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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1214084
審判番号 不服2007-1203  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-15 
確定日 2010-03-24 
事件の表示 特願2002-380974「内視鏡ビデオ画像システム用の単一化した電気的照射ケーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月 5日出願公開、特開2004- 33726〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年12月27日(パリ条約による優先権主張:平成13年12月28日、米国)の出願であって、平成18年9月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年1月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものであって、さらに、平成20年5月23日付けで審尋がなされ、回答書が同年10月27日付けで請求人より提出され、その後、当審において、平成20年12月8日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成21年4月8日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?19は、本件補正により補正された、次のとおりであると認める。
「 【請求項1】 画像データを発生させるためのカメラヘッド、
カメラ制御ユニット、
該カメラ制御ユニットに接続された光源、
該カメラヘッドを該カメラ制御ユニットに接続するための第1のケーブルからなり、
該第1のケーブルが、カメラヘッドとカメラ制御ユニットとの間で情報を送るための少なくとも1つのチャンネル、および画像データを発生させるのに用いるため、該カメラヘッドに光を送るための光源ガイドを囲み、単一の保護覆い内に有り、
該少なくとも1つのチャンネルが、2つの電気導体からなり、且つ、該少なくとも1つのチャンネルが、多重化された少なくとも2つのタイプの情報を送ることを特徴とするビデオ画像システム。
【請求項2】 該第1のケーブルが2つのチャンネルからなることを特徴とする請求項1記載のビデオ画像システム。
【請求項3】 該第1のケーブルが4つのチャンネルからなることを特徴とする請求項1記載のビデオ画像システム。
【請求項4】 該4つのチャンネルが8つの電気導体からなることを特徴とする請求項3記載のビデオ画像システム。
【請求項5】 カメラ制御ユニットがカメラヘッドの操作のための命令を発生し、該少なくとも1つのチャンネルが該命令をカメラ制御ユニットからカメラヘッドに送ることを特徴とする請求項1記載のビデオ画像システム。
【請求項6】 該少なくとも1つのチャンネルの各々が、カメラヘッドとカメラ制御ユニットの間で、単一方向に情報を送ることを特徴とする請求項1記載のビデオ画像システム。
【請求項7】 該少なくとも1つのチャンネルが、少なくとも2つのタイプの情報を単一方向に送ることを特徴とする請求項1記載のビデオ画像システム。
【請求項8】 2つのタイプの情報が、カメラヘッドによって発生される画像データおよび制御データを含むことを特徴とする請求項7記載のビデオ画像システム。
【請求項9】 多重化された情報が、カメラ制御ユニット内で元に戻されることを特徴とする請求項1記載のビデオ画像システム。
【請求項10】 カメラヘッドが制御データを発生し、該第1のケーブルの少なくとも1つのチャンネルを用いて、該制御データをカメラヘッドからカメラ制御ユニットに送ることを特徴とする請求項1記載のビデオ画像システム。
【請求項11】 光源が、カメラ制御ユニット内に装着されていることを特徴とする請求項1記載のビデオ画像システム。
【請求項12】 光源からの光出力が、該第1のケーブルの光源ガイドに接続されていることを特徴とする請求項1記載のビデオ画像システム。
【請求項13】 光源からの光出力が、カメラ制御ユニットに接続されていることを特徴とする請求項1記載のビデオ画像システム。
【請求項14】 該第1のケーブルが、コネクタによってカメラ制御ユニットに着脱可能に接続され、光源の光出力がカメラ制御ユニットを通って該コネクタに伝達されることを特徴とする請求項13記載のビデオ画像システム。
【請求項15】 カメラ制御ユニットがさらに、光源の光出力を該コネクタまでガイドするのを容易にするためのスリーブを有することを特徴とする請求項14記載のビデオ画像システム。
【請求項16】 該第1のケーブルが、カメラヘッドに接続されていることを特徴とする請求項1記載のビデオ画像システム。
【請求項17】 該第1のケーブルが、カメラ制御ユニットから切り離されたとき光路を断つため、カメラ制御ユニットがさらに、光源の光出力と光源ガイド間の光路に沿って装着された光デフレクタを有することを特徴とする請求項1記載のビデオ画像システム。
【請求項18】 該少なくとも1つのチャンネルが、デジタル・シリアル・プロトコルを用いることを特徴とする請求項1記載のビデオ画像システム。
【請求項19】 デジタル・シリアル・プロトコルが、低電圧差動信号であることを特徴とする請求項18記載のビデオ画像システム。」(下線は補正箇所を示す。以下、上記【請求項1】を「本願発明」という。)

