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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1214085
審判番号 不服2007-2676  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-22 
確定日 2010-03-24 
事件の表示 特願2004-170839「広域ネットワーク上のハイパーメディアの分散パブリッシングおよびマネージメント用インテグレーティドデベロップメントプラットフォーム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月18日出願公開、特開2004-326819〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯

本願の手続の経緯は次に示すとおりである。

平成16年 6月 9日 特許出願(原出願 特願2000-356620 平成12年11月22日、原々出願 特願平8-529345 平成8年3月21日、パリ優先権主張1995年3月28日 米国)。
平成18年 1月31日 拒絶理由通知(起案日)。
平成18年 8月 7日 手続補正。
平成18年10月16日 拒絶査定(起案日)。
平成19年 1月22日 拒絶査定不服審判請求。
平成19年 2月21日 手続補正。


2. 本願発明

本願の請求項1乃至15に係る発明は、平成19年2月21日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1乃至15に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「 【請求項1】
WAN上に接続された1以上のサーバに記憶された関連ドキュメントのコレクションのパブリッシングおよびマネージングを行う方法であり、
前記WAN上に接続されたクライアントコンピュータにおいて、コレクションに含めるべき前記関連ドキュメントを指定する段階と、
該クライアントコンピュータから対話的なオペレーションに対応する単一のコマンドを発することによって、前記コレクションに含められた、前記サーバに記憶された各ドキュメントに対して一律に前記コマンドに対応するオペレーションを実行する段階、
とを含むことを特徴とする方法。」


3. 引用例

原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前である平成4年9月24日に頒布された刊行物である、特開平4-268932号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

