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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1214894
審判番号 不服2006-15472  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-19 
確定日 2010-04-05 
事件の表示 特願2001-502176「表面実装製品用マイクロレンズ」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月14日国際公開、WO00/76002、平成15年 1月14日国内公表、特表2003-501840〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年5月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年6月3日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成13年12月3日付けで国内書面が提出され、平成17年5月9日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月2日付けで手続補正書及び意見書が提出され、同年10月31日付けで拒絶の理由が通知され、平成18年2月6日付けで意見書が提出され、同年4月19日付けで拒絶査定が平成17年5月9日付け拒絶理由通知書に記載した理由によってなされ、これに対し、平成18年7月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月17日付けで手続補正書が提出され、その後、当審において、平成20年11月11日付けで審尋がなされ、平成21年5月14日付けで回答書が提出されたものである。


第2.拒絶理由通知、意見書、拒絶査定、審判請求書、審尋及び回答書の概要

1.原審における平成17年5月9日付けの拒絶理由通知の概要

「 (略)
この出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

・請求項1?11,18?20
発明の詳細な説明には、「背景 本発明は、一般に、・・・そのような感光性ディバイスの充填比を向上させるマイクロレンズアレイの使用に関する。」(段落【0001】)、「従来の表面実装パッケージングは、せいぜい数分間225℃のオーダの温度を必要とするが、従来のマイクロレンズアレイに悪影響を与えると信じられている。このため、安価なパッケージ技術を、マイクロレンズアレイを使用して実現される許容可能な充填比を持つ感光性ディバイスに適用できる技術に対する継続的な要求がある。」(段落【0005】?【0006】)と記載されている。
しかしながら、請求項1?11,18?20に係る発明が、発明を特定するための事項によって感光性ディバイスの充填比を向上させることができるものとも、マイクロレンズアレイに悪影響を与えないものとも認められないので、請求項1?11,18?20に係る発明の発明を特定するための事項の技術的意味が理解できない。
(略)」

2.平成17年8月2日付けの意見書の概要

「 (略)
[3] 先ず、本願発明の解決すべき課題として、感光性ディバイスにマイクロレンズアレイを用いると、その充填比を向上できますが(段落0004)、感光性ディバイスにマイクロレンズアレイを実装する際に表面実装パッケージ技術を用いると、その熱によりマイクロレンズに悪影響を与えてしまうという問題があります(段落0005)。
すなわち、本願発明の目的は、表面実装パッケージ技術を用いても、その熱による悪影響を受けることのないマイクロレンズの形成方法、およびマイクロレンズを表面実装した感光性ディバイスを提供することです。
そして、この目的は、補正後の請求項1に係る発明においては、「前記ディバイス上に形成されたマイクロレンズ形成材料である正のフォトレジストを、フォトリソグラフィの後、深紫外線でブリーチ処理し、リフローステップにより融解し、そしてハードベイクすることによって、200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列するステップ」という発明特定事項によって、表面実装パッケージ技術において加えられる熱に対して安定なマイクロレンズを得ることができることから達成されます(段落0012?0016)。
よって、補正後の請求項1に係る発明は、上記の発明特定事項によってマイクロレンズに悪影響を与えることがなくなり、これにより感光性ディバイスの充填比を向上させることができることから、補正後の請求項1に係る発明の発明特定事項の技術的意味は理解できるものになったと思料します。
したがって、請求項1についての上記拒絶理由は上記補正によって解消されたものと思料します。
(略)
[9] 以上により、本出願は、特許法第36条第4項及び第6項第2号によって拒絶されるべきものではなくなり、特許されるに十分な要件を具備するに至ったものと確信致します。よって、特許すべき旨の査定を賜りたくお願い申し上げます。」

3.原審における平成18年4月19日付けの拒絶査定の概要

「 この出願については、平成17年5月9日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものである。
なお、平成17年8月2日付け意見書及び同日付け手続補正書の内容を検討したが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせない。
備考
・請求項1?20
出願人は上記意見書において、「補正後の請求項1に係る発明においては、「前記ディバイス上に形成されたマイクロレンズ形成材料である正のフォトレジストを、フォトリソグラフィの後、深紫外線でブリーチ処理し、リフローステップにより融解し、そしてハードベイクすることによって、200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列するステップ」という発明特定事項によって、表面実装パッケージ技術において加えられる熱に対して安定なマイクロレンズを得ることができることから達成されます。」と主張されている。
しかしながら、上記発明特定事項において、「200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列する」は達成すべき結果を用いた記載としてしか理解できず、したがって、上記発明特定事項である「前記ディバイス上に・・・フォトレジストを、フォトリソグラフィの後、・・・そしてハードベイクすることによって、・・・熱に安定なマイクロレンズを配列するステップ」は、「前記ディバイス上に・・・フォトレジストを、フォトリソグラフィの後、・・・そしてハードベイクする」ステップと、方法発明におけるステップとしてどのように異なるステップであるのか明確でない。
(略)
よって、請求項1?20に係る発明は明確でない。
(略)
よって、平成17年5月9日付け拒絶理由通知書に記載した理由は依然として解消されていない。」

4.平成18年8月17日付けの手続補正書により補正された審判請求書の概要

「 【請求の理由】
(略)
【記載不備の指摘事項に対する対処】
上記拒絶理由通知において、請求項1?11、18?20に係る発明は、課題が達成されていないので、その発明特定事項の技術的意味が理解できないとする指摘事項(以下、「指摘事項(イ)」といいます)、および請求項12?17に係る発明は、どのような課題を解決したのかが不明であるので発明を理解できないとする指摘事項(以下、「指摘事項(ロ)」といいます)については、上記拒絶理由通知に対して平成17年8月2日付けの手続補正書(以下、「前回の補正」といいます)により補正をしましたので、指摘の不備は当該拒絶査定の前に既に解消されていたものと思料します。
また、当該拒絶査定において、初めて指摘された、請求項1および請求項18のステップの記載は達成すべき結果を用いた記載であり、ステップとして不明確であるという指摘事項(以下、「指摘事項(ハ)といいます」)、並びに請求項18および発明の詳細な説明の「深紫外」は通常の定義と異なるので不明瞭であるという指摘事項(以下、「指摘事項(ニ)といいます」)については、平成18年8月17日付けの手続補正書(以下、「今回の補正」といいます)により補正をしましたので、指摘の不備は解消したものと思料します。
(略)
(a)指摘事項(イ)について
指摘事項(イ)に係る点については、今回の補正において請求項1?11、18?20を削除しておりますので、ここで本指摘事項が解消していることの説明をする実益がないことから、その説明を省略します。
(略)
(c)指摘事項(ハ)について
指摘事項(ハ)に係る点は、今回の補正において、請求項1?11、18?20を削除することにより、解消しました。
(略)」

