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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1214819
審判番号 不服2006-27729  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-12-07 
確定日 2010-04-08 
事件の表示 特願2004- 32373「画像符号化装置,画像符号化方法,画像復号化装置及び画像復号化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月17日出願公開、特開2004-173313〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由

第I部 経緯


1 手続

本件出願は、平成8年8月22日(優先権主張平成7年8月23日、特願平7-214675号)の出願である特願平8-221592号の一部を、平成16年2月9日に新たな特許出願(特願2004-32373号)としたものであって、平成18年6月9日付けで拒絶理由が通知され、平成18年11月2日付けで拒絶査定がなされたものである。

本件は、上記拒絶査定を不服として平成18年12月7日付けで請求された拒絶査定不服審判であり、平成18年12月27日付けで手続補正(明細書、特許請求の範囲又は図面について請求の日から30日以内にする補正)がなされた。


2 拒絶査定

拒絶査定の理由は、概略次のようなものである。

本件出願の請求項1ないし9に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物1:特開平07-099603号公報
刊行物2:特開平06-098314号公報



第II部 平成18年12月27日付け手続補正の却下の決定


補正却下の決定の結論

平成18年12月27日付け手続補正を却下する。


補正却下の理由


1 平成18年12月27日付け手続補正

平成18年12月27日付け手続補正(以下、本件補正という)は、特許請求の範囲の請求項6(補正前)を請求項3(補正後)に補正する補正を含む。

1.1 本件補正前の請求項

本件補正前請求項である、平成16年2月9日付けの願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項6(以下、「本件補正前請求項6」という。)に記載される発明は、以下のとおりものである。

「【請求項6】
画面内符号化画像を少なくとも1枚有する画面群構造を形成するように符号化された動画像を復号する画像復号装置において、
上記動画像を復号する復号手段と、
上記復号された動画像に冗長フィールドを挿入する挿入手段と、
上記各画面群構造内の最初の画像情報が、予め決められたフィールドパリティとされていることに基づいて、上記画像情報の復号化を制御する制御手段と
を有することを特徴とする画像復号化装置。」

1.2 本件補正後の請求項

前記1.1の内容について、出願人は本件補正前請求項6に係る発明を、本件補正において、特許請求の範囲の請求項3に係る発明として、以下に記載されるように補正している。

「【請求項3】
画面内符号化画像を少なくとも1枚有する画面群構造を形成するように符号化された動画像を復号する画像復号装置において、
上記動画像を復号する復号手段と、
上記復号された動画像に冗長フィールドを挿入する挿入手段と、
最初の画像情報のフィールドパリティを示す第一の付属情報並びに冗長フィールドを省略したことを示す第二の付属情報、及び上記各画面群構造内の最初の画像情報が、予め決められたフィールドパリティとされていることに基づいて、上記画像情報の復号化を制御する制御手段と
を有することを特徴とする画像復号化装置。」

1.3 補正事項

上記特許請求の範囲に係る補正は、次の補正事項からなる。

「上記各画面群構造内の最初の画像情報が、予め決められたフィールドパリティとされていることに基づいて、上記画像情報の復号化を制御する制御手段」(補正前)を「『最初の画像情報のフィールドパリティを示す第一の付属情報並びに冗長フィールドを省略したことを示す第二の付属情報、及び』上記各画面群構造内の最初の画像情報が、予め決められたフィールドパリティとされていることに基づいて、上記画像情報の復号化を制御する制御手段」(補正後)とする補正。(具体的には、上記『』部分が付加された。)


2 補正の検討

2.1 補正事項の検討

本件補正事項は、画像情報の復号化を制御するに際して、「上記画像情報の復号化を制御する」ことに、「上記各画面群構造内の最初の画像情報が、予め決められたフィールドパリティとされていること」を、「及び」で加えて「最初の画像情報のフィールドパリティを示す第一の付属情報並びに冗長フィールドを省略したことを示す第二の付属情報」にも基づくように限定したものである。
該加えられた2つの付属情報にも基づくとする限定は、「復号化を制御する制御手段」についての機能の一部を限定するものであるから、特許法第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであり、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。したがって、本件補正事項は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮に該当する。

3 独立して特許を受けることができる発明であるかの検討

上記のとおり、本件補正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、さらに、本件補正に係る発明が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか(独立して特許を受けることができる発明であるか)について検討する。

3.1 補正後発明

本件補正後の請求項3に係る発明は、平成18年12月27日付け手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、該補正後の特許請求の範囲の請求項3に係る発明(以下「補正後発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項3】
画面内符号化画像を少なくとも1枚有する画面群構造を形成するように符号化された動画像を復号する画像復号装置において、
上記動画像を復号する復号手段と、
上記復号された動画像に冗長フィールドを挿入する挿入手段と、
最初の画像情報のフィールドパリティを示す第一の付属情報並びに冗長フィールドを省略したことを示す第二の付属情報、及び上記各画面群構造内の最初の画像情報が、予め決められたフィールドパリティとされていることに基づいて、上記画像情報の復号化を制御する制御手段と
を有することを特徴とする画像復号化装置。」

ここで、上記請求項3に記載の「画面内符号化画像を少なくとも1枚有する画面群構造」、「最初の画像情報のフィールドパリティを示す第一の付属情報」並びに「冗長フィールドを省略したことを示す第二の付属情報」、及び「各画面群構造内の最初の画像情報」という構成の文言は、本件補正後の明細書の詳細な説明に明記されていないため、当該構成が具体的にどのようなものを含む概念であるのか検討する。

補正後明細書には該構成に係る次の記載がある。

(以下、補正後明細書の記載)

【0010】
次に、いわゆるMPEG2ではインタレースフレームを符号化する方法を標準化しており、各符号化インタレースフレームのヘッダ情報に、そのインタレースフレームを画面表示する場合に、トップフィールド(Top field)及びボトムフィールド(Bottom field)のどちらをはじめに出力するかを示すフラグである、トップフィールドファーストフラグ(top fieldfirst flag)を伝送する。このフラグが「1」のときトップフィールドを先に表示し、該フラグが「0」のときボトムフィールドを先に表示するようになっている。

