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審決分類 |
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 A63B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B |
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管理番号 | 1214804 |
審判番号 | 不服2006-26245 |
総通号数 | 126 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-11-21 |
確定日 | 2010-04-07 |
事件の表示 | 特願2001- 70639「インパクト効率が改善された打撃フェースを有するゴルフクラブヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月30日出願公開、特開2001-299971〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成13年3月13日(パリ条約による優先権主張、平成12年3月14日、米国)の出願であるところ、平成18年4月17日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年7月25日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月21日付けで拒絶査定がなされた。これを不服として、同年11月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出された。 第2 補正について 平成18年11月21日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、本件補正前の請求項1、2、4及び5を、以下のように補正することを含むものである。 <本件補正後の請求項1、2、4及び5> 【請求項1】 上部領域、底部領域、後方領域、及び開口した前部を有するボディーと、 上記ボディーの上記開口前部に配置され、チタン合金材料からなり、0.070×25.4mmから0.200×25.4mmまでの範囲内の板厚を有し、固有周波数が2800Hz以上で4500Hz以下の打撃プレートとを含む、ウッドタイプのゴルフクラブヘッド。 【請求項2】 上記打撃プレートは、2800Hz以上で4000Hz以下の固有周波数を有する、請求項1記載のウッドタイプのゴルフクラブヘッド。 【請求項4】 上記打撃プレートは、4500Hzの固有周波数を有する、請求項1記載のウッドタイプのゴルフクラブヘッド。 【請求項5】 上記打撃プレートは、4000Hzの固有周波数を有する、請求項1記載のウッドタイプのゴルフクラブヘッド。 本件補正前の請求項1、2、4及び5は、平成18年7月25日付けの手続補正(以下「第一補正」という。)により、下記のとおりのものとなっていた。 <本件補正前の請求項1、2、4、5> 【請求項1】 上部領域、底部領域、後方領域、及び開口した前部を有するボディーと、 上記ボディーの上記開口前部に配置され、チタン合金材料からなり、0.070×25.4mmから0.200×25.4mmまでの範囲内の板厚を有し、固有周波数が2800Hzよりも大きく4500Hzよりも小さい打撃プレートとを含む、ウッドタイプのゴルフクラブヘッド。 【請求項2】 上記打撃プレートは、2800Hzよりも大きく4000Hzよりも小さい固有周波数を有する、請求項1記載のウッドタイプのゴルフクラブヘッド。 【請求項4】 上記打撃プレートは、略4500Hzの固有周波数を有する、請求項1記載のウッドタイプのゴルフクラブヘッド。 【請求項5】 上記打撃プレートは、略4000Hzの固有周波数を有する、請求項1記載のウッドタイプのゴルフクラブヘッド。 (当審注:下線は当審による。) 拒絶査定において原審の審査官は下記の点を指摘している。 <審査官の指摘事項> 「なお、上記手続補正書にて、『固有周波数は、2800Hz以上4500Hz以下』との記載を、『固有周波数が2800Hzよりも大きく4500Hzよりも小さい』とする補正などがなされているが、2800Hz及び4500Hzを数値範囲から排除する根拠が把握できず、新規事項の追加と判断される虞がある。 なお、上記手続補正書にて『略4500Hz』等の記載を追加しているが、数値範囲を4500Hzと限定する根拠が把握できず、新規事項の追加と判断される虞がある。」 