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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F21M |
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管理番号 | 1214878 |
審判番号 | 不服2008-31512 |
総通号数 | 126 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-12-11 |
確定日 | 2010-04-08 |
事件の表示 | 特願2003-344776号「車両用前照灯」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月28日出願公開、特開2005-116190号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件出願は、平成15年10月 2日の出願であって、平成20年11月 5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月11日に本件審判請求がなされるとともに、平成21年 1月 9日付けで手続補正(前置補正)がなされ、当審合議体による平成21年 9月18日付けの拒絶理由通知に応答して、平成21年11月 9日付けで手続補正がなされたものである。 2 本願発明 本件出願の請求項1?8に係る発明は、平成21年11月 9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。 「 【請求項1】 光源から放射された光を前方へ導く上部反射鏡式光学系と、 回転楕円面状の反射面が形成され前記光源から下方に直接放射された光を反射する下部反射鏡、前記下部反射鏡によって反射された光が入射するレンズ筒および前記反射された光を前方へ導く凸レンズを有し、前記光源から下方に直接放射された光をすれ違い用の配光の一部に使用するプロジェクタ式光学系とを備えた車両用前照灯。」 (以下「本願発明」という。) 3 引用刊行物とその記載事項 (1)引用刊行物に記載された事項 当審の拒絶理由に引用した、本願の出願日よりも前に頒布された刊行物である特開2003-208807号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。 (ア)「【0020】メインリフレクター20の有効反射面22は、バルブ挿着孔13の周りに設けられているが、メインリフレクター20がランプボディ12の形状に倣った形状であるため、図2に示すように、車両幅方向外側寄りの有効反射面22bが車両幅方向内側寄りの有効反射面22aよりも狭められたものとなっている。そして、バルブ30の発光部であるフィラメント32の発光の一部(フィラメント32から斜め後方に出射する光)は、メインリフレクター20の有効反射面22(22a,22b)に導かれ、ここで図1,2符号L1に示すように前方に反射されて、カットラインC.L.をもつすれ違いビーム用の第1の配光パターンP1が形成される(図5参照)。」 (イ)「【0032】図8および図9は本発明の第3の実施例を示し、図8は本発明の第3の実施例である自動車用ヘッドランプの縦断面図、図9はサブリフレクターユニットを取着したメインリフレクターの一部破断斜視図である。 【0033】この第3の実施例における光源ユニットU3は、メインリフレクター20にバルブ30とサブリフレクターユニット40Cとが装着一体化された構造である。 【0034】サブリフレクターユニット40Cは、バルブ30のフィラメント32の前方から上方を覆うように配置されたサブリフレクター142と、サブリフレクター142の下方に配置された拡散投射レンズ46と、サブリフレクター142で後方に反射された光を拡散投射レンズ46に導く第2のサブリフレクター143と、第2のサブリフレクター143と投射レンズ46間に配置されて、投射レンズ46によって拡散投射配光される配光パターンの上縁を規制するシェード44とがハウジング141に一体化された構造となっている。 【0035】サブリフレクター142の反射面142aは、前方の第1焦点F1’に配置したバルブ30のフィラメント32の発光を反射して後方斜め下方の第2焦点F2’に集光させる楕円的曲面で構成されている。また、第2のサブリフレクター143は、サブリフレクター142で後方に反射した光が集光する第2焦点F2’の前方所定位置に配置されて、サブリフレクター142での反射光を確実に投射レンズ46に導くようになっている。」 (ウ)「【0036】また、拡散投射レンズ46は、その後方焦点が第2のサブリフレクター143の反射面143aで反射された光の集光点(サブリフレクターの反射面143aに対し第2焦点F2’と対称な点)F3に一致するように配置され、シェード44は、その上縁がこの集光点F3に一致するように配置されている。」 (エ)「【0037】このため、バルブ30のフィラメント32の発光の一部(フィラメント32から上方,側方および前方に出射した光量の大きい光)は、図8符号L2で示されるように、サブリフレクターの反射面142aで後方斜め下向きに反射され、第2のサブリフレクター143で前方に反射されて前方の拡散投射レンズ46に導かれ、この拡散投射レンズ46により前方に投射されて、図5に示すように、メインリフレクターの有効反射面22で反射形成される第1の配光パターンP1より左右に大きく拡散された第2の配光パターンP2が形成される。そして、第1の配光パターンP1と第2の配光パターンP2が合成されて、所定の光量をもつヘッドランプの配光が得られる。」 (2)引用刊行物の記載及び図面より、引用刊行物に記載されていることが明らかな事項 (a)上記摘記事項(イ)及び【図8】より、バルブ30からの光は「メインリフレクター20」に導かれ前方に出射することは明らかであり、この系はメインリフレクター20式光学系と呼称し得るものである。 (b)上記摘記事項(イ)には「【0034】サブリフレクターユニット40Cは、バルブ30のフィラメント32の前方から上方を覆うように配置されたサブリフレクター142と、サブリフレクター142の下方に配置された拡散投射レンズ46と、サブリフレクター142で後方に反射された光を拡散投射レンズ46に導く第2のサブリフレクター143と、第2のサブリフレクター143と投射レンズ46間に配置されて、投射レンズ46によって拡散投射配光される配光パターンの上縁を規制するシェード44とがハウジング141に一体化された構造となっている。」