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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1214304 |
審判番号 | 不服2007-7734 |
総通号数 | 125 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-05-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-03-15 |
確定日 | 2010-04-01 |
事件の表示 | 平成10年特許願第103668号「バックアップ電圧供給回路」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月15日出願公開、特開平11-282583〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は平成10年3月31日の出願であって、平成19年1月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成19年3月15日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同年4月6日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成19年4月6日付け手続補正について [補正却下の決定の結論] 平成19年4月6日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は次のとおり補正された。 「バックアップ電圧をCPUへ供給するための電荷蓄積手段を有し、逆流阻止ダイオードと突入電流制限抵抗器とを介して共通電源から前記電荷蓄積手段へ充電電流を供給するバックアップ電圧供給回路に於て、 前記CPUへのバックアップ電圧を前記逆流阻止ダイオードと前記突入電流制限抵抗器の接続点から供給するとともに、 前記バックアップ電圧供給回路を備えた機器のICE(登録商標)による動作検証を行なう場合に、前記CPUの代わりにCPUよりも消費電流の大きい素子を含むICEのプローブを前記バックアップ電圧供給回路に接続し、ICEのアダプタへの供給電圧を前記逆流阻止ダイオードと前記突入電流制限抵抗器の接続点から供給することを特徴とするバックアップ電圧供給回路。」 上記補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項について「前記CPUの代わりにCPUよりも消費電流の大きい素子を含むICEのプローブを接続し」とあるのを「前記CPUの代わりにCPUよりも消費電流の大きい素子を含むICEのプローブを前記バックアップ電圧供給回路に接続し」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物「特開平1-311836号公報」(以下「引用刊行物」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 「〔従来の技術〕 マイコンやメモリを使用する機器では、瞬時または短時間の停電時にマイコンやメモリがリセットされろことを防止するために、バックアップ電源回路を備えているものがある。 従来、そのようなバックアップ電源回路は第2図に示すような構成となっている。この第2図において、1は電源入力、2はマイコンの電源入力端子、3はバックアップ用コンデンサ、4は充放電用抵抗、5はダイオードである。 次に動作について説明する。電源入力1より入力される電流はマイコンの電源入力端子2を通してマイコンを駆動させると同時に、充放電用抵抗4を通してバックアップ用コンデンサ3を充電する。 ここで、瞬時または短時間の停電が起こり、電源入力1が無くなると、バックアップ用コンデンサ3は充放電用抵抗4を通して放電し、マイコンの電源入力端子2を通してマイコンをバックアップする。このときダイオード5は電源入力1側に放電電流が流れることを防ぐためのものである。 このバックアップ電源回路において、停電時のバックアップ保証時間を長くとるためには、バックアップ用コンデンサ3を大容量にすれば良い。 しかし、マイコンを駆動させるための電流は必要なので、充放電用抵抗4を大きくし、バックアップ用コンデンサ3を充電させる時間を長くすることで、マイコンの駆動に支障のないようにする必要がある。」(第1頁右下欄第1行?第2頁左上欄第9行) この引用刊行物の記載から、引用刊行物には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「電源入力と、電源入力に接続された電源入力側に放電電流が流れることを防止するダイオードと、前記ダイオードの他端に充放電用抵抗を介して接続されたバックアップ用コンデンサを有し、前記ダイオードと前記充放電用抵抗の間にマイコンの電源入力端子を設けたマイコンのバックアップ用電源回路であって、前記バックアップ用コンデンサを大容量とするときには、前記充放電抵抗を大きくしてマイコンの駆動に支障がないようにする、マイコンのバックアップ用電源回路。」 (2)対比 本願補正発明と引用発明を対比すると、 引用発明の「バックアップ用コンデンサ」、「ダイオード」及び「マイコン」は、それぞれ、本願補正発明の「電荷蓄積手段」、「逆流阻止ダイオード」及び「CPU」に相当する。 