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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1214907
審判番号 不服2008-3152  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-12 
確定日 2010-04-05 
事件の表示 特願2003-123548「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月18日出願公開、特開2004-321663〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年4月28日の出願であって、平成20年1月7日付け(発送:1月10日)で拒絶査定され、これに対し、同年2月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年2月19日付けで手続補正がなされたものである。


2.平成20年2月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年2月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成20年2月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
遊技制御を統括的に行う主制御手段(60)と、始動口(23,34)を通過した遊技球を検出する始動球検出手段(30)と、この始動球検出手段(30)が遊技球を検出したことを条件に演出手段(55,57,115)に演出動作を実行させる演出制御手段(80A,80B,100)と、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段(66)とを備えた弾球遊技機において、
前記主制御手段(60)は、始動球検出手段(30)により検出された遊技球のうち未だ図柄変動に供していない保留球に関連する保留情報を記憶する保留情報記憶手段(63)と、少なくとも保留情報記憶手段(63)に記憶された保留情報を用いて所定の演出動作短縮条件が成立しているか否か監視する短縮条件監視手段(69)とを有し、
前記演出制御手段(80a,80b,100)は、短縮条件監視手段(69)の監視結果を受けて、演出動作短縮条件が成立している場合に、演出手段(55,57,115)により実行される演出動作時間を短縮させる演出動作短縮制御手段(86,90,109)を有し、
外部から操作可能な外部指令手段を設け、
前記主制御手段(60)は、前記外部指令手段から外部指令信号を受けた場合に前記短縮条件監視手段(69)を作動させる、
ことを特徴とする弾球遊技機。
【請求項2】
前記外部指令手段は、遊技者が操作可能な操作部を有する時短指令操作スイッチであることを特徴とする請求項1に記載の弾球遊技機。
【請求項3】
前記演出手段(55,57,115)は図柄表示手段(115)を有し、前記演出制御手段(80A,80B,100)は図柄表示手段(115)を制御する図柄制御手段(100)を有し、前記主制御手段(60)は、始動球検出手段(30)により遊技球が検出された場合に、前記利益状態発生手段(66)を作動させるか否か抽選する抽選手段(75)と、この抽選結果に基づいて図柄制御手段(100)に図柄表示制御の為の複数種類の図柄制御コマンドを出力するコマンド制御手段(70)とを有し、
前記図柄制御手段(100)は、主制御手段(60)から直接に又は間接に送信されてきた図柄制御コマンドに基づいて図柄表示手段(115)を制御することを特徴とする請求項1に記載の弾球遊技機。
【請求項4】
演出動作短縮制御手段(86,90,109)は変動短縮制御手段(109)を有し、前記演出動作短縮条件としての変動短縮条件が成立している場合に、前記コマンド制御手段(70)が図柄の変動時間短縮を指令する変動短縮コマンドを図柄制御手段(100)に送信し、前記図柄制御手段(100)の変動短縮制御手段(109)は、前記変動短縮コマンドを受けた場合に、現在変動中の図柄の変動時間を短縮させて変動停止時期を早めることを特徴とする請求項3に記載の弾球遊技機。
【請求項5】
前記変動短縮条件は、前記保留情報に含まれる保留球の数と、始動球検出手段(30)による遊技球の検出時から所定の経過時間及び/又は変動開始後の所定の経過時間とに基づいて決定されることを特徴とする請求項4に記載の弾球遊技機。
【請求項6】
前記短縮条件監視手段(69)は、現在変動中の図柄変動における複数の所定監視時期に、前記変動短縮条件が成立しているか否か監視する第1監視手段(69A)を有することを特徴とする請求項1に記載の弾球遊技機。
【請求項7】
前記複数の所定監視時期は、予め設定された複数種類の変動パターンのうち、変動開始から変動停止までの変動時間が最も短い基準変動パターンにも適用できるように設定されたことを特徴とする請求項6に記載の弾球遊技機。
【請求項8】
前記複数の所定監視時期の最も早期の監視時期は、図柄の変動開始時から第1所定時間経過後の時期であることを特徴とする請求項6に記載の弾球遊技機。
【請求項9】
前記複数の所定監視期間の最も後期の監視時期は、図柄の変動停止時又は所定の演出動作の開始から第2所定時間前の時期であることを特徴とする請求項6に記載の弾球遊技機。
【請求項10】
前記図柄制御手段(100)の変動短縮制御手段(109)が変動短縮コマンドを受けた場合に、実行中の図柄変動の停止まで又は所定の演出開始までの残時間を所定の残時間に再設定することにより変動時間を短縮させることを特徴とする請求項4に記載の弾球遊技機。
【請求項11】