【0013】
3:2プルダウンされた動画像を符号化する場合、原入力画像から3フィールドで読み出されたコマを検出し、冗長な繰り返しフィールドを取り除き、これを符号化しないことでデータを削減する。図11の(c)は、原入力画像から冗長フィールドを除去する例を示している。そして、MPEG2では、それぞれのフレームについて、上記トップフィールドファーストフラグ、及び、符号化側で冗長フィールドを除去したことを示すリピートファーストフィールドフラグ(repeat first field flag)を伝送する。
【0014】
図11の(c)の例では、トップフィールドファーストフラグは、1番目と2番目のフレームではトップフィールドが先に表示されるため「1」であり、3番目と4番目のフレームではボトムフィールドが先に表示されるため「0」となる。また、リピートファーストフィールドフラグは、2番目と4番目のフレームでは、冗長フィールドが除去されるので「1」となり、それ以外は、冗長フィールドが存在しないため「0」となる。
【0015】
次に、復号器側では、図11の(f)に示すようにトップフィールドファーストフラグ及びリピートファーストフィールドフラグを検出し、原入力画像と同じ3:2プルダウンのパターンをもつ動画像を再構成する。すなわち、トップフィールドファーストフラグにより、トップフィールド及びボトムフィールドのうち、どちらのフィールドを先に出力するかを判断し、リピートファーストフィールドフラグにより、繰り返しフィールドを出力するか否かを決定する。

【0039】
まず、本発明に係る画像符号化方法及び画像符号化装置は、それぞれ図1に示すような画像記録再生装置の記録系1に適用することができる。この記録系1は、例えば映画フィルムに記録された各コマの再生信号をテレビジョン信号に変換して出力するシネマ/テレビジョン変換装置(テレシネ装置)からの画像データを、いわゆるMPEG2方式に基づいて圧縮符号化して光ディスク2に記録するものであり、該テレシネ装置から供給される画像データ中、後に説明する冗長フィールドが存在する場合この冗長フィールドを検出すると共に、トップフィールドファーストフラグ(top_field_first_flag)及びリピートファーストフィールドフラグ(repeat_first_field_flag)を出力する冗長フィールド検出器3を有している。
【0040】
また、上記記録系1は、上記冗長フィールド検出器3からの検出出力が供給された場合、上記画像データから冗長フィールドを除去する冗長フィールド除去器4と、上記画像データを、圧縮符号化処理を行う1単位である処理ブロック単位に変換するスキャンコンバータ5と、上記冗長フィールド検出器3から供給されるトップフィールドファーストフラグ及びリピートファーストフィールドフラグに基づいて画像データの圧縮符号化タイプを制御するための画像符号化タイプデータを出力すると共に、各グループ・オブ・ピクチャ(GOP:Group Of Picture)の識別子としてのGOPスタートコードを出力するコントローラ8とを有している。
【0041】
また、上記記録系1は、上記トップフィールドファーストフラグ,リピートファーストフィールドフラグ,画像符号化タイプデータに基づいて、画像データに圧縮符号化処理を施して光ディスク2に記録する符号化器7を有している。

【0043】
上記3:2プルダウン処理を4コマMF1?MF4で繰り返し行うことにより、図8の(b)に示すようにコマMF2,コマMF6・・・にトップフィールド(TF)の冗長フィールド(TF´)が形成され、コマMF4,コマMF8・・・にボトムフィールド(BF)の冗長フィールド(BF´)が形成される。このため、冗長フィールド検出器3は、2フィールド間の等しさの度合に閾値を設け、例えば2フィールド間の画素の絶対値差分和が所定の閾値より小さい場合にそのフィールドは冗長フィールドであると判断することにより、フィールドパリティ(トップフィールド又はボトムフィールド)の同じ連続した2フィールドが繰り返された画像であるか否かを検出する。そして、そのフィールドが冗長フィールドである場合は、例えば「0」の検出出力を、又そのフィールドが冗長フィールドでない場合は「1」の検出出力を、それぞれ冗長フィールド除去器4に供給する。

(以上、補正後明細書の記載)

上記補正後明細書段落【0039】に記載されるように、補正後発明に係る光ディスク2に記録されるデータのフォーマットはMPEG2方式であり、該MPEG2方式に係るMPEG2ビデオ規格は、補正後発明の属する技術の分野の通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)に知られているものである。
該MPEG2ビデオ規格では、画像データは、データ構造が6層とされており、該画像データのランダムアクセスを可能とするために、フレーム内符号化画面が少なくとも1枚入った画面群構造であるGOP(Group Of Picture)を形成することが、該データ構造のGOP層において定義されている。
したがって、上記請求項3に記載の「画面内符号化画像を少なくとも1枚有する画面群構造」は「GOP」を含むといえる。

また、上記ピクチャ層のヘッダ情報のピクチャ符号化機能拡張(Picture Coding Extension)部において、ピクチャがフレーム構造である場合、最初のフィールドが上位フィールドであるのか下位フィールドであるのかを示すTFF(Top Field First)、および、2:3プルダウンの際に使われるRFF(Repeat First Field)というフラグを記録することができるようになっている。(例えば、参考文献「藤原洋監修,ポイント図解式 最新MPEG教科書,株式会社アスキー,1994年 8月 1日,p.155-165」参照。)
そして、上記補正後明細書の記載から、補正後発明でも、この2つのフラグを利用しており(段落【0041】)、「トップフィールドファーストフラグ」は「そのインタレースフレームを画面表示する場合に、トップフィールド(Top field)及びボトムフィールド(Bottom field)のどちらをはじめに出力するかを示すフラグ」であり、「リピートファーストフィールドフラグ」は、「符号化側で冗長フィールドを除去したことを示すフラグ」であり(段落【0010】、【0013】-【0015】)、補正後発明の「フィールドパリティ」とは、「トップフィールドかボトムフィールド」のどちらかである(段落【0043】)。
してみると、補正後発明の「最初の画像情報のフィールドパリティを示す第一の付属情報」は、ピクチャ符号化機能拡張部に記録される上記「トップフィールドファーストフラグ」(TFF)を含み、同様に「冗長フィールドを省略したことを示す第二の付属情報」は、上記「リピートファーストフィールドフラグ」(RFF)を含むといえる。
したがって、上記請求項3に記載の「最初の画像情報のフィールドパリティを示す第一の付属情報」は、ピクチャ符号化機能拡張部に記載される「トップフィールドファーストフラグ」を含み、同様に「冗長フィールドを省略したことを示す第二の付属情報」は、「リピートファーストフィールドフラグ」を含むといえる。