本件補正は、請求項1の記載における「2800Hzよりも大きく4500Hzよりも小さい」を「2800Hz以上で4500Hz以下」に補正し、請求項2の記載における「2800Hzよりも大きく4000Hzよりも小さい」を「2800Hz以上で4000Hz以下」に補正し、請求項4における「略4500Hz」を「4500Hz」に補正し、請求項5における「略4000Hz」を「4000Hz」と補正とするものであるところ、上記拒絶査定時の審査官による指摘を受けてのものであり、明りょうでない記載の釈明に該当すると認める。 したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、かつ、同条第3項の規定に適合するので、適法になされたものと認める。 第3 本願発明について (1)本願発明 本願に係る発明は、平成18年11月21日付け手続補正書によって補正された、特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は次のとおりである。 (本願発明) 「上部領域、底部領域、後方領域、及び開口した前部を有するボディーと、 上記ボディーの上記開口前部に配置され、チタン合金材料からなり、0.070×25.4mmから0.200×25.4mmまでの範囲内の板厚を有し、固有周波数が2800Hz以上で4500Hz以下の打撃プレートとを含む、ウッドタイプのゴルフクラブヘッド。」 (2)刊行物の記載事項等 (2-1)引用例に記載された事項について 原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である、特開平11-192329号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項の記載がある。 (ア)特許請求の範囲 「【請求項1】ボールを打撃するフェース面を具えるフェース板と、このフェース板を前面に配するヘッド本体とを有し、かつ内部に中空部が形成されるゴルフクラブ用ヘッドであって、 前記フェース板の裏面側に該裏面と向き合う補強板を前記中空部に配するとともに、この補強板と前記フェース板との間に、ボールの強打撃により変形したフェース板の裏面がこの補強板に当接しうる厚さの空隙部を形成したことを特徴とするゴルフクラブ用ヘッド。 【請求項2】前記フェース板は、2.0?2.5mmのチタン合金からなり、かつ前記補強板とフェース板との間の空隙部の厚さが0.6?1.0mmであることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブ用ヘッド。」 (イ)段落【0001】?【0004】 「【発明の属する技術分野】本発明は、フェース板の厚さを薄くできかつその破損を防止しうるゴルフクラブ用ヘッドに関する。 【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】打球の飛びを向上する技術として、本件出願人は特公平4-56630号公報に示されるようないわゆる「インピーダンスマッチング理論」を提案している。この理論は、ゴルフクラブヘッドのフェース面の固有振動数を下げ、ボールの固有振動数に近づけるものである。これによって、ボール打撃時のエネルギー損失を減らすことができ、ボールに伝わる運動エネルギーが大きくなって飛距離を向上させることができる。 一般にゴルフクラブ用ヘッドのフェース面の固有振動数をボールの固有振動数に近づけるためには、フェース面の固有振動数を下げなければならず、そのためにはフェース面を構成するフェース板の厚さを極力薄くすることが効果的であることが知られている。しかしながら、近年のヘッド内部を中空としたゴルフクラブ用ヘッドでは、フェース板の厚さを薄くし過ぎると、例えば力のあるゴルファーがボールを強打撃した場合には、フェース板が大きく変形して破損してしまうという問題がある。 本発明は、このような問題点に鑑み案出されたもので、フェース板の厚さを小にして打球の飛びを向上させることができ、かつフェース板の破損を効果的に防止しうるゴルフクラブ用ヘッドを提供することを目的としている。」 (ウ)段落【0007】 ?【00015】 「【発明の実施の形態】以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。