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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E01F
管理番号 1214857
審判番号 不服2008-7969  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-02 
確定日 2010-04-08 
事件の表示 特願2004-259520「視覚障害者用点字タイル」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月21日出願公開,特開2005-105811〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成16年9月7日(優先日:平成15年9月8日,出願番号:特願2003-315911号)の出願であって,平成20年2月27日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年4月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年4月30日受付けで請求項の削除を目的とする手続補正がなされ,さらに,平成21年1月8日付けで前置審査における拒絶理由の通知がなされたところ,同年3月16日受付けで手続補正がなされたものであり,その後,当審において,同年10月29日付けで審査官による前置報告書の内容を提示するとともに請求人の意見を求める審尋を行ったところ,平成22年1月4日受付けで回答書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は,平成21年3月16日受付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものであり,そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。
(本願発明)
「上面に突設した複数の突起を有する、アクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物を硬化させて得られる樹脂製シートであって、該硬化性混合物が、少なくともアクリル系モノマー、分子内に2個以上の二重結合を有するアクリルモノマーまたはビニルモノマーである多官能モノマー、及びアクリル系モノマーの単独重合体もしくは共重合体またはその他のシロップの粘度を調節する働きをする重合体からなる重合体成分を含むアクリルシロップであり、分子内に2個以上の二重結合を有するアクリルモノマーまたはビニルモノマーが、アクリルシロップに含まれるアクリルモノマーまたはビニルモノマーの総量のうち0.2?15重量%である樹脂製シートからなる点字タイル。」

3.引用刊行物
(1)前置審査における拒絶理由で引用され,本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-163988号公報(以下「刊行物1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
(1a)「アクリル系樹脂を含む樹脂モルタルで一体成形されてなることを特徴とするプレート。」(【請求項1】)
(1b)「プレートの成形型にアクリル系樹脂を含む樹脂モルタルを充填する工程と、
前記成形型内で前記樹脂モルタルを硬化させる工程と、
前記成形型から前記プレートを取り出す工程と、からなることを特徴とするプレートの製造方法。」(【請求項2】)
(1c)「【発明の属する技術分野】本発明は、点字タイル等の各種のプレート、その製造方法及びその施工方法に関する。」(段落【0001】)
(1d)「請求項1にかかる本発明のプレートは、アクリル系樹脂(8)を含む樹脂モルタル(18)で一体成形されてなることを特徴とする。即ち、アクリル系樹脂を含む樹脂モルタルで一体成形されたプレートは、柔軟性を有するとともに強靱であるため、歩行者や車両等によって重量や剥離力が作用しても、従来の着色塗装層の剥離等の部分的な損傷等、剥離や劣化を生ずることがなく、耐久性、耐候性に富むものである。しかも、プレートは、薄く形成しても十分な耐久性が得られるので、既設のアスファルト面、コンクリート面、ブロック面、タイル面、金属面等、既設の路面に直接設置でき、路面を掘り起こす等の手間がなく、施工性に富むものである。」(段落【0006】)
(1e)「図1は、本発明のプレートの実施の形態を示し、図2?図5は、本発明のプレートの製造方法の実施の形態を示している。この実施の形態では、一般に、点字タイルと称されるプレート2を例に取って説明する。このプレート2は、例えば、矩形形状に形成された平板部3の上面側に複数の突部4が複数行、複数列に形成され、各突部4と平板部3とは一体に形成されている。このプレート2は、アクリル系樹脂を含む樹脂モルタルで一体成形されている。」(段落【0015】)
(1f)「このプレート2の原材料について説明すると、アクリル系樹脂8を構成する主剤、添加剤の組成及び構造式は、表1に示す通りである。」
【表1】

