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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F23G
管理番号 1214423
審判番号 不服2007-32374  
総通号数 125 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-29 
確定日 2010-03-31 
事件の表示 特願2002-328424号「廃棄物処理装置および処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年6月10日出願公開、特開2004-162982号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成14年11月12日に出願され、平成19年6月8日付けの拒絶理由通知に対し、同年8月7日付けで手続補正がなされたが、同年10月22日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年10月30日)、これに対し、同年11月29日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。



第2 平成19年11月29日付け手続補正の却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕

平成19年11月29日付けの手続補正を却下する。

〔理 由〕

1.補正後の請求項1に記載された発明

平成19年11月29日付け手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「一般廃棄物並びに産業廃棄物を1000℃以上で高温溶融させて生成したスラグとメタルの高温溶融物を排出するための排出口をもつ溶融炉を具える廃棄物処理装置において、
前記排出口は、溶融炉の炉体に着脱可能なリング状のインサート部材で構成され、高温溶融物の長時間排出を可能にする高温耐久手段を有し、
該高温耐久手段は、冷却盤や冷却パイプのような冷却部材を内蔵するとともに、排出口と隣接する位置にも冷却部材を配設することを特徴とする廃棄物処理装置。」
と補正された。(以下「本件補正発明」という。下線は当審にて付与。以下同様。)

請求項1についての上記補正は、補正前の請求項1における「高温耐久手段」について、「冷却盤や冷却パイプのような冷却部材を内蔵する」と限定するとともに、補正前の請求項1に記載された「廃棄物処理装置」が、「排出口と隣接する位置にも冷却部材を配設する」ものであるとの限定を付加するものであって、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。


2.引用例

(1)本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭56-116443号(実開昭58-21735号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

a.「本考案は、炭素系可燃物質によつて炉内に形成した高温炉床に産業廃棄物を供給させるべく構成した廃棄物溶融炉の出滓口構造に関する。
上記炉において、溶融処理された高熱のスラグが高速で出滓口から流出する他、その出滓口からは高温ガスの吹出しもあつて、出滓口が経時的に損傷しやすく、…稼働率が低下する欠点があつた。
本考案は、上述の実情に鑑みて、極めて簡単な改造によつて上記欠点を解消できるようにする事を目的とする。」(明細書第2頁第2?17行)

b.「産業廃棄物を溶融処理するキュポラタイプの溶融炉を構成するに、…炉本体(1)の上部側に、産業廃棄物あるいはそれを中間処理した物(以下処理物と称する。)とコークス等の炭素系可燃物質を、混合状態であるいは交互に炉内に供給する二段ダンパー付きのホツパー(4)を設けて、前記炭素系可燃物質によつて炉内に高温炉床(5)を形成させるようにし、そして、前記炉本体(1)の下部側に溶融スラグを取出すための出滓口構造(7)を設け…て、前記高温炉床(5)において処理物を燃焼並びに溶融させる…ようにしてある。」(明細書第2頁第20行?第3頁第16行)

c.「前記出滓口構造(7)を構成するに、第2図に示すように、…出滓口ユニツト(A)を構成し、他方、炉本体(1)の底部側に、前記出滓口ユニツト(A)を挿脱自在に内嵌する開口(15)を形成する…ようにしてあり、前記出滓口ユニツト(A)の少なくとも1個を用意しておく事によつて、…交換すべき出滓口ユニツト(A)を取外すと共に、別途用意の出滓口ユニツト(A)を開口(15)に装着連結する事により、極めて短時間で出滓口構造(7)の補修を行なう事ができ、…ほとんど連続操業の状態を得られると共に、燃料消費の面で極めて経済的であり、しかも、作業性に優れる利点を有するように構成してある。」(明細書第3頁第17行?第4頁第17行)

d.「第3図に示すように、中央部に出滓口(13)を形成した水冷ジヤケツト(18)をして出滓口ユニツト(A)を構成する等、出滓口ユニツト(A)の具体的構造は各種変形可能である。」
(明細書第4頁第18行?第5頁第1行)

したがって、上記記載事項及び第1?3図を総合すると、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる。

「産業廃棄物を高温炉床(5)で溶融処理した高熱のスラグが流出する出滓口(13)をもつ廃棄物溶融炉において、
出滓口(13)は、炉本体(1)に形成された開口(15)に挿脱自在に内嵌されることにより、炉本体(1)に着脱可能な、中央部分に出滓口(13)を形成した水冷ジヤケツト(18)からなる出滓口ユニツト(A)で構成された廃棄物溶融炉。」
(以下「引用発明1」という。)


