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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F
管理番号 1214844
審判番号 不服2007-31551  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-22 
確定日 2010-04-08 
事件の表示 特願2002- 18004「印刷機の印刷品質検査装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月 9日出願公開、特開2003-251789〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
(1)手続の経緯
本願は、平成14年1月28日(優先権主張平成13年12月27日)の出願であって、平成19年4月2日付けで手続補正がなされ、同年10月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月22日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

(2)本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成19年11月22日付け手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。

「印刷された印刷物を排紙部に搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される印刷物に印刷されたインキを乾燥させる乾燥装置と、前記搬送手段により搬送される印刷物に印刷された印刷面を検査する印刷品質検査装置とを備えた印刷機において、前記搬送手段が、少なくとも1つの搬送胴より構成され、前記乾燥装置が、前記搬送胴の周面に対向するように設けられ、前記印刷品質検査装置の検出器の検出面が、前記乾燥装置の光が搬送胴によって妨げられる範囲になるように設けられていることを特徴とする印刷機の印刷品質検査装置。」(以下「本願発明」という。)

2 刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-287344号公報(以下「引用例」という。)には、図とともに次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。)
(1)「【請求項1】 シート状物の両面に印刷を施す印刷部と、前記印刷部にインキを供給し、前記印刷部に対して接離可能に支持されたインキ供給手段と、印刷された前記シート状物を保持し排紙部へ搬送する搬送手段とを備えた両面印刷機において、
前記搬送手段を、前記インキ供給手段の下方側を通過する第1デリバリーチェーンと、前記第1デリバリーチェーンからのシート状物を搬送する複数の搬送胴と、前記搬送胴からのシート状物を搬送する第2デリバリーチェーンとで構成し、前記複数の搬送胴は少なくとも第1及び第2搬送胴を有し、前記第1搬送胴により搬送されるシート状物の一方の面の印刷状態を検出する第1検出手段と、前記第2搬送胴により搬送されるシート状物の他方の面の印刷状態を検出する第2検出手段とを備えたことを特徴とする両面印刷機の品質検査装置。」

(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シート状物の両面に印刷を施す両面印刷機の品質検査装置に係り、一層詳細には、設置スペースを増大させることなく両面品質検査が行える両面印刷機の品質検査装置に関するものである。【0002】
【従来の技術】両面印刷機として、従来、例えば図7に示すような4色両面同時印刷オフセット機がある(特許第2612594号公報等参照)。
【0003】これによれば、本機の印刷部100では、紙くわえ装置を備えているゴム圧胴101と紙くわえ装置を備えていないゴム胴102とが略水平に支承されており、各々の周面が対接している。
【0004】そして、ゴム圧胴101の周面には4つの版胴103が配置され、またゴム胴102の周面にも4つの版胴104が配置されている。これらの版胴103,104に対し接近・離反できるようにインキユニット105,106が移動可能に設けられ、版胴103,104に接した状態でインキや水の供給を行えるようになっている。
【0005】一方、排紙部107のデリバリ胴108はゴム圧胴101の下方に配置され、チェーン109はゴム圧胴101とゴム胴102の周面が対接する位置の下方空間を横断することなくデリバリ胴108よりも図中左方に配置される。
【0006】また、紙くわえ装置を備えており、見当部110からゴム圧胴101へ紙を渡す渡胴111?114が設けられると共に、紙くわえ装置を備えており、ゴム圧胴101からデリバリ胴108へ紙を渡す渡胴115が設けられる。尚、図中116は給紙部である。
【0007】従って、給紙部116から供給されて見当部110によって位置決めされた紙は、図中矢印で示す経路、即ち、渡胴111?114→ゴム圧胴101→渡胴115→デリバリ胴108の各周面に沿い搬送され、ゴム圧胴101とゴム胴102の対接点を上方から下方に向い通過するときにその両面に同時に印刷が施されることになる。」

