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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1214277
審判番号 不服2007-30920  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-15 
確定日 2010-04-02 
事件の表示 特願2002- 99621「有機ELアレイ露光ヘッド及びそれを用いた画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月14日出願公開、特開2003-291406〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」という。)は、平成14年4月2日の出願であって、平成19年3月12日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月25日付けで手続補正がなされたが、同年10月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月15日に本件審判が請求されるとともに、同年12月17日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成21年11月9日付けで拒絶の理由を通知したところ、同年12月4日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成21年12月4日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 少なくとも1列に配列された有機EL素子のアレイを備え、前記有機EL素子のアレイの発光側に、各有機EL素子の発光部にマイクロレンズアレイが配されており、前記マイクロレンズアレイは透明部材の発光光の射出側にマイクロレンズがアレイ状に配されてなるものであり、前記マイクロレンズアレイの前記発光光の入射側に、各有機EL素子の発光部を囲む円形のV溝状の溝が設けられ、その溝内に反射層が配置されており、前記溝内のV溝状の反射層の斜面が集光性の曲面からなり、前記マイクロレンズアレイと前記溝とが一体に構成されていることを特徴とする有機ELアレイ露光ヘッド。」

3 刊行物
(1)当審において平成21年11月9日付けで通知された拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-78115号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真式光プリンタ、デジタル複写機、ファクシミリ等の光書込みユニットやスキャナ等の光読取りユニットに用いられるLEDアレイ、ELアレイ等の微小光源アレイを光源とする光学装置に関する。」
イ 「【0015】本実施の形態のLEDアレイヘッド2は、図1(f)に示すように、発光素子としての複数のLED4が1列に配列されたLEDアレイ(発光素子アレイ)5をベースとして形成されたもので、このLEDアレイ5上には狭化光学系6を構成する反射ミラー7が各LED4毎に個別に形成されている。
【0016】ここで、このような狭化光学系6はLEDアレイ5上に集積化形成されるものであり、その製造方法を図1の工程順に示す縦断側面図を参照して説明する。まず、図1(a)に示すような幅10μmのLED4が1列に配列されたLEDアレイ5の基板8に、ミラー構造を形成するためのポリイミド9を25μm厚で塗布する(図1(b))。次いで、このポリイミド9をLED4の位置に対応させてエッチングでミラー構造10となる円錐台形状の開口部を形成する(図1(c))。この際、円錐台形状のミラー構造10のLED側(底面側)直径は10μm、射出側直径は26μmで径大となるように設定した。この上、全面にミラー反射面を形成するアルミニウム反射膜11を成膜し(図1(d))、LED4上面のアルミニウム反射膜11のみを除去することで、円錐台形状の反射ミラー7が形成される(図1(e))。即ち、反射ミラー7はLED4の放射側周囲を取り囲む形状に形成される。最後に、アルミニウム保護膜と反射防止膜とを兼ねたSiO2 膜12を全面的に成膜することにより、LEDアレイヘッド2が完成する。」
ウ 「【0020】本発明の第二の実施の形態を図3及び図4に基づいて説明する。前記実施の形態で示した部分と同一部分は同一符号を用いて示し、説明も省略する。本実施の形態では、LED4毎の狭化光学系21が反射ミラー7と集光レンズ22とにより形成されている。この集光レンズ22も反射ミラー7と同様にLEDアレイ5上に集積化形成されている。
【0021】そこで、本実施の形態のLEDアレイヘッド23の製造方法を工程順に示す図3の縦断側面図を参照して説明する。まず、図1(a)?(e)に示した工程に従い、反射ミラー7を有するLEDアレイヘッド構造を作製する(図3(a))。この際、LED4の直径は10μm、反射ミラー7における円錐台形状のLED4側の直径は10μm、射出側の直径は36μmとした。即ち、本実施の形態では集光レンズ22を形成するため、第一の実施の形態の反射ミラー7とは寸法が異なっている。次に、全面的に透明樹脂24を膜厚75μm程度に塗布する(図3(b))。この透明樹脂24の屈折率は1.42である。この後、ドライエッチング法を用いて透明樹脂24のLED4に対応する部分に集光レンズ22を形成する(図3(c))。この集光レンズ22の形状は双曲面形状をなす非球面レンズとされ、レンズ直径は40μm、頂点の曲率半径は25μm、円錐係数は-1.2934である。最後に、Cr遮光膜25を集光レンズ22以外の部分に形成する(図3(d))ことにより、LEDアレイヘッド23が完成する。
【0022】このようなLEDアレイヘッド23を用いた場合、図4に示すように、LED4から放射された光の一部は直接光L3 としてそのまま結像光学系1に入射され、他の一部は周りに位置する反射ミラー7で反射されて間接光L4 として結像光学系1に入射することになる。結像光学系1の視野内に入射した光は、結像光学系1の集光作用を受けて感光面3に結像される。この際、反射ミラー7だけではLED4の放射角を十分に絞り切れない場合もあるが、本実施の形態では、出射側に集光レンズ22を備えているので、絞り切れない光が結像光学系1に入射するように集光レンズ22によって放射角を狭めることができる。
【0023】例えば、結像光学系1の位置がLEDアレイヘッド2から1mm離れている場合、そこでの照度分布の半値幅は150μmであり、これは9°の半値全幅に相当する。よって、第一の実施の形態に比較して集光レンズ22を集積化させて組み込む手間は増えるものの、LED4の放射角を狭化させる性能は格段に向上するのが判る。照度の最大値は、反射ミラー7及び集光レンズ22が無い場合と比較すると、約10倍も向上したものである。
【0024】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、複数の発光素子を備えた発光素子アレイからの出射光を結像光学系を介して受光面に結像させる光学装置において、前記発光素子アレイ上に集積化形成されて個々の発光素子の放射角を狭化させる反射構造を含む狭化光学系を備えたので、放射角が広いために無駄にしていた光でも狭化光学系によって有効に結像光学系に入射させることができ、光の利用効率を高めることができる。」
エ 「【0026】請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の光学装置の狭化光学系が、個々の発光素子の放射側周囲を取り囲んでその発光素子からの放射光中で結像光学系に入射しない方向の光を前記結像光学系側に向けて反射させる反射ミラーと、各反射ミラーよりも出射側に位置して前記結像光学系に入射させる光を集光する集光レンズとよりなり、請求項2記載の発明に加えて、集光レンズをも備えているので、反射ミラーだけでは十分に放射角を絞り切れない場合でも、集光レンズの集光機能を併用することで放射角を狭めて、結像光学系への入射効率を一層高めることができる。」
オ 第3図及び第4図より、透明樹脂の光の出射側に集光レンズが配されてなる構造で、当該透明樹脂の光の入射側に反射ミラーが設けられているものが看取できる。