5.平成20年11月11日付けの審尋の概要

「 (略)
前置報告書
(略)
3.審判請求時の補正により、新たに、請求項7ないし10に係る発明が追加された。
これは、請求項の削除を目的とするものにも、発明特定事項を限定するものであって、補正前の発明と補正後の発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である、特許請求の範囲の減縮を目的とするものにも、誤記の訂正を目的とするものにも、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明を目的とするものにも該当しない。
よって、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

そして、この出願は原査定の理由に示したとおり拒絶されるべきものである。
(略)」

6.平成21年5月14日付けの回答書(以下「回答書」という。)の概要

「 (略)
[5] 補正却下の理由の一つである指摘事項3.について、審判請求時の補正の請求項7?10は、方法の発明である独立形式の旧請求項1を審判請求時に削除したことから、旧請求項1を引用する請求項4、5、6、9を、物の発明である独立形式の新請求項1を引用するように単に補正したものです。これら請求項に記載された発明特定事項は、審判請求時の補正の前から、特許請求の範囲に記載されていたものであり、既に行った審査結果を有効に活用して審査を迅速に行うことができる範囲内であることから、当該補正事項は、特許法第17条の2第4項の立法趣旨に鑑み、また審査基準第III部第II節の「1.基本的考え方」に則してなされているものであり、補正却下されるべきものではないと思料します。
[6] 以上のように、当該補正は、何ら補正却下されるものではありません。
また、当該補正後の本願発明は、発明の範囲が明確であり、かつ進歩性を有するものであることについて、説明します。
先ず、前置報告書の通り、パッケージされた感光性ディバイスの技術分野において、200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを含むディバイスを実現することは、従来の技術常識では困難であり、出願時の技術常識を考慮しても、当業者は、200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを含む具体的なディバイスを製造することはできません。しかしながら、このことは、何ら発明の範囲を不明確にはしません。
本願の出願当初明細書の段落0010?0016には、例示として、マイクロレンズ形成材料である正のフォトレジストを、フォトリソグラフィの後、350?430nmの波長を有する放射線を用いてブリーチ処理し、160℃の温度で約120秒間のリフローステップにより融解し、そして225℃の温度で約2?3分間のハードベイクすることによって、200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを製造できることが記載されております。このように、当業者であれば、本願明細書に記載された内容によって、200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを得ることができ、よって、発明の範囲は明確です。
換言すれば、出願当初明細書は、請求項1?10に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載しております。
なお、本件審判請求人は、引用文献3、5にも記載されているように、製造方法と熱安定性とを請求項に規定することで、当業者は物としてマイクロレンズを具体的に想定することができると主張したのであって、前置報告書で曲解されているような引用文献3、5が200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズの製造方法を示唆している等とは一切主張しておりません。
また、上述した本願明細書で開示する200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズの製造方法の例示は、いずれの引用文献からも全く導き出すことができないものであります。よって、本願発明は、進歩性も有していると思料します。
なお、製造方法の発明の請求項については、上述した例示のように、リフローステープおよびハードベイクの温度が、範囲ではなく、1点のみしか明細書に記載されていないことから、このような1点のみの温度を特許請求の範囲で規定しても、有効な特許権が得られないと判断し、削除したものであり、進歩性を鑑みて削除した訳ではありません(そもそも拒絶査定は、進歩性を拒絶の理由としておらず、進歩性は解消していたはずと理解しております)。
[7] 以上の通り、審判請求時の補正は却下されるべきものではないことから、本願は原査定の理由で拒絶されるようなものではなく、また、審判請求時の補正による本願発明は、発明の範囲が明確であるとともに、進歩性を有するものであります。よって、原査定を取り消す、この出願の発明はこれを特許すべきものとする、との審決を求めます。」


第3.平成18年8月17日付けの手続補正についての却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成18年8月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成18年8月17日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1?20を補正後の特許請求の範囲の請求項1?10と補正するとともに、補正前の明細書の0013段落を補正後の明細書の0013段落と補正するものであって、補正前の請求項1?20及び補正後の請求項1?10は以下のとおりである。

(補正前)
「 【請求項1】 マイクロレンズを形成する方法であって、
感光性ディバイスを形成するステップと、
前記ディバイス上に形成されたマイクロレンズ形成材料である正のフォトレジストを、フォトリソグラフィの後、深紫外線でブリーチ処理し、リフローステップにより融解し、そしてハードベイクすることによって、200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列するステップと、
前記ディバイスをパッケージするステップと、
前記パッケージされたディバイスを表面実装マスリフローのステップにさらすステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】 前記深紫外線が350?430nmの波長を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】 約400ナノメータ以下の波長をフィルタ処理で除くことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】 約10秒間にわたり前記ブリーチ処理をすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】 前記フォトリソグラフィ前に、前記ディバイス上に形成された前記材料をソフトベイクすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】 前記ソフトベイク、前記リフローステップ、前記ハードベイクの順に処理の温度が高くなることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】 前記フォトレジストが、ノボラック型フォトレジストであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】 前記フォトリソグラフィにより前記材料を第1の形状にパターンニングし、前記リフローステップにより前記材料を熱に当てて前記材料の形状を変化させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】 前記ソフトベイクが約100℃の熱処理で、前記リフローステップが約150℃の熱処理で、かつ前記ハードベイクが約200℃の熱処理であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項10】 前記材料を少なくとも200℃の温度で少なくとも2分間にわたり前記ハードベイクすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】 200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり前記マイクロレンズ用材料が熱に安定であるようにするのに十分な温度及び時間で、前記マイクロレンズ用材料を前記ハードベイクすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】 パッケージされた感光性ディバイスであって、
感光性アレイと、
前記感光性アレイ上に、マイクロレンズ形成材料である正のフォトレジストを、フォトリソグラフィの後、深紫外線でブリーチ処理し、リフローステップにより融解し、そしてハードベイクすることによって形成された、200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズと、
回路基板に表面実装技術を用いて固定されるように適合された、前記感光性アレイを含むパッケージと
を含むことを特徴とするディバイス。
【請求項13】 前記マイクロレンズが長方形であることを特徴とする請求項12に記載のディバイス。
【請求項14】 前記フォトレジストがノボラック型フォトレジストであることを特徴とする請求項12に記載のディバイス。
【請求項15】 前記マイクロレンズが350?430nmの波長を有する前記深紫外線で前記ブリーチ処理されていることを特徴とする請求項12に記載のディバイス。
【請求項16】 前記マイクロレンズが少なくとも200℃の温度で少なくとも2分間にわたり前記ハードベイクされていることを特徴とする請求項12に記載のディバイス。
【請求項17】 前記パッケージがウィンドウ付きクワッドフラットパッケージであることを特徴とする請求項12に記載のディバイス。
【請求項18】 熱に安定なマイクロレンズを形成する方法であって、
マイクロレンズ形成材料である正のフォトレジストにフォトリソグラフィを施すステップと、
約400ナノメータ以上の波長を有する深紫外放射を用いて前記フォトリソグラフィを施した前記材料をブリーチするステップと、
前記ブリーチした前記材料をリフローステップにより融解するステップと、
前記材料を200℃のオーダの温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定であるようにするのに十分な温度及び時間で、前記溶解した材料をハードベイクするステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】 前記材料を少なくとも200℃の温度で少なくとも2分間にわたり前記ハードベイクすることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】 前記材料を約10秒間にわたり前記ブリーチ処理をすることを特徴とする請求項18に記載の方法。」