(3)「【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述したような4色両面同時印刷オフセット機で、銀行券印刷を行う場合は、品質管理が重要である。そのため、従来では、多人数をかけ人的品質検査をオフラインで行っていた。
【0009】ところが、近年、検査工程を省人化するため、画像技術を応用し、印刷の、オフセット、凹版、番号等各印刷工程単位でインラインで検査を行い、不良品の次工程流出を防止する方向にある。
【0010】このインライン型の印刷品質検査装置は、現在、凹版印刷機では搭載されているが、上述したような4色両面同時印刷オフセット機には設置スペース上の問題から搭載されていなかった。
【0011】例えば、両面印刷後排紙までの間で両面品質検査を行うべく、排紙チェーンを挾んで吸引ガイドと検査カメラを設置する場合、紙の表面用と裏面用との二組が必要となるが、この際、吸引ガイドは排紙チェーンの爪竿側には配置できない(爪竿と干渉するのを回避するため)ことから、表面用又は裏面用の一組は排紙チェーンを反転させるなどして配置しなければならず、経路の増加で装置の大型化を招来するのである。
【0012】そこで、本発明の目的は、設置スペース、機械全長の増大を招くことなく、両面印刷後排紙までの間で両面品質検査をインラインで行える両面印刷機の品質検査装置を提供することにある。」

(4)「【0015】[第1実施例]図1は本発明の第1実施例を示す4色両面同時印刷オフセット機の要部拡大側面図、図2は同じく全体側面図、図3は同じく要部の駆動系を示す展開平面図、図4は同じく吸引シリンダの要部正断面図、図5は同じく吸引シリンダの要部側断面図である。
【0016】図1及び図2に示すように、4色両面同時印刷オフセット機の印刷部1では、紙くわえ装置を備えているゴム圧胴2と紙くわえ装置を備えていないゴム胴3とが略水平に支承されており、各々の周面が対接している。
【0017】そして、ゴム圧胴2の周面には4つの版胴4が配置され、またゴム胴3の周面にも4つの版胴5が配置されている。これらの版胴4,5に対し接近・離反できるようにインキ供給手段としてのインキユニット6,7が移動可能に設けられ、版胴4,5に接した状態でインキや水の供給を行えるようになっている。前記ゴム圧胴2、版胴4、ゴム胴3及び版胴5が請求項1記載の印刷部に相当する。
【0018】また、紙くわえ装置を備えており、見当部8からゴム圧胴2へ紙(シート状物)を渡す渡胴9?12が設けられると共に、紙くわえ装置を備えており、ゴム圧胴2から後述する第1デリバリーチェーン17へ紙を渡す渡胴13が設けられる。前記見当部8へはフィーダーボード14を介して給紙部15から紙が供給される。
【0019】一方、排紙部16へ紙を搬送する搬送手段として、爪竿(チェーングリッパ)17a(図3参照)を備えて前記渡胴13からの紙を搬送する第1デリバリーチェーン17と、紙くわえ装置を備えて前記第1デリバリーチェーン17からの紙を搬送する第1?第3渡胴(搬送胴)18?20と、爪竿(図示せず)を備えて前記第1?第3渡胴18?20からの紙を排紙パイル21上に搬送する第2デリバリーチェーン22が設けられる。
【0020】前記第1デリバリーチェーン17は、その上流側のデリバリ胴23aをゴム圧胴2の下方に配置してゴム圧胴2とゴム胴3の周面が対接する位置の下方空間を横断することなく当該デリバリ胴23aよりも図中左方へフロアに沿って配置される。
【0021】前記第1?第3渡胴18?20は、前記第1デリバリーチェーン17の下流側のデリバリ胴23bと前記第2デリバリーチェーン22の上流側のデリバリ胴24aとの間に位置して、上下方向にジグザグに配列される。つまり、第1渡胴18と第3渡胴20に対し第2渡胴19が左側に出た配列となっている。
【0022】そして、前記第1渡胴18により搬送される紙の一方の面(表面)の印刷状態を検出する第1検出手段としての検査カメラ25がスポットライト26とともに下向きに配設されると共に、第2渡胴19により搬送される紙の他方の面(裏面)の印刷状態を検出する第2検出手段としての検査カメラ27がスポットライト28とともに上向きに配設される。尚、各検査カメラ25,27及びスポットライト26,28は胴軸方向へ2個宛設けられる(図3参照)。
【0023】また、前記第1?第3渡胴18?20は、図3に示すような駆動系で駆動される。先ず、ラインシャフト30には本機からの駆動力が伝えられるようになっており、このラインシャフト30からベベルボックス31を経由して平歯車32を廻すようになっている。
【0024】次に、平歯車32に噛合する平歯車33が駆動される。この平歯車33と第1渡胴18の駆動平歯車34とがボルト結合され、第1デリバリーチェーン17の爪竿17aのタイミングにて第1渡胴18との位相合わせが出来るようになっている。
【0025】そして、この駆動平歯車34に第2渡胴19の駆動平歯車35と第3渡胴20の駆動平歯車36とデリバリ胴24aの駆動平歯車37が順次噛合し、各胴がそれぞれ駆動されると共に第2デリバリーチェーン22が駆動されるようになっている。尚、第1デリバリーチェーン17は、その上流側のデリバリ胴23aの駆動平歯車(図示せず)が本機の駆動ギヤトレインに噛合することで駆動される。」