前記主制御手段(60)は、変動短縮コマンドを図柄制御手段(100)に送信した後に、実行中の図柄変動パターンに応じて定められる所定時間経過後に、変動図柄の停止を確定させる確定コマンドを図柄制御手段(100)に送信することを特徴とする請求項3?10の何れかに記載の弾球遊技機。
【請求項12】
前記第1監視手段(69A)は、前記所定の経過時間と所定監視時期を夫々計時するタイマ手段(69Ab)と、前記保留球の数を監視する保留球数監視手段(69Ac)とを有することを特徴とする請求項6に記載の弾球遊技機。
【請求項13】
前記主制御手段(60)は、遊技状態を複数の遊技状態に択一的に切換え可能に構成されると共に、現在の遊技状態を判定する遊技状態判定手段(67)を備え、
前記遊技状態判定手段(67)により判定された遊技状態に応じて前記変動短縮条件を変更する変動短縮条件変更手段(68)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の弾球遊技機。
【請求項14】
前記短縮条件監視手段(69)は、現在変動中の図柄変動における所定監視期間に亙って、前記変動短縮条件が成立しているか否か監視する第2監視手段(69B)を有することを特徴とする請求項1に記載の弾球遊技機。
【請求項15】
前記所定監視期間は、予め設定された複数種類の変動パターンのうち、変動開始から変動停止までの変動時間が最も短い基準変動パターンにも適用できるように設定されたことを特徴とする請求項14に記載の弾球遊技機。
【請求項16】
前記始動球検出手段(30)以外の球検出手段(31)を有し、その球検出手段(31)が遊技球を検出したこと又は検出したことによる所定条件の成立に基づいて、前記変動短縮条件が変更されるように構成したことを特徴とする請求項4?15に記載の弾球遊技機。
【請求項17】
前記コマンド制御手段(70)は、当該変動中の図柄変動パターン指定コマンドに関連させた変動短縮コマンドを作成するコマンド作成手段(70A)と、このコマンド作成手段(70A)で作成された変動短縮コマンドを図柄制御手段(100)に送信するコマンド送信手段(70B) を有することを特徴とする請求項3に記載の弾球遊技機。
【請求項18】
前記演出手段(55,57,115)は音声手段(55)を有し、前記演出制御手段(80A,80B,100)は音声手段(55)に音声を発生させる音声制御手段(80B)を有し、前記コマンド送信手段(70B)は音声用ポートから音声制御手段(80B)に送信する音声制御用のコマンドであって図柄制御手段(100)と同期制御可能な音声制御コマンドを送信可能に構成され、音声制御手段(80B)は、少なくとも、前記主制御手段(60)から送信されてきた音声制御用の音声制御コマンドを受信可能なコマンド制御手段(81)と、変動パターンの各々について音声手段(55)により音声出力させる音声演出パターン情報を記憶した演出パターン記憶手段(82)と、前記演出動作短縮制御手段(86,90,109)に有する音声短縮制御手段(90)であって前記変動短縮コマンドを受けた場合に現在の音声演出パターン情報による演出中の音声演出時間を図柄変動時間の短縮と同期させて短縮させる音声短縮制御手段(90)と、音声演出パターン情報に基づいて音声手段(55)を駆動制御する音声演出制御手段(89)とを有することを特徴とする請求項17に記載の弾球遊技機。
【請求項19】
前記遊技中の全ての遊技状態において監視される演出動作短縮条件として、普通図柄及び特別図柄に関して、保留球数に基づく保留球数条件と、図柄の変動開始時からの経過時間を計時する第2図柄タイマ(69ab,69ad,69bb,69bd)のタイマ値に基づくタイマ値条件とを含むことを特徴とする請求項1に記載の弾球遊技機。
【請求項20】
前記保留球数条件の成立は、保留球の上限個数が設定される場合には、保留球数が所定個数に達した場合と、保留球数が所定個数以上の場合と、保留球数が上限個数に達した場合の何れかであることを特徴とする請求項19に記載の弾球遊技機。
【請求項21】
前記タイマ値条件の成立は、変動開始後に1又は複数の監視時期において監視する場合には、予め定められた1つの所定値又は複数の所定値の何れかに達したときであることを特徴とする請求項19に記載の弾球遊技機。」

から

「【請求項1】
遊技制御を統括的に行う主制御手段(60)と、始動口(23,34)を通過した遊技球を検出する始動球検出手段(30)と、この始動球検出手段(30)が遊技球を検出したことを条件に演出手段(55,57,115)に演出動作を実行させる演出制御手段(80A,80B,100)と、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段(66)とを備えた弾球遊技機において、
前記主制御手段(60)は、始動球検出手段(30)により検出された遊技球のうち未だ図柄変動に供していない保留球に関連する保留情報を記憶する保留情報記憶手段(63)と、少なくとも保留情報記憶手段(63)に記憶された保留情報に含まれる保留球の数と、前記始動球検出手段(30)により遊技球の検出時からの所定の経過時間と変動開始後の所定の経過時間の少なくとも一方に基づいて決定される演出動作短縮条件が成立しているか否か監視する短縮条件監視手段(69)とを有し、
前記演出制御手段(80a,80b,100)は、短縮条件監視手段(69)の監視結果を受けて、演出動作短縮条件が成立している場合に、演出手段(55,57,115)により実行される演出動作時間を短縮させる演出動作短縮制御手段(86,90,109)を有し、
前記短縮条件監視手段(69)を作動させる為に遊技者が操作可能な操作部を有する時短指令操作スイッチを設け、
前記主制御手段(60)は、前記時短指令操作スイッチから指令信号を受けた場合にのみ前記短縮条件監視手段(69)を作動させる、
ことを特徴とする弾球遊技機。
【請求項2】
