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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02B |
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管理番号 | 1214861 |
審判番号 | 不服2008-11181 |
総通号数 | 126 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-05-01 |
確定日 | 2010-04-08 |
事件の表示 | 特願2004-287155「パッケージ収納型エンジン作業機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月13日出願公開、特開2006- 97646〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成16年9月30日の出願であって、平成19年10月18日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成19年11月9日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成20年3月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成20年5月1日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成20年5月9日付けで明細書及び特許請求の範囲について手続補正がなされると共に同日付けで審判請求書の請求の理由についての手続補正がなされ、その後、当審において平成21年7月21日付けで書面による審尋がなされ、これに対して平成21年9月11日付けで回答書が提出されたものである。 第2 平成20年5月9日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年5月9日付けの手続補正を却下する。 [理由] [1]補正の内容 平成20年5月9日付けの明細書及び特許請求の範囲についての手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成19年11月9日付けの手続補正により補正された)下記の(a)に示す請求項1ないし3を下記の(b)に示す請求項1ないし3と補正するものである。 (a)本件補正前の特許請求の範囲 「【請求項1】 平面視長方形状のケース(2)内の下部に、エンジン(21)と、該エンジン(21)で駆動される作業機を有し、前記ケース(2)内の上部に、熱交換器(31)と、熱交換器用ファン(32)とを有する構成のパッケージ収納型エンジン作業機であって、前記熱交換器(31)は、前記ケース(2)の平面視短手方向の側面に沿って立設され、前記熱交換器用ファン(32)は、その回転軸が前記ケース(2)の平面視長手方向と平行となるように配置され、前記熱交換器(31)に対向して設けられ、前記ケース(2)の長手方向の上部正面、または上部背面を構成するパネルの少なくともいずれか一方には、通風口が設けられたパッケージ収納型エンジン作業機において、前記ケース(2)の平面視長手方向で、前記熱交換器用ファン(32)に隣接した通風室(40)を設け、該通風室(40)の正面または背面の少なくとも一方は、前記通風口を有するパネルにて構成し、該ケース(2)の平面視長手方向で前記通風室(40)に隣接して、制御系機器を配置したことを特徴とするパッケージ収納型エンジン作業機。 【請求項2】 請求項1記載のパッケージ収納型エンジン作業機において、前記熱交換器用ファン(32)による送風形態を押込方式とし、前記通風口を吸気口として機能させることを特徴とするパッケージ収納型エンジン作業機。 【請求項3】 請求項1記載のパッケージ収納型エンジン作業機において、前記熱交換器用ファン(32)による送風形態を吸込方式とし、前記通風口を排気口として機能させることを特徴とするパッケージ収納型エンジン作業機。」 (b)本件補正後の特許請求の範囲 「【請求項1】 平面視長方形状のケース(2)内の下部に、エンジン(21)と、該エンジン(21)で駆動される作業機を有し、前記ケース(2)内の上部に、熱交換器(31)と、熱交換器用ファン(32)とを有する構成のパッケージ収納型エンジン作業機であって、前記熱交換器(31)は、前記ケース(2)の平面視短手方向の側面に沿って立設され、前記熱交換器用ファン(32)は、その回転軸が前記ケース(2)の平面視長手方向と平行となるように配置され、前記熱交換器(31)に対向して設けられ、前記ケース(2)の長手方向の上部正面、または上部背面を構成するパネルの少なくともいずれか一方には、通風口が設けられたパッケージ収納型エンジン作業機において、前記ケース(2)の平面視長手方向で、前記熱交換器用ファン(32)に隣接した通風室(40)を設け、該通風室(40)の正面または背面の少なくとも一方は、前記通風口を有するパネルにて構成し、該通風口の位置は、前記熱交換器用ファン(32)の位置に対して、前記ケース(2)の平面視長手方向でオフセットして配置し、該ケース(2)の平面視長手方向で前記通風室(40)に隣接して、制御系機器を配置したことを特徴とするパッケージ収納型エンジン作業機。 【請求項2】 請求項1記載のパッケージ収納型エンジン作業機において、前記熱交換器用ファン(32)による送風形態を押込方式とし、前記通風口を吸気口として機能させることを特徴とするパッケージ収納型エンジン作業機。 【請求項3】 請求項1記載のパッケージ収納型エンジン作業機において、前記熱交換器用ファン(32)による送風形態を吸込方式とし、前記通風口を排気口として機能させることを特徴とするパッケージ収納型エンジン作業機。」(なお、下線は補正箇所を示す。) [2]本件補正の適否 本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項である「通風口」の配置位置についてさらに「通風口の位置は、前記熱交換器用ファン(32)の位置に対して、前記ケース(2)の平面視長手方向でオフセットして配置し」と限定する補正を含んでおり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。 [3]独立特許要件の判断 1.刊行物に記載された発明 (1)刊行物1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前に頒布された刊行物である特開2002-257431号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 a)「【0009】 【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。図1はエンジンヒートポンプ/コジェネレーションシステム兼用装置1を示す斜視図、図2はエンジンヒートポンプ3として構成した兼用装置1の正面図、図3は同じく背面図、図4は同じく左側面図、図5は同じく右側面図、図6はコジェネレーションシステム4として構成した兼用装置1の正面図である。 【0010】図1、図2、又は図6に示すように、本発明に係る兼用装置1は、ケーシング2と、エンジン11と、その冷却系統と、その吸排気系統とから成る共通部材により構成されている。エンジン11としては、ガスエンジン、ディーゼルエンジンもしくはガスタービンなどの内燃機関を用いることが可能である。該共通部材に、コンプレッサ31、アキュムレータ32等のエンジンヒートポンプ3用の取換部材を装着することにより、エンジンヒートポンプとなるものである。そして、共通部材に、発電機41等のコジェネレーションシステム4用の取換部材を装着することにより、コジェネレーションシステムとなるものである。すなわち、該ケーシング2内に、該共通部材と、該エンジンヒートポンプ3用の取換部材、又はコジェネレーションシステム4用の取換部材の何れかを収装し、エンジンヒートポンプ3、又はコジェネレーションシステム4として使用することができる。 【0011】まず、前記兼用装置1をエンジンヒートポンプ3として構成する場合を説明する。図2及び図3に示すように、前記ケーシング2の上部部分を熱交換室2a、下部部分をエンジン室2bとして画設し、該熱交換室2aには、その正面側の中央部分に、熱交換ファン20を、正面向きに取り付けている。また、この熱交換ファン20と対向するように、該熱交換室2aの背面に沿って、「田」の字状に組まれた熱交換器本体21を配設している。」(段落【0009】ないし【0011】) b)「【0019】さらに、エンジン室2b内においては、図2及び図5に示すように、エンジン11の右側スペースに冷却水ポンプ22を配置し、一方、熱交換室2aにおける右側部にはラジエータ23を配設して、該冷却水ポンプ22と、該ラジエータ23と、前記エンジン11とを冷却水パイプ76で環状に連結する。また、冷却水ポンプ22からラジエータ23へ向けての配管途上に電磁弁78を設けて冷却水パイプ76を分岐し、この分岐路は前記廃熱回収器35へ向けて配管し、再び、ラジエータ23の下流側で合流させる。符号77は、電磁弁78の上流側に設けたサーモスタットである。」