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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1214205
審判番号 不服2006-17678  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-11 
確定日 2010-03-26 
事件の表示 特願2005-376646「回転ペダル付椅子」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月 8日出願公開、特開2007- 54598〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年(2005年)12月27日(国内優先権主張、平成17年7月29日)の出願(特願2005-376646号)であって、平成18年7月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月11日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?14に係る発明は、平成18年6月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1?14に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「脚部と座部と背もたれ部とを有し、該座部が前端側の左右両側にて切り欠かれている椅子部と、
該椅子部の前方にて床面に載置されて該座部に着座した着座者が両足先を載置できるように両足の下方に配置された左右一対の回転可能なペダルを有する回転ペダル部と、該一対のペダルを1?10回/分の低速度で回転させる回転駆動部とからなるペダル装置とにより構成されたことを特徴とする回転ペダル付椅子。」

第3 引用例
1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平9-225061号公報(以下、「引用例」という)には、次の事項が記載されている。(下記「2 引用例に記載された発明の認定」において直接引用した箇所に下線を付した。)

「【0013】本発明の実施形態の身体の鍛練装置は、図1?図4に示すように、手をかけて回転させるハンドル1と、腰をかけるサドル2と、足をかけて回転させるペダル3と、ハンドル1およびペダル3に負荷を加えるモータ4とから構成している。ハンドル1は、回転軸5にアーム6を介して取り付け、回転軸5を中心にして正逆回転動可能に形成している。回転軸5の両端にそれぞれ連結部材22を取り付け、この連結部材22の取付片22aに、アーム6を半径方向の反対側に伸ばして取り付け、ハンドル部全体を階段形に形成する。また、回転軸5には、ハンドル1に回転負荷を伝達するプーリ7を取り付け、ペダル3の回転軸8に設けた中継プーリ9とベルト10で連結している。そして、ハンドル1は、ハンドル部ケース13から露出させて正逆回転動可能に、このケース13又はフレームで支持する。ハンドル部ケース13は、スタンド11の上部に設けた下部ケース部12の前方から上方へ突出して形成し、その内部にプーリ、ベルト等の伝動手段、回転軸5および連結部材22等を収容する。
【0014】また、ハンドル1より後方の下方にはサドル2を配置する。サドル2は、下部ケース部12の後方部に突出して形成したサドル取付部ケース14から露出させて、このケース14または内部のフレームに取り付ける。このサドル2の高低及び前後位置は、使用者の身長、器具の使用目的によって適宜に変更可能とする。また、サドル2の後ろ側には、背凭れ15をサドル取付部ケース14から上方へ突出させて設け、背凭れ15の上部にヘッドレスト16を設けている。そして、サドル2に座り、ハンドル1を握るとか手を掛けてハンドル1を回転させて、手の運動をして腕を鍛えようにしている。ハンドル部ケース13の根元の下部ケース部12内に、ペダル3の回転軸8の部分を正逆回転動可能に設けている。
【0015】ペダル3は、回転軸8の両端にそれぞれペダル軸連結部材23を取り付け、この連結部材23の連結片23aに足掛け取付アーム24を取付け、このアーム24に取り付けて形成し、サドル部全体を階段形に構成している。回転軸8には、ハンドル1の軸5に設けたプーリ7と連結する中継プーリ9とプーリ17とを取り付けている。プーリ17とモータ4とをベルト18aでプーリ19を介して連結し、ペダル3にかける負荷をモータ4から受けるようにしている。また、中継プーリ9とモータ4とは、駆動プーリ20と中継プーリ9に懸けたベルト18bで連結している。そして、モータ4で負荷を発生させ、プーリ19、20を介してペダル3およびハンドル1へ、この負荷を伝達する。
【0016】ハンドル1およびペダル3にかける負荷を発生するモータ4は、回転数可変モータから回転数を制御することにより調節する型式で構成し、サドル取付部ケース14の下方の下部ケース部12内に設ける。そして、モータ4の出力軸にプーリ19,20を取り付け、プーリ19、20とプーリ17,9との間にそれぞれベルト18a,18bを懸ける。このモータ4の負荷の制御は、このモータ4を制御するスイッチ類を設けた制御パネル21から行うようにしている。そして、制御パネル21は、ハンドル部ケース13の上部に設け、このパネル21の表示を見ながら鍛練装置の操作ができるようにしている。なお、この制御パネル21のスイッチ類は、ハンドル部ケース13の側面に設けた構成としてもよい。
【0017】モータ4の負荷を伝達するプーリ7,17,19,20は、摩擦を小さく形成し、ベルト10,18a,18bとの間で所定の負荷以上ではスリップするように構成する。そして、負荷が所定の値より大きくなった場合、スリップさせて、モータ4の動力の伝動を所定の値以下に維持する。すなわち、モータ4の負荷を所要値に設定して運転すると、プーリ19,20によりベルト18a,18bが引っ張られて動き、よってプーリ17,9が回転する。プーリ17は回転軸8に取り付けているので、これらは一体に回転する。すなわち、回転軸8の両端に取り付けた軸連結部材23、連結片23a、足掛け取付アーム24を介して、ペダル3が回転軸8を中心として回転する。ここで、ペダル3に足を掛けてこぐ運動をする場合、モータ4からプーリ17に加わる負荷に逆らって反対方向に力を加えなければ、回転させることができない。このモータ4の駆動力を強くすると、負荷を大きくすることができる。逆に、駆動力を弱くすると、負荷を小さくすることができる。モータ4の負荷の調節は、モータの回転数で調節するので簡単にできる。しかもこの調節を、ハンドル部ケース13の上部に設けた制御パネル21の負荷調節ダイヤル30で行うので、確認しながら容易に調節することができる。制御パネル21には、図4に示すように、その他にメインスイッチ31、電源表示灯32、運動積算計33,34等を設けている。
【0018】上述のようにハンドル1は、回転軸5、アーム6、連結部材22、取付片22aで階段形に形成され、モータ4とプーリ20,ベルト18b,プーリ9,ベルト10,プーリ7、回転軸5を介して連結される。モータ4を運転して負荷を加えると、ハンドル1は回転する。このハンドル1を握り、モータ4で駆動される方向と同一方向に回転させる場合、手に加える力はモータ4の負荷より小さくてよく、モータ4の負荷の範囲内の力を加えることができる。一方、モータ4で駆動される方向と逆方向に回転させる場合、手に加える力はモータ4の負荷より大きくしなければならず、大きい負荷で運動したいときに使用する。
【0019】また、上述のようにペダル3は、回転軸8と、軸連結部材23、連結片23a、足掛け取付アーム24で階段形に形成し、プーリ19,ベルト18a,プーリ17、回転軸5を介してモータ4と連結される。モータ4を運転して負荷を加えると、ペダル3およびハンドル1は回転する。このペダル3をモータ4で駆動される方向と同一方向に回転させる場合、ペダル3にかけた足に加える力はモータ4の負荷より小さくてよく、モータ4の負荷の範囲内の弱い力を加えることができる。一方、モータ4で駆動される方向と逆方向に回転させる場合、足に加える力はモータ4の負荷より大きくしなければならず、大きい負荷で運動したいときに使用することができる。
【0020】以下、前記身体の鍛練装置の操作を説明する。前記身体の鍛練装置を通常の健常者の力より弱い力が必要なリハビリ等に使用する場合、前述から明らかなように、先ず、モータ4の負荷を弱い範囲の所要の数値に設定する。次いでサドル2に腰をかけ、足をペダル3にかけ、片手でハンドル1を持ち、スイッチ31をONしモータ4の運転を開始する。そして、順回転方向にハンドル1を回転させ、ペダル3を足でこいで順回転方向に回転させる。この運動で、手または足の何れかを休む場合には、手又は足を外し、空回りさせれば良い。すなわち、ハンドル1とペタル3をモータ4で駆動される方向と同一方向にそれぞれ回転させ、あるいは逆方向に回転させることで、身体の鍛練ができる。」