前記演出手段(55,57,115)は図柄表示手段(115)を有し、前記演出制御手段(80A,80B,100)は図柄表示手段(115)を制御する図柄制御手段(100)を有し、前記主制御手段(60)は、始動球検出手段(30)により遊技球が検出された場合に、前記利益状態発生手段(66)を作動させるか否か抽選する抽選手段(75)と、この抽選結果に基づいて図柄制御手段(100)に図柄表示制御の為の複数種類の図柄制御コマンドを出力するコマンド制御手段(70)とを有し、
前記図柄制御手段(100)は、主制御手段(60)から直接に又は間接に送信されてきた図柄制御コマンドに基づいて図柄表示手段(115)を制御することを特徴とする請求項1に記載の弾球遊技機。
【請求項3】
演出動作短縮制御手段(86,90,109)は変動短縮制御手段(109)を有し、前記演出動作短縮条件としての変動短縮条件が成立している場合に、前記コマンド制御手段(70)が図柄の変動時間短縮を指令する変動短縮コマンドを図柄制御手段(100)に送信し、前記図柄制御手段(100)の変動短縮制御手段(109)は、前記変動短縮コマンドを受けた場合に、現在変動中の図柄の変動時間を短縮させて変動停止時期を早めることを特徴とする請求項2に記載の弾球遊技機。
【請求項4】
前記短縮条件監視手段(69)は、現在変動中の図柄変動における複数の所定監視時期に、前記変動短縮条件が成立しているか否か監視する第1監視手段(69A)を有することを特徴とする請求項1に記載の弾球遊技機。
【請求項5】
前記複数の所定監視時期の最も早期の監視時期は、図柄の変動開始時から第1所定時間経過後の時期であることを特徴とする請求項4に記載の弾球遊技機。
【請求項6】
前記複数の所定監視期間の最も後期の監視時期は、図柄の変動停止時又は所定の演出動作の開始から第2所定時間前の時期であることを特徴とする請求項4に記載の弾球遊技機。
【請求項7】
前記図柄制御手段(100)の変動短縮制御手段(109)が変動短縮コマンドを受けた場合に、実行中の図柄変動の停止まで又は所定の演出開始までの残時間を所定の残時間に再設定することにより変動時間を短縮させることを特徴とする請求項3に記載の弾球遊技機。
【請求項8】
前記第1監視手段(69A)は、前記所定の経過時間と所定監視時期を夫々計時するタイマ手段(69Ab)と、前記保留球の数を監視する保留球数監視手段(69Ac)とを有することを特徴とする請求項4に記載の弾球遊技機。
【請求項9】
前記主制御手段(60)は、遊技状態を複数の遊技状態に択一的に切換え可能に構成されると共に、現在の遊技状態を判定する遊技状態判定手段(67)を備え、
前記遊技状態判定手段(67)により判定された遊技状態に応じて前記変動短縮条件を変更する変動短縮条件変更手段(68)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の弾球遊技機。
【請求項10】
前記遊技中の全ての遊技状態において監視される演出動作短縮条件として、普通図柄及び特別図柄に関して、保留球数に基づく保留球数条件と、図柄の変動開始時からの経過時間を計時する第2図柄タイマ(69ab,69ad,69bb,69bd)のタイマ値に基づくタイマ値条件とを含むことを特徴とする請求項1に記載の弾球遊技機。
【請求項11】
前記保留球数条件の成立は、保留球の上限個数が設定される場合には、保留球数が所定個数に達した場合と、保留球数が所定個数以上の場合と、保留球数が上限個数に達した場合の何れかであることを特徴とする請求項10に記載の弾球遊技機。」

に補正された。

本件補正は、補正前(平成19年12月10日付け手続補正による補正)の請求項2,5,7,11,14,15,16,17,18,21を削除して、補正前の請求項3,4,6,8,9,10,12,13,19,20について、引用関係を訂正して新たな請求項2ないし11とし、そして、補正前の請求項1における保留情報を用いて監視される演出動作短縮条件について「保留情報に含まれる保留球の数と、前記始動球検出手段(30)により遊技球の検出時からの所定の経過時間と変動開始後の所定の経過時間の少なくとも一方に基づいて決定される」と限定し、また、補正前の請求項1における外部から操作可能な外部指令手段について「前記短縮条件監視手段(69)を作動させる為に遊技者が操作可能な操作部を有する時短指令操作スイッチ」と限定し、さらに、外部指令手段から外部指令信号を受けた場合に短縮条件監視手段を作動させることを「時短指令操作スイッチから指令信号を受けた場合にのみ短縮条件監視手段を作動させる」ことに限定したものであって、当該補正は、請求項の削除、および特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認められる。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反しない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討を続ける。

(2)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された特開平11-216239号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 表示状態が可変可能な可変表示装置を有し、当該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合に遊技状態が遊技者にとって有利な遊技状態に制御可能となる遊技機であって、
所定の可変表示条件が成立したことを条件に前記可変表示装置の表示結果を導出表示させるための可変表示制御を行なう可変表示制御手段と、
前記可変表示条件が成立したことを所定の上限数まで累積的に記憶して前記可変表示制御の実行毎に記憶数の減算を行なう条件成立数記憶手段と、