(補正後)
「 【請求項1】 パッケージされた感光性ディバイスであって、
感光性アレイと、
前記感光性アレイ上に、マイクロレンズ形成材料である正のフォトレジストを、フォトリソグラフィの後、ブリーチ処理し、リフローステップにより融解し、そしてハードベイクすることによって形成された、200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズと、
回路基板に表面実装技術を用いて固定されるように適合された、前記感光性アレイを含むパッケージと
を含むことを特徴とするディバイス。
【請求項2】 前記マイクロレンズが長方形であることを特徴とする請求項1に記載のディバイス。
【請求項3】 前記フォトレジストがノボラック型フォトレジストであることを特徴とする請求項1に記載のディバイス。
【請求項4】 前記マイクロレンズが350?430nmの波長を有する放射線で前記ブリーチ処理されていることを特徴とする請求項1に記載のディバイス。
【請求項5】 前記マイクロレンズが少なくとも200℃の温度で少なくとも2分間にわたり前記ハードベイクされていることを特徴とする請求項1に記載のディバイス。
【請求項6】 前記パッケージがウィンドウ付きクワッドフラットパッケージであることを特徴とする請求項1に記載のディバイス。
【請求項7】 約10秒間にわたり前記ブリーチ処理がされていることを特徴とする請求項1に記載のディバイス。
【請求項8】 前記フォトリソグラフィ前に、前記ディバイス上に形成された前記材料をソフトベイクすることを特徴とする請求項1に記載のディバイス。
【請求項9】 前記ソフトベイク、前記リフローステップ、前記ハードベイクの順に処理の温度が高くなることを特徴とする請求項8に記載のディバイス。
【請求項10】 前記ソフトベイクが約100℃の熱処理で、前記リフローステップが約150℃の熱処理で、かつ前記ハードベイクが約200℃の熱処理であることを特徴とする請求項8に記載のディバイス。」

2.補正事項の整理
本件補正のうち、特許請求の範囲に関するものを整理すると以下のとおりである。

(補正事項a)
補正前の請求項1?11、18?20を削除すること。
(補正事項b)
補正前の請求項12を補正後の請求項1に繰り上げ、「パッケージされた感光性ディバイスであって、 感光性アレイと、 前記感光性アレイ上に、マイクロレンズ形成材料である正のフォトレジストを、フォトリソグラフィの後、ブリーチ処理し、リフローステップにより融解し、そしてハードベイクすることによって形成された、200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズと、 回路基板に表面実装技術を用いて固定されるように適合された、前記感光性アレイを含むパッケージと を含むことを特徴とするディバイス。」と補正すること。
(補正事項c)
補正前の請求項13を補正後の請求項2に繰り上げ、「前記マイクロレンズが長方形であることを特徴とする請求項1に記載のディバイス。」と補正すること。
(補正事項d)
補正前の請求項14を補正後の請求項3に繰り上げ、「前記フォトレジストがノボラック型フォトレジストであることを特徴とする請求項1に記載のディバイス。」と補正すること。
(補正事項e)
補正前の請求項15を補正後の請求項4に繰り上げ、「前記マイクロレンズが350?430nmの波長を有する放射線で前記ブリーチ処理されていることを特徴とする請求項1に記載のディバイス。」と補正すること。
(補正事項f)
補正前の請求項16を補正後の請求項5に繰り上げ、「前記マイクロレンズが少なくとも200℃の温度で少なくとも2分間にわたり前記ハードベイクされていることを特徴とする請求項1に記載のディバイス。」と補正すること。
(補正事項g)
補正前の請求項17を補正後の請求項6に繰り上げ、「前記パッケージがウィンドウ付きクワッドフラットパッケージであることを特徴とする請求項1に記載のディバイス。」と補正すること。
(補正事項h)
補正後の請求項7を追加し、「約10秒間にわたり前記ブリーチ処理がされていることを特徴とする請求項1に記載のディバイス。」と補正すること。
(補正事項i)
補正後の請求項8を追加し、「前記フォトリソグラフィ前に、前記ディバイス上に形成された前記材料をソフトベイクすることを特徴とする請求項1に記載のディバイス。」と補正すること。
(補正事項j)
補正後の請求項9を追加し、「前記ソフトベイク、前記リフローステップ、前記ハードベイクの順に処理の温度が高くなることを特徴とする請求項8に記載のディバイス。」と補正すること。
(補正事項k)
補正後の請求項10を追加し、「前記ソフトベイクが約100℃の熱処理で、前記リフローステップが約150℃の熱処理で、かつ前記ハードベイクが約200℃の熱処理であることを特徴とする請求項8に記載のディバイス。」と補正すること。

3.本件補正の目的の適否についての検討
以下、補正事項a?kのうち、補正事項h?kについて検討する。

3-1.補正事項hについて
補正事項hは、補正後の請求項7を追加するものであるから、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下単に「特許法第17条の2第4項」という。)第1号ないし第4号に掲げる、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。
なお、補正後の請求項7に記載された「約10秒間にわたり前記ブリーチ処理」という文言自体は、補正前の請求項4に記載されたものであるが、補正前の請求項4に係る発明が方法の発明であるのに対して、補正後の請求項7に係る発明は「ディバイス」という物の発明であり、両者の発明のカテゴリー自体が異なっているから、補正後の請求項7を補正前の請求項4に対応する請求項とすることができないことは、明らかである。

3-2.補正事項iについて
補正事項iは、補正後の請求項8を追加するものであるから、特許法第17条の2第4項第1号ないし第4号に掲げる、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。
なお、補正後の請求項8に記載された「前記フォトリソグラフィ前に、前記ディバイス上に形成された前記材料をソフトベイクする」という文言自体は、補正前の請求項5に記載されたものであるが、補正前の請求項5に係る発明が方法の発明であるのに対して、補正後の請求項8に係る発明は「ディバイス」という物の発明であり、両者の発明のカテゴリー自体が異なっているから、補正後の請求項8を補正前の請求項5に対応する請求項とすることができないことは、明らかである。