(2)上記(1)アないしオから、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認める。

「発光素子としての複数のLEDが1列に配列されたLEDアレイ(発光素子アレイ)をベースとして形成されたもので、このLEDアレイ上には狭化光学系を構成する反射ミラーが各LED毎に個別に形成されており、透明樹脂の光の出射側に集光レンズが配されてなる構造で当該透明樹脂の光の入射側には反射ミラーが設けられ、LED毎の狭化光学系が反射ミラーと集光レンズとにより形成され、絞り切れない光が結像光学系に入射するように集光レンズによって放射角を狭めることができ、LEDが1列に配列されたLEDアレイの基板に、ミラー構造を形成するためのポリイミドを塗布し、このポリイミドをLEDの位置に対応させてエッチングでミラー構造となる円錐台形状の開口部を形成し、この上の全面にミラー反射面を形成するアルミニウム反射膜を成膜し、LED上面のアルミニウム反射膜のみを除去することで、円錐台形状の反射ミラーを形成し、反射ミラーはLEDの放射側周囲を取り囲む形状に形成され、全面的に透明樹脂を塗布し、この後、ドライエッチング法を用いて透明樹脂のLEDに対応する部分に集光レンズを形成し、この集光レンズの形状は双曲面形状をなす非球面レンズとされ、最後に、Cr遮光膜を集光レンズ以外の部分に形成して作成され、結像光学系の視野内に入射した光が結像光学系の集光作用を受けて感光面に結像されて、光の利用効率を高めることができるLEDアレイヘッド」