(5)「【0026】また、前記第1渡胴18と第2渡胴19は、図4及び図5に示すように、吸引シリンダで構成され、夫々の軸端にロータリージョイント40を介して接続された配管41がバキュームポンプ42に連通・接続されている。図4及び図5において、43は第1渡胴18と第2渡胴19の軸端内部に形成された主負圧通路、44は主負圧通路43から周方向へ複数分岐して半径方向へ延出された副負圧通路、45は各々の副負圧通路44先端から胴軸方向へ延出された負圧マニホールド、46は各々の負圧マニホールド45から胴軸方向へ多数分岐して各々の先端が胴表面に開口する吸引孔である。」

(6)「【0027】このように構成されるため、給紙部15から供給されて見当部8によって位置決めされた紙は、図中矢印で示す経路、即ち、渡胴9?12→ゴム圧胴2→渡胴13→デリバリ胴23aの各周面に沿い搬送され、ゴム圧胴2とゴム胴3の対接点を上方から下方に向い通過するときにその両面に同時に印刷が施されることになる。
【0028】前記印刷後の紙は、第1デリバリーチェーン17→第1?第3渡胴18?20→第2デリバリーチェーン22へと図1の矢印で示す経路を通って搬送され、最後に排紙部16の排紙パイル21上に紙積みされる。
【0029】そして、本実施例では、紙が第1渡胴18で搬送される時に、その表面の印刷状態が検査カメラ25で検出される一方、紙が第2渡胴19で搬送される時に、その裏面の印刷状態が検査カメラ27で検出される。
【0030】この際、第1渡胴18と第2渡胴19は吸引シリンダで構成されているため、紙は胴周面に吸引固定されて安定した(紙のバタツキがない)状態で搬送されるので、正確な検査が行える。
【0031】このようにして、本実施例では、デリバリーチェーンの一部分を渡胴群に置き換えて、検査カメラ25,27を設置するようにしたので、設置スペース、機械全長の増大を招くことなく、両面印刷後排紙までの間で両面品質検査をインラインで行える。
【0032】また、本実施例では、第1渡胴18と第2渡胴19を吸引シリンダで構成し、吸引ガイド等を不要としたので、検査カメラ25,27の取付け勝手が良く、設置スペース上有効である。
【0033】また、本実施例では、第1?第3渡胴18?20を上下方向にジグザグに配列したので、上記と同様に検査カメラ25,27(及びスポットライト26,28)の取付け勝手が良く、設置スペース上有効である。」

(7)「【0034】[第2実施例]図6は本発明の第2実施例を示す4色両面同時印刷オフセット機の要部側面図である。
【0035】これは、第1実施例における第1渡胴18と第2渡胴19に対し、検査カメラ25,27の上流側に位置してドライヤ48,49を配置して、両面印刷のための汚れ防止を図った例である。
【0036】その他の構成は、検査カメラ27を下向きに配置すると共にスポットライト26,28を廃止した以外は、第1実施例と同様であり、第1実施例と同様の作用・効果が得られる。」(【0035】は6頁の【手続補正書】の【補正内容】から摘記した。)

(8)「【0037】尚、本発明は上記各実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、第1?第3渡胴18?20を直線配列にするとか、第3渡胴20を廃止するか又は他の渡胴を増加する等各種変更が可能であることはいうまでもない。」

(9)「【0038】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、シート状物の両面に印刷を施す印刷部と、前記印刷部にインキを供給し、前記印刷部に対して接離可能に支持されたインキ供給手段と、印刷された前記シート状物を保持し排紙部へ搬送する搬送手段とを備えた両面印刷機において、前記搬送手段を、前記インキ供給手段の下方側を通過する第1デリバリーチェーンと、前記第1デリバリーチェーンからのシート状物を搬送する複数の搬送胴と、前記搬送胴からのシート状物を搬送する第2デリバリーチェーンとで構成し、前記複数の搬送胴は少なくとも第1及び第2搬送胴を有し、前記第1搬送胴により搬送されるシート状物の一方の面の印刷状態を検出する第1検出手段と、前記第2搬送胴により搬送されるシート状物の他方の面の印刷状態を検出する第2検出手段とを備えたことを特徴とするので、設置スペース、機械全長の増大を招くことなく、両面印刷後排紙までの間で両面品質検査をインラインで行える。」