3-3.補正事項jについて
補正事項jは、補正後の請求項9を追加するものであるから、特許法第17条の2第4項第1号ないし第4号に掲げる、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。
なお、補正後の請求項9に記載された「前記ソフトベイク、前記リフローステップ、前記ハードベイクの順に処理の温度が高くなる」という文言自体は、補正前の請求項6に記載されたものであるが、補正前の請求項6に係る発明が方法の発明であるのに対して、補正後の請求項9に係る発明は「ディバイス」という物の発明であり、両者の発明のカテゴリー自体が異なっているから、補正後の請求項9を補正前の請求項6に対応する請求項とすることができないことは、明らかである。

3-4.補正事項kについて
補正事項kは、補正後の請求項10を追加するものであるから、特許法第17条の2第4項第1号ないし第4号に掲げる、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。
なお、補正後の請求項10に記載された「前記ソフトベイクが約100℃の熱処理で、前記リフローステップが約150℃の熱処理で、かつ前記ハードベイクが約200℃の熱処理である」という文言自体は、補正前の請求項9に記載されたものであるが、補正前の請求項9に係る発明が方法の発明であるのに対して、補正後の請求項10に係る発明は「ディバイス」という物の発明であり、両者の発明のカテゴリー自体が異なっているから、補正後の請求項10を補正前の請求項9に対応する請求項とすることができないことは、明らかである。

3-5.請求人の主張について
請求人は、回答書において、「補正却下の理由の一つである指摘事項3.について、審判請求時の補正の請求項7?10は、方法の発明である独立形式の旧請求項1を審判請求時に削除したことから、旧請求項1を引用する請求項4、5、6、9を、物の発明である独立形式の新請求項1を引用するように単に補正したものです。これら請求項に記載された発明特定事項は、審判請求時の補正の前から、特許請求の範囲に記載されていたものであり、既に行った審査結果を有効に活用して審査を迅速に行うことができる範囲内であることから、当該補正事項は、特許法第17条の2第4項の立法趣旨に鑑み、また審査基準第III部第II節の「1.基本的考え方」に則してなされているものであり、補正却下されるべきものではないと思料します。」と主張している。
しかしながら、上記「3-1.」?「3-4.」で検討したとおり、補正前の請求項4?6及び9に係る方法の発明と、補正後の請求項7?10に係る物の発明とでは、両者の発明のカテゴリー自体が異なっているから、補正前後で請求項の記載に共通する部分があったとしても、補正事項h?kが既に行った審査結果を有効に活用して審査を迅速に行うことができる範囲を逸脱してなされたものであることは明らかである。
したがって、補正事項h?kは、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものとは認められず、請求人の主張は、採用することができない。

3-6.補正の目的の適否についてのむすび
したがって、補正事項h?kを含む本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。

4.補正の却下の決定についてのむすび
以上検討したとおり、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第4.本願の請求項に係る発明について
平成18年8月17日付けの手続補正は上記「第3.」のとおり却下されたので、本願の請求項1?20に係る発明は、平成17年8月2日付けの手続補正により補正された明細書(以下「本願明細書」という。)及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願請求項1発明」という。)は、請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「マイクロレンズを形成する方法であって、
感光性ディバイスを形成するステップと、
前記ディバイス上に形成されたマイクロレンズ形成材料である正のフォトレジストを、フォトリソグラフィの後、深紫外線でブリーチ処理し、リフローステップにより融解し、そしてハードベイクすることによって、200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列するステップと、
前記ディバイスをパッケージするステップと、
前記パッケージされたディバイスを表面実装マスリフローのステップにさらすステップと
を含むことを特徴とする方法。」


第5.本願請求項1発明の検討
1.本願請求項1発明を構成するステップ
本願請求項1発明は、「マイクロレンズを形成する方法」であって、具体的なステップとしては、
(a)「感光性ディバイスを形成するステップ」
(b)「前記ディバイス上に形成されたマイクロレンズ形成材料である正のフォトレジストを、フォトリソグラフィの後、深紫外線でブリーチ処理し、リフローステップにより融解し、そしてハードベイクすることによって、200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列するステップ」
(c)「前記ディバイスをパッケージするステップ」
(d)「前記パッケージされたディバイスを表面実装マスリフローのステップにさらすステップ」
を含むものである。
ここで、上記(a)?(d)のステップのうち、「マイクロレンズを形成する」ための具体的なステップとしては、(b)のステップのみであることは明らかであるから、以下では(b)のステップについて詳細に検討する。

2.(b)のステップの検討
2-1.(b)のステップの区分
(b)のステップが、具体的な処理ステップとして複数のものを含んでいることは明らかであって、「前記ディバイス上に形成されたマイクロレンズ形成材料である正のフォトレジストを、フォトリソグラフィの後、深紫外線でブリーチ処理し、リフローステップにより融解し、そしてハードベイクすることによって、200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列するステップ」は、「前記ディバイス上に形成されたマイクロレンズ形成材料である正のフォトレジストを、フォトリソグラフィ」、「の後、深紫外線でブリーチ処理し、」、「リフローステップにより融解し、」、「そしてハードベイクする」、「ことによって、200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列する」、と区分されるから、これを整理すると、
(b1).前記ディバイス上に形成されたマイクロレンズ形成材料である正のフォトレジストを、フォトリソグラフィするステップ、
(b2).(b1)ステップの後、(前記フォトレジストを)深紫外線でブリーチ処理するステップ、
(b3).(b2)ステップの後、(前記フォトレジストを)リフローステップにより融解するステップ、
(b4).(b3)ステップの後、(前記フォトレジストを)ハードベイクするステップ、
(b5).(b1)?(b4)のステップによって、200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列するステップ、
となる。

2-2.(b1)?(b4)のステップについて
(b1)?(b4)のステップは、「前記ディバイス上に形成されたマイクロレンズ形成材料である正のフォトレジスト」に対する処理として、「フォトリソグラフィ」→「ブリーチ」→「リフロー」→「ハードベイク」というステップを順に列挙したものである。
ここで、一般に「リフローステップ」が対象物を融解させるものであることは技術常識であるから、(b3)の「リフローステップにより融解する」は、「リフロー」の条件について何も限定していない。よって、(b1)?(b4)のステップのうち、条件について限定されているのは、(b2)のステップの「深紫外線で」の点のみである。

2-3.(b5)のステップについて
(b5)のステップは、「(b1)?(b4)のステップによって、200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列するステップ」であるが、ここで用いられている「配列する」とは、具体的に対象物(マイクロレンズ)を並べる行為を意味しているのではなく、(b1)?(b4)のステップを行った結果として、対象物(マイクロレンズ)が配列されたものを得るという意味であることは明らかである。
よって、(b5)のステップは、具体的な処理工程としてのステップを特定しているのではなく、(b1)?(b4)のステップによって、最終的に得られた結果物が「200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列(した物)」であることを特定している。