前記可変表示条件が成立したことに基づいて前記条件成立数記憶手段の記憶が加算された際に当該条件成立数記憶手段の記憶数に関する所定の第1の条件が成立しており、かつ、加算された前記条件成立数記憶手段の記憶に基づいた可変表示制御が実行可能となった場合において前記条件成立数記憶手段の記憶数に関する所定の第2の条件が成立していた場合に、当該記憶に基づいて行なわれる可変表示制御の時間を短縮可能な時短制御手段を含み、
当該時短制御手段は、前記条件成立数記憶手段の記憶に基づいた可変表示制御が実行可能となった場合において前記第2の条件が成立していなくとも当該記憶が前記条件成立数記憶手段に加算された際に前記第1の条件が成立しており、かつ、当該記憶に基づいた可変表示制御の開始後当該条件成立数記憶手段の記憶数に関する所定の第3の条件が成立した場合に、実行途中の可変表示制御の時間を短縮可能であることを特徴とする、遊技機。」
(イ)「【0019】図1は、本発明に係る遊技機の一例のパチンコ遊技機1の正面図である。パチンコ遊技機1の遊技盤には、遊技領域3が形成されている。パチンコ遊技機1には、遊技者が打球操作するための打球操作ハンドル28が設けられており、この打球操作ハンドル28を遊技者が操作することにより、上皿29内に貯留されているパチンコ玉を1個ずつ発射することができる。発射されたパチンコ玉は、区画レール2の間を通って遊技領域3内に導かれる。
【0020】遊技領域3の中央には、識別情報の一例となる特別図柄を可変表示させることが可能な可変表示装置4が設けられている。可変表示装置4の表示結果が予め定められた特別の識別情報の組み合わせとなれば、いわゆる大当りが発生して遊技状態が遊技者にとって有利な遊技状態に制御可能となる。可変表示装置4での可変表示は、可変表示装置4下方に設けられた電動役物14に打玉が始動入賞してその入賞玉が始動センサー34により検出されることを条件に行なわれる。可変表示装置4の可変表示中に始動入賞があった場合には、その始動入賞が記憶され、可変表示装置4が可変停止した後、再度可変開始可能な状態になってからその始動記憶に基づいて可変表示装置4が再度可変開始される。この始動記憶の上限は、たとえば「4」と定められており、始動記憶個数は始動記憶表示器6に表示される。」
(ウ)「【0023】特に本実施形態では、電動役物14が前記拡開状態にある場合に発生した始動入賞の回数をその始動入賞ルート別に算出可能にするために、ゲート飾り70内の通過玉を検出するための通過センサー32が設けられている。これにより、始動入賞球が始動センサー34により検出されるごとに併せて通過センサー32の検出出力があるか否かを判断することで前記第1の始動入賞ルートによる始動入賞であるか前記第2の始動入賞ルートによる始動入賞であるかが判断できる。」
(エ)「【0027】可変表示部5で左図柄、中図柄、右図柄の可変表示が一斉に開始した後、パチンコ遊技機1内部の制御によって定められる所定の順序で所定の可変表示時間内に各図柄が順次停止制御される。すべての図柄表示領域の図柄が完全に停止して可変表示装置4の表示結果が導出表示された段階で、その表示結果がいわゆるはずれとなった場合、始動記憶があれば直ちに次の可変表示制御が開始され、始動記憶が消化される。始動記憶が消化されることにより、たとえば始動記憶数がそれまで上限数の「4」であった場合には、さらに始動入賞を記憶可能となる。しかしながら始動記憶数が上限数である場合には、始動入賞が発生してもその始動入賞を記憶することができずオーバーフローしてしまい、せっかくの始動入賞が無効になってしまう。特に電動役物14が前記拡開状態にある場合には、始動入賞がある程度の長時間、集中的に発生する可能性があり、かかる場合には多くの始動入賞が無効となるおそれがある。始動入賞が無効となることは遊技者にとって望ましい遊技状態ではなく、これを極力回避するにはたとえば可変表示開始時の始動記憶数が所定数以上であれば可変表示時間を短縮するようにすることが考えられる。可変表示時間を短縮することで、次々と始動記憶を消化して始動入賞を有効に可変表示に使用することができるためである。しかしながら、可変表示時間の短縮後、なおも継続して始動入賞が頻発するとは限らない。たとえば、電動役物14が前記閉成状態にある場合であってもたまたま瞬間的にごく短時間だけ始動入賞が頻発する状況もあり、かかる場合に可変表示開始時の始動記憶状態のみで可変表示時間を短縮するか否かを決定すると、その後、始動入賞があまり発生しなくなった場合には、可変表示時間を短縮した分だけ可変表示装置4で可変表示が行なわれているトータル時間が短くなり、遊技者本人あるいはその周辺を通行して遊技機の様子を伺う遊技客にあまり可変表示装置4が回っていないような印象を与えてしまうためである。
【0028】そこでこのパチンコ遊技機1では、たとえば始動記憶に基づいた可変表示が開始される一時点のみならず、その始動記憶が行なわれた始動入賞時点の始動記憶状況をも考慮して可変表示時間を短縮するか否かを始動記憶ごとに判定できるように構成されている。具体的には、ある始動入賞発生時点での始動記憶数がすでに「2」以上であるという第1の条件が成立しており、かつ、前記「2」以上の始動記憶が消化された後、前記ある始動入賞に基づいて可変表示が開始される時点で始動記憶数が「4」となっている(つまり、前記ある始動入賞が始動記憶された後に3つの始動入賞がすでに記憶されている場合)という第2の条件が成立している場合に前記ある始動入賞に基づく可変表示の可変表示時間を短縮する。
【0029】したがって、たとえば、前記第1の条件が成立しているが前記第2の条件が成立していない場合には、可変表示時間を短縮する制御は開始されないままに可変表示制御が実行される。ただし、そのような場合であっても、前記第1の条件が成立していた際に発生し記憶された始動入賞に基づいて行なわれる可変表示制御の実行途中に新たに始動入賞が発生した結果、始動記憶数が「3」以上になるという第3の条件が成立した場合には、可変表示制御の実行途中から可変表示時間を短縮する制御が実行される。」