(a) 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、一般的には改良されたデータ処理システムに関し、具体的には多数文書関係内に存在する複数の文書を操作する改良された方法と装置に関する。より具体的には、本発明は、複数のユーザ選択プレファレンス(採択順位)に従って多数文書関係内に存在する複数の文書の操作を制限する方法と装置に関する。
【0002】
【従来の技術】現代の電子化されたオフィスでは、電子文書の電子的保存,探索及び検索を助けるように意図された関係に、電子文書をグループ化している。文書のライブラリの利用は、現代の電子化されたオフィスのこの必要性に合致する一技術を示している。現在のところ、文書ライブラリは、紙文書のマニュアル・ファイリングおよび検索と同等ではあるが煩わしさの少ない機能を提案している。文書の電子的な保存,探索,検索の必要性に合致する一つの従来技術としては、IBMコーポレーションによって販売されているオフィス・システムの一部である文書交換アーキテクチャ(Document Interchange Architecture;DIA)がある。この文書交換アーキテクチャ(DIA)の文書構造は、ライブラリにファイルされた各文書に対して1組の記述子を与えている。これらの記述子は文書プロファイル内に置かれ、そして文書と一緒にファイルされる。文書プロファイルは、文書の内容を識別するパラメータを含んでいる。そのパラメータとは、その下に文書がファイルされている名前,著者,文書の表題,文書が文書ライブラリ内にファイルされた日付などである。
【0003】これらの文書プロファイルはライブラリ内の文書を検索するのに用いることができる。例えば、ユーザは、選択された著者による特定表題について全ての文書の検索要求を指定することができ、あるいは、二つの選択された日付の間にライブラリに受け付けられた全ての文書の検索要求を指定することができる。検索が完了すると、検索に用いられた基準に合致する全ての文書のリストがそのユーザに与えられる。ここで言うところのユーザまたはエンドユーザは、データ処理と情報交換のためにライブラリを利用する、人間,装置,プログラムまたはコンピュータ・システムである。さらに、“文書”という用語は、処理または操作し得るデータのなんらかの集まりを意味している。
【0004】特定の検索基準に基づく文書の受け取りに加えて、DIA文書ライブラリ・サービスは文書間の関係の形成を与える。
【0005】そのような多数文書関係の一例は、ホルダー文書の概念である。ユーザが文書を線形構造かまたは階層構造にグループ化するときに、ホルダー文書が作成される。特定なホルダー内のユーザ特定位置内に一組の文書を置くことによってホルダー文書が構成されるとき、文書は線形構造を採る。ホルダーである文書を組み込み、あるいはより簡単には、自身がホルダーである文書をホルダーである他の文書に入れることによって、文書は階層構造を採ることができる。
【0006】ホルダー内の各文書は、他の文書との関係とは無関係に、記述子,アクセス制御、および文書内容情報を含む個々の文書定義を有している。従って、特定関係内に含まれる一つの文書をアクセスすること、同一の多数文書関係内の他の文書へのアクセスに対しては何も含まない。文書関係オブジェクト(Document Relation Object;DRO)と呼ばれるライブラリ・モデル・オブジェクト(Library Model Object;LMO)を持つDIA文書ライブラリ内の全ての文書は、文書関係を記述するそれらの文書に関連している。従って、ホルダーをアクセスする必要があるときは、ホルダー内の各文書に対する文書関係オブジェクトは、文書間の完全な関係を決定するようにアクセスされねばならない。
【0007】DIAライブラリ構造内で許される多数文書関係の他の例としては、ステープル(staple)関係がある。このステープル関係は、ユーザが二つの文書を互いに結び付けることを可能にする。ステープル関係は、文書間にしっかりと結び合わされた直接の一対一文書関係を与える。さらに、ステープルされた文書を、ホルダー文書内に置くことができる。ホルダー文書について前述された各文書に対する文書関係オブジェクトは、ステープル文書間の関係と、ホルダー文書間の関係とを記述しなければならない。これにより、多数文書関係内の各文書は、言語,文書型式,文字セット,および文書自体の特徴を記述する他のプロファイル情報のようなそれ自身の特定の属性を含んでいる。例えば、多数文書関係内の全ての文書がフランス語で構成されていると、各文書は、文書がフランス語であることを示すプロファイル情報を有している。
【0008】従来技術における機構は、多数文書関係を一つの構成要素として取り扱い、そして、多数文書関係に適用できるユーザ割り当てプレファレンスは、関係文書に全体として割り当てられる。このように、従来技術は、多数文書関係内の各文書が、その文書に単独で適用されるユーザ選択プレファレンスに従って、操作される(すなわち、転送,コピー,消去される)ことを許さない。それ故、多数文書関係内の各文書が、各文書に対するユーザ特定プレファレンスによって制限されるように、操作されることを可能にする方法および装置の必要性は明らかである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】それ故に、本発明の一つの目的は改良されたデータ処理システムを提供することにある。
【0010】本発明の他の目的は、データ処理システム内の多数文書関係内に存在する文書を操作する、改善された方法および装置を提供することにある。
【0011】本発明のさらに他の目的は、複数のユーザ選択プレファレンスに従って、多数文書関係内に存在する文書の操作を制限する、改良された方法および装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的は以下のようにして達成される。本発明の方法と装置は、複数の特定ユーザ・プレファレンスに従って、多数文書関係内の個々の文書の操作を制限することに用いることができる。ユーザ・プレファレンス・オブジェクトは、選択属性を含む、選択文書または全ての文書に対して、複数の特定ユーザ・プレファレンスを格納するために、作成されて利用される。その後、多数文書関係内の文書の、転送,コピー,消去のような、試行される操作は、ユーザ・プレファレンス・オブジェクト内の格納プレファレンスに従って制限される。このように、分散サービスは、選択文書に関連して存在する他の文書のインコンパチブル特性の故に、正常に分散できない選択文書を提供し分散させることができる。」