(段落【0019】) c)「【0022】こうして、ケーシング2内の所定位置に、吸排気系統、冷却系統、冷媒系統、潤滑系統とを配設して、エンジンヒートポンプ3を構成し、図4に示すように、ケーシング2の左側面上部に制御盤39を配設して、エンジンヒートポンプ3の運転を制御している。以上、エンジンヒートポンプ3としての構成である。」(段落【0022】) d)「【0023】次に、前記兼用装置1をコジェネンレーションシステム4として構成する場合を説明する。まず、図2乃至図5に示すエンジンヒートポンプ3としての兼用装置1から、コンプレッサ31、アキュムレータ32、オイルセパレータ33、リキッドレシーバ34、廃熱回収器35、熱交換器本体21、冷媒パイプ71、四方弁72、電磁膨張弁73等から成る冷媒系統と、制御盤39とを取り外し、そして、以下の部材を所定の位置に取り付けて、該兼用装置1をコジェネンレーションシステム4として構成する。 【0024】図6に示すように、前記エンジン11に取り付けていたコンプレッサ31を発電機41に取り換え、前記排気ガス熱交換器12の上方に水/水熱交換器43を配設し、前記ケーシング5左側面のエンジンヒートポンプ3用の制御盤39を、コジェネレーションシステム4運転用の制御盤49に取り換える。」(段落【0023】及び【0024】) e)「【0025】そして、前記制御盤49には、インバータが内装されて、該インバータにより発電機41の出力が制御され、発電機41からの出力電力が調整されている。」(段落【0025】) f)「【0026】このコジェネレーションシステム4では、前記エンジン11の冷却水は、エンジン11、水/水熱交換器43、ラジエータ23間を冷却水ポンプ22により循環されており、エンジン11の冷却等により得た熱量を水/水熱交換器43を介して外部に供給するように構成されている。こうして、発電に伴いエンジン11で生じる排熱は水/水熱交換器43で回収され、給湯等に供される。」(段落【0026】) (2)ここで、上記(1)a)ないしf)の記載及び図面より、次のことが分かる。 イ)上記(1)a)及びd)の記載並びに図1ないし6より、エンジンヒートポンプ/コジェネレーションシステム兼用装置1は、平面視長方形状のケーシング2内の下部に、エンジン11と、該エンジン11で駆動される取換部材を有し、前記ケーシング2内の上部に、ラジエータ23と、熱交換ファン20とを有していることが分かる。 ロ)上記(1)a)及びd)の記載並びに図1ないし6より、エンジンヒートポンプ/コジェネレーションシステム兼用装置1は、エンジン11、発電機41等の機器がケーシング2にパッケージングされるものであることが分かる。 ハ)上記(1)a)、b)、d)及びf)の記載並びに図1ないし6より、ラジエータ23は、ケーシング2の平面視短手方向の側面に沿って立設され、熱交換ファン20は、その回転軸が前記ケーシング2の平面視短手方向と平行となるように配置され、前記ラジエータ23に隣接して設けられていることが分かる。 ニ)上記(1)a)及びd)の記載並びに図1ないし6より、ケーシング2の長手方向の上部背面には熱交換器本体21が設けられていることが分かるが、このことから、ケーシング2の長手方向の上部背面には熱交換器本体21のための通風口が設けられているといえる。 ホ)上記(1)b)ないしe)の記載及び図2、4、6より、ケーシング2に、熱交換ファン20が設けられる室を設け、該熱交換ファン20が設けられる室の背面に、熱交換器本体21を設け、該ケーシング2の平面視長手方向で熱交換ファン20が設けられる室に隣接して、制御盤39、49を配置していることが分かる。また、熱交換ファン20が設けられる室の背面に、熱交換器本体21が設けられていることから、該室の背面には、熱交換器本体21のための通風口が設けられているといえる。 (3)刊行物1に記載された発明 したがって、上記(1)及び(2)を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。 <刊行物1に記載された発明> 「平面視長方形状のケーシング2内の下部に、エンジン11と、該エンジン11で駆動される取換部材を有し、前記ケーシング2内の上部に、ラジエータ23と、熱交換ファン20とを有する構成の機器がケーシング2にパッケージングされるエンジンヒートポンプ/コジェネレーションシステム兼用装置1であって、前記ラジエータ23は、前記ケーシング2の平面視短手方向の側面に沿って立設され、前記熱交換ファン20は、その回転軸が前記ケーシング2の平面視短手方向と平行となるように配置され、前記ラジエータ23に隣接して設けられ、前記ケーシング2の長手方向の上部背面には、通風口が設けられた機器がケーシング2にパッケージングされるエンジンヒートポンプ/コジェネレーションシステム兼用装置1において、前記ケーシング2に、前記熱交換ファン20が設けられる室を設け、該熱交換ファン20が設けられる室の背面に、前記通風口を設け、該ケーシング2の平面視長手方向で前記熱交換ファン20が設けられる室に隣接して、制御盤39、49を配置した機器がケーシング2にパッケージングされるエンジンヒートポンプ/コジェネレーションシステム兼用装置1。」 (4)刊行物2の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前に頒布された刊行物である特開平3-217623号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 a)「(イ)産業上の利用分野 本発明は内燃機関により発電を行うと共に、内燃機関が発熱する熱を温水に換えて供給するコージェネシステムに於ける冷却機構に関する。」(公報第1ページ右下欄第1ないし4行) b)「(口)従来技術 従来は第5図・第6図・第7図に示す如く、コージェネシステムのパッケージ室内を構成していたのである。 即ち、パッケージ室1内を、内燃機関室aとラジエータ室bとラジエータ排風室cと換気ファン排風室dに仕切り、ラジエー夕室bの内部に大型のラジエータRとラジエータ冷却ファンFと、該ラジエータ冷却ファンFを駆動する冷却ファンモーターMを配置していたのである。」(公報第1ページ右下欄第5ないし14行) c)「23はラジエー夕室bへの空気取入口、21はラジエータ冷却ファンFの排風口、22は換気ファン8の排風口」(公報第2ページ左上欄第10ないし13行) d)「第1図において、内燃機関Eの側面に発電機Dが固設されており、該内燃機関Eの回転により発電し電力を供給する。内燃機関Eはこの電力を供給する以外に、内燃機関の発熱により2次水に熱を供給することにより、温水として供給することが出来るのである。」(公報第2ページ左下欄第12ないし17行) e)「次に第2図・第3図・第4図において、パッケージ室1の内部の構成について説明する。 本発明においては、該パッケージ室lの内部を内燃機関室Aとラジエー夕室Bの2室に仕切っている。」(公報第3ページ右上欄第12ないし16行) f)「また該内燃機関Eの上部に、複数のラジエータR1・R2・R3と、ラジエータ冷却ファンF1・F2・F3と、冷却ファン駆動モーターMl・M2・M3を配置するラジエー夕室Bが設けられており」(公報第3ページ左下欄第2ないし6行) g)「本実施例においては、ラジエータRは3台を配置しているので、ラジエータR1を左側面に、ラジエータR2を右側面に、ラジエータR3を前方側面に配置し、それぞれに排風口12・l3・14を設けている。」(公報第3ページ左下欄第16ないし20行) (5)ここで、上記(4)a)ないしg)の記載及び図面より、次のことが分かる。 イ)上記(4)a)ないしg)の記載並びに第2、3、5及び6図より、コージェネシステムは、平面視長方形状のパッケージ室1内の下部に、内燃機関Eと、該内燃機関Eで駆動される発電機Dを有し、前記パッケージ室1内の上部に、ラジエータR又はR3と、ラジエータ冷却ファンF又はF3とを有していることが分かる。 ロ)上記(4)a)ないしg)の記載及び第2ないし7図より、コージェネシステムは、パッケージ室1に収納される型式のものであることが分かる。 ハ)上記(4)b)、c)、f)及びg)の記載並びに第3及び6図より、ラジエータR又はR3は、パッケージ室1の平面視短手方向の側面と平行になるように立設され、前記ラジエータ冷却ファンF又はF3は、その回転軸が前記パッケージ室1の平面視長手方向と平行となるように配置され、前記ラジエータR又はR3に対向して設けられていることが分かる。 ニ)上記(4)b)、c)、f)及びg)の記載並びに第3及び6図より、パッケージ室1に、平面視長手方向で、ラジエータ冷却ファンF又はF3に隣接した風を通す室を設けていることが分かる。 (6)刊行物2に記載された発明 したがって、上記(4)及び(5)を総合すると、刊行物2には次の発明(以下、「刊行物2に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。 <刊行物2に記載された発明> 「平面視長方形状のパッケージ室1内の下部に、内燃機関Eと、該内燃機関Eで駆動される発電機Dを有し、前記パッケージ室1内の上部に、ラジエータR又はR3と、ラジエータ冷却ファンF又はF3とを有する構成のパッケージ室1に収納される型式のコージェネシステムであって、前記ラジエータR又はR3は、前記パッケージ室1の平面視短手方向の側面と平行になるように立設され、前記ラジエータ冷却ファンF又はF3は、その回転軸が前記パッケージ室1の平面視長手方向と平行となるように配置され、前記ラジエータR又はR3に対向して設けられたパッケージ室1に収納される型式のコージェネシステムにおいて、前記パッケージ室1の平面視長手方向で、前記ラジエータ冷却ファンF又はF3に隣接した風を通す室を設けたパッケージ室1に収納される型式のコージェネシステム。」 