(10)図1及び図6の記載から、ドライヤ48、49がそれぞれ渡胴18、19の周面に対向するように設けられ、検査カメラ25、27の検出面がそれぞれ渡胴18、19の周面に対向するように設けられていることが見てとれる。

(11)上記(5)、図4及び図5の記載からみて、第1渡胴ないし第3渡胴は金属吸引シリンダで構成されていることが当業者に自明である。

(12)上記(1)ないし(11)からみて、引用例には、
「紙の両面に印刷を施す印刷部と、前記印刷部にインキを供給し、前記印刷部に対して接離可能に支持されたインキ供給手段と、印刷された前記紙を保持し排紙部へ搬送する搬送手段とを備え、前記搬送手段を、前記インキ供給手段の下方側を通過する第1デリバリーチェーンと、前記第1デリバリーチェーンからのシート状物を搬送する第1渡胴ないし第3渡胴と、前記第3渡胴からのシート状物を搬送する第2デリバリーチェーンとで構成し、
前記第1渡胴ないし第3渡胴は、いずれも軸端内部に形成された主負圧通路、該主負圧通路から周方向へ複数分岐して半径方向へ延出された副負圧通路、各々の副負圧通路先端から胴軸方向へ延出された負圧マニホールド及び各々の負圧マニホールド45から胴軸方向へ多数分岐して各々の先端が胴表面に開口する吸引孔を有する金属吸引シリンダで構成され、第1渡胴と第3渡胴に対し第2渡胴が左側に出たジグザグ配列とされており、
前記第1渡胴により搬送される紙の表面の印刷状態を検出する第1検出手段としての検査カメラがスポットライトとともに配設され、検出面が第1渡胴の周面に対向するように下向きに設けられると共に、前記第2渡胴により搬送される紙の裏面の印刷状態を検出する第2検出手段としての検査カメラがスポットライトとともに配設され、検出面が第2渡胴の周面に対向するように上向きに設けられ、各検査カメラ及びスポットライトは胴軸方向へ2個宛設けられている両面印刷機の品質検査装置において、
第1渡胴と第2渡胴に対し、各渡胴の周面に対向するように設けられたドライヤを各検査カメラの上流側に位置して配置して、両面印刷のための汚れ防止を図ること、第2検出手段としての検査カメラを下向きに配置すると共にスポットライトを廃止すること、第1?第3渡胴18?20を直線配列にすること、第3渡胴を廃止すること、他の渡胴を増加する等各種変更が可能である両面印刷機の品質検査装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「印刷された前記紙」、「排紙部」、「搬送手段」、「渡胴の周面に対向するように設けられたドライヤ」、「『第1検出手段』又は『第2検出手段』」、「『第1渡胴により搬送される紙の表面の印刷状態を検出する』又は『第2渡胴により搬送される紙の裏面の印刷状態を検出する』」、「両面印刷機」、「『第1渡胴』又は『第2渡胴』」、「検査カメラ」及び「両面印刷機の品質検査装置」は、それぞれ、本願発明の「印刷された印刷物」、「排紙部」、「搬送手段」、「『搬送胴の周面に対向するように設けられ』た『乾燥装置』」、「印刷品質検査装置」、「搬送手段により搬送される印刷物に印刷された印刷面を検査する」、「印刷機」、「搬送胴」、「印刷品質検査装置の検出器」及び「印刷機の印刷品質検査装置」に相当する。
(2)引用発明の「第1渡胴及び第2渡胴」は「少なくとも1つの搬送胴」といえる。
(3)上記(1)及び(2)からみて、本願発明と引用発明とは、
「印刷された印刷物を排紙部に搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される印刷物に印刷された印刷面を検査する印刷品質検査装置とを備えた印刷機において、前記搬送手段が、少なくとも1つの搬送胴より構成されている印刷機の印刷品質検査装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
前記印刷機が、本願発明では「前記搬送胴の周面に対向するように設けられ」た「前記搬送手段により搬送される印刷物に印刷されたインキを乾燥させる乾燥装置」を備えているのに対して、引用発明では「第1渡胴と第2渡胴に対し、各渡胴の周面に対向するように設けられたドライヤを各検査カメラの上流側に位置して配置して、両面印刷のための汚れ防止を図ること」が可能なものである点。