第3 引用刊行物およびその記載事項
当審において通知した、本願の優先日前において頒布された刊行物である特許第2656925号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1-ア)「【請求項1】照明用のライトガイドと撮像手段としての固体撮像素子とを組み込む一方、固体撮像素子の信号線が該撮像素子から延出する方向とライトガイドの配置方向を、硬性内視鏡の光学系の光軸方向と略平行とし、且つ硬性内視鏡の操作部から外部へ延出する、前記ライトガイド及び前記信号線を収納するケーブルの延出方向を、前記硬性内視鏡の光学系の光軸方向と略同一方向にしたことを特徴とする硬性電子内視鏡。」(特許請求の範囲)

(1-イ)「本発明は、・・・、外部に延出される照明用のライトガイドと固体撮像素子用の信号線とが患者の身体になるべく当接しないようにして、これらライトガイド、信号線が挿入、処理等の操作の邪魔にならないよう操作性の向上を図った硬性電子内視鏡を提供することを目的としている。」(2頁左欄11?16行)

(1-ウ)「第1図及び第2図は本発明の第1実施例に係り、第1図は硬性電子内視鏡の要部を切欠いて示す全体構成図、第2図は面順次方式を採用した硬性電子内視鏡装置の概要を示す説明図である。
これらの図において、符号1は硬性電子内視鏡で手元側の把持部を兼ねた操作部2と、この操作部2から前方へ延設された直線状の細長で硬性な挿入部3とからなり、前記操作部2から挿入部3内にはレンズ管4とファイバーバンドルからなるライトガイド5とが軸方向に並設されており、ライトガイド5の先端は挿入部3の先端面においてライト出射端となっている。一方、前記レンズ管4は挿入部3の先端面まで延設され、カバーガラス6を先端内に配置していると共に、このカバーガラス6後方のレンズ管4内に対物レンズ7を配設し、さらにこの対物レンズ7後方から操作部2内にかけたレンズ管4内に複数のリレーレンズ8、8…を配置し、最後部のリレーレンズ8後方の結像位置に、固体撮像素子9が配設されている。この固体撮像素子9は、基板10に固設され、図示しないボンディングワイヤで接続されていると共に、基板10を枠体11を介してレンズ管4の後端に取付けている。そして、この基板10には多数の信号線12が接続されている。
前記操作部2の後端には、軸方向にフレキシブルなケーブル13が接続部13aを介して例えば一体に接続されており、このケーブル13内に前記ライトガイド5と信号線12とが延設されている。このケーブル13の端部にはコネクタ14が設けられ、このコネクタ14には電気系ソケット15とライト系ソケット16とが設けられている。
光源装置17と映像信号処理回路18が内臓(当審注:「内蔵」の誤記)された制御装置19は、電気系コネクタ受け20とライト受けコネクタ受け21とを有して前記コネクタ14のソケット15、16が接続されるようになっていると共に、表示手段としてのカラーCRT22が接続されるようになっている。
前記制御装置19内に設けられた光源装置17は、第2図に示すように、・・・観察部位を色面順次で照明するようになっている。」(2頁左欄32?同頁右欄24行)

(1-エ)「第3図は同時方式を採用した本発明の銅2実施例に係る硬性電子内視鏡の制御部等の概要を示す説明図である。」(2頁右欄47?49行)

(1-オ)「第4図は本発明の第3実施例に係る硬性電子内視鏡の操作部側を示す要部切欠説明図である。
この実施例は、操作部2の後端部と該後端部に接続されるフレキシブルなケーブル13とを例えば止めリング55により着脱自在に接続している。したがって、操作部2の後部外周とケーブル13の接続部13aの外周には各々雄ねじが形成され、止めリング55の内周にはこれら雄ねじに螺合する雌ねじが形成されている。そして、ケーブル13の接続部13aと操作部2との接続時に操作部2のリレーレンズ8の光軸と一致する接続部13a内の結像位置に枠体11、基板10を介して固体撮像素子9が配設されている。又、操作部2ないし挿入部3内に延設されたライトガイド5と、ケーブル13内のライトガイド5aは分離されており、接続時に端面同士が一致するようになっている。」(3頁左欄37行?右欄11行)

(1-カ)第1図には、操作部2内に固体撮像素子9が設置されていることが記載されている。

上記記載事項(1-ア)?(1-カ)および第1?4図の記載を総合すると、上記刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「接続部13a内に固体撮像素子9が配設され、その内に照明用のライトガイド5aと信号線12とが延設されたフレキシブルなケーブル13が光源装置17と映像信号処理回路18が内蔵された制御装置19に接続されている硬性電子内視鏡。」(以下、「引用発明」という。)