3.2 刊行物の記載

3.2.1 特開平7-99603号公報

特開平7-99603号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

(以下、刊行物1の記載)

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、動画像信号(ビデオ信号)を符号化するビデオ信号符号化方法及びそれに対応するビデオ信号符号化装置と、この符号化されたデータを復号化する復号化方法及びそれに対応するビデオ信号復号化装置と、符号化されたデータが記録されるビデオ信号記録メディアに関するものである。
【0002】
【従来の技術】動画像の代表的な高能率符号化方式として、MPEG(蓄積用動画像符号化)方式がある。これは、ISO-IEC/JTC1/SC2/WG11にて議論され標準案として提案されたものであり、動き補償予測符号化とDCT(Discrete Cosine Transform)符号化を組み合わせたハイブリッド方式が採用されている。

【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記MPEGは、基本的にノンインタレース信号を対象とした符号化技術であるため、インタレース信号に適用しようとすると情報圧縮の効率上、問題が生ずる。
【0005】ここで、上記インターレース信号として、例えば、映画などのフィルムソースをインタレースビデオ信号に変換したものを例に挙げて説明する。この映画等のフィルムソースをインターレースビデオ信号に変換する場合(いわゆるテレシネ変換)は、いわゆる2-3プルダウン(pulldown)という手法が広く用いられている。上記2-3プルダウンの原理を図18に示す。

【0010】そこで、本発明は、上述したようなことに鑑み、2-3プルダウンの手法を用いるテレシネ変換により得られたビデオ信号に対して、効率の良い符号化を可能とするビデオ信号符号化方法及び装置、これに対応するビデオ信号復号化方法及び装置、さらにその符号化データが記録されるビデオ信号記録メディアを提供することを目的としている。

【0021】すなわち、言い換えれば、本発明は、(1)映画などのフィルムソースを2-3プルダウン(pulldown)により変換して、60Hzのフィールド単位で入力されてくるビデオ信号に対し、2-3プルダウンにおいて重複されているフィールドを検出し、その検出信号に従って、その重複するフィールドを取り除き、レート変換により24Hzのフレームを単位とする画像信号に変換し、フレームを単位として画像の符号化を行なえることを特徴とする画像処理装置(動画像ビデオ信号符号化装置)を提供し、(2)符号化された情報から24Hzのフレームを単位としたノンインタレースの画像を復号し、レート変換により60Hzのフィールド単位のビデオ信号に変換し、再生することを特徴とする画像処理装置(動画像ビデオ信号復号化装置)を提供するものである。

【0046】先ず、符号化装置100の説明をする。60Hzのビデオ信号VIは、2-3プルダウン検出回路102に送られる。ここでは、重複されているフィールドを検出する。その検出信号であるフィールドモード変更信号FMCが重複したフィールドを示している場合には、次のレート変換回路103によって、上記の重複しているフィールドが取り除かれる。その出力がフィールド順序入れ換え回路104に送られる。
【0047】フィールド順序入れ換え回路104は、レート変換されたフィールドを符号化する順になるように順序を入れ換える。当該変換された画像信号は、符号器105によって圧縮や符号化処理が行われ、その符号化出力はECC回路106で誤り訂正符号が付加された後、変調回路107によって変調され、メディア108に記録される。また、本実施例では、同時にそのフレームの表示方法を示すフラグ(後述するDSO、DFN)を符号化しメディア108に記録するようにする。
【0048】次に、復号化装置101の説明をする。メディア109に記録された信号は、取り出され、復調回路110によって復調される。その復調信号はECCデコード回路111によってエラーが訂正された後、復号器112によって24Hzのフレームを単位とした画像として復号化される。
【0049】その復号化出力は、レート変換回路113によって、元画像の時系列の順に並び替えられ、60Hzのフィールド信号に変換され、これにより60Hzのビデオ信号VOを再生することができる。

【0053】また、本実施例のレート変換回路103は、フィールドの出力順を示す信号DSO(後述するtop_field_first)をも出力する。当該信号DSOは、DSO=1であるフレームの場合には後の表示の際に第1フィールドを先に表示し、ついで第2フィールドを表示することを示す信号である。また、DSO=0であるフレームは第2フィールドを先に出力し、ついで第1フィールドを出力することを示すことになる。なお、当該信号DSOは0または1の値のみをとる1ビットのフラグである。
【0054】さらに、レート変換回路103は、あるフレームを表示する際に、2フィールドを表示するかまたは3フィールド表示するかを示すフラグDFN(後述するnumber_of_field_displayed_code)をも出力する。当該フラグDFNは、DFN=1の場合、当該フレームが3フィールド表示されることを示すフラグである。これに対し、DFN=0の場合、当該フレームが2フィールド表示されることになる。なおDFNは0または1のみをとる1ビットのフラグである。

【0082】(第1の記録方法)MPEG2において、画像シーケンスの先頭に位置する後述するシーケンスヘッダには、そのシーケンスがノンインタレース画像であることを示すフラグ(non_interlaced_sequence)及びピクチャレート(frame_rate)が記録されている。したがって、可変長符号化器406はframe_rateを24Hzまたは23.976Hzに設定し、non_interlaced_sequenceを0に設定する。
【0083】次にどのフィールドを繰り返して表示するかを示すフラグであるが、これはレート変換回路103から入力されるフラグDSO、DFNを用いる。このDSO(top_field_first)およびDFN(number_of_field_displayed_code)をピクチャヘッダに記録するようにする。ここで、DSO=1の時は、第1フィールドを先に表示する。またDSO=0の時は、第2フィールドを先に表示する。さらにDFN=0の時は、2フィールド表示を行う。また、DFN=1の時は、3フィールド表示を行なう。

