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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1213974
審判番号 不服2008-20046  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-07 
確定日 2010-03-25 
事件の表示 特願2004-305363「樹脂シート製トレーおよびその製造方法およびその製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月11日出願公開、特開2006-117264〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成16年10月20日の出願であって,平成20年6月11日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年8月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2.原査定
原査定における拒絶の理由は,以下のとおりのものと認める。
「この出願の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.実公昭40-16471号公報
2.特開昭59-45113号公報
3.特開2003-159743号公報
4.特開平7-68636号公報」

上記刊行物のうち,特開平7-68636号公報,特開2003-159743号公報及び実公昭40-16471号公報を,以下,それぞれ「引用刊行物1」,「引用刊行物2」及び「引用刊行物3」という。

第3.当審の判断
1.本願発明
本願の請求項3に係る発明(以下,「本願発明」という)は,平成20年1月9日付けで補正された特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「複数の有底凹部11が形成された外金型と,外金型の有底凹部に嵌合する突出部が形成された内金型とを用いて,樹脂シートから被収容物が収容可能な複数の有底凹部を有するトレーを製造する樹脂シート製トレー製造装置であって,外金型に形成された凹入部31の底面までの深さdを,内金型4に形成された突出部41の頂面42までの高さhよりも深く形成し,トレー成形時における両金型3,4の嵌合終端姿勢においてこれら凹入部31の底面32と突出部41の頂面42との間に間隙sが形成される金型構造とされ,かつ,外金型3における凹入部31の底面32が圧空噴出口33を備えているか,内金型4の頂面42が真空吸引口43を備えているか,その両口33,43を備えているとともに,更に,前記外金型3における凹入部31の壁面が真空吸引口34を備えているか,前記内金型4における突出部41の壁面が圧空噴出口44を備えているか,若しくは,これらの真空吸引口34と圧空噴出口44との両口を備えている成形金型を備えたことを特徴とする樹脂シート製トレー製造装置。」

2.引用刊行物記載事項
(1)本願の出願日前に頒布された刊行物である引用刊行物1には,図面とともに次の事項が記載されている。
(1-a)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は,合成樹脂シート成型装置に関し,特に,延伸工程を経て作られた延伸合成樹脂シートに対して,比較的深い絞り成型を行なって各種の容器を形成するように構成したものである。
【0002】
【従来の技術】従来より,延伸されていない塩化ビニル等の透明な薄肉合成樹脂シートを素材とし,予め加熱されたシートを真空成型またはブロー成型して凹凸のある成型品,例えば,卵容器,豆腐容器,総菜等を入れる食品容器等を製造している。」
(1-b)「【0008】図1に示すように,卵容器5の凹部55の形状に合わせた複数の凹部13を有する型12と,この型12を支持する支持板11とよりなる上型1と,この型12の各凹部13に対応する位置に上向きに突出するように昇降し得るプラグ23と,このプラグ23の昇降を案内する孔22を設けた枠板21とを有する下型2と,下型2に載せられた合成樹脂シート10の周囲,すなわち,卵容器のフランジ部分56に相当する部位を押圧して,合成樹脂シート10の収縮を妨げるクランプ枠3とにより構成され,上型1は,クランプ枠3で囲まれている。」
(1-c)「【0010】上型1を構成する支持板11と型12は,ボルト等によって接合され,型12の各凹部13には1本または複数本の通気孔14が設けられており,これらの各通気孔14は,枝状の通気管15を介して上方の第1吸排気孔16と連通されている。」
(1-d)「【0012】各プラグ23には1本または複数本の通気孔24が設けられており,これらの各通気孔24は,枝状の通気管25を介して側方の第2吸排気孔26と連通されている。」
(1-e)「【0019】(5)上型1の型12が,合成樹脂シート10を介して下型2の枠板21に接したのち,シリンダ28を作動させて各プラグ23を上昇させるとともに,電磁弁43を開いて,型12の各凹部13の通気孔14を真空タンク41と連通させて合成樹脂シート10の上側の空気を排気し,電磁弁46を開いて,各プラグ23の通気孔24を圧縮空気タンク42と連通させて合成樹脂シート10の下側に空気を送り込むと,(6)合成樹脂シート10は,軟化して上型1の凹部13の壁面に吸着されて成型される。」

