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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1214283 |
審判番号 | 不服2008-30542 |
総通号数 | 125 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-12-02 |
確定日 | 2010-04-02 |
事件の表示 | 特願2005-154650「遊技機用の図柄表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月 7日出願公開、特開2006-325988〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第一.手続の経緯 本願は、平成17年5月26日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成20年10月8日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、平成20年12月2日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同月9日に手続補正がなされたものである。 また、当審において、平成21年10月2日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から平成21年11月17日に回答書が提出されている。 第二.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年10月8日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 なお、平成20年12月9日付け手続補正書では、特許請求の範囲を補正していない。 「 遊技機の前面に表示窓と補助窓を形成し、該表示窓の内部に駆動手段により回転する回転体を設け、該回転体の外周面に複数種類の図柄を表示し、該回転体の回転により表側に巡ってきた図柄が前記表示窓から視認されるようにすると共に、該回転体の後側に反射面を斜め上向きとした反射鏡と反射面を斜め下向きとした反射鏡とを配置し、該回転体の後側の図柄をこの2枚の反射鏡によって前記補助窓の方向に反射させることで該回転体の後側の図柄が該補助窓から視認されるようにしたことを特徴とする遊技機用の図柄表示装置。」 第三.特許要件(特許法第29条第2項)の検討 1.引用刊行物記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-13648号公報(以下「引用文献」という。)には以下の事項が記載されている。 【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、シンボルの実像および反射虚像を複数の観察窓で提供する遊技機に関する。 【0017】【発明の実施の形態】本実施の形態に係る遊技機は、物理リールやベルト上にシンボルが描かれた可変表示装置を備えており、筐体の正面に設けられた観察窓(第1の観察窓)にシンボルの実像を表示する。また、上記正面の方向とは異なるアングル、すなわち、第1の観察窓に表示されるシンボルとは異なるポジションにあるシンボルを反射体(ハーフミラー)により反射させて、第2の観察窓に表示する。・・・ 【0018】図1は、本実施の形態に係る遊技機の概略構成を示す斜視図であり、図2は、本実施の形態に係る遊技機をスロットマシンに適用した場合の断面図である。図1および図2に示すように、遊技機1は、筐体2と、この筐体2の紙面に対して上側に物理リール3a、3b、3cの3つの物理リールを有するリールユニット3を備えている。物理リール3a?3cの外周面には、複数種類のシンボルが設けられている。・・・ 【0019】シンボルは、直接表示される場合と、後述するハーフミラーで反射されて表示される場合がある。このため、シンボルは、リール帯(図柄帯)の長手方向と直交する対称軸について線対称となるように描かれている。従って、実像および反射虚像を同一のシンボルとして提供することができる。これにより、実像の移動方向と反射虚像の移動方向とが異なっていても両者を区別することなく同一のシンボルとして用いることが可能となる。 【0020】リールユニット3には、物理リール3a?3cの内周面に可視光を照射するランプ3dが設けられている。物理リール3a?3cの前面には、第1の観察窓7aが設けられている。第1の観察窓7aは、物理リール3a?3cにおけるシンボルの実像を直接表示する。・・・ 【0021】リールユニット3の紙面に対して下側、物理リール3a?3c下端よりさらに低い位置には、プレイヤーがシンボルを観察するための第2の観察窓5aが設けられている。プレイヤー側からみて第2の観察窓5aの奥には、物理リール3a?3cにおけるシンボルを反射させるハーフミラー5bが設けられている。・・・ 以上の記載及び引用文献の図面等に基づけば、引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。 