(オ)「【0032】始動入賞に基づいた可変表示の結果、予め定められた特定の特別図柄の組合せ(たとえば777などのぞろ目)が可変表示装置4に導出表示された場合には、いわゆる大当たりとなる。遊技領域3下方には、大当たりの発生を条件に打玉を入賞させることが可能に変化する可変入賞球装置12が設けられている。この可変入賞球装置12は、ベース板23によって遊技領域3に固定されており、後述するソレノイド50が励磁されることにより開閉板22が開成して打玉が入賞可能な遊技者にとって有利となる第1の状態と、ソレノイド50が消磁されることにより開閉板22が閉成して打玉が入賞不可能な遊技者にとって不利な第2の状態とに変化可能に構成されている。なお、可変入賞球装置12には、遊技状態に応じて点灯または点滅表示する6個のLED24が設けられている。
【0033】可変表示装置4で大当たりが発生すれば、可変入賞球装置12が前記第1の状態に制御され、開閉板22が傾動して打玉を可変入賞球装置12内へ入賞させることが可能となる。可変入賞球装置12内へ入賞した打玉数は、7セグメント表示器よりなる個数表示器25に表示される。第1の状態となった可変入賞球装置12内に進入した打玉が所定個数(たとえば10個)となるか、または所定期間(たとえば30秒間)経過するかのうちのいずれか早い方の条件が成立した場合に可変入賞球装置12の第1の状態が終了して開閉板22が閉成し、遊技状態が遊技者にとって不利な第2の状態となる。そして、可変入賞球装置12が第1の状態となっている期間中に進入した打玉がいわゆるV入賞した場合には、再度可変入賞球装置12を第1の状態にする繰返し継続制御が実行される。この繰返し継続制御の実行上限回数はたとえば16回と定められている。繰返し継続制御において、可変入賞球装置12が第1の状態にされている状態がラウンドと呼ばれる。繰返し継続制御の実行上限回数が16回の場合には、第1ラウンドから第16ラウンドまでの16ラウンド分、可変入賞球装置12が第1の状態にされ得る。」
(カ)「【0038】 次に、パチンコ遊技機1の遊技制御に用いられる制御回路について説明する。図2および図3は、遊技制御基板(コントロール基板)66(図4参照)に設けられた各種制御回路の構成を示すブロック図である。
【0039】図2および図3を参照して、制御回路は、基本回路45、入力回路35、情報出力回路37、初期リセット回路38、定期リセット回路39、電飾信号回路40、アドレスデコード回路41、LED回路46、ソレノイド回路48、CRT回路54、ランプ回路55、音声合成回路56、音量増幅回路57、電源回路58を含む。
【0040】基本回路45は、遊技制御プログラムに従ってパチンコ遊技機1の各種機器を制御する。基本回路45の内部には、マイクロコンピュータ(マイコン)68が設けられている。マイクロコンピュータ68には、遊技制御プログラムを記憶しているROM69(Read Only Memory)、遊技制御プログラムに従って制御動作を行なうためのCPU(Central Processing Unit )71、CPUのワーク用メモリとして機能するRAM(Random Access Memory)70、その他図示を省略するがI/O(Input/Output)ポート、クロック発生回路などが設けられている。
【0041】入力回路35は、電動役物14に始動入賞した打玉を検出するための始動センサー34と、ゲート飾り70内に設けられた通過センサー32と、可変入賞球装置12に入賞した打玉を検出するためのVスイッチ33と、普通図柄始動ゲート8を通過した打玉を検出するための通過球検出器13とそれぞれ接続される。入力回路35は、通過センサー32から出力される通過信号、Vスイッチ33から出力される入賞信号、始動センサー34から出力される始動入賞信号など、各検出器から出力される検出信号を基本回路45へ送信する。基本回路45は、たとえば、電動役物14が前記拡開状態にある場合に通過センサー32から出力される通過信号と始動センサー34から出力される始動入賞信号とに基づいて、発生した始動入賞の始動入賞ルートが前記第1の始動入賞ルートであるか前記第2の始動入賞ルートであるかを判定してその結果別に始動入賞回数を計数して計数結果をRAM70内部に記憶する。たとえば、始動センサー34から始動入賞信号が入力された場合に、その入力時点から逆上って所定の微小時間内に通過センサー32から通過信号が入力されておれば、始動入賞ルートを前記第1の始動入賞ルートと判断し、通過信号が入力されていなければ前記第2の始動入賞ルートと判断する。
【0042】さらに基本回路45は、始動入賞信号の入力に基づいて可変表示制御中であるか否かを判別し、可変表示制御中である場合には現在の始動記憶数を判定する。そして、始動記憶数が「4」となっていないことを条件にして判定結果とともに始動入賞を記憶する。なお、始動入賞は、たとえばRAM70で記憶される。」
(キ)「【0051】CRT回路54は、基本回路45から出力される制御信号に従って、CRT表示機53を駆動制御するための回路である。CRT回路54からCRT表示機53に送信される信号の中には、コマンド信号としてのCD0?CD7と、表示制御通信トリガ信号(割込信号)であるINTとが含まれる。さらに、CRT回路54とCRT表示機53とを接続する信号線には、電源供給のための+5V線と、+12V線と、グランド信号線であるGND線とがある。基本回路45は、定期リセット回路39からの定期リセット信号が入力されたタイミングでCRT回路54を介してCRT表示機53の可変表示制御基板(サブ基板)216(図4参照)へ、割込信号(INT)と画像表示制御信号(コマンド信号CD0?CD7)とを出力する。なお、画像表示制御信号には、可変表示時間を短縮した可変表示を行なうか否かを指令する信号が含まれる。」