相違点2:
本願発明では、前記「印刷品質検査装置の検出器」の検出面が、「前記乾燥装置の光が搬送胴によって妨げられる範囲になるように設けられている」のに対して、
引用発明では、前記「搬送胴」は金属シリンダであるから、ドライヤが光照射型である場合には、前記「搬送胴」は光を妨げるものではあるが、そのようなドライヤをそのように設けたものではないから、前記「印刷品質検査装置の検出器」の検出面はそのように設けられていない点。

4 判断
上記相違点1及び2について検討する。
(1)相違点1について
ア 印刷後のインキ画像を光源の光を照射して乾燥する印刷機は、本願の優先日前に周知である(例.原査定の拒絶の理由で引用された刊行物である特開2001-171221号公報(【0012】の記載「印刷後のインキ画像は乾燥ユニットに設けられた光源の光を照射されることにより乾燥される。」を参照。)、同じく原査定の拒絶の理由で引用された刊行物である特開平11-108638号公報(【0015】の記載「11は搬送される枚葉紙4の紫外線乾燥型インクを乾燥させる乾燥装置であり、UV(紫外線)照射ランプ…略…がカバー12により覆われている。」を参照。)、同じく原査定の拒絶の理由で引用された刊行物である特開平10-86347号公報(【0003】の記載「印刷後の枚葉紙を乾燥する乾燥装置が設置されている」及び【0013】の記載「25は紫外線照射装置27を備え…略…た乾燥装置」を参照。)。以下「周知技術」という。)。
イ 引用発明は「第1渡胴と第2渡胴に対し、各渡胴の周面に対向するように設けられたドライヤを各検査カメラの上流側に位置して配置して、両面印刷のための汚れ防止を図ることが可能なもの」であるから、引用発明において、両面印刷のための汚れ防止を図るために、第1渡胴又は第2渡胴に対し、渡胴の周面に対向するように設けられ、光源の光を照射して乾燥するドライヤを、検査カメラの上流側に位置して配置して、印刷後のインキ画像を乾燥させること、すなわち、引用発明において、前記搬送手段により搬送される印刷物に印刷されたインキを乾燥させる乾燥装置を前記搬送胴の周面に対向するように設けて、前記印刷機に乾燥装置を備えることは、当業者が周知技術に基づいて容易になし得たことである。
ウ したがって、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術に基づいて容易になし得たことである。
(2)相違点2について
ア 光学的な検出手段は検出すべき光以外の光を受けると誤検知するおそれがあることが当業者に自明である(上記特開2001-171221号公報の【0012】の記載「光源の光を用紙検知センサで誤検知しやすい。」、特開平6-331556号公報の【0007】の記載、【0011】の「落下する対象物15に当たらなかったレーザ光線16が他の反射物に当たり、その反射光が固体撮像素子カメラ12に入光すると、誤検出の問題が生ずる。」の記載及び【0012】の記載、特公平2-28848号公報の2頁左欄10?11行の記載を参照。)。
イ 上記(1)イのとおり、引用発明において、光源の光を照射して乾燥するドライヤを配置する場合、渡胴の周面のどこに対向するように設けるかは当業者が適宜決定する設計上の事項であるというべきところ、検出面が渡胴の周面に対向するように設けられる検出手段としての検査カメラがドライヤの光源の光を受けて誤検知しないように、ドライヤの光源の光が金属シリンダである渡胴によって妨げられて渡胴の周面に対向する検査カメラの検出面に入光しないような渡胴の周面上の領域に対向するようにドライヤを配置すること、すなわち、引用発明において、光源の光を照射して乾燥する乾燥装置を設ける(上記(1)参照。)に際し、前記印刷品質検査装置の検出器の検出面が、前記乾燥装置の光が搬送胴によって妨げられる範囲になるように設けることは、上記アからみて、当業者が容易になし得た程度のことである。
ウ したがって、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術に基づいて容易になし得たことである。
(3)効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、周知技術の奏する効果から当業者が予測できた程度のものである。
(4)まとめ
したがって、本願発明は、当業者が、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-03 
結審通知日 2010-02-09 
審決日 2010-02-22 
出願番号 特願2002-18004(P2002-18004)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藏田 敦之  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 長島 和子
上田 正樹
発明の名称 印刷機の印刷品質検査装置  
代理人 光石 俊郎  
代理人 光石 忠敬  
代理人 松元 洋  
代理人 田中 康幸  

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