囲について手続補正がなされ、同年10月26日付けで拒絶理由が通知され、平成20年2月29日付けで拒絶査定がなされたため、これを不服として同年4月10日に本件審判請求がなされるとともに、同年5月9日付けで明細書及び特許請求の範囲について手続補正がなされ、同日付けで同年4月10日付けの審判請求書の請求の理由について手続補正がなされ、同年7月11日付けで上申書が提出され、平成21年10月14日付けで審尋が通知され、同年11月6日付けで回答書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成20年5月9日付けの明細書及び特許請求の範囲について手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、平成19年10月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲についての

「【請求項1】
バット本体に弾性体を周設してなる打球部を備えた球技用バットであって、
前記弾性体が、内部に流体封入室を備えた可撓性に富む材料で形成された流体封入部材であることを特徴とする球技用バット。
【請求項2】
前記バット本体の軸方向に沿った、前記流体封入部材の断面には、複数の前記流体封入室が区画形成されていることを特徴とする請求項1に記載の球技用バット。
【請求項3】
前記流体封入室は、個々に区画された複数の流体封入室であることを特徴とする請求項2に記載の球技用バット。
【請求項4】
前記流体封入部材は、前記バット本体の径方向に沿った圧縮力を受けると、前記流体封入室が前記バット本体の軸方向および周方向に変形する部材で構成されていることを特徴とする請求項3に記載の球技用バット。
【請求項5】
バット本体に弾性体を周設してなる打球部を備えた球技用バットであって、
前記弾性体が、内部に流体封入室を備えた可撓性に富む材料で形成された流体封入部材であり、この流体封入部材が、前記流体封入室に充填される流体の出入部を備えたことを特徴とする球技用バット。
【請求項6】
前記出入部は、逆止機能を備えたゴムバルブであることを特徴とする請求項5に記載の球技用バット。
【請求項7】
前記出入部は、密実なゴム材で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の球技用バット。
【請求項8】
前記流体封入部材が、所要の可撓性及び強度を備えた合成樹脂材料または合成ゴム材料からなるシート材で形成されたことを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の球技用バット。」

の記載を、

「【請求項1】
バット本体に弾性体を周設してなる打球部を備えた球技用バットであって、
前記弾性体は、内部に流体封入室を備えた可撓性に富む材料で形成された流体封入部材と、該流体封入部材の外周に設けられた半硬質発泡合成樹脂材料からなる高弾性層と、からなり、
更に前記流体封入室は、前記バット本体の軸方向および周方向に沿って区画され、所定の間隙をもって個別に形成されており、
前記高弾性層は、C硬度で30?50であることを特徴とした球技用バット。
【請求項2】
前記流体封入室は、少なくとも互いに接触することのないように個別に形成されていることを特徴とした請求項1に記載の球技用バット。
【請求項3】
前記流体封入室は、半球状であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の球技用バット。
【請求項4】
前記流体封入室は、半円筒状であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の球技用バット。
【請求項5】
前記流体封入室は、方形状断面の角筒状であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の球技用バット。
【請求項6】
前記流体封入部材は、所要の可撓性及び強度を備えた合成樹脂材料または合成ゴム材料からなるシート材で形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の球技用バット。」