(2)本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-183073号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

e.「【発明の属する技術分野】本発明は、炉を構成する耐火物の冷却構造に係り、特に、都市ゴミ等の一般廃棄物、産業廃棄物や固形燃料を熱分解及び/又は焼却した残渣を、溶融処理する溶融炉を構成する耐火物の冷却構造とそれを備えた溶融炉に関する。」(段落【0001】)

f.「【従来の技術】都市ゴミ、下水汚泥、あるいはその他の廃棄物等を焼却炉で焼却した時に、焼却灰と集塵灰が発生する…。
…別の灰処理方法として、集塵灰と焼却灰を溶融固化する方法が知られている。この、灰処理方法は、溶融スラグ及び溶融金属を生成するので、減容率が大きい上に、溶融スラグに溶け込んだ有害物質が雨水等に溶出することがなく、これら溶融スラグをそのまま投棄しても、公害上の問題が発生しないことから、近年では非常に注目されている方法である。…。
図4は、従来のプラズマ式の灰溶融炉の断面構成図であり、…灰溶融炉1内に投入された焼却灰11は、灰溶融炉1の炉蓋6に挿入した上部電極7と灰溶融炉1の炉底に埋設した炉底電極8の間に発生させた高温のプラズマ流により加熱して、溶融スラグ12にするようにしている。溶融スラグ12は、炉壁に設けた出滓口10から連続的にオーバーフローして出滓させている。灰溶融炉1の炉壁2及び炉蓋6には、一般にクロミア-アルミナ系(Cr_(2)O_(3)-Al_(2)O_(3))の耐火材が使用される。
しかしながら、図4に示すような灰溶融炉では、溶融スラグ出滓口付近で、溶融スラグの流速が速くなるため、炉壁の耐火物の損耗が増す。このため、図5に示されるように、出滓口付近の耐火物が損耗22し、溶融スラグ出滓口の寿命が、溶融炉内のその他の炉壁の耐火物寿命よりも短くなってしまう。これまで耐火物の損耗が激しい部分の寿命を長くする方法としては、以下の方法が行われていた。即ち、…(2)耐火物を水冷している場合は、冷却水量を上げる、あるいは、冷却水の供給温度を下げる。(3)耐火物を空冷している場合は冷却空気量を上げる、あるいは、冷却空気の供給温度を下げる。これらの方法を実施した場合、損耗が激しい部分の周辺の、損耗が激しくない部分も冷却してしまい、熱量の損失が大きくなってしまい、さらに、耐火物や冷却水用ポンプ電力、冷却空気用ファンの電力などの費用がかかる。」(段落【0002】?【0005】)

g.「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明では、炉を構成する耐火物の冷却構造において、前記耐火物の内部に、該耐火物よりも熱伝導率の高い物質を埋め込むと共に、該部分を冷却する冷却手段を有することとしたものである。…また、本発明においては、前記した耐火物の冷却構造を、溶融炉を形成する耐火物の損耗を抑えたい部分に備えた溶融炉としたものであり、該損耗を抑えたい部分は、溶融炉のスラグ出滓口近傍とすることができる。」(段落【0007】)

h.「図1において、1は焼却灰を溶融処理する灰溶融炉である。2はこの溶融炉の炉壁で、全体が耐火物4により形成されるとともに、外周面は冷却水が流れている水冷ジャケット3で形成されている。6は灰溶融炉1の頂部に設けた炉蓋であり、焼却灰11は、この灰溶融炉1の炉蓋6に設けた灰投入管9から投入される。灰溶融炉1内に投入された焼却灰11は、灰溶融炉1の炉蓋6に挿入した上部電極7と灰溶融炉1の炉底に埋設した炉底電極8の間に発生させた高温のプラズマ流により加熱して、溶融スラグ12にするようにしている。
12は、焼却炉から排出された焼却灰を溶かした1500℃の溶融スラグであり、溶融スラグ12は、炉壁に設けた出滓口10から連続的にオーバーフローして出滓させている。5は高熱伝導物質であり、炉壁2を構成している耐火物4よりも高い熱伝導率の物質を使用している。この熱伝導物質5を、炉壁2を構成している耐火物4の中で損耗が激しい部分に埋め込んでいる。この高熱伝導物質5は、熱伝導率が高いので、冷却ジャケット3による冷却効果が高熱伝導物質全体に広がり、高熱伝導物質周辺の耐火物の冷却効果が上がり、耐火物温度が下がる。これにより、高温の溶融スラグ12に接している耐火物の温度が下がり、耐火物の損耗が減るので、耐火物の寿命を延ばすことができる。 図2は、本発明の別の耐火物の冷却構造を備えた溶融炉の全体構成図であり、…図2では、熱伝導率の高い物質5を埋め込んだ耐火物4部分を、仕切壁21で仕切って、この部分のみを独立した冷却装置17?20によって冷却するようにしている。このように、高熱伝導物質5を埋め込んだ部分のみを別に冷却することにより、よりこの部分の冷却効率を上昇することができ、耐火物寿命を延ばすことができる。」(段落【0010】?【0012】)