(ク)「【0078】図8は、変動時間短縮処理の処理手順を示すフローチャートである。また、図9は、判定フラグ設定処理の処理手順を示すフローチャートである。さらに、図10は、可変表示装置4で行なわれる可変表示内容を示すタイミングチャートである。
【0079】変動時間短縮処理は、図7のS17で実行されるサブルーチンであり、以下の処理によって可変表示時間を短縮するか否かが決定される。変動時間短縮処理においては、まず、判定フラグ設定処理が実行される(SB1)。
【0080】判定フラグ設定処理の処理内容を図9を参照して説明する。まず、始動入賞が発生したか否かが判断され(SA1)、始動入賞が発生していない場合には後述するSA5に処理が移行する。一方、始動入賞が発生した場合には有効始動入賞であるか否か、すなわち、始動記憶がすでに上限値「4」に達していないどうかが判断される(SA2)。有効始動入賞でない場合には処理が終了するが、有効始動入賞の場合には、その始動入賞発生時点での始動記憶数が「2」以上であるか否かが判断される(SA3)。そして、始動入賞発生時点での始動記憶数が「2」以上である場合には、可変表示時間を短縮するために必要な前記第1の条件が成立するために、対応するバンクに判定フラグ1をセットする処理がなされる(SA4)。
【0081】ここで、バンクについて説明する。RAM70(図2参照)には、始動記憶を行なうための始動記憶領域が構成されており、さらに始動記憶領域には最大4つの始動入賞をそれぞれ記憶するための始動記憶用の4つのバンク(バンク0?バンク3)が構成されている。可変表示の最中などに始動入賞が発生すれば、始動記憶のされていないバンクのうち最も若い番号のバンク(たとえばバンク3よりもバンク2がバンク番号が若い)に始動記憶がなされる。そして、始動記憶に基づいて可変表示が行なわれる際には、常に先頭バンク(バンク0)の記憶内容に基づいて可変表示時間を短縮するか否かが判定される。先頭バンクの記憶内容に基づいて可変表示時間を短縮するか否かが判定されれば、その判定結果が特別図柄プロセス処理(図7参照)に引渡された後、バンクシフト処理(SB10)が行なわれる。バンクシフト処理とは、バンク1の記憶内容をバンク0に上書き更新した後、バンク2の記憶内容をバンク1に上書き更新し、さらにバンク3の記憶内容をバンク2に上書き更新し、最後にバンク3の記憶内容を消去する処理である。
【0082】なお、SA1の判断時点において始動記憶数がすでに上限の「4」の場合には、すべてのバンクに始動記憶がされているために、SA2でNOの判断がなされる。したがって、SA3では判定フラグ1のセット処理はなされず、また、始動記憶もされることはない。また、SA3で始動記憶が2以上でないと判断された場合には、可変表示装置4で可変表示が行なわれていないことを条件にして空きバンクのうち最も若い番号のバンクに始動記憶が行なわれるが判定フラグ1はそのバンクにはセットされないことになる。
【0083】SA4の処理の後、またはSA1?SA3でNOと判断された後、可変表示開始時であるか否かが判断される(SA5)。可変表示開始時でない場合には判定フラグ設定処理が終了してSB2に移行する。一方、先に行なわれていた可変表示が終了して始動記憶に基づいた可変表示が可能になれば、SA5でYESの判断がなされて始動記憶のなされたバンクのうち、最も若い番号のバンクの記憶内容に基づいた可変表示を実行するための以下の処理が実行される。なお、前述のバンクシフト処理が行なわれるために、最も若い番号のバンクは常にバンク0となる。
【0084】まず、4つのバンクの始動記憶の有無が判別され、可変表示時間を短縮するための前述した第2の条件を満たすか否か、すなわち、バンク0の始動記憶に後続して3個以上始動記憶があるか否かが判断される(SA6)。より具体的には、バンク1、バンク2、バンク3すべてに始動記憶があるか否かが判断されることになる。バンク1、バンク2、バンク3すべてに始動記憶がある場合には、バンク0の始動記憶に基づいて可変表示を開始せんとする現時点においてもなお始動入賞が比較的多く発生していることになる。この場合には、第2の条件の成立を示す判定フラグ2をバンク0にセットする処理がなされた後(SA7)、判定フラグ設定処理が終了してSB2に移行する。。一方、バンク0の始動記憶に後続して3個以上始動記憶がない場合には、現時点で始動入賞はさほど多発していないと判断できるために判定フラグ2はセットされることなく判定フラグ設定処理が終了してSB2に移行する。
【0085】次に、再び図8を参照して、まず、図柄が変動中であるか否か、すなわち、可変表示制御が実行途中であるか否かが判断される(SB2)。たとえば前記SA5でYESと判断されている場合などにおいては図柄は変動中ではないために、ここではNOと判断され、次に変動開始時であるか否かが判断される(SB11)。始動入賞記憶が無く、新たな始動入賞も発生していない場合には、ここではNOと判断されて処理が終了する。一方、前記SA5でYESと判断されている場合には、ここではYESと判断され、バンク0のデータが読出されて(SB12)、判定フラグ1および判定フラグ2がともにセットされているか否かが判断される(SB13)。両フラグのうち、少なくとも一方がセットされていない場合には、処理が終了し、通常の可変表示時間による可変表示制御が実行されることになる。ここで、図10を用いてその可変表示内容を説明する。
【0086】図10を参照して、「通常変動」と記載されている箇所には、通常の可変表示時間による可変表示制御の内容が例示されている。「通常変動」では、可変表示の開始から所定時間(たとえば0.5秒)が経過するまで図柄の変動が加速された後、一定速度で可変表示が継続され、可変表示制御終了所定時間(たとえば2秒)前に図柄の変動が減速し始めてやがて停止する。図柄の変動が開始してから停止するに至るまでの可変表示時間は、たとえば8秒である。
