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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01R
管理番号 1214319
審判番号 不服2007-21462  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-02 
確定日 2010-04-01 
事件の表示 特願2004-549609号「コネクタハウジングのマーキング方法及びコネクタハウジングへの端子金具の挿入方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年5月21日国際公開、WO2004/042878〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本願発明

本願は、2003年11月5日(優先権主張:2002年11月5日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成19年6月26日付けで拒絶査定(同年7月3日発送)がなされ、これに対し、同年8月2日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年8月21日付けで手続補正がなされ、当審による平成21年10月27日付けの拒絶理由通知に対し、平成22年1月12日付けで手続補正がなされたものである。

平成22年1月12日付けの手続補正は、明細書の記載についてのみであるので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成19年8月21日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。(以下「本願発明」という。)
「端子金具を収容可能な端子収容室を複数備えたコネクタハウジングに、前記端子収容室それぞれに対応して設けられかつ対応する端子収容室が収容する端子金具を示す印を形成するコネクタハウジングのマーキング方法において、
着色材を前記コネクタハウジングに向かって一定量噴出して、着色材をコネクタハウジングに付着させて前記印を形成するとともに、
前記端子収容室は複数の隔壁によって区画されて、前記端子収容室の開口部は複数の隔壁によって囲まれており、
前記端子収容室の内面の前記開口部寄りの端部に向かって前記着色材を一定量噴出して、前記印を形成することを特徴とするコネクタハウジングのマーキング方法。」



2.引用例に記載された事項

(1)当審による拒絶理由通知において引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭57-152618号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

a.「第1図および第2図において、1は同一種類の外被電線で、これは配線に必要な長さ毎に切断機によって所定数切断されて設けられ、次いで該外被電線1の一端を電線接続用プレスを用いて弾性端子2に圧入接続する。3は電線挿入口4の近傍に着色、染色等によるマークM_(1),M_(2),M_(3),…が施されたコネクタにして、このコネクタ3の電線挿入口4より弾性端子2を接続した同一種類の外被電線1を挿入接続する。しかして、コネクタ3に接続された多数本の外被電線1を電線整列用ローラを用いて整列させ、次いで整列した外被電線1の各線の端末に、マークM_(1),M_(2),M_(3),…に対応した着色、染色等によるマークm_(1),m_(2),m_(3),…をマーク印刷機等によって施して結束線5を形成する。
しかして、このようにして形成された結束線5を他のコネクタに接続する場合にはこの他のコネクタに予め施されているマークに対応させながら結束線5の各外被電線1を接続すれば良く、誤結線を犯すことはなくなる。」(公報第1頁右下欄第20行?第2頁左上欄第19行。下線は当審にて付与(以下同様)。)

b.「本発明の結束線は、同一種類で2以上の外被電線をコネクタに接続し、このコネクタより延出する外被電線を整列してより外被電線の端末にコネクタの各電線挿入口近傍に施されている着色あるいは染色等によるマークに対応した着色あるいは染色等によるマークを施して形成するので、…この方法により得られた結束線は各外被電線の端末を他の電子部品、例えばコネクタに接続する際の結束間違いを犯さないで済む、実用に供して非常に有用なものである。」(公報第2頁左上欄第20行?同頁右上欄第14行)

上記記載事項及び第1、2図を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「外被電線1が接続された弾性端子2を挿入接続する電線挿入口4を複数備えたコネクタ3に、各電線挿入口4近傍に施され、かつ、各電線挿入口4に挿入接続する弾性端子2に接続した外被電線1のマークm_(1),m_(2),m_(3),…が対応させられる、マークM_(1),M_(2),M_(3),…を施しておくようにした、コネクタ3にマークM_(1),M_(2),M_(3),…を施す方法において、
着色、染色等によりコネクタ3にマークM_(1),M_(2),M_(3),…を施しておく、
コネクタ3にマークM_(1),M_(2),M_(3),…を施す方法。」


