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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02F
管理番号 1214350
審判番号 不服2008-19935  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-06 
確定日 2010-04-01 
事件の表示 特願2007-18746「作業車の後方監視カメラ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年8月14日出願公開,特開2008-184789〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は,平成19年1月30日の出願であって,平成20年7月1日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年8月6日に審判請求がなされるとともに,同年8月20日受付けで手続補正がなされたものである。
その後,当審において,平成21年8月10日付けで審査官の前置報告書に基づく審尋がなされ,同年9月14日受付けで回答書が提出された。

第2 本願発明
本願発明は,請求項の削除を目的とする平成20年8月20日受付けの手続補正により補正された,特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。

「【請求項1】
車体後部に設置されたカウンタウエイトの後方に突出させた円弧状の外面に形成された凹部に取り付けられた監視カメラと,
この監視カメラに接続するケーブルが通される,一端がカウンタウエイトの該凹部に開口し車体内方に貫通形成された貫通穴とを備え,
該カウンタウエイトが,容器状のカウンタウエイト本体と,その内部に充填された充填物とを備え,
該貫通穴が,カウンタウエイト本体に一体的に取り付けられたパイプ材により形成されている
ことを特徴とする作業車の後方監視カメラ装置。」(以下「本願発明」という。)

第3 引用刊行物とその記載事項
刊行物1:特開2006-161306号公報
刊行物2:特開平10-140619号公報

(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である上記刊行物1には,「建設機械の配線引き回し構造」に関して,次の事項が記載されている。

(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のカウンタウエイトに電装品を装着し,この電装品に接続した配線を引き回すに当って,前記カウンタウエイトの内部に一端側が前記電装品の配設位置に通じ,内部に前記配線を挿通するトンネル状通路を形成し,このトンネル状通路の他端は,このカウンタウエイトの端面と建屋の端部との間に開口させる構成としたことを特徴とする建設機械の配線引き回し構造。
・・・
【請求項3】
前記トンネル状通路は,少なくともカウンタウエイトの上面板に固着して設けたパイプ材からなり,内部に配線を通す挿通パイプで構成したことを特徴とする請求項1記載の建設機械の配線引き回し構造。
・・・」
(1b)「【0002】
カウンタウエイトを備えた建設機械として,例えば油圧ショベルは,図6に示したように,下部走行体1上に上部旋回体2を旋回可能に連結して設けたものであり,この上部旋回体2には,一般的には,土砂の掘削等の作業を行う掘削作業手段3が設けられており,また運転室4が設置されている。さらに,エンジン等を収容する建屋5を備えており,さらに最後端部にはカウンタウエイト6が装着されている。ここで,上部旋回体2にカウンタウエイト6を装着するのは,掘削作業手段3の作業時における重量バランスを取るためである。従って,カウンタウエイト6はケーシングの内部にセメント等の重量物を充填することにより構成される。
【0003】
カウンタウエイト6には各種の電装品が搭載されることがある。その代表的なものとしては,例えばランプを設けるという場合もあった。ところで,特に,近年においては,TVカメラの価格低減,小型化等により,運転室4内で機械の操作を行なっているオペレータが通常の姿勢状態では視野が得られない後部位置にTVカメラを設置して,主に後方の監視を可能とする,所謂後方監視カメラを設置するように構成したものが実用化されている。・・・」
(1c)「【0006】
油圧ショベルのように,野外の過酷な条件下で稼動するものにおいて,後方監視カメラ13は保護カバー14で覆う等,それなりに保護がなされているが,ケーブル15の引き回しにおいては,格別の保護がなされておらず,岩石等の衝突による損傷のおそれ等があるだけでなく,ケーブル15をカウンタウエイト6の表面から露出させておくことは,見栄えが悪いということがある。つまり,カウンタウエイト6の表面からケーブル15の一部が露出していると,外観上好ましいものではない。
【0007】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって,その目的とするところは,カウンタウエイトに装着した電装品からのケーブルを外部に露出しないようにすることにある。」
(1d)「【0010】
トンネル状通路の具体例としては,・・・カウンタウエイトの内部において,重量物が充填されない上部空間に設けたパイプ材で構成したりすることができる。そして,・・・パイプ材で構成されるトンネル状通路は,概略水平方向に延在させることもできる・・・」
(1e)「【0011】
以上のように構成することによって,カウンタウエイトに設けた電装品からの配線を外部に露出することがなくなり,その保護が図られると共に,外観上における見栄えが良くなり,意匠的見地からも優れたものとなる。」
(1f)「【0017】
・・・図4及び図5に本発明における第2の実施の形態を示す。・・・カウンタウエイト40の上面板41には,このカウンタウエイト40をクレーン等で吊り上げるために設けた2箇所の吊穴にボルト42aにより固定して設けた支持部材42が装着されており,この支持部材42に取付座43を連結して設け,この取付座43上に後方監視カメラ44が装着されている。この後方監視カメラ44は,さらに取付座43に装着した保護カバー45により保護されている。後方監視カメラ44の視野の前方は開放されており,また後方も開放状態となっている。従って,後方監視カメラ44に接続したケーブル46はそのまま後方に向けて延在されるようになっている。
【0018】
ただし,図5から明らかなように,取付座43には貫通孔43aが穿設されており,ケーブル46はこの貫通孔43aに挿通されて,上面板41に向けて延在されている。そして,上面板41の内面側にはケーブル46のトンネル状通路として機能するケーブル挿通パイプ47が固着して設けられており,このケーブル挿通パイプ47は上面板41から斜め下方に延在されており,カウンタウエイト40における端面板48を貫通して建屋側に向けて僅かに延在されている。
【0019】
このように構成することによっても,後方監視カメラ44に接続されているケーブル46は,保護カバー45の内部で後方監視カメラ44より後方から,取付座43の貫通孔43aを通り,ケーブル挿通パイプ47の内部から建屋側に引き出されることから,実質的にケーブル46が外部に露出することはない。また,ケーブル挿通パイプ47は斜め下方に延在されているので,その内部にケーブル46を挿通させる作業が極めて容易に行なえる。」
(1g)図4及び5には,カウンタウエイト40の後側面を,後方に突出させた円弧状の外面とし,該外面の上縁から連続して上面板41が設けられていることが,開示されている。

