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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1214344
審判番号 不服2008-9787  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-17 
確定日 2010-04-01 
事件の表示 特願2001-306833「試験方法、試験装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月18日出願公開、特開2003-115924〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成13年10月2日の出願であって、平成19年5月18日に手続補正がなされたが、平成20年3月11日付けで拒絶査定され、これに対し、同年4月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月15日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成20年5月15日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の平成19年5月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された

「複数の被試験装置に保守運用監視制御装置をリンクさせるリンクステップと、
前記保守運用監視制御装置がリンクされた前記複数の被試験装置の試験を遠隔制御する試験装置部に対し前記保守運用監視制御装置から試験内容の設定指示を行う試験内容設定指示ステップと、
前記試験内容が設定指示された前記試験装置部が前記試験内容で行なった試験の結果得られた試験データを前記保守運用監視制御装置が取得する試験データ取得ステップと、
前記取得した試験データについて前記保守運用監視制御装置が統計処理を含む試験データの加工を行う試験データ加工ステップと
を備えた試験方法。」

という発明(以下、「本願発明」という)を、

「複数の被試験装置に保守運用監視制御装置をリンクさせるリンクステップと、
前記保守運用監視制御装置がリンクされた前記複数の被試験装置の試験を遠隔制御する試験装置部に対し前記保守運用監視制御装置から試験内容の設定指示を行う試験内容設定指示ステップと、
前記試験内容が設定指示された前記試験装置部が該試験内容に基づいて発生させたPNパターンを送出し、このPNパターンに基づく前記試験内容で前記被試験装置が行なった試験の結果得られた試験データを前記保守運用監視制御装置が前記被試験装置から送出されたPNパターンで取得する試験データ取得ステップと、
前記取得した試験データについて前記保守運用監視制御装置が統計処理を含む試験データの加工を行う試験データ加工ステップと
を備えた試験方法。」

という発明(以下、「補正後発明」という。)に補正することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、
本願発明における「前記試験内容が設定指示された前記試験装置部が前記試験内容で行なった試験の結果得られた試験データを前記保守運用監視制御装置が取得する試験データ取得ステップ」を「前記試験内容が設定指示された前記試験装置部が該試験内容に基づいて発生させたPNパターンを送出し、このPNパターンに基づく前記試験内容で前記被試験装置が行なった試験の結果得られた試験データを前記保守運用監視制御装置が前記被試験装置から送出されたPNパターンで取得する試験データ取得ステップ」と限定して、
特許請求の範囲を減縮するものであり、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定及び平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(3-1)補正後発明
上記「1.本願発明と補正後発明」の項で「補正後発明」として認定したとおりである。