2.対比・判断 本件補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、機能・構造からみて、刊行物1に記載された発明における「ケーシング2」は本件補正発明における「ケース(2)」に相当し、以下同様に、「エンジン11」は「エンジン(21)」に、「取換部材」は「作業機」に、「ラジエータ23」は「熱交換器(31)」に、「熱交換ファン20」は「熱交換器用ファン(32)」に、「機器がケーシング2にパッケージングされるエンジンヒートポンプ/コジェネレーションシステム兼用装置1」は「パッケージ収納型エンジン作業機」に、「制御盤39、49」は「制御系機器」に、それぞれ相当する。 また、刊行物1に記載された発明における「熱交換ファン20は、その回転軸が前記ケーシング2の平面視短手方向と平行となるように配置され、前記ラジエータ23に隣接して設けられ」という事項は、「熱交換器用ファンは、その回転軸が前記ケースの平面視特定方向と平行となるように配置され、熱交換器に隣接して設けられ」という事項である限りにおいて、本件補正発明における「熱交換器用ファン(32)は、その回転軸が前記ケース(2)の平面視長手方向と平行となるように配置され、熱交換器(31)に対向して設けられ」という事項に一致する。 さらに、刊行物1に記載された発明における「ケーシング2の長手方向の上部背面には、通風口が設けられ」という事項は、「ケースの長手方向の上部背面には、通風口が設けられ」という事項である限りにおいて、本件補正発明における「ケース(2)の長手方向の上部正面、または上部背面を構成するパネルの少なくともいずれか一方には、通風口が設けられ」という事項に含まれる。 さらにまた、刊行物1に記載された発明における「ケーシング2に、前記熱交換ファン20が設けられる室を設け、該熱交換ファン20が設けられる室の背面に、前記通風口を設け、該ケーシング2の平面視長手方向で前記熱交換ファン20が設けられる室に隣接して、制御盤39、49を配置した」という事項は、「ケースに、特定の室を設け、該特定の室の背面に、前記通風口を設け、該ケースの平面視長手方向で前記特定の室に隣接して、制御系機器を配置した」という事項である限りにおいて、本件補正発明における「ケース(2)の平面視長手方向で、前記熱交換器用ファン(32)に隣接した通風室(40)を設け、該通風室(40)の正面または背面の少なくとも一方は、前記通風口を有するパネルにて構成し、該通風口の位置は、前記熱交換器用ファン(32)の位置に対して、前記ケース(2)の平面視長手方向でオフセットして配置し、該ケース(2)の平面視長手方向で前記通風室(40)に隣接して、制御系機器を配置した」という事項に一致する。 してみると、本件補正発明と刊行物1に記載された発明とは、 「平面視長方形状のケース内の下部に、エンジンと、該エンジンで駆動される作業機を有し、前記ケース内の上部に、熱交換器と、熱交換器用ファンとを有する構成のパッケージ収納型エンジン作業機であって、前記熱交換器は、前記ケースの平面視短手方向の側面に沿って立設され、前記熱交換器用ファンは、その回転軸が前記ケースの平面視特定方向と平行となるように配置され、前記熱交換器に隣接して設けられ、前記ケースの長手方向の上部背面には、通風口が設けられたパッケージ収納型エンジン作業機において、ケースに、特定の室を設け、該特定の室の背面に、前記通風口を設け、該ケースの平面視長手方向で前記特定の室に隣接して、制御系機器を配置したパッケージ収納型エンジン作業機。」の点で一致し、次の点で相違する。 <相違点> 本件補正発明では、「熱交換器用ファンは、その回転軸がケースの平面視長手方向と平行となるように配置され、熱交換器に対向して設けられ」、「前記ケースの長手方向の上部背面を構成するパネルには、通風口が設けられ」、「前記ケースの平面視長手方向で、前記熱交換器用ファンに隣接した通風室を設け、該通風室の背面は、前記通風口を有するパネルにて構成し、該通風口の位置は、前記熱交換器用ファンの位置に対して、前記ケースの平面視長手方向でオフセットして配置し、該ケースの平面視長手方向で前記通風室に隣接して、制御系機器を配置した」構成となっているのに対して、刊行物1に記載された発明では、熱交換器用ファン(熱交換ファン20)は、その回転軸がケース(ケーシング2)の「平面視短手方向」と平行となるように配置されたものであって、熱交換器(ラジエータ23)に「対向」して設けられておらず、また、通風口は、「前記ケース(ケーシング2)の長手方向の上部背面」に設けられているものの、「前記ケースの長手方向の上部背面を構成するパネル」に設けられているか明らかではなく、さらに「前記ケース(ケーシング2)に、前記熱交換器用ファン(熱交換ファン20)が設けられる室を設け、該熱交換器用ファン(熱交換ファン20)が設けられる室の背面に、前記通風口を設け、該ケース(ケーシング2)の平面視長手方向で前記熱交換器用ファン(熱交換ファン20)が設けられる室に隣接して、制御系機器(制御盤39、49)を配置した」構成となっており、「通風室」の構成及び「通風口」の「オフセット」配置に関する構成が明らかではない点(以下、「相違点」という。