(3)当審において平成21年11月9日付けで通知された拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-250986号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発光素子をマトリクス状に配列して、各発光素子を1つのドットとして表示するドットマトリクス表示装置に関する。さらに詳しくは、発光素子が周囲に反射壁を有しないチップ型LEDまたはLEDのベアチップがマウントされる場合でも、表示パネルの正面側に光を集光させ、正面側にとくに強い指向特性を有し、輝度の大きい表示装置とすることができる構造のドットマトリクス表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のドットマトリクス表示装置は、たとえば図3(a)にその一例の断面説明図が示されるように、表示パネル基板51の表面側にたとえばチップ型の発光素子(以下LEDという)52がマトリクス状に並べられ、表示パネル基板51の裏面に図示しない駆動回路や、各LED52への電源供給用端子などが設けられ、マトリクス状に並べられたLED52を選択的にオンオフさせることにより、所望の文字や図形を表示する構成になっている。また、LED52の表面側には、断面形状が半円形、または楕円形のレンズケース54が設けられることにより、正面側に光を集光して輝度を向上させる構造にされる場合がある。そして、この表示装置が何個も縦横に並べられて大型の表示ボードとして、公共の掲示板などに用いられている。」
イ 「【0006】本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、反射壁を有しないチップ型発光素子や、ベアチップのLEDをそのまま用いる場合でも、正面側にできるだけ多くの光を集光させ、正面側で輝度が大きく、また、隣のドットに光を漏れにくくして、認識しやすく表示品質の優れたドットマトリクス表示装置を提供することを目的とする。」
ウ 「【0015】レンズケース4は、図1(b)に断面説明図が示されるように、たとえばアクリルまたはポリカーボネートなどからなる板状体の一面側で、発光素子2の位置に相当する部分に、凸部41が形成されると共に、その内部に発光素子2を包含し得るように空洞部42が形成されている。さらに、その空洞部42の外周側に、空隙部44が形成されている。」
エ 「【0017】レンズケース4の凸部41が形成された面と反対面は、前述のように空洞部42が形成されている。この空洞部42は、発光素子2を内包すると共に、発光素子2からの光をできるだけ取り込んで正面側に屈折させることができるように、その側壁が形成されている。すなわち、レンズケース4の屈折率が1.59程度と空気の屈折率1より大きいことにより屈折するため、正面側に屈折しやすくするように曲率の大きい曲面、または中心側に傾斜した傾斜面に形成されている。この空洞部42の頂面は、図1(b)に示されるように、ほぼ平面の形状に形成される場合もある。さらに底面の形状は発光素子2を内包できる構造であればよく、4角形以上の多角形または円形に形成される。底面が4角形状で、側壁を曲面にした空洞部42の形状例が図2に示されている。Tが頂面、Sが側壁、Bが底面をそれぞれ示す。
【0018】空洞部42の周囲に設けられる空隙部44は、前述のようにレンズケース4の屈折率が1.59程度と空気の1より大きいことを利用して、発光素子2から横方向に出射されてレンズケース4内に取り込まれた光を全反射させて、正面側に向わせるためのもので、正面側に全反射をしやすい傾斜面43となるように形成されている。すなわち、傾斜面43の基板1とのなす角度θが、たとえばθ=60°程度以下となるように形成されることにより、横方向にきた光を全反射させて正面側に向わせることができる。この空隙部44は、隣接するドット間に形成され、前述の空洞部42の底面形状が4角形状である場合のレンズケース4の一部底面図が図1(c)に示されるように、格子状に空隙部44が形成されている。なお、図1(c)でMは空隙部の頂部を示し、T、S、Bは図2と同じ部分を示す。
【0019】このレンズケース4は、アクリル、ポリカーボネート樹脂などを金型に流し込むことにより容易に製造することができるため、複雑な形状でも、一旦金型を作製すれば、容易に製造することができる。このレンズケース4は、接着剤により表示パネル基板1に固定されてもよいし、レンズケース4にフックを設けて表示パネル基板1と固定する構造、または図示しないカシメピンが設けられたカバーケースをレンズケース4の上から抑えつけてカシメピンにより固定する構造などにすることもできる。」
オ 図1(b)より、レンズケース4として、凸部41と空隙部44とが一体に構成されていることが看取できる。
カ 図1(b)及び(c)より、「空隙部」は、基板側の幅を広く、凸部側の幅を狭く形成した断面略等脚台形形状の溝であることが、看取できる。