以上の記載事項(1a)?(1g),図面の記載及び技術常識からみて,刊行物1には,次の発明が記載されているものと認められる。

「上部旋回体の最後端部に装着されたカウンタウエイト40の後方に突出させた円弧状の外面から連続する上面板41に取り付けられた後方監視カメラ44と,この後方監視カメラ44に接続するケーブル46が通される,一端が該上面板41の内面側に固着され,カウンタウエイト40の端面板48を貫通してエンジン等を収容する建屋5側に向けて僅かに延在するケーブル挿通パイプ47とを備え,該カウンタウエイト40が,ケーシングと,その内部に充填されたセメント等の重量物とを備え,該ケーブル挿通パイプ47が,ケーシングに取り付けられている,油圧ショベルのカウンタウエイトに設置された後方監視カメラ及びケーブル挿通パイプ。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

(2)刊行物2
同じく上記刊行物2には,「油圧ショベルの後方監視装置」に関して,図面とともに次の事項が記載されている。

(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 下部走行体と,該下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と,該上部旋回体の前方部に設けられた運転室と,該運転室の内部に設けられたモニターテレビと,前記上部旋回体の後方部に設けられたカウンタウエイトとを有し,監視カメラによって前記上部旋回体の後方が監視可能とされた油圧ショベルの後方監視装置において,前記カウンタウエイトの後面部・・・が開口されてなる切り欠き部を有し,該切り欠き部の内部に前記監視カメラを配置し,該監視カメラにより撮影される後方部・・・の影像を前記モニターテレビにて受像可能であることを特徴とする油圧ショベルの後方監視装置。
・・・」
(2b)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来技術においては,テレビカメラ本体が露出した状態で,旋回フレームの上部に突出した形で配置されている。このため,油圧ショベル等の様々な激しい作業環境で使用される建設機械においては,干渉可能危険物や飛来物によりテレビカメラが破損する危険性や,雨天などの際には水滴等の浸入によってテレビカメラが故障する危険性を有している。」
(2c)「【0009】・・・その目的は,危険物の干渉や飛来物による破損からテレビカメラを保護し,旋回体後方・・・の確認性に優れた建設機械の後方監視装置を提供することにある。」
(2d)「【0020】・・・カウンタウエイト5には後面部及び上面部が開口された切り欠き部6が設けられていて,その内部に監視カメラ1が・・・設けられている。・・・」
(2e)「【0035】
【発明の効果】・・・請求項1の発明は,監視カメラをカウンタウエイトの切り欠き部に配置することによって,後方部・・・のより優れた安全確認を可能にする。また,旋回作業時等の際に,カウンタウエイトが危険物に干渉しても,監視カメラがカウタウエイトの内部に配置されていることにより監視カメラの破損を防ぐことができる。」

以上の記載事項(2a)?(2e),図面の記載及び技術常識からみて,刊行物2には,次の発明が記載されているものと認められる。

「監視カメラ1を,カウンタウエイト5の後面部に形成された切り欠き部6に取り付けた油圧ショベルの後方監視装置。」(以下,「刊行物2記載の発明」という。)