(2)同じく引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-31918号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに次の技術的事項が記載されている。

c.「【発明の属する技術分野】本発明は、自動車用ワイヤーハーネス等に用いられる電線のマーキング方法及び装置に関するものである。」(段落【0001】)

d.「本発明は、電線表面にその長手方向に沿ってマーキングするための電線のマーキング方法において、上記長手方向に電線を搬送する一方、マーキング用のインクを収容してこれを加圧することによりノズル先端から上記インクを吐出するインク供給器を上記電線の近傍に配置し、このインク供給器からインクを吐出させて上記電線の表面に付着させるものである。
この方法によれば、インク供給器から吐出させた分だけインクを電線に付着させることができる。換言すれば、上記インク供給器からのインクの吐出を止めることにより、マーキングを任意のタイミングで停止させることができる。また、インク供給器を電線に対して任意の方向からアプローチさせることができるため、電線においてインクを付着させる個所も自由に設定できる。
さらに、上記インクの吐出を間欠的に行わせることにより、電線の表面に点線状のマークを鮮明に付することが可能であり、しかも、上記吐出の時間を変えるだけでマークのピッチや長さを簡単に変更できる。
ここで、上記ノズルから吐出されるインクは、搬送される電線の表面に直接付着させてもよいし、搬送される電線の表面にローラを接触させてこのローラが電線と連動して回転するようにしておき、このローラの表面に上記インク供給器のノズルから吐出されるインクを付着させるようにしてもよい。
また本発明は、長手方向に搬送される電線の表面にその長手方向に沿ってマーキングを施すための電線のマーキング装置において、上記電線の近傍に配置され、マーキング用のインクを収容してこれを加圧することによりノズル先端から上記インクを吐出するインク供給器と、このインク供給器に上記インクの加圧動作をさせる駆動手段とを備えたものである。
さらに、この装置では、複数のインク供給器を備え、これらのインク供給器から吐出されるインクが電線表面においてその周方向に異なる位置に同時に付着するように各インク供給器を配置することにより、共通の電線に複数のマークを同時に付することが可能である。」(段落【0011】?【0016】)

e.「このインク供給器20及びその駆動手段を図2に示す。インク供給器20は、マーキング用のインク18を収容するシリンダ部21と、このシリンダ部21から次第に縮径するテーパー部22と、このテーパー部22から先方に延びる小径のノズル23とを一体に有している。上記シリンダ部21内にはピストン24が収容され、このピストン24からは後方にピストンロッド26が延設されている。そして、上記ノズル23の先端が上記絶縁体12の表面に向けられた状態で、上記シリンダ21がブラケット28を介してハウジング30の天壁に吊下げ支持されている。
ハウジング30の底壁には、上記インク供給器20の軸方向に平行なレール31が敷かれ、このレール31に沿ってスライド可能にスライドブロック32が設置されている。そして、このスライドブロック32の上部に上記インク供給器20のピストンロッド26の後端がねじ34で固定されている。
上記スライドブロック32の下部は上記インク供給器20の軸方向と平行なナットとされ、これを貫通する状態でねじ軸36が螺合されている。このねじ軸36の前端は、軸受37及びそのブラケット38を介してハウジング30の底壁側に回転可能に支持され、後端は、同底壁上に固定されたモータ40の出力軸41にカップリング42を介して連結されている。従って、上記モータ40の作動でねじ軸36が回転駆動されることにより、スライドブロック32及びピストン34(「ピストン24」の誤記と認める。以下同じ。)が一体にスライド駆動され、このピストン34によってシリンダ部21内のインク18が加圧されてノズル23の先端から吐出されるようになっている。
このような装置によれば、押出し機14によって絶縁体12が成形された電線をその長手方向に搬送しながら、モータ40を連続作動させてノズル23からインク18を常時吐出させることにより、絶縁体12の表面に連続した直線状のマーク(ストレートマーク)を付することができる。また、上記電線の搬送中、モータ40をオンオフさせてインク18を間欠的に吐出させることにより、絶縁体12の表面に点線状のマーク(ドットマーク)を付することができ、しかも、上記モータ40のオン時間を変えるだけでマークの長さやピッチも自由に調節できる。
さらに、この装置では、従来のようにマーキングローラの下部をインク内に浸漬するものと異なり、絶縁体12に対してインクをどのような方向からも付着させることができ、装置のレイアウトの自由度が大幅に高まる。また、第2の実施の形態として図3に示すように、電線下方、上方のそれぞれにインク供給器20を配することにより、絶縁体12の上下面にインク18を同時に付着させることができ、これによりマーキングの幅をさらに拡大できる。
さらに、第3の実施の形態として図4に示すように、複数のインク供給器20を電線長手方向(図の左右方向)に並べて配置し、各インク供給器20にそれぞれ異なる色のインク18を収容するようにすれば、作動させるインク供給器20を切換えることにより、使用するインクの色も即座に切換えることができる。また、互いに異なる色のインクを絶縁体12上に並べて同時付着させるといったことも可能となる。」(段落【0021】?【0026】)