【0109】さらに、top_field_firstは1ビットのフラグで、このビットの意味はピクチャストラクチャに依存する。フレームピクチャでは、top_field_firstが"1"に設定されているのは、フレーム内のトップフィールドが先に表示されるフィールドに対応することを示している。逆に、"0"に設定されている場合、フレーム内のボトムフィールドが先に表示されるフィールドであることを示す。またフィールドストラクチャピクチャ(non_interlaced_sequenceが"1"に設定されたプログレッシブ画像も含む。)、top_field_firstは常に0に設定される。

【0135】この図15において、復号器112の入力信号は、バッファ701に一時蓄積される。次に、逆可変長符号化器702によって符号化ビットストリームから取り出した情報に従ってブロック毎に逆量子化器703によって逆量子化された後、逆DCT回路704によって逆DCTされる。なお、逆量子化器703、逆DCT回路704は、図11の符号器における量子化器405、DCT回路504と相補的な構成とされる。
【0136】予測器711はこれらブロック毎に処理された逆DCTの出力より、画像を再現するためのものである。また、可変長符号化器702は、フィールドモード変更信号FMCを復号し、除去されたフィールドである場合には重複すべきフィールドから画像を複製してフィールドを再構成しセレクタ706より画像信号として出力する。

【0142】次に、前記第1の記録方法でビットストリームが記録されている場合について動作を説明する。non_interlaced_sequenceが0でframe_rateが24Hzまたは23.976Hzの場合、そのビットストリームは第1の方法で記録されていることがわかる。この場合、top_field_firstおよびnumber_of_field_displayed_codeより、どのフィールドを重複して出力するのかがわかる。図17に出力の方法を示す。この場合、元画像と同じフィールドが重複して出力される。

【図面の簡単な説明】
【図7】第2の実施例の符号化装置及び復号化装置の構成を示すブロック回路図である。
【図15】第2の実施例の復号化装置の復号器の構成を示すブロック回路図である。
【図17】第2の実施例の復号化装置のレート変換装置における出力の方法を説明する為の図である。

(以上、刊行物1の記載)

図17には、復号化装置のレート変換装置の動作において、DSO=1でDFN=0のときは、まずAフィールドを表示し、続いてBフィールドを表示し、重複して表示するフィールドはなく、DSO=1でDFN=1のときは、まずAフィールドを表示し、続いてBフィールドを表示し、さらにAフィールドを重複して再表示(つまり、A-B-Aの順で出力)し、DSO=0でDFN=0のときは、まずBフィールドを表示し、続いてAフィールドを表示し、重複して表示するフィールドはなく、DSO=0でDFN=1のときは、まずBフィールドを表示し、続いてAフィールドを表示し、さらにBフィールドを重複して再表示(つまり、B-A-Bの順で出力)することが記載されている。


3.2.2 引用発明

上記の刊行物1の「(2)符号化された情報から24Hzのフレームを単位としたノンインタレースの画像を復号し、レート変換により60Hzのフィールド単位のビデオ信号に変換し、再生することを特徴とする画像処理装置(動画像ビデオ信号復号化装置)を提供するものである」(段落【0021】)という記載から、
刊行物1には、
「動画像ビデオ信号復号化装置」
に関する発明が記載されている。
そして、「符号化されたデータが記録されるビデオ信号記録メディアに関する」(段落【0001】)、「動画像の代表的な高能率符号化方式として、MPEG(蓄積用動画像符号化)方式がある。」(段落【0002】)、「上記MPEGは、」「インタレース信号に適用しようとすると」「問題が生ずる。」(段落【0004】)、「ここで、上記インターレース信号として、例えば、」「映画等のフィルムソースをインターレースビデオ信号に変換する(いわゆるテレシネ変換)は、いわゆる2-3プルダウン(pulldown)という手法が広く用いられている。」(段落【005】)、「そこで、本発明は、」「2-3プルダウンの手法を用いるテレシネ変換により得られたビデオ信号に対して、」「符号化を可能とするビデオ信号符号化方法及び装置、これに対応するビデオ信号復号化方法及び装置、さらにその符号化データが記録されるビデオ信号記録メディアを提供する」(段落【0010】)という記載から、
上記復号化装置の復号化の対象となっている「動画像ビデオ信号」である上記「符号化された情報」は、
「MPEG方式で符号化された動画像を記録したビデオ信号」
であるといえる。
したがって、これらをまとめると、刊行物1には、
「MPEG方式で符号化された動画像を記録したビデオ信号を復号化する動画像ビデオ信号復号化装置」
が記載されているといえる。

上記刊行物1に記載される第2の実施例の第1の記録方法とその復号方法に係る「動画像ビデオ信号復号化装置」において、
上記の刊行物1の「復号化装置101の」「メディア109に記録された信号は、取り出され、復調回路110によって復調される。その復調信号はECCデコード回路111によってエラーが訂正された後、復号器112によって24Hzのフレームを単位とした画像として復号化される。」(段落【0048】)「その復号化出力は、60Hzのフィールド信号に変換され」(段落【0049】)る、「【図7】第2の実施例の符号化装置及び復号化装置の構成を示すブロック回路図である。」(【図面の簡単な説明】)という記載、および図7から、
刊行物1の「動画像ビデオ信号復号化装置」は、
「メディアから取り出され、復調され、エラー訂正された信号を復号化し、出力する復号器」
を有しているといえる。
そして、
上記の刊行物1の「符号化装置100」「では、重複されているフィールドを検出する。」「その検出信号」「が重複したフィールドを示している場合には、」「重複しているフィールドが取り除かれる。」(段落【0046】)、「復号器112の入力信号は、」「逆量子化された後、」「逆DCTされる。」(段落【0135】)、「逆DCTの出力より、画像を再現するため」「除去されたフィールドである場合には重複すべきフィールドから画像を複製してフィールドを再構成しセレクタ706より画像信号として出力する。」(段落【0136】)、「【図15】第2の実施例の復号化装置の復号器の構成を示すブロック回路図である」(【図面の簡単な説明】)という記載、および図15から、
刊行物1の「動画像ビデオ信号復号化装置」の「前記復号器」は、
「符号化装置で除去された重複すべきフィールドから画像を複製してフィールドを再構成し、出力するもの」
であるといえる。