と補正することを含むものである。

2 本件補正の適否の検討
(1)新規事項追加についての検討
本件補正により、本件補正後の請求項4には、「前記バット本体の軸方向および周方向に沿って区画され、所定の間隙をもって個別に形成され」た「流体封入室」が「半円筒状である」という事項が記載されるとともに、本件補正後の請求項5には、「前記バット本体の軸方向および周方向に沿って区画され、所定の間隙をもって個別に形成され」た「流体封入室」が「方形状断面の角筒状である」という事項が記載されることとなった。そこで、本件補正後の請求項4,5の上記事項が、当業者によって、本件出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるか否かを検討する。
当初明細書等には、前記「流体封入室」の形成態様に関して、「図3は、図1に示した流体封入部材を示す斜視図である。ここでは、円筒状に配設される流体封入部材12を平面状に展開して示している。この流体封入部材12は、内部に流体封入室11を画成する半球形状の流体封入部16が縦横に複数配列されており、流体封入部16を形成する凹凸が形成されたシート材31を平板なシート材32に溶着して製造される。」(段落【0026】)、「図6?図10は、本発明における流体封入部材の別の例を示す斜視図である。ここでは、円筒状をなす流体封入部材を平面状に展開して示している。図6に示す流体封入部材61では、内部に流体封入室62を画成する流体封入部63が一方向に複数並べて設けられており、この流体封入部63は、円筒をその軸線に沿う平面で分断した形態の半円筒状をなしている。この流体封入部材61は、流体封入部63の長手方向がバット本体2の軸線に沿う向きに一致し、バット本体2の取付部3を中心にして複数の流体封入部63が周方向に並べて配置されるように設けられる。」(段落【0047】)、「図7に示す流体封入部材71では、前記の例と同様に、内部に流体封入室72を画成する流体封入部73が一方向に複数並べて設けられているが、前記の例とは異なり、流体封入部73は、方形状断面の角筒状をなしている。この流体封入部材71も、前記の例と同様に、バット本体2の取付部3を中心にして複数の流体封入部73が周方向に並べて配置されるように設けられる。」(段落【0048】)と記載されている。
そして、当初明細書等の上記段落【0026】からは、「流体封入室」の形状が「半円筒状」や「方形状断面の角筒状」であることを導き出すことはできない。また、当初明細書等の上記段落【0047】からは、「流体封入室」の形状が「半円筒状」であることを導き出すことはできるものの、「流体封入室」が「前記バット本体の軸方向および周方向に沿って区画され、所定の間隙をもって個別に形成され」たものであることを導き出すことはできない。さらに、当初明細書等の上記段落【0048】からは、「流体封入室」の形状が「方形状断面の角筒状」であることを導き出すことはできるものの、「流体封入室」が「前記バット本体の軸方向および周方向に沿って区画され、所定の間隙をもって個別に形成され」たものであることを導き出すことはできない。
加えて、当初明細書等の他の記載を総合することによっても、当業者によって、「前記バット本体の軸方向および周方向に沿って区画され、所定の間隙をもって個別に形成され」た「流体封入室」が「半円筒状」または「方形状断面の角筒状」であるという事項を導き出すことはできない。
したがって、本件補正後の請求項4,5の上記事項は、当業者によって、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下単に「特許法」という。)第17条の2第3項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

(2)目的要件についての検討
ア 上記(1)で検討したとおり、本件補正は特許法第17条の2第3項の規定に適合しないので却下されるべきものであるが、仮に、本件補正が同法第17条の2第3項の規定に適合する場合に、本件補正が同法第17条の2第4項の規定に適合するか否かを検討する。

イ 本件補正後の請求項1?6には、本件補正前の請求項5?8の「流体の出入部」が記載されていないから、本件補正のうち本件補正前の請求項5?8を削除する補正の目的は、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる「請求項の削除」に該当する。

ウ 本件補正後の請求項1?6の「高弾性層」には、本件補正前の請求項1?5の「高弾性層」について、「C硬度で30?50である」との限定が付されているから、本件補正のうち本件補正前の請求項1?4を本件補正後の請求項1?6とする補正の目的には、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」が含まれることは明らかである。
しかし、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」は、補正前後の請求項に係る発明が一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならないところ(東京高裁平成15年(行ケ)第230号、知財高裁平成17年(行ケ)第10192号、知財高裁平成17年(行ケ)第10156号参照。)、本件補正のうち本件補正前の請求項1?4を本件補正後の請求項1?6とする補正は、請求項の数を増加させる補正(いわゆる増項補正)であり、補正前後の請求項に係る発明が一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでないから、本件補正のうち本件補正前の請求項1?4を本件補正後の請求項1?6とする補正の目的は、同号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。
さらに、本件補正のうち本件補正前の請求項1?4を本件補正後の請求項1?6とする補正の目的は、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる「請求項の削除」、同項第3号に掲げる「誤記の訂正」、同項第4号に掲げる「明りようでない記載の釈明」のいずれにも該当しないことは明らかである。