【0087】再び図8のSB13を参照して、両フラグが共にセットされている場合には、可変表示時間を短縮する旨の決定がされて短縮フラグが設定される(SB7)。その後、図柄の変動が開始してから1秒が経過したことを条件に(SB8)、変動時間(可変表示時間)を短縮する設定がなされて(SB9)、可変表示時間を短縮する時短制御が実行される。時短制御時間は、たとえば1秒である。したがって時短制御が実際に開始されることにより、SB9の設定がなされた時点から1秒後に可変表示が終了する。ここで、図10を用いてその可変表示内容を説明する。
【0088】図10を参照して、「判定1、2をパスした変動」と記載されている箇所には、SB13でYESと判断されたことに基づいて行なわれる可変表示制御の内容が例示されている。まず、可変表示の開始から所定時間(たとえば1秒)が経過するまではSB8のステップによる制限があるために「通常変動」の場合と同様に図柄の加速が0.5秒間行なわれた後、一定速度による変動が開始される。そして、一定速度による変動開始から0.5秒が経過した時点(可変表示開始から1秒が経過した時点)でSB8のステップによる制限がなくなり時短制御に切り替えられる。そしてたとえば図柄の減速変動が行なわれ、1秒後に停止する。したがって、図柄の変動が開始してから停止するに至るまでの可変表示時間は、たとえば2秒である。」

また、図2?4には制御回路の概要が、そして図8?11には、制御フローおよび入賞信号、図柄変動、始動記憶等の関連を説明するタイムチャートが示されている。

以上、(ア)ないし(ク)の記載、および図面を総合すると、引用例1には、
「1 パチンコ遊技機の遊技制御を行う遊技制御基板(コントロール基板66)と、可変表示装置(4)の表示制御を行う可変表示制御基板(サブ基板216)を備えている。
2 電動役物(14)に始動入賞した打玉を検出する始動センサー(34)を備え、この始動センサー(34)によって打玉を検出したことを条件に可変表示装置(4)が可変表示を開始し、予め定められた特定の特別図柄の組合せ(たとえば777)が可変表示装置(4)に導出表示された場合は、大当たりとなり、遊技状態が遊技者にとって有利な状態となる。
3 始動センサー(34)により始動入賞が発生すると、始動記憶用の4つのバンク(バンク0?バンク3)の始動記憶のされていない最も若い番号のバンクに始動記憶がなされ、始動記憶に基づいて可変表示が行われる際は、常に先頭バンク(バンク0)の始動記憶が消化され、当該始動記憶の記憶内容に基づいて可変表示時間を短縮するか否か判定され、また、残りのバンクの記憶内容は番号の若いバンクにシフトされる。
4 新たに始動記憶が発生したとき、既に記憶されている始動記憶が2個以上ある場合は始動記憶するバンクに判定フラグ1がセットされ、そして、当該始動記憶に基づいて可変表示が開始される時、後ろの始動記憶が3個以上ある(バンク1?3に始動記憶がある)場合はバンク0に判定フラグ2がセットされる。
5 バンク0の始動記憶により可変表示装置(4)が図柄の変動を開始する時、当該バンク(バンク0)に判定フラグ1,2がセットされている場合は、短縮フラグが設定され、変動開始から1秒以上経過したことを条件に、可変表示の変動時間が短縮される(図8,9)
6 パチンコ遊技機。」
の発明が開示されていると認めることができる。
(以下、この発明を「引用発明」という。)

(3)対比
引用発明の
「パチンコ遊技機の遊技制御を行う遊技制御基板と、変表示装置の表示制御を行う可変表示制御基板を備えている。電動役物に始動入賞した打玉を検出する始動センサーを備え、この始動センサーによって打玉を検出したことを条件に可変表示装置が可変表示を開始し、予め定められた特定の特別図柄の組合せ(たとえば777)が可変表示装置に導出表示された場合は大当たりとなり、遊技状態が遊技者にとって有利な状態となる。」
ことは、本願補正発明の
「遊技制御を統括的に行う主制御手段と、始動口を通過した遊技球を検出する始動球検出手段と、この始動球検出手段が遊技球を検出したことを条件に演出手段に演出動作を実行させる演出制御手段と、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段とを備えた弾球遊技機」に相当することは明らかである。
引用発明における「始動記憶」、「バンク」および「可変表示の変動時間の短縮」は、それぞれ本願補正発明の「未だ図柄変動に供していない保留玉に関連する保留情報」、「保留情報記憶手段」および「演出動作時間の短縮」に相当する。
引用発明において、バンク(0?3)に記憶された始動記憶の数が所定値以上であると判定フラグ1および2がセットされるのであるから、この判定フラグ1および2がセットされる条件となる「バンク(0?3)に記憶された始動記憶の数」は、本願補正発明の「保留情報記憶手段に記憶された保留情報に含まれる保留球の数」に対応し、そして、引用発明は、判定フラグ1,2がセットされ、かつ変動開始から1秒以上経過したことを条件に可変表示の変動時間が短縮されるのであるから、この「変動開始から1秒」は、本願補正発明の「変動開始後の所定の経過時間」に対応している。
したがって、引用発明と本願補正発明は、
「主制御手段は、始動球検出手段により検出された遊技球のうち未だ図柄変動に供していない保留球に関連する保留情報を記憶する保留情報記憶手段と、少なくとも保留情報記憶手段に記憶された保留情報に含まれる保留球の数と、前記始動球検出手段により遊技球の検出時からの所定の経過時間と変動開始後の所定の経過時間の少なくとも一方に基づいて決定される演出動作短縮条件が成立しているか否か監視する短縮条件監視手段とを有し、前記演出制御手段は、短縮条件監視手段の監視結果を受けて、演出動作短縮条件が成立している場合に、演出手段により実行される演出動作時間を短縮させる演出動作短縮制御手段を有し」ている点で共通しているということができる。