」(段落【0017】,【0018】)
(1g)「ここで、樹脂モルタル18に含まれるアクリル系樹脂8の特性について説明すると、アクリル系樹脂8とは、ジシクロペンテニールオキシエチレン及びメタアクリレートに軟化剤を混入したものを主剤とし、この主剤に上記の硬化剤、遅延剤又は促進剤の何れかを選択的に一定の比率で添加し、又は前記主剤に遅延剤、硬化剤及び促進剤の全部を一定の比率で添加して得られる。このアクリル系樹脂8は、主剤に促進剤を混ぜて攪拌した後、硬化剤を混ぜて攪拌することにより得られ、80?100mPa・a(当審注:「mPa・s」の誤記と認める。)の低粘度であって、含浸性に優れ、コンクリートの空隙部やアスファルト壁面に浸透する性質がある。また、毛細管現象により、被付着物の表面を這い上がる性質を有し、散布骨材に強力に固着する。このアクリル系樹脂8は、熱硬化性樹脂であるため、硬化後は、再加熱しても液化しない。また、発熱反応で固化するため、樹脂量が多いほど硬化時間が短く、厚みが厚い程早く、薄い場合には遅い。」(段落【0026】)
(1h)「【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、次の効果が得られる。
a 柔軟性及び機械的強度に優れ、耐久性及び施工性の高いプレートを提供することができる。
b 樹脂モルタルからなるプレートは、薄く形成しても十分な耐久性が得られるので、既設のアスファルト面、コンクリート面、ブロック面、タイル面、金属面等、既設の路面に直接設置でき、路面を掘り起こす等の手間がなく、高い施工性を得ることができる。
c 成形型に樹脂モルタルを流し込み、常温等で容易に硬化させてプレートを製造することができ、製造コストの低減を図ることができる。製造されたプレートは、この施工現場での加熱によって所望の形状に成形でき、施工現場の凹凸部分に適応した形状に成形又は加工することができ、常温において、硬化し、その形状を保持することができる。また、施工後、加熱することにより軟化させて剥離することができる。
d 接着材料に樹脂モルタルを用いることで、柔軟性及び機械的強度に優れ、耐久性及び施工性を高めることができる。
e 樹脂モルタルで形成されたプレートと同一材料の樹脂モルタルからなる接着材料を用いることで、両者の親和性が得られて接着強度を高めることができるとともに、常温で容易に硬化する等、施工の簡易化及び容易化を図ることができる。」(段落【0040】)
したがって,上記記載事項(1a)ないし(1h)によれば,上記刊行物1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
(引用発明)
「平板部の上面側に複数の突部が形成され,突部と平板部とが一体に形成されたプレートであって,アクリル系樹脂を含む樹脂モルタルをプレートの成形型に充填し,硬化させて,一体成形したプレートからなる点字タイル。」

(2)また,アクリル系樹脂の原料について,例えば,特開平5-311843号公報には,次の事項が記載されている。
(2a)「【産業上の利用分野】本発明は、建物の内部や周辺等の床面、構造物の壁面、あるいは舗道等の路面上に、カラータイル被覆を形成する方法に関する。」(段落【0001】)
(2b)「【従来の技術】近年、建物の内部や周辺等の床面、構造物の壁面あるいは舗道等の路面のような基盤面上に、各種のカラー装飾被覆が施されている。
カラー装飾被覆を合理的に形成する代表的な方法として、耐候性に優れたアクリル系樹脂を用いる型枠式カラータイル工法が知られている。この方法は、基盤面を下地調整した後、カラータイルの目地となる下地材を塗布し、次いでこの下地材上に型枠を貼り込む。次いで表層材を型枠の厚さに塗り込み、表層材がある程度硬化した後型枠を除去し、トップコートしてカラータイル被覆の形成が完了する。」(段落【0002】,【0003】)
(2c)「【実施例】以下、実施例に基づき本発明の方法をより具体的に説明する。
実施例1
工場内で、テトラフルオロエチレンをコートしたステンレス製鋼板上に、下地材を1.0mmの厚みでバーコーターで塗工した。次いで厚さ2.0mmの発泡ポリエチレン製の所定の模様を有する型枠を貼り込んみ、表層材を型枠に合わせて金ごてで塗り込んだ。次いで型枠を除去し、約10分後ステンレス板上にカラータイル被覆を形成した。このカラータイル被覆を50cm四方の正方形板に切断し、プレハブ製品を得た。・・・
なお、この実施例で用いた各種樹脂組成物の組成を表1に示した。
【表1】

」(段落【0022】?【0025】)

その他にも,例えば,特開平6-155664号公報には,次の事項が記載されている。
(2d)「【産業上の利用分野】本発明は、耐候性、成形性に優れたアクリルシロップを伸張性フィルムに包みこんだ圧空および/または真空成形用シートであって、深絞り成形やアンダーカット成形にも利用可能な成形材料に関するものである。本発明の圧空および/または真空成形用シートは、浴槽等の住宅機材、建材、工業部品、電気部品、車両部品等の種々の分野に使用することができる。」(段落【0001】)
(2e)「まず、本発明における圧空および/または真空成形用シートの主たる構成成分は、
(1) カルボキシル基および/またはヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー
(2) 一官能(メタ)アクリル系モノマーを主成分とするモノマー成分とからなるアクリルシロップ(A) と、多価金属酸化物、多価金属水酸化物および多価イソシアネートから選ばれる1種以上の増粘剤(B) であり、上記(A),(B) にラジカル重合開始剤等を配合して得られるコンパウンドを伸張性フィルム(C) で包みこむことによって圧空および/または真空成形用シートが形成される。」(段落【0009】)
(2f)「モノマー成分(2) としては、前述の一官能(メタ)アクリル系モノマーに加えて、架橋性の多官能モノマーを併用することもできる。多官能モノマーとしては、分子中に重合性不飽和基を2個以上有する化合物であれば特に制限なく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
ここで、(2) のモノマー成分中の一官能モノマーと多官能モノマー成分の比は、100 :0 ?80:20(重量%)が好ましい。ただ成形後の材料を熱硬化型樹脂用途として用いる場合には、架橋性の多官能モノマーの存在が好ましく、一官能モノマーと多官能モノマーの比を97:3 ?80:20(重量%)とするとよい。
上記(メタ)アクリル系ポリマー(1) とモノマー成分(2) とを混合し、アクリルシロップ(A) が構成されるが、本発明における好ましい混合比は、(メタ)アクリル系ポリマー(1) 対モノマー成分(2) が40:60?10:90(重量部)であり、より好ましくは20:80?10:90(重量部)である。」(段落【0015】?【0017】)