同じく、上記の刊行物1の「そのフレームの表示方法を示すフラグ(後述するDSO、DFN」(段落【0047】)、「本実施例のレート変換回路103は、フィールドの出力順を示す信号DSO(後述するtop_field_first)をも出力する。」(段落【0053】)、「このDSO(top_field_first)」「をピクチャヘッダに記録するようにする。ここで、DSO=1の時は、第1フィールドを先に表示する。またDSO=0の時は、第2フィールドを先に表示する。」(段落【0083】)という記載から、
刊行物1の「動画像ビデオ信号復号化装置」では、
「前記メディアに記録されている信号のピクチャヘッダには、第1フィールドを先に表示するか第2フィールドを先に表示するかを示すフラグであるDSO(top_field_first)が含まれる」
といえる。

同じく、上記の刊行物1の「そのフレームの表示方法を示すフラグ(後述するDSO、DFN」(段落【0047】)、「レート変換回路103は、あるフレームを表示する際に、2フィールドを表示するかまたは3フィールド表示するかを示すフラグDFN(後述するnumber_of_field_displayed_code)をも出力する。」(段落【0054】)、「DFN(number_of_field_displayed_code)をピクチャヘッダに記録するようにする。ここで、」「DFN=0の時は、2フィールド表示を行う。また、DFN=1の時は、3フィールド表示を行なう。」(段落【0083】)という記載から、
刊行物1の「動画像ビデオ信号復号化装置」では、
「前記メディアに記録されている信号のピクチャヘッダには、2フィールド表示を行うか3フィールド表示を行うかを示すフラグであるDFN(number_of_field_displayed_code)が含まれる」
といえる。

同じく、上記の刊行物1の「top_field_firstは1ビットのフラグで、」「フレームピクチャでは、top_field_firstが"1"に設定されているのは、フレーム内のトップフィールドが先に表示されるフィールド」、「逆に、"0"に設定されている場合、フレーム内のボトムフィールドが先に表示されるフィールドであることを示す。」(段落【0109】)、「第1の方法で記録されている」「場合、」「top_field_firstおよびnumber_of_field_displayed_codeより、どのフィールドを重複して出力するのかがわかる。」「この場合、元画像と同じフィールドが重複して出力される。」(段落【0142】)という記載および、上記「top_field_first」は「前記DSO」であり、「number_of_field_displayed_code」は「前記DFN」であることから、
刊行物1には、
「前記復号器において、前記DSOでフレーム内の先に表示されるフィールドがわかり、前記DSOおよび前記DFNより、元画像と同じフィールドである重複して出力するフィールドがどのフィールドであるかがわかる」
ことが記載されているといえる。
また、同じく、上記の刊行物1の【図17】には、「復号化装置のレート変換装置の動作において、DSO=1でDFN=0のときは、まずAフィールドを表示し、続いてBフィールドを表示し、重複して表示するフィールドはなく、DSO=1でDFN=1のときは、まずAフィールドを表示し、続いてBフィールドを表示し、さらにAフィールドを重複して再表示(つまり、A-B-Aの順で出力)し、DSO=0でDFN=0のときは、まずBフィールドを表示し、続いてAフィールドを表示し、重複して表示するフィールドはなく、DSO=0でDFN=1のときは、まずBフィールドを表示し、続いてAフィールドを表示し、さらにBフィールドを重複して再表示(つまり、B-A-Bの順で出力)すること」が記載されているから、
刊行物1には、
「前記先に表示するフィールドは、DSO=1のときはAフィールド、DSO=0のときは、Bフィールドとし、DFN=1のときにはフィールドを重複して表示し、前記重複すべきフィールドは、DSO=1ならばAフィールド、DSO=0ならばBフィールドとする」
ことが記載されているといえる。

これらをまとめると、刊行物1の「動画像ビデオ信号復号化装置」は、
「前記復号器において、前記DSOでフレーム内の先に表示されるフィールドがわかり、前記DSOおよび前記DFNより、元画像と同じフィールドである重複して出力するフィールドがどのフィールドであるかがわかり、前記先に表示するフィールドは、DSO=1のときはAフィールド、DSO=0のときは、Bフィールドとし、DFN=1のときにはフィールドを重複して表示し、前記重複すべきフィールドは、DSO=1ならばAフィールド、DSO=0ならばBフィールドとする」
ものといえる。


以上より、刊行物1の第2の実施例の第1の記録方法とその復号方法に係る発明には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「MPEG方式で符号化された動画像を記録したビデオ信号を復号化する動画像ビデオ信号復号化装置において、
メディアから取り出され、復調され、エラー訂正された信号を復号化し、出力する復号器を有し、
前記復号器は、符号化装置で除去された重複すべきフィールドから画像を複製してフィールドを再構成し、出力するものであり、
前記メディアに記録されている信号のピクチャヘッダには、第1フィールドを先に表示するか第2フィールドを先に表示するかを示すフラグであるDSO(top_field_first)が含まれ、
前記メディアに記録されている信号のピクチャヘッダには、2フィールド表示を行うか3フィールド表示を行うかを示すフラグであるDFN(number_of_field_displayed_code)が含まれ、
前記復号器において、前記DSOでフレーム内の先に表示されるフィールドがわかり、前記DSOおよび前記DFNより、元画像と同じフィールドである重複して出力するフィールドがどのフィールドであるかがわかり、前記先に表示するフィールドは、DSO=1のときはAフィールド、DSO=0のときは、Bフィールドとし、DFN=1のときにはフィールドを重複して表示し、前記重複すべきフィールドは、DSO=1ならばAフィールド、DSO=0ならばBフィールドとする
動画像ビデオ信号復号化装置。」