(b) 「【0013】
【実施例】以下図面を参照すると、特に図1には、本発明の方法および装置を実施するのに使用することのできる分散データ処理システム8が示されている。図によれば、分散データ処理システム8は、ローカル・エリア・ネットワーク(LocalArea Network;LAN)10,32のような複数のネットワークを含むことができ、各ネットワークはそれぞれ複数の独立したコンピュータ12,30を含んでいる。・・・(中略)・・・
【0014】そのような分散データ処理システムでは普通であるが、各独立コンピュータは、記憶装置14および/またはプリンタおよび/または出力装置16と結合することができる。本発明の方法および装置によれば、一個以上のこのような記憶装置14を用いて、分散データ処理システム8内部でユーザによって周期的に操作できる種々の文書を格納することができる。操作は、選択文書に適用できる分散,転送,コピー,消去またはその他の操作を意味している。従来周知のように、分散データ処理システム8内に格納された各文書は、コンピュータまたはワークステーションに関連する記憶装置14内に格納することができる。
【0015】図1によれば、分散データ処理システム8はまた、メインフレーム・コンピュータ18のような、複数のメインフレーム・コンピュータを含むことができ、メインフレーム・コンピュータ18は通信リンク22によってローカル・エリア・ネットワーク(LAN)10と好適に結合することができる。メインフレーム・コンピュータはまた、LAN10に対する遠隔記憶装置として働き、通信コントローラ26および通信リンク34を介してゲートウェイ・サーバ28に結合することのできる記憶装置20に結合することができる。このゲートウェイ・サーバ28は、LAN32をLAN10にリンクする働きをする独立コンピュータまたはインテリジェント・ワークステーション(IWS)とするのが好適である。
【0016】LAN32とLAN10について述べたように、複数のデータ・オブジェクト,データベース,または文書を記憶装置20内に格納し、このように格納されたデータ・オブジェクトおよび文書に対する資源管理プログラムまたはライブラリとして、メインフレーム・コンピュータ18によって制御する。もちろん当業者は、メインフレーム・コンピュータ18をLAN10より地理的に非常に離れた位置に配置でき、同様にLAN10をLAN32よりかなり離れた位置に配置できることがわかる。例えば、LAN32をカリフォルニアに配置し、LAN10をテキサスに配置し、メインフレーム・コンピュータ18をニューヨークに配置することができる。
【0017】上述したことから明らかであるが、分散データ処理システム8の一つの部分内のユーザにとって、データベースをアクセスして、分散データ処理システム8の他の部分への文書または文書グループを分散させるのに、文書または多数文書関係を得るのが多くの場合望ましい。多数文書関係を分散させる従来の機構は、多数文書関係を単一の構成要素として扱うことにより行い、および多数文書関係に全体として現在割り当てられているユーザ割り当てプログラムに従って行っている。従って、もしユーザが多数文書関係に対して変換を禁止することを特定すると、従来技術は、このユーザのプレファレンスを、多数文書関係の全内容に割り当てる。この多数文書関係は、多数文書関係内の多数の文書を自由に変換することができるという事実を考慮することなく、分散されている。従って、複数の文書内に多数文書関係として格納されている個々の文書に、ユーザがプレファレンスを割り当てることを可能にする方法および装置が要求されることは明らかである。」

(c) 「【0029】図3を参照すると、図3には、ホルダー文書の概念を描写する多数文書関係を説明するブロック・ダイアグラムが示されている。文書A56と文書B54とは、ホルダー文書(1)50内に含まれる個々のアイテム(Item)を表している。文書A56はホルダー文書(2)52内に文書C58と共に含まれている。ホルダー文書(1)50とホルダー文書(2)52は個々の構成員ジャケットとすることもできるし、文書A56は構成員の方針を説明した文書とすることもできる。文書A56のただ一回の実コピーが要求され、そのコピーは構成員ジャケットに亘って常に不変である。文書とホルダーとの関係は、文書関係オブジェクト(DRO)に含まれている。各ホルダー内の文書へのアクセスは、ライブラリ・サーバが各文書のDROにアクセスして、関係を決定することを要求する。
【0030】図4を参照すると、図4には、ホルダー概念内の文書の拡張を、ホルダー内に他のホルダーが含まれているように示している。文書A56と文書B54とはホルダー文書(2)52内のアイテムである。ホルダー文書(2)52はそのとき、ホルダー文書(1)50内に置かれている。例えば、ホルダー文書(1)50を意見調査レポートとし、ホルダー文書(2)52をオースチン(Austin)調査レポートとすることができる。文書A56と文書B54とは、オースチン調査レポート内の二つの異なる領域からの調査レポートとすることができる。また、ライブラリ・サーバがこの関係内に示される文書をアクセスする毎に、各アイテムに対する文書関係オブジェクトを調べなければならない。
【0031】図5を参照すると、図5には、一つの文書が他の文書にステープルされた、他の文書関係が示されている。文書(1)60は、文書(3)64にステープルされた文書(2)62にステープルされている。このステープル関係は、ユーザが二つの文書に一緒に結び付けることを可能にする。各文書に対する文書関係オブジェクトは、その関係の現在の状態を含んでいる。
【0032】ステープル関係とホルダー関係との種々の組み合わせの別の例を図6に示す。文書(1)60と文書(2)62とは一緒にステープルすることができ、ホルダー文書(1)50内に文書(4)66と一緒に配置できる。同様に、文書(3)64を文書(2)62にステープルして、ホルダー文書(2)52内に配置することができる。ホルダー文書(2)52内には文書(5)68も含まれている。ホルダー内の各文書は、言語,文書型式,文字型式,文字セット,文書自体の特性を記述する他のプロファイル情報のような文書自身の特定属性を含んでいる。ホルダー内の文書をアクセスするためには、ライブラリ・サーバは各文書のプロファイルを読出し判読して、関係内における全ての文書の属性を決定する。例えば、関係内の全ての文書がフランス語で構成されていると、文書がフランス語であることを示すプロファイル情報を有することになる。」