【図1】には、装置の概略構成を示す斜視図が記載されている。

【図5】の記載から、本装置は、リハビリにも用いられること、そして、「運動なし」の状態より弱い負荷の場合をリハビリ用とし、「運動なし」の状態より強い負荷の場合を各種スポーツ用としていることが読み取られる。

2 引用例に記載された発明の認定
上記記載から、引用例には、
「手をかけて回転させるハンドル1と、腰をかけるサドル2と、足をかけて回転させるペダル3と、ハンドル1およびペダル3に負荷を加えるモータ4とから構成され、
ハンドル1より後方の下方にはサドル2を配置し、サドル2は、下部ケース部12の後方部に突出して形成したサドル取付部ケース14から露出させて、このケース14または内部のフレームに取り付け、このサドル2の高低及び前後位置は、使用者の身長、器具の使用目的によって適宜に変更可能とし、
サドル2の後ろ側には、背凭れ15をサドル取付部ケース14から上方へ突出させて設け、
ハンドル部ケース13の根元の下部ケース部12内に、ペダル3の回転軸8の部分を正逆回転動可能に設け、
ペダル3は、回転軸8の両端にそれぞれペダル軸連結部材23を取り付け、この連結部材23の連結片23aに足掛け取付アーム24を取付け、このアーム24に取り付けて形成し、
ハンドル1およびペダル3にかける負荷を発生するモータ4は、回転数可変モータから回転数を制御することにより調節する型式で構成し、
モータ4の負荷の調節は、モータの回転数で調節し、
「運動なし」の状態より弱い負荷とすることによりリハビリにも用いられる装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

