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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12N |
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管理番号 | 1214215 |
審判番号 | 不服2006-19061 |
総通号数 | 125 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-08-31 |
確定日 | 2010-03-29 |
事件の表示 | 特願2000-527632「新規なステロイド活性化核受容体とその利用法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月15日国際公開、WO99/35246、平成16年 2月19日国内公表、特表2004-504801〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.出願の経緯及び本願発明 本願は、本願は、平成11年1月8日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年1月9日 米国)とする国際出願であって、その請求項1に係る発明は、平成21年10月7日付手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「以下の(1)または(2)の受容体ポリペプチド: (1)配列番号1に示されたヌクレオチド配列にコードされたポリペプチド;または (2)(1)のポリペプチドと95%以上のアミノ酸相同性をもつポリペプチド; であって、ステロイド/甲状腺ホルモン受容体スーパーファミリーの一員であり、さらに レチノイドX受容体(RXR)と共にヘテロダイマーを形成することであって、当該ヘテロダイマーは、3から6個までのヌクレオチドのスペーサーによって分離される少なくとも2つの半分部位RGBNNMを含む、P450遺伝子中に存在する直接あるいは反転した反復反応因子に結合し、各当該半分部位は別個に、AGGTCAまたはAGTTCAから選択され、 異化酵素、ステロイド受容体の作動薬および拮抗薬を誘導する化合物、および生物学的活性を有する食餌化合物を少なくとも含む各種の天然型および合成型ステロイドホルモンに反応して、チトクロームP450反応因子の調節下の遺伝子の転写を活性化すること、および 肝臓および腸において検出可能な程度で発現されること、 を特徴とする、上記ポリペプチド。」(以下、「本願発明」という。) 2.優先権主張について 本願は、平成11年1月8日を国際出願日とする国際出願であって、1998年1月9日付米国出願09/005,286号明細書(以下、「優先権明細書」という。)を基礎として、パリ条約による優先権主張を伴うものである。 一方、パリ条約に基づく優先権の利益を享受できるためには、その優先権明細書に同一の発明が記載されていたことが必要であり、以下、この点について検討する。 (1)優先権明細書の記載 優先権明細書には、ヒトゲノムライブラリーから、アフリカツメガエル安息香酸X受容体(BXR)の全長のcDNAとハイブリダイズするフラグメントを単離し、これをもとに、ヒト肝臓cDNAライブラリーからBXRのヒトホモログであるSXRと名付けたヒト核内受容体遺伝子をクローニングしたことが記載され、明細書の配列表の配列番号1には、2068塩基からなるSXR遺伝子の全長のヌクレオチド配列が記載され、配列番号2には、配列番号1のヌクレオチド番号493?495を開始コドンとし、ヌクレオチド番号1884まででコードされる464アミノ酸からなる推定アミノ酸配列が記載され、図面第1図には、464アミノ酸のうちDNA結合領域は71?137番、リガンド結合領域が267?464番のアミノ酸位置であることが示されている。 しかしながら、ヌクレオチド番号493から始まる開始コドン以外にも、開始コドンとなる可能性のあるものがあることは、記載も示唆もされていない。 (2)本願発明について 本願発明は、(1)配列番号1に示されたヌクレオチド配列にコードされたポリペプチドの受容体ポリペプチド、または(2)(1)のポリペプチドと95%以上のアミノ酸相同性をもつポリペプチドのSXR受容体ポリペプチド、に係るものであるといえる。 一方、本願明細書の配列表の配列番号1には、優先権明細書の配列番号1と同一の2068塩基からなるヌクレオチド配列が記載されているのに対して、配列番号2の、そのヌクレオチド配列にコードされた(1)の受容体ポリペプチドとしては、優先権明細書に記載されたものと異なるヌクレオチド番号583?585を開始コドンとし、ヌクレオチド番号1884まででコードされる434アミノ酸からなるポリペプチドが示されており、本願明細書の記載によれば、本願請求項1に記載された「配列番号1に示されたヌクレオチド配列にコードされたポリペプチド」とは、この全長434アミノ酸からなるポリペプチドを意味するものと認められる。そして、このポリペプチドは、優先権明細書に記載された464アミノ酸からなるポリペプチドのN末端の30アミノ酸が欠失したものに相当し、この点で優先権明細書に記載されたポリペプチドと異なっている。 