(d) 「【0036】最後に図10を参照すると、文書交換管理システム内におけるユーザ関係プレファレンス・オブジェクトの利用を説明する論理フローチャートを示している。図示するように、プロセスはブロック72で開始され、このブロック72では分散データ処理ネットワーク内の文書に試みられる操作の開始がなされる。前述したように、“操作”という用語は、選択された文書に関して、試行される分散,転送,コピー,消去、またはその他の作用を意味している。次に、プロセスはブロック74に移行する。このブロック74では、操作が試みられる多数文書関係の一部であるか否かの決定を示している。多数文書関係の一部でなければ、プロセスはブロック96に移行する。このブロック96は、その文書に関係したユーザ・プレファレンスに従う文書の処理を示している。再びブロック74において、操作される文書が多数文書関係の一部である場合には、プロセスはブロック76に移行する。ブロック76は、図9に示すような固有のオブジェクト規則子が存在するか否かの決定を示している。もし存在すれば、プロセスはブロック88に移行し、このブロック88で、多数文書関係内の該当する各文書に対するオブジェクト識別子のロケーションを示している。次に、プロセスはブロック90に移行する。
このブロック90では、操作が試みられる全ての文書が、オブジェクト識別子内にリストされているか否かの決定を示している。リストされていないならば、プロセスはブロック92に移行し、エラーメッセージを返す。この後、プロセスはブロック98に示すように終了する。
【0037】再びブロック90において、操作が試みられる全ての文書がオブジェクト識別子内にリストされている場合には、プロセスはブロック94に移行し、これらの文書に対するオブジェクト規則子内に記述されたユーザ・プレファレンスに従って文書が複数のグループに分けられる。すなわち、特定の動作に対するこれら文書の操作を制限するユーザ・プレファレンスを含む全ての文書は、共通処理のために一緒にグループ化される。その後、ブロック96で、ユーザ・プレファレンスに従って、文書のこれらグループの文書の操作が行われる。このようにして、多数文書関係内に一緒に格納される文書の大グループをサブグループに分け、個々の文書または文書グループに対して記述されるユーザ・プレファレンスに従って操作することができる。再びブロック90を参照すると、操作が試みられる全ての文書がオブジェクト規則子内にリストされていない場合には、図10に示すようにエラーメッセージを返すことに加えて、全多数文書関係に対して記述されたユーザ・プレファレンスに従って、これら文書の操作を行うことができることは当業者には明らかである。」

(e) 「【0041】
【発明の効果】前述したところから当業者には、以下のことが分かる。すなわち、本発明者らは、新規かつ自明でない方法および装置を提供し、これにより、多数文書関係内に存在する文書グループを、全ワーキング・セットに対して記述されたユーザ・プレファレンスのセットに従うよりもむしろ、多数文書関係の個々の文書に関連するユーザ・プレファレンスのセットに従った分散と処理によって、操作することができる。このようにして、多数文書関係内の文書の分散と操作をより一層効率的に行うことができる。」

そして、上記引用例の(a)?(e)の記載事項及び図面からみて、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「ローカル・エリア・ネットワーク(LAN32)、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN10)、及び、通信リンク(22,24,34)からなるネットワークに接続されたメインフレーム・コンピュータ(18)又はコンピュータ(12,30)に記憶された、グループ化された文書の保存・検索・コピー・消去その他の操作を行う方法であり、
前記ワイド・エリア・ネットワーク(WAN)(32,10,22,24,34)に接続されたコンピュータ(12,30)において、グループ化すべき前記文書間のステープル関係やホルダー関係を与える段階と、
該コンピュータ(12,30)から、コピーあるいは消去等の作用を意味する1つの操作を、文書グループに対して発することによって、
前記グループ化された文書に含められた、該コンピュータ(12,30)に記憶された各文書に対して、前記操作に対応するコピーあるいは消去等の作用を実行する段階、
とを含む方法。」