上記記載事項(1-a)?(1-e)及び図面の記載によれば,引用刊行物1には,次の発明(以下,「引用発明1」という)が記載されているといえる。
「卵容器を製造するための合成樹脂シート成型装置であって,卵容器5の複数の凹部55の形状に合わせた複数の凹部13を有する型12等よりなる上型1,各凹部13に対応する位置に上向きに突出して昇降するプラグ23と該プラグ23の昇降を案内する孔22を設けた枠板21とを有する下型2,及びクランプ枠3により構成され,型12が合成樹脂シート10を介して枠板21に接したのち,各プラグ23を上昇させるとともに,各凹部13に設けられた通気孔14を真空タンク41と連通させて合成樹脂シート10の上側の空気を排気し,各プラグ23に設けられた通気孔24を圧縮空気タンク42と連通させて合成樹脂シート10の下側に空気を送り込むことにより,合成樹脂シート10を軟化させて上型1の凹部13の壁面に吸着させて成型することができるようにした合成樹脂シート成型装置。」

(2)本願の出願日前に頒布された刊行物である引用刊行物2には,図面とともに次の事項が記載されている。
(2-a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,合成樹脂容器,特に飲食料等のための容器として好都合に使用することができる合成樹脂容器の製造方法に関する。」
(2-b)「図3を参照して説明を続けると,圧縮成形装置2から取り出された前成形体10は,加熱されて軟化された後に,プラグアシスト真空及び圧空成形装置18に供給される。・・・図示のプラグアシスト真空及び圧空成形装置18は,静止型部材20,締付け部材22及びプラグ部材24を含んでいる。型部材20にはその上面から下方に延びる成形空洞26が形成されている。かかる成形空洞26は下方に向かって内径が漸次減少する逆円錐台形状でよい。型部材20には,更に,その下端面から成形空洞26まで延びる連通孔28が形成されている。・・・プラグ部材24は下方に向かって外径が漸次減少する逆円錐台形状であるプラグ部30を有する。プラグ部30の下面には浅い円形凹部32が形成されている。プラグ部材24には,更に,円形凹部32まで延びる連通孔34が形成されている。」(段落【0017】)
(2-c)「次いで,プラグ部材24が漸次下降せしめられて延伸工程が遂行される。図3と図4とを比較参照することによって理解される如く,プラグ部材24が漸次下降せしめられると,これに応じて前成形体10の側壁14及び底壁16が漸次延伸せしめられる。更に,型部材20の連通孔28が真空源(図示していない)に連通され,そしてまたプラグ部材24の連通孔34が圧縮空気源(図示していない)に連通され,従って真空吸引による真空成形と共に圧縮空気加圧による圧空成形が遂行され,前成形体10は型部材20に形成されている成形空洞26の内面に対応した形状の成形体36にせしめられる。」(段落【0018】)
(2-d)「かかる後工程においては,図5に図示する如く,型部材20の連通孔28が圧縮空気源に連通され,プラグ部材24の連通孔34が真空源に連通せしめられる。従って,真空吸引と圧縮空気加圧によって成形体36がプラグ部材24のプラグ部30に対応した形状にシュリンクバックされ,最終形状即ち容器38に賦形される。・・・かようにして成形された容器38は、図5に図示する如く、環状フランジ40と、このフランジ40の内縁から垂下する側壁42と、側壁42の下端を閉じる底壁44とを有するカップ状である。側壁42は下方に向かって外径が漸次低減する(従って下方に向かって内側に傾斜している)円錐台形状である。底壁44の中央部にはプラグ部材24の底面に形成されている円形凹部32に対応した円形凹部46が形成されている。」(段落【0020】)

上記記載事項(2-a)?(2-d)及び図面の記載によれば,引用刊行物2には,次の発明(以下,「引用発明2」という)が記載されているといえる。
「底壁44の中央部に円形凹部46を有するカップ状の合成樹脂容器38を成形するためのプラグアシスト真空及び圧空成形装置であって,逆円錐台形状の成形空洞26が形成された型部材20及び逆円錐台形状のプラグ部30を有するプラグ部材24を含み,型部材20の連通孔28を真空源に連通するとともにプラグ部材24の連通孔34を圧縮空気源に連通することにより,前成形体10を成形空洞26の内面に対応する形状に成形せしめた後,型部材20の連通孔28を圧縮空気源に連通するとともにプラグ部材24の連通孔34を真空源に連通することにより,下面に円形凹部32が形成されたプラグ部30に対応する形状に成形するプラグアシスト真空及び圧空成形装置。」