上記記載事項及び図1?4を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「自動車用ワイヤーハーネス等に用いられる電線のマーキング方法において、マーキング用のインク18を収容してこれを加圧することによりノズル23先端からインク18を吐出するインク供給器20のノズル23を電線に向けられた状態で配置し、吐出された分だけインク18を搬送される電線の表面に直接付着させてマークを付する、電線のマーキング方法。」



3.対比

本願発明と引用発明1とを対比する。

引用発明1における「弾性端子2」は、本願発明における「端子金具」に相当し、以下同様に、
「外被電線1が接続された弾性端子2を挿入接続する」ことは「端子金具を収容可能な」ことに、
「電線挿入口4」は「端子収容室」に、
「コネクタ3」は「コネクタハウジング」に、
「各電線挿入口4近傍に施され」ることは「端子収容室それぞれに対応して設けられ」ることに、
「マークM_(1),M_(2),M_(3),…」は「印」に、
「コネクタ3にマークM_(1),M_(2),M_(3),…を施す方法」は「コネクタハウジングのマーキング方法」に、
「着色、染色等によりコネクタ3にマークM_(1),M_(2),M_(3),…を施しておく」ことは「着色材をコネクタハウジングに付着させて前記印を形成する」ことに、それぞれ相当する。

また、引用発明1の「マークM_(1),M_(2),M_(3),…(印)」は、「各電線挿入口4に挿入接続する弾性端子2に接続した外被電線1のマークm_(1),m_(2),m_(3),…が対応させられる」ものであるから、「各電線挿入口4(端子収容室)」に「挿入接続する(収容する)」(外被電線1が接続された)「弾性端子2(端子金具)」を示すもの、すなわち、本願発明における、「対応する端子収容室が収容する端子金具を示す印」に相当するものと言える。

すると、本願発明と引用発明1とは、次の一致点及び相違点を有するものである。

<一致点>
端子金具を収容可能な端子収容室を複数備えたコネクタハウジングに、前記端子収容室それぞれに対応して設けられかつ対応する端子収容室が収容する端子金具を示す印を形成するコネクタハウジングのマーキング方法において、
着色材をコネクタハウジングに付着させて前記印を形成する、
コネクタハウジングのマーキング方法。

<相違点>
1)「着色材をコネクタハウジングに付着させて印を形成する」際に、本願発
明では、着色材を「コネクタハウジングに向かって一定量噴出」して印を
形成しているのに対し、引用発明1ではそのようにして形成しているか否
か不明である点。
2)「端子収容室」が、本願発明では、「複数の隔壁によって区画されて、前
記端子収容室の開口部は複数の隔壁によって囲まれて」いるのに対し、引
用発明1ではそのような構成とされているか否か不明である点。
3)「着色材をコネクタハウジングに付着させて印を形成する」際に、本願発
明では、「端子収容室の内面の前記開口部寄りの端部に向かって」着色材
を噴出して印を形成しているのに対し、引用発明1では「各電線挿入口4
(端子収容室)の近傍に」マークM_(1),M_(2),M_(3),…(印)を形成して
いる点。



4.当審の判断

上記相違点について検討する。

<相違点 1) について>
本願発明と引用発明2とを対比すると、引用発明2における「インク」は本願発明における「着色材」に相当し、以下同様に、「吐出された分」は「一定量」に、「マークを付する」は「印を形成する」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明2においても、「電線に向けられた状態で配置」された「インク供給器20のノズル23」先端からインク18を吐出して、インク18を電線の表面に付着させるのであるから、「インク18を電線に向かって」吐出していることは明らかである。
すると、引用発明2を本願発明の用語を用いて記載すると、次のようになる。
「自動車用ワイヤーハーネス等に用いられる電線のマーキング方法において、着色材を電線に向かって一定量吐出して、着色材を電線に付着させて印を形成する、電線のマーキング方法。」