第6.本願の発明の詳細な説明の記載について
本願の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。

「【発明の詳細な説明】
【0001】
背景
本発明は、一般に、感光性ディバイスに関し、特に、そのような感光性ディバイスの充填比を向上させるマイクロレンズアレイの使用に関する。
【0002】
現在、表面実装パッケージングは、主に、回路基板に対して安価な方式で大量接続を行うことができるという事実により、かなりの商業的な好評を享受している。クワッドフラットパッケージ(Quad Flat Package)(QFP)として周知の、そのような1つの表面実装集積回路パッケージング技術では、基板上にパッケージを置いて熱を加えるだけで、パッケージをプリント配線板(PCB)などの回路基板に接続することができる。熱によって、パッケージの1つの表面上の、パッケージをボードに接続している多数の接点が融解される。この技術により、高速で安価な自動化方式で、集積回路を回路基板に接続することができる。
【0003】
集積回路のイメージセンサも、ますます受け入れられている。相補形金属酸化膜半導体(CMOS)イメージングディバイスは、従来の論理半導体製造プロセスを用いて形成することができる。これらのディバイスは高速にかつ比較的安価に作ることができるため、イメージング機能に加えて高度の電子機能を備えたディバイスを製造することができる。
【0004】
各種の感光性ディバイスは、マイクロレンズのアレイを用いてそれらの充填比を増加させている。充填比は、イメージ感知アレイ上に実際にその進路を作る入射光の量の尺度である。マイクロレンズは、イメージ感知アレイを構成する各ピクセル上に光を集束させる、小型レンズとして動作する。
【0005】
マイクロレンズは、正のフォトレジスト又はゾルゲルから作ることができる。これらのマイクロレンズアレイは、例えば、イメージ感知アレイ上に置かれたカラーフィルタのアレイ(CFA)の上にマイクロレンズアレイを配置することによって、イメージセンサの上に直接形成することができる。あるいはまた、マイクロレンズは、イメージ感知アレイ上に間隔をおいて配置することができる。いずれの場合でも、マイクロレンズは一般に熱に敏感であるため、本発明者が気付く限り、表面実装パッケージングと一緒に使用されることはなかった。従来の表面実装パッケージングは、せいぜい数分間225℃のオーダの温度を必要とするが、従来のマイクロレンズアレイに悪影響を与えると信じられている。
【0006】
このため、安価なパッケージング技術を、マイクロレンズアレイを使用して実現される許容可能な充填比を持つ感光性ディバイスに適用できる技術に対する継続的な要求がある。
【0007】
要約
1つの態様によれば、マイクロレンズを形成する方法には、感光性ディバイスを形成するステップが含まれる。マイクロレンズはディバイス上に配列され、このディバイスはパッケージ化される。このパッケージ化されたディバイスは、次に、表面実装マスリフロー(surface mount mass reflow)処理を受ける。
【0008】
詳細な説明
図1を参照する。マイクロレンズアレイ10には、本発明の1つの実施形態に基づいて、チャネル14によって区分された複数のマイクロレンズ12が含まれる。図示されたマイクロレンズ12にあっては、形状が長方形又は正方形であるため、チャネル14によって無駄に使われる間隔の量が少なくされ、これにより、充填比が改善される。マイクロレンズ12の詳細なドーム形状は、図示したものと比べて曲率を増加又は減少することにより調整することができる。長方形のマイクロレンズに加えて、円形や半球形のマイクロレンズを含む、他の従来の形状も同様に使用することができる。
【0009】
マイクロレンズアレイ10は、ノボラック(novolac)のような十分に光を透過する正のフォトレジストから形成することができる。アレイ10は、表面実装パッケージを回路基板に結合するときに必要なマスリフロー温度のステップに耐えることができる。従来のマイクロレンズでは、マイクロレンズの光学特性は、レンズの透過率及びその形状に悪影響を与えるような高い表面実装温度を受けると劣化されてしまう。マイクロレンズアレイ10を用いる改良された感光性ディバイスは、一般的で安価な表面実装パッケージングプロセスを利用する。
【0010】
図2を参照する。最初に、26で示すように、マイクロレンズを形成するために使用される材料が、CFA層又はガラス基板のような適当な表面上に、又は場合によっては感光性ディバイス上に直接スピンコートされる。図2ではマイクロレンズを形成する材料を蒸着するためにスピンコーティングを使用しているが、他の周知の技術も同様に利用することができる。次に、28で示すように、このコートされた材料は、ソフトベイクするステップを受ける。本発明の1つの実施形態では、マイクロレンズを形成する材料は、約3ミクロンの厚さにコーティングされ、約100℃の温度を使用して、例えば、110℃で540ミリセカンドのソフトベイクのステップを受ける。ソフトベイクのステップに利用する時間及び温度は変えることができ、またコーティング材料の厚さの関数である。この後、図2の30で示すように、ベイクされたコーティングはフォトリソグラフィを受ける。
【0011】
フォトリソグラフィの後、ブロック16(これがマイクロレンズになる)は、本発明の1つの実施形態では、図3に示す形状になる。この場合、ブロックは、幅が約3.5ミクロンの溝18によって互いに分離される。壁は約3ミクロンのスロープで形成される。図示した実施形態では、各ブロック16の長さは、約9ミクロンである。ブロックは、ブロック32で示すように、フォトレジスト処理技術のような従来の技術を用いてパターン化される。
【0012】
マイクロレンズのブロック16は、次に、ブロック34で示すように、ブリーチされる。このブリーチ処理は、マイクロレンズが高温にさらされる場合の劣化を防止するために、また透過率を向上させるために有用である。
【0013】
ブリーチ処理は5から10秒のオーダの迅速ブリーチステップとすることができ、1つの実施形態では、継続時間は6から7秒である。ブリーチ処理は、例えば、350から430nmの波長を発生する深紫外(DUV)の波長の放射を用いて行われる。UVフィルタは、約400nm以上の波長を通過させる。これにより、30秒程度の時間がかかる広帯域の放射を用いる従来のブリーチ処理に比べて、ブリーチ処理時間を短縮することができる。400nm以上の波長を用いるDUVブリーチ処理は、フォトレジストの材料から光活性化材料を除くことに極めて効果的である。この光活性化材料は、黄変、透過率の損失、及び熱の不安定性の原因であると考えられている。
【0014】
ブリーチ処理されたブロック16は、次に、リフローステップ36を受ける。本発明の1つの実施形態では、このリフローステップは、約150℃の温度、例えば、160℃の温度を約120秒間必要とする。その結果、図3で示したブロックは融解して、図4に示す形状を形成する。マイクロレンズ12は、チャネル14で分離される。マイクロレンズ12の高さTは、本発明の1つの実施形態では、約2.8ミクロンであり、レンズ12の長さは約11.5ミクロンである。
【0015】
レンズはここで約200℃の温度で、例えば、225℃の温度で約2?3分間のハードベイクのステップ(ブロック38)を受ける。一般に、従来の処理は、特にオーバラップを避けるために、個々のマイクロレンズ間の間隔を最適化している。その代わりに、熱安定性に関して最適化することによって、熱に安定したマイクロレンズを作ることができる。
【0016】
その後、マイクロレンズ12を有するイメージャがパッケージされる(ブロック40)。この後マイクロレンズは、レンズの光学特性に悪影響を受けることなく、マスリフロー表面実装パッケージで利用される従来の温度に当てられる。いくつかの実施形態では、マイクロレンズは少なくとも225℃の温度に少なくとも1分間、場合によっては少なくとも2分間耐えるように適合される。いくつかの実施形態では、透過率がほとんど変化を受けないだけでなく、レンズの形状も同様にほとんど影響されない。
【0017】
ここで図5を参照する。完成されたマイクロレンズアレイ44が、表面実装パッケージ48の中に含まれた感光性ディバイス46の上に配置されている。外部の屈折レンズ42が、光をマイクロレンズアレイ44を通って感光性ディバイス46上に集束させる。本発明の1つの実施形態では、ウィンドウ付きクワッドフラットパッケージ48が、従来の表面実装パッケージング技術に基づいて、リード50を用いて回路基板52に固定される。熱を加えると、リード50はパッケージ48を回路基板52に接着する。これは、マイクロレンズアレイ44の光学的性能に悪影響を及ぼすことなく行うことができる。
【0018】
本発明を限られた数の実施形態に関して説明してきたが、当業者はこれからの多くの修正及び変更を理解されよう。添付した特許請求の範囲が、本発明の真の精神及び範囲の中に入る全てのそのような修正や変更をカバーするものとする。」