エ したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合しない。

3 むすび
以上検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第3項及び同条第4項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1 本件発明の認定
本件補正が却下されたから、平成19年10月12日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面に基づいて審理すると、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、平成19年10月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「バット本体に弾性体を周設してなる打球部を備えた球技用バットであって、
前記弾性体が、内部に流体封入室を備えた可撓性に富む材料で形成された流体封入部材であることを特徴とする球技用バット。」

2 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶理由において引用され、本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開2005-28043号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア?クの記載が図示とともにある。

ア 「【請求項1】
グリップ部からテーパー部、打球部を経て先端部に至る所要長さに形成された球技用バットにおいて、全長にわたる軸芯に配された芯材の前記打球部上に、弾性材料により中空形状に形成された反発部材が並列配置され、反発部材上が円筒部材により被覆されてなることを特徴とする球技用バット。」

イ 「【請求項3】
反発部材は、リング状に形成された小径中空弾性材が芯材上に密着配置されてなる請求項1に記載の球技用バット。」

ウ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、野球やソフトボールなどの球技に使用する球技用バットに関するものである。」

エ 「【0004】
本発明が目的とするところは、バットとしての強度の低下をまねくことなく打球の反発特性を向上させることを可能にする球技用バットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明は、グリップ部からテーパー部、打球部を経て先端部に至る所要長さに形成された球技用バットにおいて、全長にわたる軸芯に配された芯材の前記打球部上に、弾性材料により中空形状に形成された反発部材が並列配置され、反発部材上が円筒部材により被覆されてなることを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、打球時には反発部材の圧縮変形及び空気の圧縮がなされ、その復元力によりボールが打ち出されるので、スポンジ材等の弾性体では得られない大きな反発特性が得られる。
【0007】
上記構成において、反発部材は、小径中空弾性材を芯材上に密着させて螺旋状に巻回した構成、あるいはリング状に形成された中空弾性材を芯材上に密着配置した構成により実現することができる。」

オ 「【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、打球部の芯材上に中空形状の反発部材が並列配置されているので、打球時には弾性中空形状の変形と空気の圧縮とにより大きな反発特性が得られるので、従来のスポンジ状の反発材料を設けたバットに比して大きな反発特性を有する球技用バットに構成することができる。」