図1、図2及び図1のA-A断面である図3に示すように、本実施形態のゴルフクラブ用ヘッド1(以下、単に「ヘッド1」ということがある)は、ボールを打撃するためのフェース面2aを具えるフェース板2と、このフェース板2を前面に配するヘッド本体3とを有し、かつ内部に中空部4が形成された例えばドライバーなどのウッド型のゴルフクラブ用ヘッドを例示している。 そして、本発明では、前記フェース板2の裏面2b側に該裏面2bと向き合う補強板5を前記中空部4に配するとともに、この補強板4と前記フェース板2との間に、ボールの強打撃により変形したフェース板2の裏面2bがこの補強板5に当接しうる厚さSの空隙部6を形成したことを特徴としている。 このようなヘッド1は、フェース板2の厚さを小にしてもその破損を効果的に防止することができるから、打球の飛距離の向上が可能となる。 すなわち、フェース板2の厚さdが薄いためにフェース面2aの固有振動数をボールのそれに近づけることができるから前述のインピーダンス理論に基づき打球の飛距離が向上するとともに、例えばヘッドスピードが遅いゴルファーがボールを打撃した場合(以下、単に「弱打撃」ということがある。)ではフェース板2が薄くてもその変形量が小さくフェース板2の変形が弾性変形内に止まるため、フェース板2は破損しない。またフェース板2の変形量が小さいと、ボール打撃時の変形したフェース板2の裏面2bが前記補強板5にも当接せず、打撃時のエネルギーロスを生じることがないため、ヘッド1の運動エネルギーが効率良くボールに伝達される。 他方、ヘッドスピードが速いゴルファーがボールを打撃する強打撃においては、図3に一点鎖線で示すようにフェース板2の変形量が大きいものとなるが、変形したフェース板2の裏面2bが前記補強板5に当接するため、それ以降のフェース板2の変形を阻止でき、フェース板2の破損を効果的に防止しうる。 一般に殆どのゴルファーのヘッドスピードが概ね35?50(m/s)に含まれるという実状に鑑み、本実施形態では前記弱打撃、強打撃の境界をヘッドスピード40m/sとしているものを例示する。 すなわち、ヘッドスピードが40m/s以下、好ましくは35?40m/s、さらに好ましくは37?40m/sの場合において、ボールの打撃時にヘッド1のフェース板2と前記補強板5とが当接しないよう前記空隙部の厚さSを定める。他方、ヘッドスピードが40m/sを超え50m/s以下、さらに好ましくは40m/sを超え48m/s以下の場合において、ボールの打撃時にヘッド1のフェース板2と前記補強板5とが当接するよう前記空隙部6の厚さSを定めるのが望ましい。 またフェース板2の厚さdは、上述の作用を奏する範囲で極力薄くすることが望ましいが、フェース板2の厚さdが小になり過ぎると、前記弱打撃でもフェース板2が破損する場合があり、逆にフェース板の厚さが大になり過ぎると、前記インピーダンスマッチング理論に基づき打球の飛距離向上が望めない傾向がある。 本実施形態では、ヘッド1は、ヘッド体積が250?300cc、フェース板2、ヘッド本体3及び補強板5はいずれもチタン合金、例えばいわゆる6-4チタン(Ti-6%Al-4%V合金)で構成されているものを例示している。またフェース面2aの高さH(図2に示す)は約40mmとしたものを例示している。この場合、フェース板2の厚さdは2.0?2.5mmの範囲まで薄くすることができる。」 (エ)段落【0020】 「このようなヘッド1は、例えばフェース板2、ヘッド本体3、補強板5などをそれぞれ鋳造、鍛造などの各種の成形法により製造し、ヘッド本体3の内面に形成された凹部7に前記補強板5を圧入して強固にカシメ嵌合するとともに、ヘッド本体3にフェース板2を溶着、かしめ嵌合等により接合して得られる。ただし、ヘッド1の製造方法は、これに限定されるものではなく、例えば先に空隙部6を形成したフェース板2と補強板5とが一体となる複合体を形成し、これをヘッド本体3に装着する方法や、前記かしめ嵌合に代えて接着剤などを使用する方法など種々の方法が採用できる。」 (オ)段落【0029】 「【発明の効果】以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、ヘッドの中空部に、フェース板の裏面側で該裏面に沿ってのびる補強板を配するとともに、この補強板と前記フェース板との間に、ボールの強打撃により変形したフェース板の裏面がこの補強板に当設可能な空隙部を形成したことにより、フェース板を薄くしフェース面の固有振動数を下げることにより、打球の飛距離を向上しうることが可能であるとともに、ボールの強打撃時においても補強板がフェース板の変形を阻止してフェース板の破損を効果的に防止しうる。」 (カ)【図1】、【図2】及び【図3】 図1には発明の実施形態を示すヘッドの平面図が、図2には当該ヘッドのフェース面から見た図が、図3には図1の断面図が、それぞれ図示されている。 (2-2)補足例に記載された事項について 本願優先日前に頒布された刊行物であって、上記記載事項(イ)において上記引用例が引用している特公平4-56630号公報(以下、「補足例」という。)には、以下の事項の記載がある。 (キ)特許請求の範囲の部分 「1 打撃する部分のメカニカルインピーダンスが、被打撃物のメカニカルインピーダンスの極小値を示す周波数の近傍の周波数領域に於て、極小値を示すように、打撃主要部乃至全体を構成したことを特徴とする打撃具。 2 ボールを直接に打撃する部分のメカニカルインピーダンスが、周波数領域0?10000ヘルツ内に於て極小値を示すように、打撃主要部乃至全体を構成した特許請求の範囲第1項記載の打球具。 3 極小値を示す周波数領域が、1500?8000ヘルツである特許請求の範囲第1項記載の打球具。 4 極小値を示す周波数領域が、2000?6000ヘルツである特許請求の範囲第1項記載の打球具。」 (ク)第1頁左欄第16行-第2頁左欄第15行 「本発明は、スポーツ用の打球具に関する。 一般に、打球具として、ゴルフクラブを例にとつて説明すると、ゴルフボールを打撃するゴルフクラブの作用は次のように整理できる。即ち、 弾道への影響…スピン・打出角・方向性への影響 ボール初速への影響… ヘツド速度への影響 反撥係数への影響 このうち、スピン・打出角・方向性に関しては、クラブヘツドの重心廻りの慣性モーメントに焦点を当てて力学的に説明されている。また、ヘツド速度に関しては、スウイングと関連づけてシヤフトに焦点を当てて説明されている。従来からこのシヤフトの固有振動数を、クラブセツト内で同一にしたり、一定の差をつけることで、「振りやすさ」「同じリズムで振れる」といつた作用効果が挙げられているが、理論的には明らかにされていないのが現状である。 特に、反撥係数の問題は、ゴルフボールとゴルフクラブとの相互間の問題であつて、衝突時(打撃時)に、クラブ(ヘツド)がこの反撥係数へ及ぼす影響については、従来、全く明らかにされていなかつた。 ところで、従来のゴルフクラブの構成素材としては、バーシモン(柿材)、ABS樹脂、カーボン繊維補強樹脂(以下CFRPと略す場合もある)、アルミ、ステンレス等が使用されてきた。これ等の素材について、従来は硬いもの程、ゴルフボールとの反撥が良く、ボール初速が大きいと言われていた。 バーシモンの替りに青ダモ圧縮材が用いられ、またカーボン繊維補強樹脂(CFRP)ではその繊維含有率の高いものが求められ、従来から「硬いから反撥係数が大きい」と考えられてきた。 本発明は従来からのこのような常識を破つたもので、特に長年月にわたる多大の実験を繰返した結果、ボールに対して反撥を最も高くし、ボール初速を最大とするには最適の硬さが存在し、この最適硬さを越えると逆に反撥が悪くなることが判つた。さらに進んで、ボール及び打球具のメカニカルインピーダンスが関与することを、究明した。 本発明の目的とするところは、ボールを打撃したときの反撥係数を増加し、ボール初速を最大に近づける打球具を提供するにある。そこで、本発明の特徴とする処は、打撃する部分のメカニカルインピーダンスが、被打撃物のメカニカルインピーダンスの極小値を示す周波数の近傍の周波数領域に於て、極小値を示すように、打撃主要部乃至全体を構成した点にある。」 (ケ)第2頁左欄第16行-同頁左欄第40行 「以下、図示の実施例に基づき本発明を詳述する。 まず、機械系のメカニカルインピーダンスについて説明すると、「ある点に力が作用した時の他の点の応答との比である」と定義される。即ち、入力をF、応答速度をVとすると、メカニカルインピーダンスZは、 Z=F/V で定義される。 第3図は、一般のゴルフボールのメカニカルインピーダンスZの絶対値を縦軸にとり、横軸に周波数をとつて、ゴルフボールのメカニカルインピーダンスがどのように変化するかを例示する図である。測定には機械振動の分野で公知の周波数分析機(FFTアナライザ)を用いて分析した。(例えば横河ヒユーレツトパツカー(株)製の5420A型が使用される。) この第3図に於て、周波数領域0?10000ヘルツ(Hz)内で、2?5個の極小値P…をゴルフボールが有していることが分る。しかも最初の極小値Pは、周波数Nが約3000ヘルツ近傍である。 この極小値P…を示す周波数は、いわゆる固有振動数であり、構造物(ボール)が有する質量-バネ系によつて決まるものである。」 (コ)第3図及び第4図 第3図にはゴルフボールのメカニカルインピーダンス特性曲線の図が、第3図及び第4図には発明の一実施例の平面図及び斜視図が、それぞれ図示されている。 (2-3)引用例に記載された発明の認定について 引用例に記載のウッド型のゴルフクラブ用ヘッドにおいては、フェース板を前面に配するヘッド本体は内部に中空部が形成されるものであり、図面も参酌すると、引用発明のヘッド本体は「上部領域、底部領域、後方領域、及び開口した前部を有する」ということができ、また、ヘッド本体は「フェース板を開口した前面に配したヘッド本体」ということができる。そうすると、引用例には、下記の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。 (引用発明) 「2.0?2.5mmの厚さのチタン合金からなりボールを打撃するフェース面を具えるフェース板と、 上部領域、底部領域、後方領域、及び開口した前部を有し、前記フェース板を開口した前面に配したヘッド本体とを有し、かつ内部に中空部が形成されるゴルフクラブ用ヘッドであって、 前記フェース板の裏面側に該裏面と向き合う補強板を前記中空部に配するとともに、この補強板と前記フェース板との間に、ボールの強打撃により変形したフェース板の裏面がこの補強板に当接しうる厚さの空隙部を形成したウッド型のゴルフクラブ用ヘッド。」 (3)本願発明と引用発明の対比 引用発明における「ヘッド本体」、「フェース板」が、それぞれ本願発明における「ボディー」、「打撃プレート」に相当することは明らかである。 本願発明における「0.070×25.4mmから0.200×25.4mmまでの範囲」は計算をすると、「1.778mmから5.080mmまでの範囲」となるので、引用発明における2.0?2.5mmの範囲は前記本願発明の数値の範囲に含まれる。 そうすると両者は、 「上部領域、底部領域、後方領域、及び開口した前部を有するボディーと、 上記ボディーの上記開口前部に配置され、チタン合金材料からなり、0.070×25.4mmから0.200×25.4mmまでの範囲内の板厚を有する打撃プレートとを含む、ウッドタイプのゴルフクラブヘッド。」の点で一致し、 次の点で相違している。 (相違点) 本願発明においては、打撃プレートについて、その固有周波数が2800Hz以上で4500Hz以下であることの特定があるのに対して、引用発明においては打撃プレートの固有周波数が不明である点。 (4)相違点の検討・判断 引用例においては、ゴルフクラブヘッドのフェース面の固有振動数(本願発明の「固有周波数」に相当する。)をボールの固有振動数に近づけることにより、ボール打撃時のエネルギー損失を減らすことでボールに伝わる運動エネルギーが大きくなって飛距離を向上させることができる旨記載されている(前記(イ)、(ウ)、(エ)、(オ)参照)。固有振動数についての具体的数字の開示はないものの、その基礎となる技術内容について補足例(特公平4-56630)を引用している(前記(イ)参照)。そこで、補足例を参酌すると、ゴルフボールの固有振動数が3000ヘルツ近傍であることが記載されている(前記(ケ)、(コ)参照)。してみれば、引用例が引用する補足例の記載を参照して、引用発明の固有振動数を3000ヘルツ近傍に設定することは、当業者が当然に試みるところであるということができる。そしてこの値は、本願発明の数値範囲である「2800Hz以上で4500Hz以下」の数値範囲に含まれるものである。 したがって、本願発明は、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものである。 第4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1係る発明は、本願優先日前に頒布された刊行物である上記引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-11-09 |
結審通知日 | 2009-11-10 |
審決日 | 2009-11-24 |
出願番号 | 特願2001-70639(P2001-70639) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63B)
P 1 8・ 574- Z (A63B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山崎 仁之 |
特許庁審判長 |
北川 清伸 |
特許庁審判官 |
森林 克郎 岡田 吉美 |
発明の名称 | インパクト効率が改善された打撃フェースを有するゴルフクラブヘッド |
代理人 | 伊東 忠彦 |