なお括弧内の記載は本件補正発明における発明特定事項に相当する刊行物1に記載された発明における発明特定事項を示す。)。 上記相違点について検討する。 本件補正発明と刊行物2に記載された発明とを対比すると、機能・構造からみて、刊行物2に記載された発明における「パッケージ室1」は本件補正発明における「ケース(2)」に相当し、以下同様に、「内燃機関E」は「エンジン(21)」に、「発電機D」は「作業機」に、「ラジエータR又はR3」は「熱交換器(31)」に、「ラジエータ冷却ファンF又はF3」は「熱交換器用ファン(32)」に、「パッケージ室1に収納される型式のコージェネシステム」は「パッケージ収納型エンジン作業機」に、「風を通す室」は「通風室(40)」に、それぞれ相当する。 また、刊行物2に記載された発明における「ラジエータR又はR3は、前記パッケージ室1の平面視短手方向の側面と平行になるように立設され」という事項は、「熱交換器は、前記ケースの平面視短手方向の側面と平行になるように立設され」という事項である限りにおいて、本件補正発明における「熱交換器(31)は、前記ケース(2)の平面視短手方向の側面に沿って立設され」という事項に一致する。 してみると、刊行物2に記載された発明は、本件補正発明の発明特定事項にあわせて表現すると、「平面視長方形状のケース内の下部に、エンジンと、該エンジンで駆動される作業機を有し、前記ケース内の上部に、熱交換器と、熱交換器用ファンとを有する構成のパッケージ収納型エンジン作業機であって、前記熱交換器は、前記ケースの平面視短手方向の側面と平行になるように立設され、前記熱交換器用ファンは、その回転軸が前記ケースの平面視長手方向と平行となるように配置され、前記熱交換器に対向して設けられたパッケージ収納型エンジン作業機において、前記ケースの平面視長手方向で、前記熱交換器用ファンに隣接した通風室を設けたパッケージ収納型エンジン作業機。」であるといえる。 刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とは、共に「ケース内の下部に、エンジンと、該エンジンで駆動される作業機を有し、前記ケース内の上部に、熱交換器と、熱交換器用ファンとを有する構成のパッケージ収納型エンジン作業機であって、前記熱交換器は、前記ケースの平面視短手方向の側面側に立設され、前記熱交換器用ファンは、その回転軸が前記ケースの平面視特定方向と平行となるように配置され、前記熱交換器に隣接して設けられたパッケージ収納型エンジン作業機」という同一の技術分野に属するものであるから、刊行物1に記載された発明における熱交換ファン20及び熱交換ファン20周囲の構成として、刊行物2に記載された発明における「熱交換器用ファンは、その回転軸がケースの平面視長手方向と平行となるように配置され、熱交換器に対向して設けられ、前記ケースの平面視長手方向で、前記熱交換器用ファンに隣接した通風室を設けた」構成を採用し、本件補正発明のような、熱交換器用ファンは、その回転軸がケースの平面視長手方向と平行となるように配置され、熱交換器に対向して設けられ、ケースの平面視長手方向で、熱交換器用ファンに隣接した通風室を設け、該ケースの平面視長手方向で前記通風室に隣接して、制御系機器を配置した構成とすることに格別な困難性はない。 そして、刊行物1に記載された発明における熱交換ファン20及び熱交換ファン20周囲の構成として、刊行物2に記載された発明における熱交換器用ファン及び熱交換器用ファン周囲の構成を採用する際、刊行物2の第3図に記載されている、通風口である排気口14の位置が、ラジエータ冷却ファンF3の位置に対して、ラジエータ冷却ファンF3の回転軸心方向、すなわちパッケージ室1の平面視長手方向、でオフセットして配置される技術や、例えば、実願昭51-63685号(実開昭52-153962号)のマイクロフィルム(第1及び2図等参照)、特開平7-158902号公報(図2等参照)及び実願昭56-35136号(実開昭57-148675号)のマイクロフィルム(第2及び3図等参照)に記載されている、通風口の位置が、熱交換器用ファンの位置に対して、熱交換器用ファンの回転軸心方向でオフセットして配置される技術、のような従来周知の技術(以下、「周知技術1」という。)