第7.当審の判断

1.本願の発明の詳細な説明の開示内容の検討
以下、本願の発明の詳細な説明の記載に基づいて、開示内容を検討する。

1-1.本願発明の課題について
段落【0001】の「本発明は、一般に、感光性ディバイスに関し、特に、そのような感光性ディバイスの充填比を向上させるマイクロレンズアレイの使用に関する。」との記載、段落【0005】?【0006】の「いずれの場合でも、マイクロレンズは一般に熱に敏感であるため、本発明者が気付く限り、表面実装パッケージングと一緒に使用されることはなかった。従来の表面実装パッケージングは、せいぜい数分間225℃のオーダの温度を必要とするが、従来のマイクロレンズアレイに悪影響を与えると信じられている。 このため、安価なパッケージング技術を、マイクロレンズアレイを使用して実現される許容可能な充填比を持つ感光性ディバイスに適用できる技術に対する継続的な要求がある。」との記載より、本願発明の課題として、「安価なパッケージング技術」である「せいぜい数分間225℃のオーダの温度を必要とする」「従来の表面実装パッケージング」を、「マイクロレンズアレイを使用して実現される許容可能な充填比を持つ感光性ディバイスに適用できる」ようにすることが挙げられており、さらに、段落【0009】の「アレイ10は、表面実装パッケージを回路基板に結合するときに必要なマスリフロー温度のステップに耐えることができる。」との記載、段落【0012】の「このブリーチ処理は、マイクロレンズが高温にさらされる場合の劣化を防止するために、また透過率を向上させるために有用である。」との記載、段落【0015】の「その代わりに、熱安定性に関して最適化することによって、熱に安定したマイクロレンズを作ることができる。」との記載、段落【0016】の「この後マイクロレンズは、レンズの光学特性に悪影響を受けることなく、マスリフロー表面実装パッケージで利用される従来の温度に当てられる。いくつかの実施形態では、マイクロレンズは少なくとも225℃の温度に少なくとも1分間、場合によっては少なくとも2分間耐えるように適合される。」との記載、段落【0017】の「熱を加えると、リード50はパッケージ48を回路基板52に接着する。これは、マイクロレンズアレイ44の光学的性能に悪影響を及ぼすことなく行うことができる。」との記載を勘案すれば、発明の詳細な説明に記載されている本願発明の実質的な課題は、表面実装パッケージングで必要とされる「せいぜい数分間225℃のオーダの温度」に対する耐熱性を有するマイクロレンズアレイを提供することであると認められる。

1-2.課題を解決するための手段と従来技術との関係について
(1)上記「1-1.」で検討したとおり、本願発明の実質的な課題は、表面実装パッケージングで必要とされる「せいぜい数分間225℃のオーダの温度」に対する耐熱性を有するマイクロレンズアレイを提供すること、換言すれば、せいぜい数分間225℃のオーダの温度に対する耐熱性を有するマイクロレンズを得ることである。

(2)そして、段落【0005】の「いずれの場合でも、マイクロレンズは一般に熱に敏感であるため、本発明者が気付く限り、表面実装パッケージングと一緒に使用されることはなかった。従来の表面実装パッケージングは、せいぜい数分間225℃のオーダの温度を必要とするが、従来のマイクロレンズアレイに悪影響を与えると信じられている。」との記載、段落【0009】の「従来のマイクロレンズでは、マイクロレンズの光学特性は、レンズの透過率及びその形状に悪影響を与えるような高い表面実装温度を受けると劣化されてしまう。」との記載によると、従来の技術では、「せいぜい数分間225℃のオーダの温度に対する耐熱性を有するマイクロレンズを得る」ことができないものと認められる。

1-3.マイクロレンズを製造するための個々のステップ及びそのプロセス条件
1-3-1.マイクロレンズを製造するためのステップ
本願の発明の詳細な説明では、マイクロレンズを製造するためのステップとして、図2に示された順に、「スピンコート26」(段落【0010】)、「ソフトベイク28」(段落【0010】)、「フォトリソグラフィ30」(段落【0010】)、「(レンズ層の)パターン化32」(段落【0011】)、「ブリーチ34」(段落【0012】?【0013】)、「リフロー36」(段落【0014】)、「ハードベイク38」(段落【0015】)が記載されているので、各々のステップについて検討する。

1-3-2.「スピンコート26」、「ソフトベイク28」、「フォトリソグラフィ30」、「(レンズ層の)パターン化32」のステップ
(1)段落【0010】には、「スピンコート26」のステップが、段落【0010】には、「ソフトベイク28」のステップが、段落【0010】には、「フォトリソグラフィ30」のステップが、段落【0011】には、「(レンズ層の)パターン化32」のステップが、それぞれ記載されている。

(2)これらのステップは、マイクロレンズを製造する際に分離されたブロックを形成するための一連のステップとして周知技術であるから、マイクロレンズの耐熱性との関連性は薄いものと認められる。よって、「せいぜい数分間225℃のオーダの温度に対する耐熱性を有するマイクロレンズを得る」ために行う「スピンコート26」、「ソフトベイク28」、「フォトリソグラフィ30」、「(レンズ層の)パターン化32」のステップとして、特別な条件を特定する必要はなく、当業者の技術常識によって適宜最適化できるものであると認められる。