4. 対比

本願発明と引用発明とを比較すると、次のことがいえる。

(1) 上記「3.引用例」の項目の(b)の段落【0016】には、「LAN32をカリフォルニアに配置し、LAN10をテキサスに配置し、メインフレーム・コンピュータ18をニューヨークに配置することができる。」と、記載されているから、引用例における、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN32)、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN10)、及び、通信リンク(22,24,34)からなるネットワークの全体は、広域のネットワーク、すなわちワイド・エリア・ネットワーク(WAN)であると言える。したがって、引用発明における「ローカル・エリア・ネットワーク(LAN32)、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN10)、及び、通信リンク(22,24,34)からなるネットワーク」は、本願発明における「WAN」に相当する。
(2) 本願発明の「1以上のサーバ」の「1以上」とは「1」を含む表現であり、本願発明における「1以上のサーバ」と、引用発明における「メインフレーム・コンピュータ(18)」とは、ネットワークに接続されている1台のコンピュータであるという意味において、一応対応している。
(3) 引用発明における「コンピュータ(12,30)」は、本願発明における「クライアントコンピュータ」に相当する。
(4) 引用発明における「文書」は、本願発明における「ドキュメント」に相当しており、引用発明における「グループ化された文書」は、本願発明における「関連ドキュメントのコレクション」に相当している。
(5) 引用発明における「保存・検索・コピー・消去その他の操作」は、本願発明における「マネージング」に相当している。
(6) 引用発明が、グループ化すべき文書間のステープル関係やホルダー関係を与えていることは、本願発明が、コレクションに含めるべき関連ドキュメントを指定していることに相当している。
(7) 引用発明における「コピーあるいは消去等の作用を意味する1つの操作」は、本願発明における「コマンド」に相当しており、引用発明における「操作に対応するコピーあるいは消去等の作用」は、本願発明における「コマンドに対応するオペレーション」に相当している。
(8) 引用発明が、コピーあるいは消去等の作用を意味する1つの操作を、文書グループに対して発していることは、本願発明が、単一のコマンドを発していることに相当している。

してみると、本願発明と引用発明とは次の点で一致する。

<一致点>
「 WAN上に接続された複数のコンピュータに記憶された関連ドキュメントのコレクションのマネージングを行う方法であり、
前記WAN上に接続されたクライアントコンピュータにおいて、コレクションに含めるべき前記関連ドキュメントを指定する段階と、
該クライアントコンピュータから、単一のコマンドを発することによって、前記コレクションに含められた、各ドキュメントに対して前記コマンドに対応するオペレーションを実行する段階、
とを含む方法。」

一方で、本願発明と引用発明とは次の点で相違する。

<相違点1>
本願発明は、複数のコンピュータを1以上のサーバとクライアントコンピュータで構成し、サーバに記憶されたドキュメントを対象として、クライアントコンピュータからドキュメントを指定し、コマンドを発してオペレーションを実行するものであるのに対し、引用発明は、コンピュータ(12,30)に記憶された文書を対象として、そのコンピュータ(12,30)で文書を指定し、操作を発してコピーあるいは消去等を実行するものである点。

<相違点2>
本願発明は、ドキュメントのパブリッシングおよびマネージングに関するものであるのに対し、引用発明は、グループ化された文書の保存・検索・コピー・消去その他の操作に関するものであって、これらの操作が「パブリッシングおよびマネージング」のための操作であることが、引用例に記載されてはいない点。

<相違点3>
本願発明は、対話的なオペレーションに対応してコマンドを発するものであるのに対し、引用発明はコマンドを発するものではあるものの、対話的なオペレーションに対応してコマンドを発することが、引用例に記載されてはいない点。

<相違点4>
本願発明は、コマンドに対応するオペレーションを各ドキュメントに対して一律に実行するものであるのに対し、引用発明はコマンドに対応するオペレーションを各ドキュメントに対して実行するものではあるものの、各ドキュメントに対して一律に実行するものであることが、引用例に記載されてはいない点。