3.3 対比

3.3.1 対比

補正後発明と引用発明を対比する。


(1) 「画面内符号化画像を少なくとも1枚有する画面群構造を形成するように符号化された動画像を復号する画像復号装置」

上記「符号化された動画像」は、前記3.1 補正後発明で検討したとおり、光ディスク2に記録されているMPEG2方式の動画像であり、上記「画面内符号化画像を少なくとも1枚有する画面群構造」は、同じく検討のとおり該MPEGビデオ規格で規定されるGOPである。

これに対し、引用発明には、
「MPEG方式で符号化された動画像を記録したビデオ信号を復号化する動画像ビデオ信号復号化装置」
が記載されており、「MPEG方式で符号化された画像」が、「画面内符号化画像を少なくとも1枚有する画面群構造を形成するように符号化された動画像」であることは、当業者の一般的な技術事項であり、
また、引用発明の
「動画像を記録したビデオ信号を復号化する動画像ビデオ信号復号化装置」
は、補正後発明の
「動画像を復号する画像復号装置」
に相当するといえる。

してみると、補正後発明と引用発明とは、
「画面内符号化画像を少なくとも1枚有する画面群構造を形成するように符号化された動画像を復号する画像復号装置」
である点で、一致する。


(2) 「上記動画像を復号する復号手段」

引用発明の
「メディアから取り出され、復調され、エラー訂正された信号を復号化し、出力する復号器」
において、該「メディアから取り出され、復調され、エラー訂正された信号」は、上記引用発明の符号化された「動画像」の信号であるから、該引用発明の構成は、補正後発明の
「上記動画像を復号する復号手段」
に相当するといえる。

してみると、補正後発明と引用発明とは、「動画像を復号する画像復号装置」が、
「上記動画像を復号する復号手段」
を有する点で、一致する。


(3) 「上記復号された動画像に冗長フィールドを挿入する挿入手段」

引用発明の
「前記復号器は、符号化装置で除去された重複すべきフィールドから画像を複製してフィールドを再構成し、出力するもの」であること
において、該「符号化装置で除去された重複すべきフィールド」とは、補正後発明の「冗長フィールド」に対応し、該「複製してフィールドを再構成」することは、「挿入する」ことに対応するから、「前記復号器」の当該機能の構成は補正後発明の
「上記復号された動画像に冗長フィールドを挿入する挿入手段」
に相当するといえる。

してみると、補正後発明と引用発明とは、「動画像を復号する画像復号装置」が、
「上記復号された動画像に冗長フィールドを挿入する挿入手段」
を有する点で、一致する。


(4) 「最初の画像情報のフィールドパリティを示す第一の付属情報並びに冗長フィールドを省略したことを示す第二の付属情報、及び上記各画面群構造内の最初の画像情報が、予め決められたフィールドパリティとされていることに基づいて、上記画像情報の復号化を制御する制御手段」

上記のとおり、補正後発明の「最初の画像情報のフィールドパリティを示す第一の付属情報」は、「トップフィールドファーストフラグ」を含むものであり、同様に「冗長フィールドを省略したことを示す第二の付属情報」は、「リピートファーストフィールドフラグ」を含むものである。
同じく上記のとおり、この2つのフラグは、MPEG2ビデオ規格のピクチャ層のヘッダ情報のピクチャ符号化機能拡張部に記録されているものである。

ここで、引用発明において記録されている信号のピクチャヘッダには、「第1フィールドを先に表示するか第2フィールドを先に表示するかを示すフラグであるDSO(top_field_first)」および「2フィールド表示を行うか3フィールド表示を行うかを示すフラグであるDFN(number_of_field_displayed_code)」が記録されている。
刊行物1の記載によれば、引用発明の該DSOは、値が1のときに第1フィールドを先に表示する。ここで、この第1フィールドはトップフィールドに、第2フィールドはボトムフィールドにそれぞれ相当することは明らかである。よって、当該記載は、このDSOの値が"1"に設定されているフレームでは、トップフィールドが先に表示され、"0"に設定されているフレームでは、ボトムフィールドが先に表示されることを示しているといえる。
したがって、引用発明の「DSO」は、フレームを画面表示する場合に、トップフィールド及びボトムフィールドのどちらをはじめに出力するかを示すフラグであるといえ、「トップフィールドファーストフラグ」と同等であるから、補正後発明の「最初の画像情報のフィールドパリティを示す第一の付属情報」に相当するといえる。

また、同様に、引用発明の「DFN」は、値が"1"のときに元画像と同じフィールドを重複して出力する。つまり、このDFNが"1"に設定されたコマは、3フィールドとして表示される。
このとき、該3フィールド表示を行うために、2フィールド表示された後に、重複しているため符号化時には取り除かれてしまったフィールド(トップフィールドまたはボトムフィールド)が挿入される。
したがって、引用発明の「DFN」は、符号化時に省略された元画像と同じフィールドを重複して出力するかどうかを決めるフラグといえ、「リピートファーストフィールドフラグ」と同等であるから、補正後発明の「冗長フィールドを省略したことを示す第二の付属情報」に相当するといえる。

上記のとおり、引用発明の動画像を復号する画像復号装置の符号化装置で除去された重複すべきフィールドから画像を複製してフィールドを再構成し、出力するものであり、該復号器において、前記先に表示するフィールドは、DSO=1のときはAフィールド、DSO=0のときは、Bフィールドとし、DFN=1のときにはフィールドを重複して表示し、前記重複すべきフィールドは、DSO=1ならばAフィールド、DSO=0ならばBフィールドとするのであるから、これらDSO、DFNに基づいて、GOP内の最初の画像を含む動画像データの復号化を制御しているといえる。
そして、該DSO、DFNに基づいて、GOPの最初の画像のフィールドパリティがトップフィールドであるかボトムフィールドかがわかり、わかったフィールドパリティに基づいて該復号器は該GOP内の最初の画像をこのどちらかのフィールドとして出力するのであるから、前記復号器は、このフィールドパリティにも基づいて、復号化を制御しているといえる。
したがって、引用発明の復号器が上記動画像データの復号化を制御していることは、補正後発明の「上記画像情報の復号化を制御する制御手段」に相当するといえる。