を適用して、刊行物1に記載された発明におけるケーシング2の背面にある通風口の位置を、回転軸がケーシング2の平面視長手方向と平行となるように配置された熱交換ファン20の位置に対して、熱交換ファン20の回転軸心方向であるケーシング2の平面視長手方向でオフセットして、熱交換ファン20に隣接して設けられる通風室に配置するようにして、本件補正発明のような、通風口の位置を、熱交換器用ファンの位置に対して、ケースの平面視長手方向でオフセットして配置する構成とすることも格別な困難性はない。 さらに、例えば、特開昭62-84269号公報(公報第4ページ左下欄第11ないし18行の記載並びに第3及び4図参照)及び特開2003-287317号公報(段落【0028】の記載及び図1ないし5参照)に記載されているように、パッケージ収納型エンジン作業器の技術分野において、ケースを構成する面をパネルにより構成する技術は従来周知(以下、「周知技術2」という。)であるから、刊行物1に記載された発明に、上記周知技術2を採用して、ケースを構成する面をパネルにより構成し、通風口をケースの長手方向の上部背面を構成するパネルに設け、該通風口を有するパネルにてケース内の室の背面を構成することも格別な困難性はない。 よって、刊行物1及び2に記載された発明並びに上記周知技術1及び2に基づいて、上記相違点に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本件補正発明を全体としてみても、刊行物1及び2に記載された発明並びに上記周知技術1及び2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 したがって、本件補正発明は、刊行物1及び2に記載された発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 第3 本件発明について 1.本件発明 平成20年5月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明は、平成19年11月9日付けの手続補正により補正された明細書及び特許請求の範囲、並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、前記第2[理由][1](a)に示した請求項1に記載されたとおりのものである。 2.刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前に頒布された刊行物である刊行物1(特開2002-257431号公報)には、前記第2[理由][3]1.(1)ないし(3)のとおりのものが記載されている。 また、原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前に頒布された刊行物である刊行物2(特開平3-217623号公報)には、前記第2[理由][3]1.(4)ないし(6)のとおりのものが記載されている。 3.対比・判断 本件発明は、前記第2[理由][3]で検討した本件補正発明から「該通風口の位置は、前記熱交換器用ファン(32)の位置に対して、前記ケース(2)の平面視長手方向でオフセットして配置し」という発明特定事項を省いたものに相当する。 そうすると、本件発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、前記第2[理由][3]に記載したとおり、刊行物1及び2に記載された発明並びに前記第2[理由][3]で示した周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、同様の理由により、刊行物1及び2に記載された発明並びに上記周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本件発明は、刊行物1及び2に記載された発明並びに周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-02-03 |
結審通知日 | 2010-02-09 |
審決日 | 2010-02-22 |
出願番号 | 特願2004-287155(P2004-287155) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F02B)
P 1 8・ 121- Z (F02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤原 直欣 |
特許庁審判長 |
早野 公惠 |
特許庁審判官 |
八板 直人 柳田 利夫 |
発明の名称 | パッケージ収納型エンジン作業機 |
代理人 | 矢野 寿一郎 |