4 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
(1)LEDと有機EL素子は、ともに発光素子の一種であるから、引用発明1の「発光素子としての複数のLEDが1列に配列されたLEDアレイ(発光素子アレイ)」は、本願発明の「少なくとも1列に配列された有機EL素子のアレイ」と、「少なくとも1列に配列された発光素子のアレイ」という意味において一致する。
また、引用発明1の「LEDアレイヘッド」は、「感光面」に「結像」するためのものであるから、「露光ヘッド」であるといえ、同様に、本願発明の「有機ELアレイ露光ヘッド」と、「発光素子アレイ露光ヘッド」という意味において一致する。
(2)引用発明1の「集光レンズ」、「透明樹脂の光の出射側」は、本願発明の「マイクロレンズ」、「透明部材の発光光の射出側」に相当する。
(3)引用発明1の「集光レンズ」は、「透明樹脂のLEDに対応する部分」に形成されており、LED毎の狭化光学系が反射ミラーと集光レンズとにより形成され、複数のLEDは1列に配列されたLEDアレイとなっていることから、引用発明1の「集光レンズ」もLEDアレイと同様に、アレイ状に配されていることは明らかである。
してみれば、引用発明1の「透明樹脂の光の出射側に集光レンズが配されてなる構造」は、本願発明の「マイクロレンズアレイ」に相当する。
(4)引用発明1の「透明樹脂の光の入射側」は、本願発明の「『マイクロレンズアレイ』の『発光光の入射側』」に相当する。
(5)引用発明1の「マイクロレンズアレイ」は、「反射ミラー」とにより「LED毎の狭化光学系」を形成しており、「絞り切れない光が結像光学系に入射するように集光レンズによって放射角を狭めることができ」、「『円錐台形状の』『反射ミラーはLEDの放射側周囲を取り囲む形状に形成され、全面的に透明樹脂を塗布し、この後、ドライエッチング法を用いて透明樹脂のLEDに対応する部分に集光レンズを形成』」することから、各発光素子の発光部に配されていることは明らかである。
(6)引用発明1の「LEDの放射側周囲」とは、「発光素子の発光部」の周囲に他ならず、「『周囲を取り囲む』、『円錐台形状』」とは、本願発明の「周囲を囲む円形」に相当するから、引用発明1の「『円錐台形状』で、『LEDの放射側周囲を取り囲む形状』」は、本願発明の「各有機EL素子の発光部を囲む円形」と、「各発光素子の発光部を囲む円形」という意味で一致する。
また、引用発明1の「アルミニウム反射膜」は、「円錐台形状の反射ミラー」形成しているから、本願発明の「『溝内に』、『配置された』、『反射層』」と、「構造内に、配置された、反射層」という意味で一致する。
してみれば、引用発明1の「『透明樹脂の光の入射側に』設けられ、『LEDの放射側周囲を取り囲む形状に形成』され、『アルミニウム反射膜』により形成された『円錐台形状の反射ミラー』」は、本願発明の「各有機EL素子の発光部を囲む円形のV溝状の溝が設けられ、その溝内に反射層が配置されて」いる構造と、「各発光素子の発光部を囲む円形の構造が設けられ、その構造内に反射層が配置されて」いる構造という点で一致する。
(7)上記(1)ないし(6)からみて、本願発明と引用発明1とは、

「少なくとも1列に配列された発光素子のアレイを備え、前記発光素子のアレイの発光側に、各発光素子の発光部にマイクロレンズアレイが配されており、前記マイクロレンズアレイは透明部材の発光光の射出側にマイクロレンズがアレイ状に配されてなるものであり、前記マイクロレンズアレイの前記発光光の入射側に、各発光素子の発光部を囲む円形の構造が設けられ、その構造内に反射層が配置されている、発光素子アレイ露光ヘッド。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
発光素子について、本願発明が「有機EL素子」であるのに対し、引用発明1は「LED」であり、「有機EL素子」ではない点。

<相違点2>
前記マイクロレンズアレイの前記発光光の入射側に設けられた、各発光素子の発光部を囲む円形の構造について、本願発明が「『V溝状の溝』で、『前記溝内のV溝状の反射層の斜面が集光性の曲面からなり、前記マイクロレンズアレイと前記溝とが一体に構成されている』」のに対し、引用発明1は「LEDが1列に配列されたLEDアレイの基板に、ミラー構造を形成するためのポリイミドを塗布し、このポリイミドをLEDの位置に対応させてエッチングでミラー構造となる円錐台形状の開口部を形成し、この上の全面にミラー反射面を形成するアルミニウム反射膜を成膜し、LED上面のアルミニウム反射膜のみを除去することで、円錐台形状の反射ミラーを形成し、反射ミラーはLEDの放射側周囲を取り囲む形状に形成され」てはいるが、本願発明のような溝ではない点。