1-3-3.「ブリーチ34」、「リフロー36」、「ハードベイク38」のステップ
(1)一方、「(レンズ層の)パターン化32」より後のステップである、「ブリーチ34」、「リフロー36」、「ハードベイク38」のステップに関しては、マイクロレンズ材料自体の性質を変化させるためのプロセスであるから、具体的なプロセス条件とマイクロレンズの耐熱性との関連性はきわめて大きいものと認められる。

(2)また、「ブリーチ34」、「リフロー36」、「ハードベイク38」といった個々のステップ自体が、マイクロレンズを形成するためのステップとして従来周知であったこと、上記「1-2.」で検討したとおり、従来の技術では「せいぜい数分間225℃のオーダの温度に対する耐熱性を有するマイクロレンズを得る」ことができないこと、等を勘案すると、「(レンズ層の)パターン化32」以降のステップとして、「ブリーチ」→「リフロー」→「ハードベイク」が順に行われることを特定するだけでは、マイクロレンズの耐熱性として「せいぜい数分間225℃のオーダの温度」を達成することはできず、きわめて限られたプロセス条件下においてのみ、上記耐熱性を達成することが可能であることは、明らかである。

(3)そこで、発明の詳細な説明に記載されたプロセス条件についてさらに検討すると、「ブリーチ34」のステップについては、段落【0012】?【0013】に「ブリーチ処理は5から10秒のオーダの迅速ブリーチステップとすることができ、1つの実施形態では、継続時間は6から7秒である。ブリーチ処理は、例えば、350から430nmの波長を発生する深紫外(DUV)の波長の放射を用いて行われる。UVフィルタは、約400nm以上の波長を通過させる。」とのプロセス条件が開示され、「リフロー36」のステップについては、段落【0014】に「本発明の1つの実施形態では、このリフローステップは、約150℃の温度、例えば、160℃の温度を約120秒間必要とする。」とのプロセス条件が開示され、「ハードベイク38」のステップについては、段落【0015】に「レンズはここで約200℃の温度で、例えば、225℃の温度で約2?3分間のハードベイクのステップ(ブロック38)を受ける。」とのプロセス条件が開示されている。そして、段落【0016】には、「この後マイクロレンズは、レンズの光学特性に悪影響を受けることなく、マスリフロー表面実装パッケージで利用される従来の温度に当てられる。いくつかの実施形態では、マイクロレンズは少なくとも225℃の温度に少なくとも1分間、場合によっては少なくとも2分間耐えるように適合される。」と記載されている。

(4)よって、発明の詳細な説明に記載されているのは、「ブリーチ34」、「リフロー36」、「ハードベイク38」のステップに関して、段落【0012】?【0015】に記載された全てのプロセス条件を備えることにより、マイクロレンズの耐熱性が「少なくとも225℃の温度に少なくとも1分間、場合によっては少なくとも2分間」(すなわち、「せいぜい数分間225℃のオーダの温度」)となるということであり、それ以外のプロセス条件(の組み合わせ)に関しては、発明の詳細な説明に記載されておらず、かつ、当業者における技術常識をもってしても、段落【0012】?【0015】に記載されたプロセス条件以外のどのようなプロセス条件(の組み合わせ)であれば、マイクロレンズの耐熱性として「せいぜい数分間225℃のオーダの温度」を得られるのかは不明である。

1-4.本願の発明の詳細な説明の開示内容のまとめ
上記「1-1.」?「1-3.」の検討結果を総合すると、本願の発明の詳細な説明の開示内容は、以下の(ア)?(エ)である。

(ア)本願発明の課題は、実質的に、表面実装パッケージングで必要とされる「せいぜい数分間225℃のオーダの温度」に対する耐熱性を有するマイクロレンズアレイを提供することである。
(イ)従来の技術では、「せいぜい数分間225℃のオーダの温度に対する耐熱性を有するマイクロレンズを得る」ことができない。
(ウ)発明の詳細な説明に記載された具体的なステップは、順に「スピンコート26」、「ソフトベイク28」、「フォトリソグラフィ30」、「(レンズ層の)パターン化32」、「ブリーチ34」、「リフロー36」、「ハードベイク38」であるが、このうち、「(レンズ層の)パターン化32」より後のステップである、「ブリーチ34」、「リフロー36」、「ハードベイク38」のステップに関しては、マイクロレンズ材料自体の性質を変化させるためのプロセスであるから、具体的なプロセス条件とマイクロレンズの耐熱性との関連性はきわめて大きいものである。
(エ)「せいぜい数分間225℃のオーダの温度に対する耐熱性を有するマイクロレンズを得る」ために必要となるプロセス条件の範囲は、発明の詳細な説明に記載されていないから、「ブリーチ34」、「リフロー36」、「ハードベイク38」のステップに関して、段落【0012】?【0015】に記載された全てのプロセス条件を備えた製造方法を用いれば、「せいぜい数分間225℃のオーダの温度に対する耐熱性を有するマイクロレンズを得る」ことができるとしても、それ以外に、「せいぜい数分間225℃のオーダの温度に対する耐熱性を有するマイクロレンズを得る」ことができるようなプロセス条件(の組み合わせ)があるのか、もしあるとすればそれはどのようなプロセス条件(の組み合わせ)なのか、については、発明の詳細な説明の記載のみからは不明である。

2.本願請求項1発明の範囲が明確であるか否かの検討
2-1.本願請求項1発明の特徴部分
上記「1.」で検討した本願の発明の詳細な説明における本願発明の開示内容を踏まえた上で、上記「第4.」に示した本願請求項1発明の範囲について検討するが、上記「第5.」「1.」で検討したとおり、「マイクロレンズを形成する」ための具体的なステップは(b)のステップであり、本願請求項1発明の特徴部分も(b)のステップであると認められるから、以下では上記「第5.」「2.」において整理した本願請求項1発明の(b)のステップについて詳しく検討する。

2-2.本願請求項1発明の(b1)?(b4)について
(1)本願請求項1発明の(b1)?(b4)のステップは、「前記ディバイス上に形成されたマイクロレンズ形成材料である正のフォトレジスト」に対する処理として、「フォトリソグラフィ」→「ブリーチ」→「リフロー」→「ハードベイク」というステップを順に列挙したものであり、(b2)のステップの「深紫外線で」の点を除けば、個々のステップの条件については何ら特定されていない。

(2)しかしながら、マイクロレンズを製造するためのステップとして、「フォトリソグラフィ」、「ブリーチ」、「リフロー」、「ハードベイク」はいずれも本願の優先権主張の日前の時点で周知であり、これらのステップを単に順に列挙しただけでは、従来技術に対して貢献するものではなく、課題を解決するための技術的特徴とは認められない。