また、引用発明はバックアップ用コンデンサを大容量とするときには、充放電抵抗を大きくしてマイコンの駆動に支障がないようにしているから、引用発明の「充放電用抵抗」は、本願補正発明の「突入電流制限抵抗器」に相当する。 したがって、両者は 「バックアップ電圧をCPUへ供給するための電荷蓄積手段を有し、逆流阻止ダイオードと突入電流制限抵抗器とを介して共通電源から前記電荷蓄積手段へ充電電流を供給するバックアップ電圧供給回路に於て、 前記CPUへのバックアップ電圧を前記逆流阻止ダイオードと前記突入電流制限抵抗器の接続点から供給するバックアップ電圧供給回路。」の点で一致し、以下の点で相違している。 相違点 本願補正発明は、前記バックアップ電圧供給回路を備えた機器のICE(登録商標)による動作検証を行なう場合に、前記CPUの代わりにCPUよりも消費電流の大きい素子を含むICEのプローブを前記バックアップ電圧供給回路に接続し、ICEのアダプタへの供給電圧を前記逆流阻止ダイオードと前記突入電流制限抵抗器の接続点から供給するのに対し、引用発明にはこの点について記載がない点。 (3)当審の判断 以下、上記相違点について検討する。 CPUを備えた電子回路において、CPUの代わりに、ICEアダプタを有するICEが接続されたプローブを接続して電子回路の試験(動作検証)を行うことは本願明細書にも従来の技術として記載されている(段落【0002】?【0003】、図7)ように周知であるから、引用発明のCPUにバックアップ電圧を供給するバックアップ電圧供給回路において、この周知技術を適用して、CPUの代わりにICEアダプタを有するICEが接続されたICEのプローブを接続すること、したがってICEアダプタを有するICEのアダプタへの供給電圧はCPUへの電圧供給と同様に逆流阻止ダイオードと突入電流制限抵抗器の接続点から供給することは当業者が容易に想到し得ることである。 そして、CPUに代えてICEアダプタを有するICEを接続したときに消費される電流は様々であるが、上記のように引用発明のバックアップ電圧供給回路においてICEプローブをCPUに代えて接続した場合に、CPUよりも消費電流の大きい素子を含む場合でも、バックアップ電圧供給回路が電流制限抵抗器による影響を受けることなくICEプローブを介して電流を供給できることは当然のことである。 したがって、引用発明において、ICEによる動作検証を行なう場合に、CPUの代わりにCPUよりも消費電流の大きい素子を含むICEのプローブを前記バックアップ電圧供給回路に接続し、ICEのアダプタへの供給電圧を前記逆流阻止ダイオードと前記突入電流制限抵抗器の接続点から供給して本願発明のように構成することは当業者が周知技術に基づいて容易になし得ることである。 そして、本願補正発明のように構成したことによる効果も引用発明及び周知技術から予測できる程度のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成19年4月6日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年8月23日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「バックアップ電圧をCPUへ供給するための電荷蓄積手段を有し、逆流阻止ダイオードと突入電流制限抵抗器とを介して共通電源から前記電荷蓄積手段へ充電電流を供給するバックアップ電圧供給回路に於て、 前記CPUへのバックアップ電圧を前記逆流阻止ダイオードと前記突入電流制限抵抗器の接続点から供給するとともに、 前記バックアップ電圧供給回路を備えた機器のICE(登録商標)による動作検証を行なう場合に、前記CPUの代わりにCPUよりも消費電流の大きい素子を含むICEのプローブを接続し、ICEのアダプタへの供給電圧を前記逆流阻止ダイオードと前記突入電流制限抵抗器の接続点から供給することを特徴とするバックアップ電圧供給回路。」 (1)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物及びその記載事項は、前記「2.(1)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「前記CPUの代わりにCPUよりも消費電流の大きい素子を含むICEのプローブを接続し」とあるのを「前記CPUの代わりにCPUよりも消費電流の大きい素子を含むICEのプローブを前記バックアップ電圧供給回路に接続し」と限定する補正を削除したものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含みさらに限定を付したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-01-27 |
結審通知日 | 2010-02-02 |
審決日 | 2010-02-15 |
出願番号 | 特願平10-103668 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 杉藤 泰子、内田 正和 |
特許庁審判長 |
大野 克人 |
特許庁審判官 |
五十嵐 努 近藤 聡 |
発明の名称 | バックアップ電圧供給回路 |
代理人 | 山中 郁生 |
代理人 | 田中 裕人 |
代理人 | 特許業務法人コスモス特許事務所 |