5 判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
光プリンタのヘッドに用いられる発光素子アレイとして、「有機EL素子からなる有機EL素子アレイ」は、本願出願前に周知である(例:特開2000-238325号公報、特開2002-19177号公報(段落0015及び0026等参照。)、特開2000-77188号公報(「有機LED」及び「有機LEDアレイ」が「有機EL素子」及び「有機EL素子アレイ」に相当。)等参照。(以下「周知技術1」という。))から、引用発明1において、発光素子として「有機EL素子」を採用して、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術1に基づいて容易になし得ることである。
(2)相違点2について
上記3(3)からみて、引用文献2には、「正面側にできるだけ多くの光を集光させ、正面側で輝度が大きく、また、隣のドットに光を漏れにくくするために、アクリルまたはポリカーボネートなどからなる板状体からなるレンズケースの一面側で、発光素子の位置に相当する部分に、凸部が形成されると共に、その内部に発光素子を包含し得るように、レンズケースの凸部が形成された面と反対面に空洞部が形成され、その空洞部の外周側に空隙部が形成され、空洞部は、発光素子を内包すると共に、発光素子からの光をできるだけ取り込んで正面側に屈折させることができるように、その側壁が形成され、レンズケースの屈折率が1.59程度と空気の屈折率1より大きいことにより屈折するため、正面側に屈折しやすくするように曲率の大きい曲面、または中心側に傾斜した傾斜面に形成され、底面の形状は4角形以上の多角形または円形に形成され、空洞部の周囲に設けられる空隙部は、レンズケースの屈折率が1.59程度と空気の1より大きいことを利用して、発光素子から横方向に出射されてレンズケース内に取り込まれた光を全反射させて、正面側に向わせるためのもので、正面側に全反射をしやすい傾斜面となるように形成され、傾斜面の基板とのなす角度θが、θ=60°程度以下となるように形成されることにより、横方向にきた光を全反射させて正面側に向わせることができ、この空隙部は、隣接するドット間に形成され、空隙部と凸部とを一体に構成し、空隙部は基板側の幅を広く凸部側の幅を狭く形成した断面略等脚台形形状の溝であり、格子状に空隙部が形成されたレンズケースを、表示パネル基板に固定したドットマトリクス表示装置」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
引用発明2は、「ドットマトリクス表示装置」に関する発明であるが、LEDの光を集光させるための発明として、引用発明1の「LEDアレイヘッド」と共通しており、レンズ(凸部)と共にLEDの光を反射させる構造を有する装置として共通の技術分野に属している。
また、光を反射させる構造において、集光性の曲面は、本願出願前に周知である(例:特開2001-162858号公報、実願昭59-126778号(実開昭61-42002号)のマイクロフィルム(以下「周知技術2」という。))
さらに、引用発明2の「空隙部」は、断面略「等脚台形」形状の溝で、レンズ(凸部)側が狭く形成されており、この「空隙部」は側面形状により光を反射させるためのものであるから、その頂面の長さを極小とする(頂面の長さを極小とすれば、いわゆるV字溝となることは明らかである。)ことを含め、どの程度とするかは、当業者が適宜設定しうる事項にすぎない。
してみれば、引用発明1において、レンズと共にその光を反射させる構造として、引用発明1の「反射ミラー」に代えて、引用発明2の「レンズ(凸部)と一体に構成した『空隙部』」の構造を、各発光素子の発光部を囲む円形の構造として採用し、その光を反射させる面の形状として、周知技術2のような集光性の曲面とし、また、その際の構造内の反射層の配置位置は、引用発明2の「空隙部」における光の反射する位置である「空隙部」の表面として、レンズ(凸部)と一体に構成し、溝形状をV字溝とし、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が引用発明2及び周知技術2に基づいて容易になし得ることである。
(3)そして、本願発明の奏する効果は、引用発明1の奏する効果、引用発明2の奏する効果、周知技術1の奏する効果及び周知技術2の奏する効果から当業者が予測できた程度のものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-27 
結審通知日 2010-02-03 
審決日 2010-02-16 
出願番号 特願2002-99621(P2002-99621)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 名取 乾治島▲崎▼ 純一  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 星野 浩一
湯本 照基
発明の名称 有機ELアレイ露光ヘッド及びそれを用いた画像形成装置  
代理人 韮澤 弘  
代理人 青木 健二  
代理人 米澤 明  
代理人 内田 亘彦  
代理人 蛭川 昌信  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 菅井 英雄  

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