以上をまとめると、補正後発明と引用発明とは、「動画像を復号する画像復号装置」が、
「最初の画像情報のフィールドパリティを示す第一の付属情報並びに冗長フィールドを省略したことを示す第二の付属情報、及び上記各画面群構造内の最初の画像情報が、所定のフィールドパリティとされていることに基づいて、上記画像情報の復号化を制御する制御手段」
を有する点で、一致する。

もっとも、引用発明は、所定のフィールドパリティが「予め決められた」ものであるとされていない点で相違する。


3.3.2 一致点、相違点

以上より、補正後発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

(1) 一致点

「画面内符号化画像を少なくとも1枚有する画面群構造を形成するように符号化された動画像を復号する画像復号装置において、
上記動画像を復号する復号手段と、
上記復号された動画像に冗長フィールドを挿入する挿入手段と、
最初の画像情報のフィールドパリティを示す第一の付属情報並びに冗長フィールドを省略したことを示す第二の付属情報、及び上記各画面群構造内の最初の画像情報が、所定のフィールドパリティとされていることに基づいて、上記画像情報の復号化を制御する制御手段と
を有することを特徴とする画像復号化装置。」

(2) 相違点

補正後発明は、所定のフィールドパリティが「予め決められた」ものであるのに対し、
引用発明は、所定のフィールドパリティが「予め決められた」ものであるとされていない点。


3.4 検討

3.4.1 相違点について

補正後明細書の「図11の(c)の例では、トップフィールドファーストフラグは、1番目と2番目のフレームではトップフィールドが先に表示されるため「1」であり、3番目と4番目のフレームではボトムフィールドが先に表示されるため「0」となる。また、リピートファーストフィールドフラグは、2番目と4番目のフレームでは、冗長フィールドが除去されるので「1」となり、それ以外は、冗長フィールドが存在しないため「0」となる。」(段落【0014】)、「次に、復号器側では、図11の(f)に示すようにトップフィールドファーストフラグ及びリピートファーストフィールドフラグを検出し、原入力画像と同じ3:2プルダウンのパターンをもつ動画像を再構成する。すなわち、トップフィールドファーストフラグにより、トップフィールド及びボトムフィールドのうち、どちらのフィールドを先に出力するかを判断し、リピートファーストフィールドフラグにより、繰り返しフィールドを出力するか否かを決定する。」(段落【0015】)という記載、および、上記のとおり、トップフィールドファーストフラグが「第一の付属情報」であり、リピートファーストフィールドフラグが「第二の付属情報」であることから、
補正後発明の「最初の画像情報のフィールドパリティを示す第一の付属情報並びに冗長フィールドを省略したことを示す第二の付属情報、及び上記各画面群構造内の最初の画像情報が、予め決められたフィールドパリティとされていることに基づいて、上記画像情報の復号化を制御する」という構成は、
具体的には、「該第一の付属情報と第二の付属情報とから、各画面群構造内の最初の画像情報のフィールドパリティを検出し、該検出された画面群構造内の最初の画像情報のフィールドパリティに基づいて、符号化された動画像の各画面群構造の画像の復号化が制御される」ことで実現されている。
してみると、
補正後発明の「最初の画像情報のフィールドパリティを示す第一の付属情報並びに冗長フィールドを省略したことを示す第二の付属情報、及び上記各画面群構造内の最初の画像情報が、予め決められたフィールドパリティとされていることに基づいて、上記画像情報の復号化を制御する」という構成において、「上記各画面群構造内の最初の画像情報が、予め決められたフィールドパリティとされている」とは、具体的には、「該第一の付属情報と第二の付属情報とから検出され、それに基づいて、上記画像情報の復号化が制御される」最初の画像情報の「パリティ」が、「予め決められた」ものであることをいうと理解できる。
通常、符号化された動画像の画面群構造内の最初の画像情報のフィールドパリティは符号化装置において符号化する際に決められ、復号化装置は、復号化装置に入力される前に「画面群構造内の最初の画像情報のフィールドパリティが決められた」符号化された動画像を受け取るだけであるから、引用発明における復号化装置においても、通常と同じく、復号化装置に入力する前に「画面群構造内の最初の画像情報のフィールドパリティが決められた」符号化された動画像を受け取るようにすること、すなわち、「画面群構造内の最初の画像情報のフィールドパリティが」「予め」「決められた」ものとすることは、当業者が容易に想到できることである。

次に、上記「予め決められた」フィールドパリティとされていることが、符号化装置において符号化する動画像の各画面群構造(GOP)の最初の画面のフィールドパリティを、トップフィールド(またはボトムフィールド)で一定となるようにすることであると理解した場合について検討する。
動画像の圧縮符号化に際して、GOPを作成するとき、1つのGOPの対象となる画像の単位は、一般的に一定の時間または画像数になっており、通常、0.5秒、すなわち30フレーム毎秒の動画像の場合15フレーム(24フレーム毎秒の場合は12フレーム)を1GOP単位することは、当業者に広く知られていることである。
そして、2-3プルダウンを行った動画像の1GOPを、上記当業者に通常の15フレームとすると、1GOPの各画像のフィールド配置は、刊行物1の図9の30Hzの2-3プルダウンのフィールド配置(T-B、T-B-T、B-T、B-T-B:10フィールド=5フレーム)が3つ繰り返される形となり、各画面群構造の最初の画像のフィールドはトップフィールド(T)で一定となり、そのフィールドパリティも一定となることが容易に理解できる。
したがって、上記2-3プルダウンを行っている引用発明において、符号化する動画像の画面群構造であるGOPの単位として、上記当業者に通常の1GOPあたり15フレームとすることを採用して、各画面群構造の最初の画像のフィールドパリティが「予め決められた」もの(トップフィールドで一定)となるようにすることは、当業者が容易に想到できることであるといえる。