(3-2)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-347662号公報(以下、「引用例」という。)には、「遠隔制御試験方式」として図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0009】図1は、本発明の一実施例に係る遠隔制御試験方式の構成を示すブロック図である。本実施例の遠隔制御試験方式は、端末側通信制御プログラム13をロードするメモリ1と、CPU2と、入出力インタフェース3と、タイプライタ4と、公衆回線Lに接続するモデム5と、試験プログラム14を格納する磁気ディスク装置6と、公衆回線Lに接続するモデム7と、入出力インタフェース8と、試験システム側通信制御プログラム15および試験プログラム14をロードするメモリ9と、CPU10と、被試験装置12とのインタフェースを制御する試験制御装置11と、被試験装置12とから構成されている。なお、メモリ1,CPU2,入出力インタフェース3,タイプライタ4,モデム5および磁気ディスク装置6は、パーソナルコンピュータ等でなる端末100に含まれ、モデム7,入出力インタフェース8,メモリ9,CPU10および試験制御装置11は遠隔地に被試験装置12と近接して設置された試験システム200に含まれている。
【0010】図2(a)を参照すると、本実施例の遠隔制御試験方式における端末100側の処理手順は、公衆回線接続ステップS1と、試験システム初期設定ステップS2と、試験プログラム転送ステップS3と、転送終了判定ステップS4と、コマンド転送ステップS5と、公衆回線切断ステップS6と、公衆回線割込み検出ステップS7と、試験結果受信ステップS8と、試験結果リスト出力ステップS9と、終了判定ステップS10とからなる。
【0011】図2(b)を参照すると、本実施例の遠隔制御試験方式における試験システム200側の処理手順は、初期設定ステップS11と、コマンド受信ステップS12と、コマンド実行ステップS13と、試験結果受信ステップS14と、公衆回線接続ステップS15と、試験結果送信ステップS16と、終了判定ステップS17と、公衆回線切断ステップS18とからなる。
【0012】次に、このように構成された本実施例の遠隔制御試験方式の動作について説明する。
【0013】端末100で端末側通信制御プログラム13が起動されると、端末側通信制御プログラム13は、端末100を公衆回線Lを介して試験システム200に論理的に接続し(ステップS1)、試験システム200に対して初期設定を指示する(ステップS2)。
【0014】試験システム200では、試験システム側通信制御プログラム15が、端末100からの指示に基づいて試験システム200の初期設定を行う(ステップS11)。
【0015】次に、端末側通信制御プログラム13は、端末100の磁気ディスク装置6に格納されている試験プログラム14を入出力インタフェース3,モデム5および公衆回線Lを介して試験システム200に転送する(ステップS3)。
【0016】試験システム200では、試験システム側通信制御プログラム15が、公衆回線Lを介して転送されてきた試験プログラム14をモデム7,入出力インタフェース8,CPU10を介してメモリ9にロードする。
【0017】試験プログラム14の転送が終了した後(ステップS4でイエス)、端末100側でタイプライタ4からコマンド(例えば、国際電信電話諮問委員会準拠のコマンドが望ましい)が投入されると、端末側通信制御プログラム13は、投入されたコマンドを入出力インタフェース3,モデム5および公衆回線Lを介して試験システム200に転送する(ステップS5)。
【0018】また、端末側通信制御プログラム13は、試験システム200へのコマンドの転送が終了したならば、公衆回線Lの切断を行い(ステップS6)、公衆回線Lを解放する。これにより、無駄な回線使用料を削減することができる。
【0019】試験システム200では、試験システム側通信制御プログラム15が、公衆回線Lを介して転送されてきたコマンドを受信すると(ステップS12)、コマンドを実行して試験プログラム14を動作させる(ステップS13)。
【0020】試験プログラム14は、試験制御装置11を介して被試験装置12の試験を実行し、試験結果を受信する(ステップS14)。
【0021】試験プログラム14が試験結果の受信を終了すると、試験システム側通信制御プログラム15は、試験システム200を公衆回線Lを介して端末100と論理的に接続する(ステップS15)。
【0022】端末100側では、通信制御プログラム13が、公衆回線Lの割込みを検出し(ステップS7でイエス)、試験結果の受信を可能とする。
【0023】端末100側との論理的な接続後、試験システム側通信制御プログラム15は、試験結果の端末100への送信を行う(ステップS16)。この後、試験システム側通信制御プログラム15は、試験の作業の終了か否かを判断し(ステップS17)、試験の作業の終了でなければ、ステップS12に制御を戻す。」
(第2頁2欄23行?第3頁4欄10行)

ロ.「【0028】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、端末を公衆回線を介して試験システムに論理的に接続し、コマンドを投入することによって被試験装置の試験を実行し、試験結果を端末に転送するようにしたことにより、遠隔地に技術者が出張することなしに、遠隔地に設置されている電子交換機等の被試験装置を試験して試験結果の分析を行い、被試験装置の保守を容易に行うことができるという効果がある。特に、遠隔地の被試験装置に障害等の問題が生じた場合に迅速な対応をとることができるとともに、出張費用を削減することができるという利点がある。」
(第3頁4欄33行?44行)


上記引用例の記載及び関連する図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、
(1)引用例記載の「遠隔制御方式」では、上記イ.の【0010】、【0013】、図2から明らかなように、「端末」が公衆回線を介して「試験システム」に接続され、図1から明らかなように、「試験システム」は「被試験装置」に接続されているから、公衆回線接続ステップS1では、「端末」と「被試験装置」とが接続されると言えるものであり、
(2)上記イ.の【0015】、【0016】から明らかなように、「端末」から「試験システム」へ「試験プログラム」がロードされ、
(3)上記イ.の【0019】から明らかなように、「試験プログラム」は、「コマンド」により実行されるものであって、「コマンド」がプログラムを実行させるための指示であることは技術常識であり、
(4)上記イ.の【0020】、【0023】から明らかなように、「試験システム」が「試験プログラム」で行った試験の結果得られた「試験結果」を「端末」が取得している。