一方、自動車のワイヤーハーネスにおけるマーキングの技術分野において、対象物に向かって着色材を「噴出(噴射)」して、着色材を対象物に付着させることは、従来より周知かつ汎用されている技術である。(例えば、特開昭61-58108号公報の第2頁右下欄第3?4行、特開昭62-176009号公報の第2頁左上欄第19行?同頁右上欄第3行参照。)

そして、引用発明2は、本願発明と同じ、「自動車用ワイヤーハーネス」の接続の技術分野において、誤接続をなくし組立を容易にするという課題を解決するために行う、マーキング方法に関するものであって、また、本願の発明の詳細な説明の段落【0077】に、「前述した実施形態では、マーキング装置26を用いてコネクタハウジング1に印21を形成している。しかしながら、マーキング装置26を用いて電線2の外表面5aに印6を形成しても良い。」と記載されているように、同じマーキング装置・マーキング方法を用いて、コネクタハウジングと電線とにマーキングを行うことは、当該技術分野において汎用されている技術である。

したがって、電線のマーキング方法ではあるが、着色材を対象物に向かって一定量吐出して印を形成する引用発明2を、引用発明1に適用することに格別の困難性は見出せず、その際上記周知技術をも組み合わせて、着色材を「コネクタハウジングに向かって一定量噴出」するものとして、本願発明における、相違点 1) に係る構成を備えさせることは、当業者であれば容易に想到し得るものである。


<相違点 2) について>
端子金具を収容可能な端子収容室を複数備えたコネクタハウジングの技術分野において、端子収容室を、複数の隔壁によって区画して、端子収容室の開口部が複数の隔壁によって囲まれるように構成することは、当該技術分野において従来より周知かつ汎用されている技術である。(例えば実願平2-97989号(実開平4-55770号)のマイクロフィルムの第1図、特開2000-348807号公報の図6参照。)
したがって、引用発明1におけるマーキングの対象のコネクタハウジングとして、上記周知の「端子収容室」が「複数の隔壁によって区画されて、前記端子収容室の開口部は複数の隔壁によって囲まれ」たものを採用し、本願発明における、相違点 2) に係る構成を備えさせることは、当業者が適宜為し得る程度の設計的事項である。


<相違点 3) について>
コネクタの技術分野において、端子収容室の内面を着色することにより、誤接続を防止することは、従来より周知かつ汎用されている技術であって(例えば、実願昭59-94109号(実開昭61-8969号)のマイクロフィルム、実願昭62-46772号(実開昭63-155280号)のマイクロフィルム等参照)、端子金具を収容可能な端子収容室を複数備えたコネクタハウジングについても、誤接続を防止するためにハウジングの端子収容室の内部を着色することは、従来より周知である。(例えば、特開平8-138787号公報の段落【0041】?【0044】及び図1、2等参照。)

そして、インク(着色材)を対象物に向かって一定量吐出して印を形成する引用発明2のマーキング方法は、インク(着色材)を付着させる個所を自由に設定できるものである(上記摘記事項d参照)から、引用発明1に周知技術を適用して端子収容室の開口部を複数の隔壁によって囲まれるようにしたものに、引用発明2を組み合わせるに際して、上記の周知技術をも参照し、着色材を、端子収容室の内面の開口部寄りの端部に向かって噴出して、収容室の内面に印を形成するものとし、本願発明における、相違点 3) に係る構成を備えさせることに、格別の困難性は見出せない。


そして、引用発明1に引用発明2及び周知技術を適用したことによる作用効果を全体としてみても、当業者が予測し得る程度のものであって、格別のものとは言えない。



5.結び

以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-28 
結審通知日 2010-02-02 
審決日 2010-02-16 
出願番号 特願2004-549609(P2004-549609)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 長崎 洋一
渋谷 知子
発明の名称 コネクタハウジングのマーキング方法及びコネクタハウジングへの端子金具の挿入方法  
代理人 瀧野 文雄  
代理人 瀧野 秀雄  
代理人 松村 貞男  

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