5. 判断

上記相違点について検討する。

<相違点1について>
そもそも引用例のものもそうであるように、ネットワークに接続された複数のコンピュータからなるクライアント・サーバシステム上で文書を管理することは本願優先日前の周知技術であったから、引用発明のコンピュータ(12,30)がスタンドアロン環境で行っているファイル操作を、ネットワークを介したクライアント・サーバシステムに適用することに技術的な困難性は認められない。
また、引用例のものは、ネットワークに接続された複数のコンピュータ上で文書を管理するものであるから、あるコンピュータに記憶された文書を対象として、ネットワークを介して別のコンピュータから文書を指定し、操作を発してコピーあるいは消去等を実行することも、想定しているものであるといえる。
してみると、引用発明において、複数のコンピュータを1以上のサーバとクライアントコンピュータで構成し、メインフレーム・コンピュータ(18)に記憶された文書を対象として、コンピュータ(12,30)から文書を指定し、操作を発してコピーあるいは消去等を実行すること、すなわち本願発明にいう、サーバに記憶されたドキュメントを対象として、クライアントコンピュータからドキュメントを指定し、コマンドを発してオペレーションを実行することは、当業者が容易になし得たことである。

<相違点2について>
引用発明の文書の保存・検索・コピー・消去は、文書のマネージング(管理)のための操作である。
また、サーバコンピュータを用いて文書をパブリッシング(出版)に供することそれ自体は、文書を扱うコンピュータの分野においては、周知技術であり、引用例のものは、コンピュータを用いて文書の保存・検索を行うものであって、しかも、前記「3.引用例」の項目の(b)の段落【0014】に示されているように、プリンタ(16)も備えているから、引用例のもので保存・検索した文書を、コンピュータを用いてプリンタ(16)での印刷・出版に供すること、すなわち、引用発明をパブリッシングおよびマネージングに用いることは、当業者が容易になし得たことである。

<相違点3について>
本願発明にいう、対話的なオペレーションに対応してコマンドを発するとは、ユーザがコンピュータに表示される画面を見ながら、画面中のメニューを選択することによって所望のコマンドを発することを意味している。(この点は、平成18年8月7日付け意見書の「理由2」の項目の(1)にて請求人も認めている。)
また、対話的なオペレーションに対応してコマンドを発するユーザインターフェイスは、本願優先日前の周知技術であり(例えば、原審の拒絶理由通知で引用文献4として挙げられた特開平4-318638号公報の段落【0015】、【0019】、【0024】?【0025】にも示されており、また、アップルのコンピュータ、マッキントッシュにも用いられていた。)、該インターフェイスを印刷・出版等文書を扱う技術分野に採用することの利便性は明らかであるから、引用発明において、対話的なオペレーションに対応してコマンドを発するように構成することは、当業者が容易になし得たことである。

<相違点4について>
引用例のものは、前記「3.引用例」の項目の(d)の段落【0037】に、「文書は、共通処理のために一緒にグループ化される。」、「文書のこれらグループ文書の操作が行われる。」、「文書グループに対して・・・(中略)・・・操作することができる。」と記載されているように、同じ操作が行われるべき対象である複数の文書を共通処理のためにグループ化し、グループ化された文書グループに対して操作を行うものである。
してみると、引用発明において、グループ化された文書グループに対して行うべき共通処理のために、その共通処理がどのような処理であるのかを指定するある一つの操作を行うことによって、グループ化された文書に含められた各文書に対して、前記操作に対応する共通処理を実行するという意味で、各文書に対して一律に処理を実行すること、すなわち、本願発明にいう、コマンドに対応するオペレーションを各ドキュメントに対して一律に実行することは、当業者が容易になし得たことである。

(なお、請求人は、意見書及び審判請求書の請求の理由において、複数のドキュメントに対して一律にコマンドに対応するオペレーションを実行することを、ネットワーク環境に適用することが困難である旨を主張するが、請求人のこの主張は、本願の【図7】、段落【0037】に示されるように、複数あるドキュメントのそれぞれが、ワイド・エリア・ネットワーク(WAN)のいずれかの位置やユーザの局部記憶装置に分散して存在する場合があることを前提とした主張である。本願発明は、関連ドキュメントのコレクションに含まれる全てのドキュメントがサーバに記憶されるものであり、請求人の該主張は、特許請求の範囲には記載されていない要件を前提としたものであるというほかない。)

また、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測することができた程度のものであって、格別のものとは認められない。


6. むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-21 
結審通知日 2009-10-27 
審決日 2009-11-09 
出願番号 特願2004-170839(P2004-170839)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 浜岸 広明佐藤 匡  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 飯田 清司
真木 健彦
発明の名称 広域ネットワーク上のハイパーメディアの分散パブリッシングおよびマネージメント用インテグレーティドデベロップメントプラットフォーム  
代理人 柳田 征史  
代理人 佐久間 剛  

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