(3)周知技術として引用する引用刊行物3には,鶏卵カアトンの卵収容凹所3の底部に内側に向かう突起6を形成することが記載されている。

3.対比・判断
本願発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「型12」,「下型2」及び「プラグ23」は,それぞれ本願発明の「外金型」,「内金型」及び「突出部」に相当し,引用発明1の「凹部13」は,本願発明の「外金型の有底凹部」ないし「凹入部」に相当する。
引用発明1は,複数の凹部55を有する卵容器を製造するための合成樹脂シート成型装置であるから,本願発明における「樹脂シートから被収容物が収容可能な複数の有底凹部を有するトレーを製造する樹脂シート製トレー製造装置」との要件を備える。また,引用発明1のプラグ23は,凹部13に対応する位置に上向きに突出して昇降するものであるから,引用発明1は,本願発明における「外金型の有底凹部に嵌合する突出部が形成された内金型」との要件を備える。さらに,引用発明1は,凹部13に設けられた通気孔14を真空タンク41と連通させて合成樹脂シート10の上側の空気を排気し,プラグ23に設けられた通気孔24を圧縮空気タンク42と連通させて合成樹脂シート10の下側に空気を送り込むことができるものであるから,本願発明における「前記外金型3における凹入部31の壁面が真空吸引口34を備えているか,前記内金型4における突出部41の壁面が圧空噴出口44を備えているか,若しくは,これらの真空吸引口34と圧空噴出口44との両口を備えている」との要件を備える。
したがって,本願発明と引用発明1は,本願発明の表記にしたがえば,
「複数の有底凹部11が形成された外金型と,外金型の有底凹部に嵌合する突出部が形成された内金型とを用いて,樹脂シートから被収容物が収容可能な複数の有底凹部を有するトレーを製造する樹脂シート製トレー製造装置であって,前記外金型3における凹入部31の壁面が真空吸引口34を備えているか,前記内金型4における突出部41の壁面が圧空噴出口44を備えているか,若しくは,これらの真空吸引口34と圧空噴出口44との両口を備えている樹脂シート製トレー製造装置。」
である点で一致し,次の点で相違する。

[相違点]
本願発明は,外金型に形成された凹入部31の底面までの深さdを,内金型4に形成された突出部41の頂面42までの高さhよりも深く形成し,トレー成形時における両金型3,4の嵌合終端姿勢においてこれら凹入部31の底面32と突出部41の頂面42との間に間隙sが形成される金型構造とされ,かつ,外金型3における凹入部31の底面32が圧空噴出口33を備えているか,内金型4の頂面42が真空吸引口43を備えているか,その両口33,43を備えているのに対して,引用発明1は,そのように構成されていない点。

上記相違点について検討する。
引用発明2は,下面に円形凹部32が形成されたプラグ部30に対応する形状,すなわちカップ状の容器の底部を内側に折り返す形状に成形する装置であり,「型部材20」,「成形空洞26」及び「プラグ部30」は,それぞれ本願発明の「外金型」,「凹入部31」及び「内金型4に形成された突出部41」に相当するということができる。そして,引用発明2は,少なくともプラグ部30の下面に円形凹部32が形成されていることにより,型部材20とプラグ部30の嵌合終端姿勢において,成形空洞26の底面とプラグ部30の帳面との間に隙間が形成されるものであり,また,型部材20の成形空洞26の底面は圧縮空気噴出口を備えるとともにプラグ部24の頂面は真空吸引口を備えるものであるといえる。
ところで,卵容器において卵を収容する凹部の底部を内側に折り返す形状とすることは,例えば引用刊行物3に示されるように,従来からよく知られた周知技術である。引用発明1において,そのような形状の卵容器を製造できるように装置を変更する場合,型12にプラグ23を終端まで嵌合した姿勢において型12の凹部13の底面とプラグ23の頂面との間に間隙が形成されるようにし,型12の凹部13の底面に圧縮空気噴出口を設けるとともにプラグ23の頂面に真空吸引口を設けることは,引用発明2を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。
したがって,上記相違点は,引用発明2及び上記周知技術を参酌することにより,当業者が容易になし得たことであるから,本願発明は,出願前に引用刊行物1,引用刊行物2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

なお,請求人は,審判請求書において,「底部周辺に、逆噴射圧を加えるか、逆吸引圧を加えるか、又は両圧を加えることによって、金型の上下移動を伴うことなく、密着二重壁とした肉厚壁17を形成する」ことはいずれの引用文献にも記載されていない旨主張するが,本願の請求項3には「密着二重壁」についての記載がなく,容器の製造装置に係る同項に係る発明により製造される容器が密着二重壁を有するとは限らない。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,出願前に引用刊行物1,引用刊行物2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
したがって,原査定は妥当であり,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-21 
結審通知日 2010-01-26 
審決日 2010-02-08 
出願番号 特願2004-305363(P2004-305363)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 裕一  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 鳥居 稔
豊島 ひろみ
発明の名称 樹脂シート製トレーおよびその製造方法およびその製造装置  
代理人 鹿島 義雄  

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