カ 「【0011】
図1、図2において、実施形態に係る球技用バット1は、小径円柱状のグリップ部Aから外面がテーパー形状のテーパー部B、大径円柱状の打球部Cを経て先端部Dに至るバット形状に形成されている。中心軸上にバットの全長にわたる長さの円柱形状に形成された芯材2は、長形で扁平な竹材を接着剤で貼り合わせた合竹材をグリップ部Aの直径に対応する小径円柱状に成形したもので、図2に示すように、グリップ部A側の端部にはオレフィン系エラストマーを成形したグリップエンド11が取り付けられる。グリップ部Aは芯材2を外部露出させた状態でもよいが、図2に示すように、滑り止めを設けたグリップテープ10を巻回することができる。芯材2は上述のように合竹材としているが、木を円柱状に削り出したもの、あるいは、木の板材を貼り合わせた合材を円柱状に削り出したもの、アルミニウム等の軽金属を中空に成形したものなどを用いることもできる。
【0012】
前記打球部Cに位置する芯材2上には、オレフィン系エラストマーにより成形された内パイプ4が装着され、その外表面に同じくオレフィン系エラストマーにより小径パイプに成形された反発部材6が隣り合う間を密着させて巻回される。この反発部材6上は発泡ポリウレタンによって成形された中パイプ5で被覆され、更に中パイプ5上はオレフィン系エラストマーによって成形された外パイプ7によって被覆されて所要直径の打球部Cに形成されている。
【0013】
直径が異なるグリップ部Aと打球部Cとの間にあるテーパー部Bの芯材2上には内装筒8が装着され、その外側にテーパー形状の外装筒9が装着される。また、芯材2の先端部D位置には先端キャップ3が取り付けられる。この球技用バット1の製造手順としては、先端キャップ3と内装筒8及び外装筒9とが先に芯材2に取り付けられ、その後に打球部Cの反発部材6の巻回がなされる。
【0014】
芯材2に対する先端キャップ3の固定は、芯材2の先端側に先端キャップ3の内筒3bを嵌入し、外筒3aの直径方向に形成された切欠き3cからボルト13を芯材2に穿かれたキャップ取付穴2aに通し、反対側の切欠き3cからナット14をボルト13に螺入することによってなされる。また、前記内装筒8の芯材2に対する固定も同様になされる。即ち、二重筒に形成された内装筒8の外筒8aに形成された切欠き8cからボルト13を芯材2に形成された内装筒取付穴2bに通し、反対側の切欠き8cからナット14をボルト13に螺入して内装筒8を芯材2に固定する。固定された内装筒8の外筒8a上には、グリップ部B側から挿入した外装筒9が圧入される。このとき外装筒9の内面側に放射状に形成された複数の保持片9aが芯材2を周囲から保持すると共に、その先端部側が内装筒8の外筒8aに形成された嵌合切欠き8d内に嵌入するので、内装筒8と外装筒9とは一体に組み合わされ、外装筒9は芯材2上で回転しない状態に取り付けられる。
【0015】
上記のように芯材2に先端キャップ3と内装筒8及び外装筒9とを取り付けた後、前述したように打球部Cに反発部材6及び中パイプ5、外パイプ7を装着し、グリップ部Aの後端にグリップエンド11を芯材2に形成されたグリップエンド取付穴2cを利用してボルト固定すると、球技用バット1が完成する。
【0016】
上記構成になる球技用バット1は、打球部Cでボールを打球すると、弾性材である外パイプ7及び中パイプ5が弾性変形すると共に、大きな打球圧力で反発部材6の小径パイプが弾性変形して中空内の空気を圧縮する。この各部の弾性変形及び空気圧縮に伴う弾性復元による反発力によって打球部Cに当たったボールを弾き出す圧力を与えるので、従来の一般的なバットのようにボールが木あるいは金属に当たって弾性変形し、その反発力で打ち出される作用よりも大きなに反発力が与えられてボールはより遠くに打ち出される。
【0017】
上記構成において、打球部Cに装着される反発部材6は、その断面形状が円形としているが、断面形状が四角形であっても同様の作用がなされる。また、線状の小径パイプを巻回するのでなく、リング状に形成された小径パイプを密着させて並列配置しても同様の効果が得られる。」

キ 「【0019】
図3に示すように、芯材16の直径をグリップ部Aから暫増させてテーパー部Bを形成し、グリップ部Aと略同一直径の打球部Cに反発部材17を配設して球技用バット15に構成することもできる。この構成では、エラストマーにより断面形状が四角形の中空に生成したリング状に反発部材17を形成し、これを芯材16の打球部C上に互いに密着させて並列配置し、反発部材17の外周面上にテーパー部Bの最大直径と同一直径となる直径に形成されたエアラストマ製の外パイプ18を設け、芯材16の先端部Dに先端キャップ19を取り付けることにより、外観がバット形状になるようにしている。
【0020】
上記構成では、芯材16上に直接反発部材17を配設しているが、要求される反発力に応じて反発部材17と芯材16との間に弾性材を配設したり、反発部材17と外パイプ18との間に弾性材を配設することもできる。また、反発部材17は、その断面形状が円形であってもよく、線状のものを巻回しても同様の効果が得られる。」

ク 「【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明に係る球技用バットは、打球部の芯材上に中空形状の反発部材が並列配置されているので、打球時には弾性中空形状の変形と空気の圧縮とにより大きな反発特性が得られるので、従来のスポンジ状の反発材料を設けたバットに比して大きな反発特性を有する球技用バットに構成することができる。また、芯材を選択する自由度が高く、限りある資源の有効活用を図ることができる。」