「 遊技機の筐体の正面に第1の観察窓7aと第2の観察窓5aを設け、前記第1の観察窓7aは物理リール3a?3cの前面に設けられ、前記物理リール3a?3cの外周面にはリール帯の長手方向と直交する対称軸について線対称となるように複数種類のシンボルが描かれており、前記第1の観察窓7aは前記物理リール3a?3cにおけるシンボルの実像を直接表示すると共に、前記第2の観察窓5aの奥に物理リール3a?3cにおけるシンボルを反射させるハーフミラー5bが設けられ、前記物理リール3a?3cの前記第1の観察窓7aに表示されるシンボルとは異なるポジションにあるシンボルを前記ハーフミラー5bにより反射させて前記第2の観察窓5aに表示する遊技機。」 2.引用発明と本願発明との対比 そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、 引用発明の「遊技機の筐体の正面」は、本願発明の「遊技機の前面」に相当し、以下同様に、 「第1の観察窓7a」は「表示窓」に、 「第2の観察窓5a」は「補助窓」に、 「設け」は「形成し」に、 「物理リール3a?3c」は「回転体」に、 「シンボル」は「図柄」に、 「シンボルが描かれており」は「図柄を表示し」に、 「ハーフミラー5b」は「反射鏡」に、 「設けられ」は「配置し」に、 「第2の観察窓5aに表示する」は「補助窓から視認されるようにした」に、それぞれ相当する。 また、引用文献全体の記載等からみて以下のことが言える。 a.引用発明の「物理リール3a?3c」が駆動手段により回転するものであることは当然のことであり、引用発明において第1の観察窓7aが物理リール3a?3cの前面に設けられているということは、裏を返せば第1の観察窓7aの後側、すなわち第1の観察窓7aの内部に物理リール3a?3cが設けられているということであるから、引用発明は本願発明の「表示窓の内部に駆動手段により回転する回転体を設け」に相当する構成を備えたものということができる。 b.引用発明において、第1の観察窓7aが直接表示する物理リール3a?3cにおけるシンボルの実像は、第1の観察窓7aが物理リール3a?3cの前面に設けられていることから、物理リール3a?3cの前面側のシンボル(本願発明の「表側に巡ってきた図柄」に相当)の実像であることが明らかである。 そして、引用発明において「シンボルの実像を直接表示する」ことは、本願発明において「図柄が前記表示窓から視認されるようにする」ことに相当するといえるから、引用発明は本願発明の「回転体の回転により表側に巡ってきた図柄が前記表示窓から視認されるようにする」に相当する機能を有するものであるといえる。 c.引用発明のハーフミラー5bは、物理リール3a?3cにおけるシンボルを反射させるために第2の観察窓5aの奥に配置されているので、本願発明の「回転体の後側」と、引用発明の「第2の観察窓5aの奥」は、ともに“回転体の周辺”ということができる。 そうしてみると、本願発明と引用発明は、“回転体の周辺に反射鏡を配置”している点では共通しているということができる。 d.本願発明の「回転体の後側の図柄」と、引用発明の「物理リール3a?3cの前記第1の観察窓7aに表示されるシンボルとは異なるポジションにあるシンボル」は、上記b.で述べたことを考慮すると、ともに“回転体の表側に巡ってきた図柄以外の図柄”である点では一致しており、引用発明において、シンボルをハーフミラー5bにより反射させて第2の観察窓5aに表示することは、本願発明において、図柄を反射鏡によって補助窓の方向に反射させることで図柄が補助窓から視認されるようにしたことに相当するので、本願発明と引用発明は、“回転体の表側に巡ってきた図柄以外の図柄を前記反射鏡によって前記補助窓の方向に反射させることで該回転体の表側以外の図柄が該補助窓から視認されるようにした”点では共通しているということができる。 e.引用発明の遊技機は、第1の観察窓7aに物理リール3a?3cにおけるシンボルの実像を直接表示すると共に、第2の観察窓5aに同シンボルをハーフミラー5bにより反射させて表示するものであるから、引用発明の遊技機は本願発明の「遊技機用の図柄表示装置」に相当する手段を備えるものといえる。 以上を総合すると、両者は、 「遊技機の前面に表示窓と補助窓を形成し、該表示窓の内部に駆動手段により回転する回転体を設け、該回転体の外周面に複数種類の図柄を表示し、該回転体の回転により表側に巡ってきた図柄が前記表示窓から視認されるようにすると共に、該回転体の周辺に反射鏡を配置し、該回転体の表側に巡ってきた図柄以外の図柄を前記反射鏡によって前記補助窓の方向に反射させることで該回転体の表側に巡ってきた図柄以外の図柄が該補助窓から視認されるようにした遊技機用の図柄表示装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願発明の「反射鏡」は「回転体の後側」に配置されているのに対し、引用発明の「ハーフミラー5b」は「第2の観察窓5aの奥」に設けられており、また、本願発明の「反射鏡」が「反射面を斜め上向きとした反射鏡と反射面を斜め下向きとした反射鏡」の2枚で構成されるのに対し、引用発明の「ハーフミラー5b」はそのような構成になっていない点。 [相違点2] 本願発明においては、補助窓から視認される図柄が「回転体の後側の図柄」であり、該図柄を2枚の反射鏡で補助窓の方向に反射しているのに対し、引用発明においては、第2の観察窓5aに表示される図柄が「物理リール3a?3cの前記第1の観察窓7aに表示されるシンボルとは異なるポジションにあるシンボル」であって“物理リール3a?3cの後側のシンボル”とは特定されておらず、また、前記シンボルを1枚のハーフミラー5bで第2の観察窓5aの方向に反射している点。 3.当審の判断 [相違点1及び2について] 相違点1及び2は互いに密接に関連しているので、合わせて検討する。 引用発明の「第1の観察窓7aに表示されるシンボルとは異なるポジションにあるシンボル」には“物理リール3a?3cの後側のシンボル”も含まれ得る。 また、補助窓から視認される図柄を「回転体の後側の図柄」と特定したことによって本願発明に特有の格別の作用効果が得られるということもできないから、引用発明において、「第1の観察窓7aに表示されるシンボルとは異なるポジションにあるシンボル」として“物理リール3a?3cの後側のシンボル”を選択することは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、適宜なし得ることである。 次に、反射鏡の構成について検討する。 反射像が実像に対して上下又は左右が逆にならないように偶数回の反射を行わせることは、例えば、特開平10-325926号公報(特に、段落【0003】、【0005】)及び特開2003-315282号公報(特に、段落【0009】)に記載されるように、従来一般に周知の技術(以下「周知技術」という。)である。 さらに、摘記した引用文献の段落【0019】の記載から分かるように、引用発明においても、シンボルが直接表示される場合と反射されて表示される場合で、プレイヤーが同一のシンボルと認識できるように、複数種類のシンボルはリール帯の長手方向と直交する対称軸について線対称となるように描かれており、倒立した反射虚像でも実像と同じように見せるための工夫がなされている。 これらの事項を考え合わせると、引用発明において、複数種類のシンボルをリール帯の長手方向と直交する対称軸について線対称となるように描くとともに、シンボルを反射させるハーフミラー5bを設けるのに代えて、複数種類のシンボルについては適宜の図柄を用いるとともに、ハーフミラー5bについてはシンボルを反射させる2枚の反射鏡として、シンボルの反射虚像が実像に対して上下又は左右が逆にならないようにすることは、当業者にとって格別困難なことではない。 そして、2枚の反射鏡を用いた場合の反射鏡の配設位置及び傾きについて検討すると、上記のように第2の観察窓5aに表示するシンボルとして“物理リール3a?3cの後側のシンボル”を選択すれば、該シンボルの像を2回反射させて遊技機の筐体正面に設けた第2の観察窓5aから観察できるようにするのであるから、第2の観察窓5aが第1の観察窓7aより下方にあれば、最初の反射像は下方に送り、2回目の反射像は水平に近い光路をたどって第2の観察窓5aに到達させるのが通常の光路となるから、最初にシンボルの像を反射させる第1の反射鏡については、該シンボルの像を望むことができる位置、すなわち、物理リール3a?3cの後側に反射面を斜め下向きに設け、第1の反射鏡による反射像をさらに反射させる第2の反射鏡については、第2の観察窓5aの奥であって第1の反射鏡の下方、すなわち、物理リール3a?3cの後側に反射面を斜め上向きとするのが通常の配置であるということができる。逆に第2の観察窓5aが第1の観察窓7aより上方にある場合は、反射面の向きが逆になり、第1の反射鏡については物理リール3a?3cの後側に反射面を斜め上向きに設け、第2の反射鏡については第2の観察窓5aの奥であって物理リール3a?3cの後側に反射面を斜め下向きとするのが通常の配置であるということができる。 したがって、引用発明において、複数種類のシンボルについては適宜の図柄を用い、シンボルを反射させるハーフミラー5bを2枚の反射鏡とするとともに、“物理リール3a?3cの後側のシンボル”を第2の観察窓5aから観察できるようにするために、物理リール3a?3cの後側に反射面を斜め上向きとした反射鏡と反射面を斜め下向きとした反射鏡とを配置して、相違点1及び2に係る本願発明のような構成とすることは当業者が容易に想到し得る事項である。 さらに、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第四.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-01-22 |
結審通知日 | 2010-02-02 |
審決日 | 2010-02-16 |
出願番号 | 特願2005-154650(P2005-154650) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 澤田 真治 |
特許庁審判長 |
小原 博生 |
特許庁審判官 |
有家 秀郎 吉村 尚 |
発明の名称 | 遊技機用の図柄表示装置 |
代理人 | 伊藤 浩二 |