第4 対比
1 引用発明と本願発明とを対比する。

引用発明の「サドル2」が本願発明の「座部」に相当する。そして、引用例の【図1】の記載から、サドル2の形状が、前端側の左右両側が切り欠かれた形状が推測されること、及び、サドル(座部)の形状として、前端側の左右両側が切り欠かれた形状は、自転車において通常に用いられている周知の形状であることにことにかんがみれば、引用発明のサドル2は、「前端側の左右両側にて切り欠かれている」ものであるといえる。
引用発明のサドル2は「下部ケース部12の後方部に突出して形成したサドル取付部ケース14から露出させて、このケース14または内部のフレームに取り付け」られるものであるから、引用発明は、サドル2を支持する、本願発明の「脚部」に相当する部材を有することは明らかである。
引用発明の「背凭れ15」が本願発明の「背もたれ部」に相当する。
そして、引用発明のサドル2、サドル2の支持部、背凭れ15が、本願発明の「椅子部」に相当する部分を構成していることは明らかであるから、引用発明の上記「サドル2、サドル2の支持部、背凭れ15」が、本願発明の「脚部と座部と背もたれ部とを有し、該座部が前端側の左右両側にて切り欠かれている椅子部」に相当する。

引用発明の「ハンドル1より後方の下方にはサドル2を配置」していること、「このサドル2の高低及び前後位置は、使用者の身長、器具の使用目的によって適宜に変更可能」としていること、及び、「ハンドル部ケース13の根元の下部ケース部12内に、ペダル3の回転軸8の部分を正逆回転動可能に設け」ていることが、本願発明において、ペダルが「椅子部の前方にて床面に載置されて該座部に着座した着座者が両足先を載置できるように両足の下方に配置された」ことに相当する。なお、この点は、引用例の【図1】の記載を見れば明らかである。

引用発明の「ペダル3の回転軸8の部分を正逆回転動可能に設け、ペダル3は、回転軸8の両端にそれぞれペダル軸連結部材23を取り付け」たことが、本願発明の「左右一対の回転可能なペダルを有する回転ペダル部」を備えたことに相当する。なお、この点は、引用例の【図1】の記載を見れば明らかである。

引用発明の「ハンドル1およびペダル3にかける負荷を発生するモータ4は、回転数可変モータから回転数を制御することにより調節する型式で構成」していることと、本願発明の「一対のペダルを1?10回/分の低速度で回転させる回転駆動部」を備えることとは、「一対のペダルを所定の回転数で回転させる回転駆動部」を備えることで一致している。

引用発明の「サドル2」「足をかけて回転させるペダル3」を備えた「装置」が、本願発明の「回転ペダル付椅子」に相当する。

2 一致点
よって、本願発明と引用発明は、
「脚部と座部と背もたれ部とを有し、該座部が前端側の左右両側にて切り欠かれている椅子部と、
該椅子部の前方にて床面に載置されて該座部に着座した着座者が両足先を載置できるように両足の下方に配置された左右一対の回転可能なペダルを有する回転ペダル部と、該一対のペダルを所定の回転数で回転させる回転駆動部とからなるペダル装置とにより構成された回転ペダル付椅子。」の発明である点で一致し、次の点で相違する。

3 相違点
回転駆動部によって回転されるペダルの回転数が、本願発明においては「1?10回/分の低速度」であるのに対し、引用発明においては、「運動なし」の状態よりも弱い負荷とすることによりリハビリ用として用いることが可能であるものの、その場合の具体的回転数についての限定がなされていない点。

第5 当審の判断
1 上記各相違点について検討する。
引用発明は、「モータ4の負荷の調節は、モータの回転数で調節」するものであり、また、「「運動なし」の状態よりも弱い負荷とすることによりリハビリ用として用いる」ものであることを勘案すれば、引用発明は、きわめて小さな負荷、すなわち、きわめて小さな回転数でも使用するものであることは、技術常識から考えて当然の事項である。
そして、上記「きわめて小さな回転数」として「1?10回/分」を採用することは、該数値範囲の上限及び下限に臨界値的意義が認められないことにかんがみれば、当業者が容易に想到し得たことである。

2 本願発明が奏する作用効果
そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明から、当業者が予測し得る程度のものである。

なお、請求人は、平成18年8月29日付けで手続補正された審判請求書において、
「本願請求項1の発明においては、回転駆動部の駆動により左右一対のペダルを1?10回/分の低速度で回転させるものであり、椅子部の座部に腰掛けた着座者が、両足を左右一対のペダルに載せることにより、自らペダルを漕ぐのではなくペダルの回転に追従して自動的に1?10回/分の低速度でほとんど意識しないでペダルを漕ぐ状態にさせられるのである。」と記載し、本願請求項1の発明においては、「自らペダルを漕ぐのではなくペダルの回転に追従して」用いることを主張している。
しかしながら、第1に、上記の「自らペダルを漕ぐのではなくペダルの回転に追従して」用いることは、本願の請求項1に特定されている事項ではなく、上記主張は請求項の記載に基づいた主張ではないから、採用できない。
また、第2に、引用発明においても、どのように引用発明の装置を用いるかは装置を使用する目的に応じて当業者が適宜設定し得ることであるから、「自らペダルを漕ぐのではなくペダルの回転に追従して」用いることは、当業者が容易に想到し得る事項に過ぎないことである。

3 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上より、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-08 
結審通知日 2009-04-14 
審決日 2009-04-27 
出願番号 特願2005-376646(P2005-376646)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 森林 克郎
越河 勉
発明の名称 回転ペダル付椅子  
代理人 渡邊 功二  
代理人 渡邊 功二  

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