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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1214360
審判番号 不服2008-32682  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-25 
確定日 2010-04-01 
事件の表示 特願2005-160684「鶏卵包装用容器」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月14日出願公開、特開2006-335403〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成17年5月31日の出願であって、平成20年11月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成20年12月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。本願の請求項1に係る発明は、平成20年6月11日に補正された特許請求の範囲及び明細書の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「鶏卵の下半部を収容する個別凹部11を備えた容器本体1と、鶏卵の上面を覆う凹部21を備えた蓋体2とがその一側部でヒンジ部3を介して折り曲げ折り重ね自在に一体的に連結形成された樹脂シート製の鶏卵包装用容器であって、容器本体1における前記ヒンジ部3に沿った方向に隣り合う二つの個別凹部11,11の間を区画する仕切り16が、前記ヒンジ部3に沿った形の樋形またはトンネル形に形成されている鶏卵包装用容器。」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭47-137901号(実開昭49-90520号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある。

a.「鶏卵の鋭端側および鈍端側を収納する凹所(1)および凹所(1’)を、それぞれ、多数膨張出形成した本体(2)および蓋体(2’)とを折曲縁(3)を介して同体に形成したものにおいて、各凹所(1)および凹所(1’)の中間部分の対面部分には相互に衝合したとき本体(2)と蓋体(2’)の間に大きな間隙(c)を保持させる支柱(4)および(4’)を、それぞれ、高く突設し、本体(2)と蓋体(2’)の端縁にそつた縁辺部(2a)および(2a')には、雌形凹部(5)および雄形凸部(5’)を、前記両支柱(4)および(4’)の衝合に応じた嵌合深さを有するように、それぞれ形設し、前記雄形凸部(5’)の根部側は、雌形凹部(5)の先端に当接する皿形の径大部(5'a)に、先端側は遠心方向に弾力を有する断面非円形の嵌入部(5'b)に、それぞれ形設したことを特徴とする合成樹脂製鶏卵包装容器。」(第1頁第5行?第2頁第5行)

b.「第1図は本体(2)に蓋体(2’)を被せて接合した合成樹脂製鶏卵包装容器全体の正面図を示すもので、本体(2)には周囲にリブ(6)を多数形成した鶏卵の鋭端側を収納する凹所(1)を複数個膨出形成し、蓋体(2’)には同様にリブ(6)を多数形成した鶏卵の鈍端側を収納する凹所(1’)を複数個膨出形成し、本体(2)と蓋体(2’)の一側端縁は折曲線(3)で連設して、全体を一枚の合成樹脂材により形成する。」(第3頁第6行?第14行)

c.「図面は本考案の実施例を示すもので、第1図は蓋をした状態の容器全体の正面図、第2図はその平面図、第3図は第2図のIII-III線における断面図、第4図は要部の縦断面図、第5図は第4図のV-V線における断面図、第6図は嵌接状態を示す要部の縦断面図である。」(第8頁第11行?第14行)

そして、第3図は「支柱(4)および(4’)」と「雌形凹部(5)および雄形凸部(5’)」との間の本体(2)の断面、及び、「支柱(4)および(4’)」と「折曲縁(3)」との間の本体(2)の断面が、下に向かって幅が狭くなる台形状であること(以下、これらを「台形部」という。)が示されている。また、第1図において本体(2)の「凹所(1)」相互間に上に向かって幅が狭くなる台形の部分が示されている(後記参考図面参照)。第1図は容器全体の正面図であり、第3図は第2図のIII-III線における断面図であることから、第1図に示された前記台形の部分は、第3図の台形部を正面から見たものを示しているので、当該台形部が本体(2)の隣り合う凹所(1)の間を区画する構成となっていることが見て取れる。
したがって、以上の記載及び第1図、第2図、第3図によれば、引用例1には次の発明が記載されていると認められる。(以下、「引用発明」という)

「鶏卵の鋭端側を収容する凹所(1)を備えた本体と,鶏卵の鈍端側を覆う凹所(1’)を備えた蓋体とがその一側部で折曲縁を介して折り曲げ折り重ね自在に一体的に連結形成された合成樹脂製鶏卵包装容器であって、本体における前記折曲縁に沿った方向に隣り合う二つの凹所(1)の間を区画する台形部が、前記折曲縁に沿って延びる形に形成されている合成樹脂製鶏卵包装用容器」

3.対比
本願発明と引用発明を対比すると、各構成要素の形状、機能、技術的意義などからみて、引用発明の「鋭端側」、「凹所(1)」、「本体」、「鈍端側」、「合成樹脂製鶏卵包装容器」、「折曲縁」、「台形部」は、それぞれ本願発明の「下半部」、「個別凹部」、「容器本体」、「上面」、「樹脂シート製の鶏卵包装用容器」、「ヒンジ部」、「仕切り」に相当する。