(3)また、(b2)のステップの「深紫外線で」と限定された点について検討すると、「深紫外線」の一般的な意味は、紫外線の中でも波長が短い帯域(およそ300nm以下)を示すものであるが、本願の発明の詳細な説明には、段落【0013】に「350から430nmの波長を発生する深紫外(DUV)の波長」及び「400nm以上の波長を用いるDUVブリーチ処理」と記載されているのみであり、実質的には「350から430nmの波長」程度を想定しているものと認められる。そして、ブリーチ処理のための照射光として紫外線?g線(436nm)程度の波長が一般的に用いられていることを勘案すれば、「深紫外線」とすることは、従来技術に対して貢献するものではなく、課題を解決するための技術的特徴でないことは明らかである。

(4)したがって、本願請求項1発明の(b1)?(b4)のステップは、課題を解決するための技術的特徴でない。

2-3.本願請求項1発明の(b5)について
(1)上記「2-2.」で検討したとおり、本願請求項1発明の(b1)?(b4)のステップは技術的特徴でないから、(b5)の「200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列する」ことが課題を解決するための技術的特徴であるものと認められる。

(2)本願請求項1発明は「マイクロレンズを形成する方法」(製造方法)の発明であるから、一般的には、マイクロレンズを形成するために行う具体的なステップの内容、順序、プロセス条件等をもって発明を特定するのが通常であるが、(b5)の「200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列する」との事項は、最終物として得られる「マイクロレンズ」が持つ性質(耐熱性)をもって「200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定な」と特定するものである。すなわち、達成すべき結果をもって、本願請求項1発明の特徴部分となる構成を特定していることになる。

(3)そこで、本願請求項1発明に記載された(b5)の「200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列する」との事項について、本願の優先権主張の日前の当業者における技術水準をもってすれば、本願請求項1発明の範囲が明確となるものであるか(換言すれば、本願請求項1発明の範囲内に含まれるような具体的なステップの内容、順序、プロセス条件等と、本願請求項1発明の範囲内に含まれないような具体的なステップの内容、順序、プロセス条件等とを区別できるのか)否かを、検討する。
(3-1)仮に、本願の優先権主張の日前の当業者における技術水準(周知文献の存在、通常行う程度の最適化も含む)により、「200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列する」ような具体的なプロセス条件(の組み合わせ)を導くことができるのであれば、上記(b5)のように達成すべき結果によって発明が特定されていても、当業者は「200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列する」を達成できる具体的なプロセス条件(の組み合わせ)を比較的容易に想定することができるから、その場合は、発明の範囲が明確でないとまではいえない。
(3-2)しかしながら、本願請求項1発明の場合、上記「1.」で検討したとおり、本願の発明の詳細な説明の記載によると、従来の技術では「せいぜい数分間225℃のオーダの温度に対する耐熱性を有するマイクロレンズを得る」ことができないことが前提となっている。「200℃以上の温度で少なくとも2分間」という耐熱性の場合については、本願の発明の詳細な説明に明記はされていない(段落【0005】の「せいぜい数分間225℃のオーダの温度」のほかには、段落【0016】に「少なくとも225℃の温度に少なくとも1分間、場合によっては少なくとも2分間耐えるように」との記載があるのみ)ものの、「200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列する」ことも同様に、従来の技術ではできないか、あるいは、きわめて困難であるものと認められる。
(3-3)換言すれば、本願の優先権主張の日前の当業者における技術水準としては、「200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列する」というだけでは、それを達成できるような具体的なプロセス条件(の組み合わせ)を想定することができなかったものと認められる。
(3-4)よって、本願請求項1発明に記載された(b5)の「200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列する」との事項は、本願の優先権主張の日前の当業者における技術水準をもってしても、本願請求項1発明の範囲内に含まれるような具体的なステップの内容、順序、プロセス条件等と、本願請求項1発明の範囲内に含まれないような具体的なステップの内容、順序、プロセス条件等とを区別できないことになるから、発明の範囲は明確ではない。

(4)次に、本願の発明の詳細な説明において、具体的なプロセス条件(の組み合わせ)がどの程度記載されているかについて検討する。
(4-1)上記「1.」で検討したとおり、仮に、「ブリーチ34」、「リフロー36」、「ハードベイク38」のステップに関して、段落【0012】?【0015】に記載された全てのプロセス条件を備えた製造方法を用いれば、「せいぜい数分間225℃のオーダの温度に対する耐熱性を有するマイクロレンズを得る」ことができるとしても、それ以外に、「せいぜい数分間225℃のオーダの温度に対する耐熱性を有するマイクロレンズを得る」ことができるようなプロセス条件(の組み合わせ)があるのか、もしあるとすればそれはどのようなプロセス条件(の組み合わせ)なのか、については、発明の詳細な説明の記載のみからは不明である。
(4-2)本願の発明の詳細な説明では、「せいぜい数分間225℃のオーダの温度」という耐熱性を対象としており、「200℃以上の温度で少なくとも2分間」という耐熱性の場合については明記はされていないものの、ほぼ同様であると認められるから、段落【0012】?【0015】に記載された全てのプロセス条件(及びその近傍)を備えた製造方法を用いれば、「200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列する」ことができるとしても、それ以外に、「200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列する」ことができるようなプロセス条件(の組み合わせ)があるのか、もしあるとすればそれはどのようなプロセス条件(の組み合わせ)なのか、については、発明の詳細な説明の記載のみからは不明であるといえる。
(4-3)よって、本願請求項1発明に記載された(b5)の「200℃以上の温度で少なくとも2分間にわたり熱に安定なマイクロレンズを配列する」との事項は、本願の発明の詳細な説明の記載をもってしても、段落【0012】?【0015】に記載された全てのプロセス条件(及びその近傍)を備えた製造方法が本願請求項1発明の範囲内に含まれるものであることを除き、本願請求項1発明の範囲内に含まれるような具体的なステップの内容、順序、プロセス条件等と、本願請求項1発明の範囲内に含まれないような具体的なステップの内容、順序、プロセス条件等とを区別できないことになるから、発明の範囲は明確ではない。

2-4.本願請求項1発明の範囲についてのまとめ
以上要するに、本願の請求項1に記載された事項により特定される本願請求項1発明は、課題を解決するための技術的特徴である(b5)が達成すべき結果をもって構成を特定したものであり、発明の範囲が不明確であるから、特許を受けようとする発明が明確でない。


3.当審の判断についてのまとめ
したがって、本願の請求項1の記載は、発明の範囲が不明確であって、特許を受けようとする発明が明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


第8.むすび
以上検討したとおり、本願の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、他の請求項についての検討を行うまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-06 
結審通知日 2009-11-10 
審決日 2009-11-24 
出願番号 特願2001-502176(P2001-502176)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 537- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 恩田 春香  
特許庁審判長 北島 健次
特許庁審判官 近藤 幸浩
安田 雅彦
発明の名称 表面実装製品用マイクロレンズ  
代理人 有原 幸一  
代理人 奥山 尚一  
代理人 森本 聡二  
代理人 松島 鉄男  

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