と記載されており、拡散投射レンズ46は、ハウジング141に固定されているものであり、また、当該記載及び【図8】、【図9】より、ハウジング141内を光が進むことは明らかである。 (3)引用発明 すると、引用刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているということができる。 「バルブ30から放射された光を前方へ導くメインリフレクター20式光学系と、 反射面が形成され前記バルブ30から下方に放射された光を反射する第2のサブリフレクター143、前記第2のサブリフレクター143によって反射された光が入射するハウジング141および前記反射された光を前方へ導く拡散投影レンズ46を有し、前記バルブ30から下方に放射された光をすれ違い用の配光の一部に使用するプロジェクタ式光学系とを備えた自動車用ヘッドランプ。」 4 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「バルブ30」、「サブリフレクター143」、「拡散投影レンズ46」及び「自動車用ヘッドランプ」は、本願発明の「光源」、「下部反射鏡」、「凸レンズ」及び「車両用前照灯」に相当する。 また、引用発明の「メインリフレクター20」は、本願発明の「上部反射鏡」に相当するから、引用発明の「メインリフレクター20(上部反射鏡)式光学系」は、本願発明の「上部反射鏡式光学系」対応する。 してみると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は以下の通りである。 <一致点> 「光源から放射された光を前方へ導く上部反射鏡式光学系と、 反射面が形成され前記光源から下方に放射された光を反射する下部反射鏡、前記下部反射鏡によって反射された光を前方へ導く凸レンズを有し、前記光源から下方に放射された光をすれ違い用の配光の一部に使用するプロジェクタ式光学系とを備えた車両用前照灯。」 <相違点1> 本願発明は、下部反射鏡が「回転楕円面状の反射面」を有するのに対して、引用発明では、下部反射鏡の反射面形状について明らかではない点。 <相違点2> 本願発明では、下部反射鏡によって反射された光が入射する「レンズ筒」を有するのに対して、引用発明では、下部反射鏡によって反射された光は「ハウジング141」に入射するものであり、「レンズ筒」とはしていない点。 <相違点3> 本願発明では、下部反射鏡へは、「光源から下方に直接放射された光を反射」し、「光源から下方に直接放射された光をすれ違い用の配光の一部に使用する」のに対して、引用発明では、下部反射鏡へは、光源から下方に放射された光を反射し、光源から下方に放射された光をすれ違い用の配光の一部に使用するものの、光源からの光は、直接放射された光かどうかは明らかではない点。 5 相違点についての検討(容易想到性の判断) 上記各相違点について検討する。 (1)上記<相違点1>について 上記「3 引用刊行物とその記載事項」の(1)に記載したように引用刊行物には、「【0036】また、拡散投射レンズ46は、その後方焦点が第2のサブリフレクター143の反射面143aで反射された光の集光点(サブリフレクターの反射面143aに対し第2焦点F2’と対称な点)F3に一致するように配置され、シェード44は、その上縁がこの集光点F3に一致するように配置されている。」(上記摘記事項(ウ))と記載されているが、サブリフレクター143の反射面143aを、回転楕円面状の反射面とした場合には、当該光の集光点F3を有する構成となることは明らかである。 したがって、下部反射鏡の反射面形状を「回転楕円面状の反射面」とする程度のことは当業者であれば適宜なし得る程度の事項にすぎない。 (2)上記<相違点2>について 上記「3 引用刊行物とその記載事項」の(3)で認定したように引用発明は「第2のサブリフレクター143によって反射された光が入射するハウジング141」を有するものである。当該ハウジング141に替えて「レンズ筒」とする程度のことは当業者であれば適宜なし得る程度の事項にすぎない。 (3)上記<相違点3>について 上記「3 引用刊行物とその記載事項」の(1)に記載したように引用刊行物には、「バルブ30の発光部であるフィラメント32の発光の一部(フィラメント32から斜め後方に出射する光)は、メインリフレクター20の有効反射面22(22a,22b)に導かれ、ここで図1,2符号L1に示すように前方に反射されて、カットラインC.L.をもつすれ違いビーム用の第1の配光パターンP1が形成される(図5参照)。」(上記摘記事項(ア))と記載されているように、バルブ30には斜め方向に出射する光が存在することが明らかである。上記摘記事項(エ)及び【図8】では、直接の記載はないが、上記摘記事項(イ)?(エ)及び【図8】、【図9】で説明されている実施例においても当該斜め後方に出射する光の存在は明らかであり、当該斜め後方に出射する光のうち下方の光が、拡散投影レンズ46に導かれることも明らかである。 以上より、本願発明のように、下部反射鏡へは、「光源から下方に直接放射された光を反射」し、「光源から下方に直接放射された光をすれ違い用の配光の一部に使用する」こととすることは、当業者であれば困難なことではない。 そして、本願発明の作用効果は、引用発明から、当業者であれば予測できる範囲のものにすぎない。 したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項について検討するまでものなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-02-05 |
結審通知日 | 2010-02-09 |
審決日 | 2010-02-22 |
出願番号 | 特願2003-344776(P2003-344776) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F21M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 和泉 等 |
特許庁審判長 |
川向 和実 |
特許庁審判官 |
金丸 治之 小関 峰夫 |
発明の名称 | 車両用前照灯 |
代理人 | 濱田 初音 |
代理人 | 田澤 英昭 |