したがって、上記(1)?(4)からして、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

「被試験装置に端末を接続させる接続ステップと、
前記端末が接続された前記被試験装置の試験を遠隔制御する試験システムに対し前記端末から試験プログラムのロード指示を行う試験プログラムロード指示ステップと、
前記試験プログラムがロード指示された前記試験システムが該試験プログラムで行った試験の結果得られた試験結果を前記端末が取得する試験結果取得ステップと
を備えた試験方法。」

(3-3)対比
補正後発明と引用発明とを対比するに、
引用発明の「端末」は、上記ロ.の【0028】に記載されるように、引用例記載の遠隔制御試験方式において被試験装置の障害へ迅速に対応するための保守(即ち、保守運用)を遠隔制御により行うために使用されており、障害へ迅速に対応するために試験結果を取得する作業は「監視」と言えることであるから、補正後発明の「保守運用監視制御装置」にあたり、
引用発明の「接続」は、補正後発明の「リンク」に相当し、
引用発明の「試験システム」は、補正後発明の「試験装置部」に相当し、
引用発明の「試験プログラム」は、補正後発明の「試験内容」に相当し、
引用発明の「ロード」は、試験システムに対して試験プログラムを「設定」するための動作であり、
引用発明の「試験結果」は、補正後発明の「試験データ」に相当する。

したがって、補正後発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「被試験装置に保守運用監視制御装置をリンクさせるリンクステップと、
前記保守運用監視制御装置がリンクされた前記被試験装置の試験を遠隔制御する試験装置部に対し前記保守運用監視制御装置から試験内容の設定指示を行う試験内容設定指示ステップと、
前記試験内容が設定指示された前記試験装置部が該試験内容で行った試験の結果得られた試験データを前記保守運用監視制御装置が取得する試験データ取得ステップと
を備えた試験方法。」

(相違点1)
補正後発明は、被試験装置が「複数」であるのに対して、引用発明では不明な点。

(相違点2)
補正後発明では、前記試験装置部が「該試験内容に基づいて発生されたPNパターンを送出し、このPNパターンに基づく前記試験内容で前記被試験装置が」行った試験であり、試験データを前記保守運用監視制御装置が「前記被試験装置から送出されたPNパターンで」取得するのに対して、引用発明では不明な点。

(相違点3)
補正後発明では、「前記取得した試験データについて前記端末が統計処理を含む試験データの加工を行う試験データ加工ステップ」を備えるのに対して、引用発明では不明な点。

(3-4)当審の判断
そこで、まず相違点1について検討すると、遠隔制御による試験を行う際に、複数の被試験装置を対象とすることは、例えば、特開昭63-18855号公報に記載されるように周知技術であるから、引用発明において複数の被試験装置とすることは、当業者であれば適宜成し得ることである。
次に、相違点2について検討すると、例えば、特開平4-192830号公報に記載されるように、試験内容として擬似ランダム信号を用いることは周知技術であり、特開平9-51317号公報の【0026】、特開平11-68722号公報の【0002】等に例示されるように、PNパターンは擬似ランダム信号の一例に過ぎないから、引用発明においてPNパターンを用いた試験内容とする程度のことは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。そして、PNパターンを用いた試験を行う場合に、試験内容に基づいて発生されたPNパターンが送出され、このPNパターンに基づき被試験装置で試験が行なわれ、このPNパターンで得られた試験データを保守運用監視制御装置が取得するようになることは技術常識である。
さらに、相違点3について検討すると、例えば、特開昭62-88467号公報に記載されるように試験データについて統計処理を含む加工を行うことは周知技術であるから、引用発明においても取得した試験データについて統計処理を含む加工を行うように設計する程度のことは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
そして、補正後発明の作用・効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

以上のとおり、補正後発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成20年5月15日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で、「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(3-2)引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-29 
結審通知日 2010-02-02 
審決日 2010-02-15 
出願番号 特願2001-306833(P2001-306833)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石澤 義奈生戸次 一夫  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 新川 圭二
高野 洋
発明の名称 試験方法、試験装置  
代理人 田澤 英昭  
代理人 濱田 初音  
代理人 濱田 初音  
代理人 田澤 英昭  

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