したがって、上記記載事項及び第1?3図を総合すると、引用例2には、次の発明が記載されていると認められる。

「一般廃棄物、産業廃棄物を焼却した時に発生した焼却灰を溶融処理して溶融スラグ及び溶融金属を生成し、1500℃の溶融スラグ12を出滓する出滓口10をもつ灰溶融炉1において、
出滓口10は、灰溶融炉1の炉壁に設けられ、
炉壁の耐火物の損耗が激しい溶融スラグ出滓口近傍に、冷却手段により冷却される高熱伝導物質5を埋め込み、高熱伝導物質5周辺の耐火物の冷却効果を上げて耐火物の寿命を延ばすようにした灰溶融炉1。」
(以下「引用発明2」という。)


3.対比

本件補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1における「高温炉床(5)で溶融処理したスラグ」は、本件補正発明における「高温溶融させて生成したスラグ」に相当し、以下同様に、「高温炉床(5)で溶融処理したスラグが流出する出滓口(13)」は「高温溶融物を排出するための排出口」に、「廃棄物溶融炉」は「溶融炉を具える廃棄物処理装置」に、「炉本体(1)」は「溶融炉の炉体」に、それぞれ相当している。
また、引用発明1における「出滓口ユニツト(A)」は、「炉本体(1)に形成された開口(15)に挿脱自在に内嵌されることにより、炉本体(1)に着脱可能」であることから、本件補正発明における「溶融炉の炉体に着脱可能な」「インサート部材」に相当する。
さらに、引用発明1における「出滓口ユニツト(A)」は「水冷ジヤケツト(18)からなる」ものであり、この「水冷ジヤケツト(18)」が出滓口ユニツト(A)を冷却することは明らかであるところ、出滓口を冷却することにより高温溶融物の長時間排出を可能とすることは、当該技術分野において従来より周知の技術的事項であるから(例えば特開2000-283425号公報の段落【0013】参照)、引用発明1における「水冷ジヤケツト(18)」は、本件補正発明における「(冷却盤や冷却パイプのような)冷却部材を内蔵する」、「高温溶融物の長時間排出を可能にする高温耐久手段」に相当するものと言える。
そして、引用発明1における「出滓口ユニツト(A)」は、「中央部分」に「出滓口(13)」が形成されていることから、本件補正発明における「リング状のインサート部材」と、「中央に開口を有する」点で共通する。
すると、本件補正発明と引用発明1とは、次の一致点及び相違点を有するものである。

<一致点>
産業廃棄物を高温溶融させて生成したスラグの高温溶融物を排出するための排出口をもつ溶融炉を具える廃棄物処理装置において、
前記排出口は、溶融炉の炉体に着脱可能な、中央に開口を有するインサート部材で構成され、高温溶融物の長時間排出を可能にする高温耐久手段を有し、
該高温耐久手段は、冷却盤や冷却パイプのような冷却部材を内蔵する
ことを特徴とする廃棄物処理装置。

<相違点>
1) 「高温溶融物」が、本件補正発明においては「一般廃棄物並びに産業廃棄物を1000℃以上で高温溶融させて生成したスラグとメタルの高温溶融物」であるのに対し、引用発明1では「産業廃棄物を高温炉床5で溶融処理したスラグ」であって、「一般廃棄物」を高温溶融させたものではなく、かつ「1000℃以上」で高温溶融させたか否か、「メタル」を含む「高温溶融物」であるか否か不明である点。

2) 溶融炉の炉体に着脱可能な排出口を構成する「中央に開口を有するインサート部材」が、本件補正発明においては「リング状」であるのに対し、引用発明1においては、「リング状」すなわち外形が円形状であるか否か不明である点。

3) 「排出口をもつ溶融炉を具える廃棄物処理装置」が、本件補正発明においては「排出口と隣接する位置にも冷却部材を配設する」ものであるのに対し、引用発明1においてはそのような構成を備えていない点。


4.当審の判断

まず、上記相違点 1) について検討する。
本件補正発明あるいは引用発明1のような、コークスを燃料とする溶融炉を具える廃棄物処理装置の技術分野において、産業廃棄物だけでなく一般廃棄物も処理対象とすることは従来より汎用されている技術的事項であるし、廃棄物を1000℃以上の高温中で溶融し、スラグとメタルを生成することも、当該技術分野において従来より周知の技術である。(例えば特開2001-90923号公報の段落【0002】?【0004】参照。)
したがって、上記周知技術を参照し、引用発明1に、相違点 1) に係る本件補正発明が具備する構成を備えさせることは、当業者が適宜為し得る程度の設計的事項に過ぎない。