さらに、本願明細書を精査しても、配列番号1に示されたヌクレオチド配列にコードされたポリペプチドとしては、配列番号2として記載された434アミノ酸からなるポリペプチドしか記載されておらず、N末端にさらに30アミノ酸が付加されたペプチドについては、記載も示唆もされていない。 (3)優先権の利益の享受について 上記(1)で述べたように、優先権明細書には、開始コドンがヌクレオチド番号583?585の、推定アミノ酸配列が434アミノ酸からなるポリペプチドが存在することは、記載も示唆もされていない。 これに対して、本願明細書中には上記(2)で述べたように、配列番号1に示されたヌクレオチド配列にコードされたポリペプチドとして、434アミノ酸からなる配列番号2のものしか記載されておらず、配列番号1に示されたヌクレオチド配列にコードされたポリペプチドとは、434アミノ酸からなる配列番号2のものであり、それ以外のものは、本願明細書の記載及び本願出願時の技術常識を考慮しても、記載も示唆もされていない。 即ち、本願出願時の明細書の、配列番号1のヌクレオチド番号583?1884のヌクレオチド配列にコードされる434アミノ酸からなるポリペプチドについては、優先権明細書には記載されておらず、434アミノ酸からなるポリペプチドの記載がなされたのは本願の出願時であり、そのポリペプチドを技術的特徴とする発明は、優先権明細書には開示されていない。 したがって、ポリペプチドという化学物質に係る本願発明の、(1)配列番号1に示されたヌクレオチド配列にコードされたポリペプチドの受容体ポリペプチド、または(2)(1)のポリペプチドと95%以上のアミノ酸相同性をもつポリペプチドの受容体ポリペプチドは、いずれも優先権明細書に開示されていないので、本願発明は優先権の利益は享受できず、本願発明については、出願日である平成11年1月8日が新規性、進歩性の判断の基準日となる。 (4)審判請求人の主張 審判請求人は、平成21年10月7日付の意見書において、 「両出願において、明細書等に記載されたペプチドは、あくまでも、特定されたcDNAから推定されたものであり、配列番号1のヌクレオチド配列にコードされるペプチドである点では、両出願の明細書等の記載についても実質的に同一のペプチドであります。 以上に説明したように、優先権出願のペプチドと本願出願のペプチドは、両出願の明細書等の記載から明らかなように、同一のものであります。即ち、本願発明は、優先権出願の出願書類全体に記載されたものであると信じます。」と主張している。 しかしながら、本願発明はヌクレオチドに係るものではなく、ポリペプチドに係るものであり、本願発明のポリペプチドは、優先権明細書に記載されたポリペプチドとはそのアミノ酸配列が異なる異なる物質であって、優先権明細書に記載されていないことは明らかであるから、請求人の上記主張は採用できない。 3.引用例 当審の拒絶理由で引用文献として引用された、本願の出願日前の1998年に頒布された刊行物であるGenes Dev.(1998)Vol.12,No.20,p.3195-3205(以下、「引用例」という。)は、本願の発明者らが著者である「SXR、新規ステロイド/生体異物核内受容体」という表題の学術文献であって、第3196頁左欄下から第9行?同下から第4行には、「SXRは、アフリカツメガエル安息香酸X受容体(BXR)(Blumberg et al.1998)の可能性のあるヒト類似物を特定するスクリーニングにおいて単離された。そのcDNAは、434アミノ酸(図1A)からなる推定タンパク質をコードし、そのタンパク質は、BXRと、DNA結合領域において73%の同一性、リガンド結合領域において43%の同一性を示す(図1B)。」と記載され、第3197頁の図1Aには、SXRの2068塩基からなる全長のヌイクレオチド配列とそのヌクレオチド番号538?1884の核酸によってコードされる434アミノ酸からなる推定アミノ酸配列が記載されている。 4.対比・判断 そこで、本願発明と引用例に記載された事項を比較する。 引用例の図1Aに記載された434アミノ酸からなる受容体ポリペプチドは、227番目のアミノ酸がThrであるのに対して、本願発明の配列番号1に示されたヌクレオチド配列にコードされるポリペプチドの227番目のアミノ酸は特定されていない(Xaa)点以外は、そのアミノ酸配列が本願発明の434アミノ酸からなるポリペプチドと一致しており、両者は、配列番号1に示されたヌクレオチド配列にコードされたポリペプチドの受容体ポリペプチドである点で共通し、あるいは少なくとも、そのポリペプチドと95%以上のアミノ酸相同性をもつポリペプチドの受容体ポリペプチドである点で一致し、両者には何ら相違点は見出せない。 したがって、本願発明は、引用例に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-10-27 |
結審通知日 | 2009-10-30 |
審決日 | 2009-11-13 |
出願番号 | 特願2000-527632(P2000-527632) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(C12N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼ 美葉子 |
特許庁審判長 |
鈴木 恵理子 |
特許庁審判官 |
上條 肇 鵜飼 健 |
発明の名称 | 新規なステロイド活性化核受容体とその利用法 |
代理人 | 池田 幸弘 |
代理人 | 長沼 暉夫 |
代理人 | 浅村 皓 |
代理人 | 浅村 肇 |