よって両者は、
「鶏卵の下半部を収容する個別凹部を備えた容器本体と、鶏卵の上面を覆う凹部を備えた蓋体とがその一側部でヒンジ部を介して折り曲げ折り重ね自在に一体的に連結形成された樹脂シート製の鶏卵包装用容器であって、容器本体における前記ヒンジ部に沿った方向に隣り合う二つの個別凹部の間を区画する仕切りが、前記ヒンジ部に沿った形に形成されている鶏卵包装用容器。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点
本願発明では、「仕切り」が、「樋形またはトンネル形」で形成されているのに対して、引用発明では、「仕切り」が台形である点

なお、請求人は、審判請求書の請求の理由の(5)において、
「第3図は、同文献(原査定で言う引用文献1、本審決で言う引用例のこと)の『図面の簡単な説明』欄において『第3図は第2図のIII-III線における断面図』と説明され、その切断箇所を示す『第2図のIII-III矢視線で示された切断箇所は『支柱4,4’』を左右に分割する切断箇所』でありますから、この第3図の中間部分に図示されて、符号4,4’の引出線が付された断面部分は、『支柱4,4’を示しているもの』であり、…したがって、この引用文献1には、原審における拒絶査定書において再び御指摘の、『文献1第3図には、本体2の凹所1、1間における断面が、2つの台形状凹部を有する略W字状の断面として記載されている。そして、これらの各凹部は、同図によれば『樋形』と言えることから、引用文献1には、『容器本体におけるヒンジ部に沿った方向に隣り合う二つの個別凹部の間を区画する仕切りが、前記ヒンジ部に沿った形の樋形に形成されている鶏卵包装用容器』が記載されているものと認められる。』との認定は、事実誤認または事実錯誤に因るものと言わざるを得ません。」(平成21年1月15日に特許庁に提出した手続補正書4頁18?36行)
と主張している。
しかしながら、引用例記載の「支柱4,4’」は、本願明細書及び図面に記載された「本体側支柱12」に相当することが当業者にとって明らかであるし、仮に、引用例記載の「支柱4,4’」を「仕切り」ととらえた場合には、「隣り合う二つの個別凹部の間を区画する仕切り」ではなく、「隣り合う四つの個別凹部の間を区画する仕切り」であることも明らかである。また、原審の拒絶査定の「文献1第3図には、本体2の凹所1、1間における断面が、2つの台形状凹部を有する略W字状の断面として記載されている。そして、これらの各凹部は、同図によれば『樋形』と言えることから、引用文献1には、…『…ヒンジ部に沿った方向に隣り合う二つの個別凹部の間を区画する仕切り…』が記載されているものと認められる。」という記載から、原審が引用文献1に記載されていると認定した「二つの個別凹部の間を区画する仕切り」は、第3図に2つ図示された台形状凹部、すなわち、本審決で言う「台形部」であることも明らかである。
したがって、請求人の上記主張は、原審の拒絶の理由を誤解若しくは曲解したことに基づく主張であり、失当であるから、採用することはできない。

4.相違点の検討
本願発明においては、「樋形」が意味する形状が必ずしも明確ではないが、本願明細書段落【0025】に「前記図1,3,4に示した仕切り16及び26の樋形形状は、底の丸い樋形として示したが、この樋形は図5に示したように底を角形または台形状としてもよく、V字形としてもよい。」と記載されており、本願図5には、底部が角形または台形状であり、その上方では、側壁が、角形または台形状の底部の側壁よりも水平に近い角度になっているものが図示されている。
本願発明の実施形態の一例である本願図5に示された樋形形状の断面と、引用発明の台形部の断面とは、本願図5のものでは、前記のように側壁の角度が途中で変化して上方部分の側壁の角度が底部部分の側壁の角度よりも水平に近い角度になっているのに対し、引用発明の台形部では、側壁の角度が底部から上方まで同じである点で相違する。しかしながら、引用発明の台形部の側壁の形状を、上方部分の側壁の角度が底部部分の側壁の角度よりも水平に近い角度にするようなことは、容器の成形性やデザイン等を考慮して、当業者が適宜決定すべき事項であるから、引用発明の台形部を、相違点1に係る本願発明の構成にすることは、当業者が容易に推考し得たことである。
そして、本願発明が奏する効果も、引用発明から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明することができたものである。

なお、鶏卵包装容器本体の隣り合う二つの個別凹部の間を区画する仕切りを、ヒンジ部に沿った形の溝状の形状とすることは、引用例の他にも、例えば特開平7-156935号公報や、実願昭61-151890号(実開昭63-57281号)のマイクロフィルムなどに示されているから、鶏卵包装容器の技術分野おいて、本願出願前に周知の事項であったといえるものである。


したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


5 むすび
以上のとおりであって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2010-01-26 
結審通知日 2010-02-02 
審決日 2010-02-18 
出願番号 特願2005-160684(P2005-160684)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関谷 一夫  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 佐野 健治
谷治 和文
発明の名称 鶏卵包装用容器  
代理人 鹿島 義雄  

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