3 引用例に記載された発明の認定
引用例の上記記載事項ア?クから、引用例には次の発明が記載されていると認めることができる。

「グリップ部からテーパー部、打球部を経て先端部に至る所要長さに形成された球技用バットにおいて、
全長にわたる軸芯に配された芯材の前記打球部上に、リング状に形成された小径中空弾性材を密着させて並列配置し、
前記反発部材は円筒部材により被覆されてなり、
打球時には弾性中空形状の変形と中空内の空気の圧縮とにより大きな反発特性が得られる、
球技用バット。」(以下「引用発明」という。)

4 本件発明と引用発明の対比
(1)本件発明の「流体」には空気が含まれる(本件出願の明細書の段落【0028】を参照。)。そして、引用発明の「リング状に形成された小径中空弾性材」では、「打球時に」「中空内の空気」が「圧縮」されるから、引用発明の「リング状に形成された小径中空弾性材」の「中空内」に「空気」が封入されているということができる。したがって、引用発明の「リング状に形成された小径中空弾性材」の「中空」部分は、本件発明の「流体封入室」に相当し、引用発明の「リング状に形成された小径中空弾性材を密着させて並列配置」したものは、本件発明の「可撓性に富む材料で形成された流体封入部材である」「弾性体」に相当する。

(2)引用発明の「全長にわたる軸芯に配された芯材」は、本件発明の「バット本体」に相当する。
また、引用発明の「全長にわたる軸芯に配された芯材の前記打球部上に、リング状に形成された小径中空弾性材を密着させて並列配置し」た「球技用バット」は、本件発明の「バット本体に弾性体を周設してなる打球部を備えた球技用バット」に相当する。

(3)すると、本件発明と引用発明とは、

「バット本体に弾性体を周設してなる打球部を備えた球技用バットであって、
前記弾性体が、内部に流体封入室を備えた可撓性に富む材料で形成された流体封入部材である球技用バット。」

である点で一致し、相違するところはない。
したがって、本件発明は引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

5 むすび
以上検討したとおり、本件出願の請求項1に係る発明は引用例に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するから、特許を受けることができない。そして、引用例が頒布されたのは原出願の出願前であるから、本件出願が特許法第44条第1項に規定する分割要件を満たしているか否か(すなわち、本件出願の出願日を、原出願の出願日である平成17年3月24日にそ及すると認めるか本件出願の実際の出願日である平成19年8月31日と認めるか)にかかわらず、かかる結論に変わりはない。
このように本件出願の請求項1に係る発明が特許を受けることができない以上、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶されるべきものである。
なお、請求人は、平成20年7月11日付けの上申書において、本件補正後の請求項4,5を削除し、本件補正後の請求項1に「外周部」という文言を追加する補正案を示すとともに、かかる補正案について面接により説明する旨希望しているが、上記のとおり、本件補正は却下すべきものであって、かつ、本件出願の請求項1に係る発明は特許を受けることができず、このような場合には特許法上補正の機会は与えられないから、面接の必要性を認めない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-20 
結審通知日 2010-01-26 
審決日 2010-02-08 
出願番号 特願2007-226205(P2007-226205)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A63B)
P 1 8・ 561- Z (A63B)
P 1 8・ 572- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 薄井 義明池谷 香次郎  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 小松 徹三
日夏 貴史
発明の名称 球技用バット  
代理人 峰 隆司  
代理人 野河 信久  
代理人 中村 誠  
代理人 竹内 将訓  
代理人 岡田 貴志  
代理人 河野 直樹  
代理人 河井 将次  
代理人 河野 哲  
代理人 佐藤 立志  
代理人 橋本 良郎  
代理人 市原 卓三  
代理人 勝村 紘  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 山下 元  
代理人 堀内 美保子  
代理人 村松 貞男  
代理人 砂川 克  
代理人 福原 淑弘  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 風間 鉄也  
代理人 白根 俊郎  

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