第4 対比・判断
(1)本願発明について
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「硬性電子内視鏡」は、「固体撮像素子9」を用いているので本願発明の 「ビデオ画像システム」に相当することは明らかである。
引用発明の「接続部13a」は、「基板10を介して固体撮像素子9が配設されている」ので本願発明の 「カメラヘッド」に相当する。
引用発明の「制御装置19」は、「映像信号処理回路18が内蔵され」ているので、本願発明の 「カメラ制御ユニット」に相当する。
引用発明の「フレキシブルなケーブル13」は、「制御装置19に接続され」ているので本願発明の「第1のケーブル」に相当する。
引用発明の「照明用のライトガイド5a」は撮像のためのものであることは当然のことであり、「フレキシブルなケーブル13」「内に」「延設されている」から、本願発明の「画像データを発生させるのに用いるため、該カメラヘッドに光を送るための光源ガイド」に相当する。
引用発明の「信号線12」は、「フレキシブルなケーブル13」「内に」「延設されている」おり、他の構成との接続関係からみて、本願発明の「カメラヘッドとカメラ制御ユニットとの間で情報を送るための少なくとも1つのチャンネル」に相当する。
引用発明の「制御装置19」に内蔵された「光源装置17」は、本願補正発明1の「カメラ制御ユニットに接続された光源」と、「光源」という点で共通する。
よって、両者は、
(一致点)
「画像データを発生させるためのカメラヘッド、
カメラ制御ユニット、
光源、
該カメラヘッドを該カメラ制御ユニットに接続するための第1のケーブルからなり、
該第1のケーブルが、カメラヘッドとカメラ制御ユニットとの間で情報を送るための少なくとも1つのチャンネル、および画像データを発生させるのに用いるため、該カメラヘッドに光を送るための光源ガイドを囲み、単一の保護覆い内に有るビデオ画像システム。」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
「光源」が、本願発明では「カメラ制御ユニットに接続され」ているのに対して、引用発明では「制御装置19」に内蔵されている点。

(相違点2)
本願発明では「該少なくとも1つのチャンネルが、2つの電気導体からなり、且つ、該少なくとも1つのチャンネルが、多重化された少なくとも2つのタイプの情報を送る」のに対し、引用発明ではそのような構成を有さない点。

まず、相違点1について検討するに、
「光源」を「カメラ制御ユニット」と別体とするか、「カメラ制御ユニット」に内蔵するかは、作用効果上、何ら格別の差異はなく、当業者が必要に応じて適宜成し得る設計事項にすぎない。
そして、「光源」を「カメラ制御ユニット」と別体とする構成を選択した場合には、「光源」が「カメラ制御ユニットに接続され」ることは当然の構成である(例えば、特開昭58-75525号公報参照。)。
してみると、引用発明において、相違点1における本願発明の構成とすることは、当業者ならば適宜選択し得る設計的事項に過ぎないというべきである。

つぎに、相違点2について検討するに、
例えば、本願の優先日前において頒布された刊行物である特開平9-313434号公報に、「【0017】なお、本実施の形態では、前記電子内視鏡2の先端に設けられたCCD10は、2線読み出しCCDである。」と記載されているように、「信号伝送するために、2つの電気導体を用いる」ことは、内視鏡の信号伝送において、本願優先日前において周知の事項であるといえる。
また、例えば、本願の優先日前において頒布された刊行物である特表平9-501332号公報には、「図9Aにおいて、伝送チャンネル28に対して要求されるワイヤ即ち「回線」の数は、立体内視鏡26と電子プロセッサ・モジュール30との間の信号の伝送時に、デマルチプレクサ152・・・と、マルチプレクサ154・・・とを用いることにより著しく低減することができる。」(第19頁22?26行)と記載され、同じく本願の優先日前において頒布された刊行物である特開昭60-29125号公報には、「・・・最近、内視鏡では少ない信号線を利用して多数の信号を伝送する多重伝送方式が利用されようとしている。」(第2頁右上欄11?14行)と記載されているように、「信号伝達路の数を少なくするために多重にすること」も、信号伝送の技術分野において、本願優先日前において周知の事項であるといえる。
してみると、引用発明において、上記周知の事項を適用することにより、相違点2における本願発明の構成とすることは、何ら困難性が存在せず、当業者が容易に想到し得る事項であるというべきである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知の事項から当業者であれば予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-21 
結審通知日 2009-10-27 
審決日 2009-11-09 
出願番号 特願2002-380974(P2002-380974)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 門田 宏  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 居島 一仁
信田 昌男
発明の名称 内視鏡ビデオ画像システム用の単一化した電気的照射ケーブル  
代理人 斉藤 武彦  

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