以上のように,アクリル系樹脂材料の技術分野において,「アクリル系モノマー(上記メタクリル酸メチルやモノマー成分(2)を参照。),分子内に2個以上の二重結合を有するアクリルモノマーである多官能モノマー(上記エチレングリコールジメタクリレートや多官能モノマー成分を参照。),及び重合体成分(上記メタクリル酸メチル重合体や(メタ)アクリル系ポリマー(1)を参照。)を含むアクリルシロップ」は,周知の原料である。

4.対比
本願発明と引用発明を対比すると,引用発明の「突部」及び「プレート」は,本願発明の「突起」及び「樹脂製シート」に相当する。
また,引用発明の「アクリル系樹脂を含む樹脂モルタル」は,上記記載事項(1f)を参酌すれば,「ジシクロペンテニールオキシエチレンメタアクリレート」のようなアクリル系モノマーを主剤としたアクリル系樹脂を含む硬化性混合物であることが明らかであるから,本願発明の「アクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物」に相当する。
してみれば,両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

<一致点>
「上面に突設した複数の突起を有する,アクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物を硬化させて得られる樹脂製シートからなる点字タイル。」

<相違点>
アクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物が,本願発明は「少なくともアクリル系モノマー、分子内に2個以上の二重結合を有するアクリルモノマーまたはビニルモノマーである多官能モノマー、及びアクリル系モノマーの単独重合体もしくは共重合体またはその他のシロップの粘度を調節する働きをする重合体からなる重合体成分を含むアクリルシロップであり、分子内に2個以上の二重結合を有するアクリルモノマーまたはビニルモノマーが、アクリルシロップに含まれるアクリルモノマーまたはビニルモノマーの総量のうち0.2?15重量%」のものであるのに対し,引用発明は,粘度が80?100mPa・s程度の(シロップ状の)アクリル系樹脂を含む(上記記載事項(1h)参照。)ものではあるが,アクリル系モノマー成分と重合体成分を混合して粘度を調整した,いわゆるアクリルシロップを含むものではない点。

5.判断
上記相違点について検討する。アクリル系モノマーを主体とする硬化性混合物の原料として,「アクリル系モノマー,分子内に2個以上の二重結合を有するアクリルモノマーである多官能モノマー,及び重合体成分を含むアクリルシロップ」は,上記したように,周知なものである。
そして,上記周知のアクリルシロップが,建物,舗道のカラー装飾被覆や建材等といった様々な用途の原料として用いられていることを考慮すれば,上記周知のアクリルシロップを,引用発明の硬化性混合物の原料として採用することは,当業者が容易になし得たことである。

また,アクリルシロップに添加する多官能モノマーの量は,添加する多官能モノマーの種類や,硬化したアクリル系樹脂成型物に所望される特性等に応じて,当業者が適宜設定し得たものにすぎない。
例えば,周知技術として例示した上記記載事項(2c)によれば,カラータイル模様の原料となる表層材のアクリルシロップ中に,アクリル系モノマー(メタクリル酸メチル)15重量%,アクリル系の多官能モノマー(エチレングリコールジメタクリレート)1重量%を含むとされているから,アクリルシロップに添加されるアクリル系の多官能モノマーの割合は,アクリル系モノマーの総量の6.25重量%(=1/16*100)であり,また,上記記載事項(2f)によれば,アクリルシロップに添加される多官能モノマーの割合は,アクリル系モノマーの総量の3?20重量%が好ましいとされており,アクリルシロップ中の多官能モノマーの割合を,アクリル系モノマーの総量の0.2?15重量%程度とすることも,普通に行われていることにすぎない。

そうすると,引用発明の硬化性混合物として,アクリル系モノマー,分子内に2個以上の二重結合を有するアクリルモノマーである多官能モノマー,及び重合体成分を含むアクリルシロップであって,前記多官能モノマーの割合がアクリル系モノマーの総量の0.2?15重量%程度のものを採用することは,当業者が容易になし得たことである。

また,本願発明の奏する効果についても,引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できるものであり,格別なものではない。

よって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-05 
結審通知日 2010-02-09 
審決日 2010-02-23 
出願番号 特願2004-259520(P2004-259520)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西田 秀彦深田 高義  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 宮崎 恭
関根 裕
発明の名称 視覚障害者用点字タイル  
代理人 山口 和  
代理人 中嶋 重光  
代理人 中嶋 重光  
代理人 山口 和  

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