次に、上記相違点 2) について検討する。
溶融炉の炉体に設けられた排出口を、外形が円形状となるように形成することは、溶融炉を具える廃棄物処理装置の技術分野において、従来より周知の技術的事項である。(例えば、実願昭53-172941号(実開昭55-89028号)のマイクロフィルムの明細書第4頁第14?17行、実願昭60-153928号(実開昭62-63533号)のマイクロフィルムの第3図等参照。)
したがって、引用発明1に上記周知技術を適用して、排出口を構成するインサート部材(出滓口ユニツト(A))の外形を円形すなわちリング状とし、相違点 2) に係る本件補正発明が具備する構成を備えさせることは、当業者であれば容易に想到し得るものである。

さらに、上記相違点 3) について検討する。
本件補正発明と引用発明2とを対比すると、引用発明2における「1500℃の溶融スラグ12」は本件補正発明における「高温溶融物」に相当し、以下同様に、「1500℃の溶融スラグ12を出滓する出滓口10」は「高温溶融物を排出するための排出口」に、「灰溶融炉1」は「溶融炉」に、「溶融スラグ出滓口近傍」は「排出口と隣接する位置」に、「冷却手段により冷却される高熱伝導物質5」は「冷却部材」に、「埋め込」むことは「配設する」ことに、それぞれ相当している。
よって、引用発明2を本件補正発明の用語を用いて言い換えると、次のようになる。

「一般廃棄物、産業廃棄物を焼却した時に発生した焼却灰を溶融処理して溶融スラグ及び溶融金属を生成し、高温溶融物を排出するための排出口をもつ溶融炉において、
排出口は、溶融炉の炉壁に設けられ、
炉壁の耐火物の損耗が激しい排出口と隣接する位置に、冷却部材を配設して、冷却部材周辺の耐火物の冷却効果を上げて耐火物の寿命を延ばすようにした溶融炉。」

そして、引用発明1と引用発明2は、共に「溶融炉を具える廃棄物処理装置」であって、高温溶融物を排出する排出口付近の高温耐久性を向上させて損傷をなるべく抑える、という共通の課題を有するものであるから、排出口に高温耐久手段(水冷ジヤケツト(A))を有する引用発明1に、さらに引用発明2における「排出口と隣接する位置に冷却部材を配設する」構成(すなわち相違点 3) に係る本件補正発明が具備する構成)を付加することによって、より一層冷却効果を上げて排出口付近の高温耐久性を向上させようとすることは、当業者であれば容易に想到し得るものである。


そして、本件補正発明が奏する作用効果についてみても、引用発明1、2及び周知技術から、当業者が予測し得る程度のものである。


5.結び

以上のとおり、本件補正発明は、引用発明1、2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反し、特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。



第3 本願発明について

1.本願発明

平成19年11月29日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成19年8月7日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「一般廃棄物並びに産業廃棄物を1000℃以上で高温溶融させて生成したスラグとメタルの高温溶融物を排出するための排出口をもつ溶融炉を具える廃棄物処理装置において、
前記排出口は、溶融炉の炉体に着脱可能なリング状のインサート部材で構成され、高温溶融物の長時間排出を可能にする高温耐久手段を有することを特徴とする廃棄物処理装置。」
(以下「本願発明」という。)


2.引用例

本願の出願前に頒布され、原査定における拒絶の理由に引用された引用例1、及び引用例1に記載された引用発明1は、前記「第2〔理由〕2.(1)」に記載したとおりである。


3.対比・判断

本願発明は、前記「第2〔理由〕」で検討した本件補正発明における、「高温耐久手段」についての「冷却盤や冷却パイプのような冷却部材を内蔵する」との限定を省くとともに、「廃棄物処理装置」が「排出口と隣接する位置にも冷却部材を配設する」ものであるとの限定を省くものである。
したがって、本願発明と引用発明1とは、本件補正発明と引用発明1との間の相違点のうち、相違点1), 2)の点において相違し、それ以外の点では一致するものである。

そうすると、本件補正発明と引用発明1との間の相違点1), 2) は、前記「第2〔理由〕4.」に記載したとおり、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、本願発明と引用発明1との間の相違点も、同様の理由により、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願発明が奏する作用効果についてみても、引用発明1及び周知技術から、当業者が予測し得る程度のものに過ぎない。

よって、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


4.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-19 
結審通知日 2010-01-26 
審決日 2010-02-08 
出願番号 特願2002-328424(P2002-328424)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F23G)
P 1 8・ 121- Z (F23G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 高弘  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長浜 義憲
渋谷 知子
発明の名称 廃棄物処理装置および処理方法  

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