さらに、符号化装置の設定は、符号化装置を設定する操作者によって設定されるものといえ、操作者において、符号化装置における動画像の画面群構造内の最初の画像情報のフィールドパリティをトップ、ボトムのいずれかにするかは自由に設定できるものといえるが、ある符号化装置で操作者が該フィールドパリティをトップ、ボトムのいずれかにいったん設定した後に、符号化を行う毎にトップ、ボトムを入れ換える必然はなく、符号化装置の設定を変えずに符号化を行うこと、すなわち、トップまたはボトムのいずれかに予め決めておくことは、当業者が容易に想到できることであるといえる。

以上のとおり、引用発明において、画像復号化装置に入力される符号化された動画像の画面群構造内の最初の画像情報のフィールドパリティが「予め決められた」ものとすることは、当業者が容易に想到できることである。


3.4.2 効果について

上記のとおり、補正後発明の構成は、当業者が容易に想到できることである。そして、補正後発明の効果は、当業者が容易に想到できる構成から予測できる範囲のものである。


3.4.3 検討のまとめ

上記のとおり、補正後発明の構成は、当業者が容易に想到でき、補正後発明の効果も、当業者が容易に想到できる構成から予測できる範囲のものであるから、補正後発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


3.5 独立特許要件の存否

以上のとおり、補正後発明は、その特許出願前に日本国内において頒布された刊行物1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、補正後発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。


3.6 まとめ

上記のとおり、本件補正後の請求項3に係る発明(補正後発明)は同特許法第126条第5項の規定(独立特許要件)に適合しない。
したがって、本件補正後の請求項3に係る発明は同法第126条第5項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、本件補正は却下すべきである。

よって、上記結論のとおり決定する。



第III部 本願発明


平成18年12月27日付手続補正は、上記のように却下した。

本願請求項6に係る発明は、平成16年2月9日付け願書に添付された特許請求の範囲の請求項6に記載されたとおりのものと認める。そして、請求項6に係る発明(以下、本願発明という)は、次のものである。


「【請求項6】
画面内符号化画像を少なくとも1枚有する画面群構造を形成するように符号化された動画像を復号する画像復号装置において、
上記動画像を復号する復号手段と、
上記復号された動画像に冗長フィールドを挿入する挿入手段と、
上記各画面群構造内の最初の画像情報が、予め決められたフィールドパリティとされていることに基づいて、上記画像情報の復号化を制御する制御手段と
を有することを特徴とする画像復号化装置。」



第IV部 検討

1 刊行物の記載

上記「補正却下の理由 3.2 刊行物の記載」を援用する。


2 対比

本願発明と補正後発明との関係は、上記「補正却下の理由 1 平成18年12月27日付け手続補正」、および「補正却下の理由 2 補正の検討」で述べた関係にあるから、
上記「補正却下の理由 3.3 対比(1)?(3)」の記載の「補正後発明」を「本願発明」と読み換えて援用し、残る構成について、以下(4)に対比する。

(4) 「上記各画面群構造内の最初の画像情報が、予め決められたフィールドパリティとされていることに基づいて、上記画像情報の復号化を制御する制御手段」

上記のとおり、引用発明の動画像を復号する画像復号装置の符号化装置で除去された重複すべきフィールドから画像を複製してフィールドを再構成し、出力するものであり、該復号器において、前記先に表示するフィールドは、DSO=1のときはAフィールド、DSO=0のときは、Bフィールドとし、DFN=1のときにはフィールドを重複して表示し、前記重複すべきフィールドは、DSO=1ならばAフィールド、DSO=0ならばBフィールドとするのであるから、これらDSO、DFNに基づいて、GOP内の最初の画像を含む動画像データの復号化を制御しているといえる。
そして、該DSO、DFNに基づいて、GOPの最初の画像のフィールドパリティがトップフィールドであるかボトムフィールドかがわかり、わかったフィールドパリティに基づいて該復号器は該GOP内の最初の画像をこのどちらかのフィールドとして出力するのであるから、前記復号器は、このフィールドパリティにも基づいて、復号化を制御しているといえる。
したがって、引用発明の上記動画像データの復号化を制御している復号器は、本願発明の「上記画像情報の復号化を制御する制御手段」に相当するといえる。

してみると、本願発明と引用発明とは、「動画像を復号する画像復号装置」が、
「上記各画面群構造内の最初の画像情報が、所定のフィールドパリティとされていることに基づいて、上記画像情報の復号化を制御する制御手段」
を有する点で一致する。

もっとも、引用発明は、所定のフィールドパリティが「予め決められた」ものであるとされていない点で相違する。


3 一致点・相違点


3.1 一致点

上記対比によると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。

「画面内符号化画像を少なくとも1枚有する画面群構造を形成するように符号化された動画像を復号する画像復号装置において、
上記動画像を復号する復号手段と、
上記復号された動画像に冗長フィールドを挿入する挿入手段と、
上記各画面群構造内の最初の画像情報が、所定のフィールドパリティとされていることに基づいて、上記画像情報の復号化を制御する制御手段と
を有することを特徴とする画像復号化装置。」


3.2 相違点

本願発明と引用発明とは、次の点で相違する。

本願発明は、所定のフィールドパリティが「予め決められた」ものであるのに対し、
引用発明は、所定のフィールドパリティが「予め決められた」ものであるとされていない点。


4.検討

上記「補正却下の理由 3.4 検討」の「補正後発明」を「本願発明」と読み換えて援用する。



第V部 むすび

以上、検討のとおりであるから、本願請求項6に係る発明は、その特許出願前に日本国内において頒布された刊行物1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
そうすると、残る請求項1-5、7-9に係る発明について判断するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-01 
結審通知日 2010-02-02 
審決日 2010-02-19 
出願番号 特願2004-32373(P2004-32373)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畑中 高行  
特許庁審判長 奥村 元宏
特許庁審判官 志摩 兆一郎
岩井 健二
発明の名称 画像符号化装置,画像符号化方法,画像復号化装置及び画像復号化方法  
代理人 伊賀 誠司  
代理人 小池 晃  

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