第4 本願発明と刊行物1記載の発明の対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,
刊行物1記載の発明の「上部旋回体の最後端部に装着された」が,本願発明の「車体後部に設置された」に相当し,以下同様に,
「後方監視カメラ44」が「監視カメラ」に,
「カウンタウエイト40の端面板48を貫通して僅かに延在する」が「貫通形成された」に,
「エンジン等を収容する建屋5側に向けて」が「車体内方に」に,
「ケーシング」が「容器状のカウンタウエイト本体」に,
「セメント等の重量物」が「充填物」に,
「油圧ショベル」が「作業車」に,
「カウンタウエイトに設置された後方監視カメラ及びケーブル挿通パイプ」が「後方監視カメラ装置」に,それぞれ相当する。
また,刊行物1記載の発明の「ケーブル挿通パイプ47」は,上記第3(1)の(1f)の【0018】,及び,刊行物1の図5の記載からみて,カウンタウエイト本体に一体的に取り付けられていることは明らかであるから,本願発明の「カウンタウエイト本体に一体的に取り付けられたパイプ材」及び「(パイプ材により形成されている)貫通穴」に相当する。
さらに,刊行物1記載の発明の「後方に突出させた円弧状の外面から連続する上面板41」と,本願発明の「後方に突出させた円弧状の外面に形成された凹部」とは,「(カウンタウエイトの)外殻」である点で共通し,
刊行物1記載の発明の貫通穴(パイプ材)は,ケーブルが通されるもので,開口していることは明らかであるから,刊行物1記載の発明の「一端が(カウンタウエイトの外殻の内面側に)固着され」は,本願発明の「一端が(カウンタウエイトの外殻に)開口し」に相当する。

したがって両者は,
「車体後部に設置されたカウンタウエイトの外殻に取り付けられた監視カメラと,この監視カメラに接続するケーブルが通される,一端がカウンタウエイトの該外殻に開口し車体内方に貫通形成された貫通穴とを備え,該カウンタウエイトが,容器状のカウンタウエイト本体と,その内部に充填された充填物とを備え,該貫通穴が,カウンタウエイト本体に一体的に取り付けられたパイプ材により形成されている作業車の後方監視カメラ装置。」
である点で一致し,次の点で相違している。

(相違点)
カウンタウエイトにおける,監視カメラが取り付けられ,かつ,貫通穴(パイプ材)の一端が開口する部位が,本願発明では,後方に突出させた円弧状の外面に形成された凹部であるのに対して,刊行物1記載の発明では,後方に突出させた円弧状の外面から連続する上面板41である点。

第5 判断
以下,上記相違点について検討する。なお,( )内は刊行物2の用語である。
刊行物2に記載された発明は,作業車の後方監視装置(油圧ショベルの後方監視装置)において,後方部のより優れた安全確認を可能とし,監視カメラの破損を防ぐことを課題とするものである(上記第3(2)の(2b),(2c)及び(2e)の記載を参照)。このような課題は,作業車の後方監視装置における一般的な課題であるから,刊行物2記載の発明の外面(後面部)に形成した凹部(切り欠き部6)に監視カメラを取り付けるという構成を,刊行物1記載の発明に適用し,後方に突出させた円弧状の外面に凹部を形成して該凹部に監視カメラを取り付けること,そしてそのために,貫通穴の一端を該凹部に開口させることは,当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本願発明の「ケーブルの損傷が完全に防止され,外観が損なわれない」との効果(本願明細書の段落【0011】を参照。)は,刊行物1から予測可能なものであり,
また,「パイプ材は補強部材として有効に機能する」との効果(同段落【0029】及び回答書(3)の「また,・・・」以降の記載を参照。)も,刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用した際に,その構造上必然的に生じるものに過ぎないので,
本願発明が奏する効果は,格別なものではない。
よって,本願発明は,刊行物1及び2記載の両発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

なお,回答書の補正案について検討するに,当該補正案は,パイプ材の補強部材としての機能を明確化したものであるが,当該機能は,上述のごとく刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用した際に必然的に生じるものに過ぎないので,上記補正案に記載された発明も,刊行物1及び2記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものに過ぎない。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願は拒絶されるべきである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-27 
結審通知日 2010-02-02 
審決日 2010-02-15 
出願番号 特願2007-18746(P2007-18746)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 範久田畑 覚士  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 山本 忠博
神 悦彦
発明の名称 作業車の後方監視カメラ装置  
代理人 奥貫 佐知子  
代理人 小野 尚純  
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