以上のことから、引用発明と本願補正発明は、
<一致点>
「遊技制御を統括的に行う主制御手段と、始動口を通過した遊技球を検出する始動球検出手段と、この始動球検出手段が遊技球を検出したことを条件に演出手段に演出動作を実行させる演出制御手段と、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段とを備えた弾球遊技機において、
前記主制御手段は、始動球検出手段により検出された遊技球のうち未だ図柄変動に供していない保留球に関連する保留情報を記憶する保留情報記憶手段と、少なくとも保留情報記憶手段に記憶された保留情報に含まれる保留球の数と、前記始動球検出手段により遊技球の検出時からの所定の経過時間と変動開始後の所定の経過時間の少なくとも一方に基づいて決定される演出動作短縮条件が成立しているか否か監視する短縮条件監視手段とを有し、
前記演出制御手段は、短縮条件監視手段の監視結果を受けて、演出動作短縮条件が成立している場合に、演出手段により実行される演出動作時間を短縮させる演出動作短縮制御手段を有した、弾球遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点>
本願補正発明は、「短縮条件監視手段を作動させる為に遊技者が操作可能な操作部を有する時短指令操作スイッチを設け、主制御手段は、前記時短指令操作スイッチから指令信号を受けた場合にのみ前記短縮条件監視手段を作動させる」ようにしたものであるのに対し、
引用発明は、上記のような構成を有していない点

(4)判断
引用発明は、始動入賞を始動記憶として複数個(4個)蓄積できるもので、当該蓄積された始動記憶を記憶順に消化して、図柄の変動表示に用いるという従来技術を前提とし、従来技術では、蓄積された始動記憶の数が所定値以上の場合にはやがて始動記憶がオーバーフローするおそれがあるという問題があるため、その問題を解決するために、蓄積されている始動記憶数と変動開始後の経過時間を見て、条件が揃うと図柄の変動時間を短縮するというものである。(段落【0002】?【0005】の従来技術、発明が解決しようとする課題参照)
つまり、引用発明は、始動記憶数や変動開始後の経過時間を考慮しない従来技術を元にして、始動記憶数と変動開始後の経過時間を考慮する制御を用いることによって所期の目的を達成するものといえる。
一方、本願補正発明において「短縮条件監視手段を作動させる為に遊技者が操作可能な操作部を有する時短指令操作スイッチを設け、主制御手段は、前記時短指令操作スイッチから指令信号を受けた場合にのみ前記短縮条件監視手段を作動させる」とは、時短指令操作スイッチの操作に応じて、短縮条件監視手段を作動させる制御と作動させない制御を切り替えるという意味に解釈でき、短縮条件監視手段を作動させる制御は、始動記憶数と変動開始後の経過時間を考慮する制御、つまり前記した引用発明のような制御と対応し、また短縮条件監視手段を作動させない制御は、前記した従来技術のような制御に対応するといえる。
しかして、一般社会で用いられている様々な制御装置(制御が行われている装置。産業用機器から家電製品まで様々な装置)において、特定の制御を行うか否かを使用者が操作スイッチ等を操作することにより切り替えるようなこと(例えば、航空機で自動運転と手動運転を切り替えるとか、暖房機具で省エネモードと通常モードを切り替えるとか、洗濯機で洗濯時間を短縮するモードと短縮しない通常モードを切り替えるようなこと)は、よく知られている技術(以下、「周知技術」という。)にすぎないから、引用発明において、始動記憶数と変動開始後の経過時間を考慮する制御と、考慮しない従来技術のような制御を、使用者(本願でいえば遊技者)が操作スイッチを操作して切り替えることができるようにする程度のことは、当業者が容易に想到できたといわざるを得ない。
したがって、上記相違点に係る事項は、周知技術から当業者が容易に想到し得たものと認められる。
また、本願補正発明の作用効果を勘案しても、本願補正発明に格別のものを認めることができない。

以上のように、本願補正発明は、引用発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(5)本願補正発明についてのまとめ
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
(1)本願発明及び引用文献に記載された発明
平成20年2月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、請求項に係る発明は、平成19年12月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。
そして、その請求項1により特定される発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
遊技制御を統括的に行う主制御手段(60)と、始動口(23,34)を通過した遊技球を検出する始動球検出手段(30)と、この始動球検出手段(30)が遊技球を検出したことを条件に演出手段(55,57,115)に演出動作を実行させる演出制御手段(80A,80B,100)と、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段(66)とを備えた弾球遊技機において、
前記主制御手段(60)は、始動球検出手段(30)により検出された遊技球のうち未だ図柄変動に供していない保留球に関連する保留情報を記憶する保留情報記憶手段(63)と、少なくとも保留情報記憶手段(63)に記憶された保留情報を用いて所定の演出動作短縮条件が成立しているか否か監視する短縮条件監視手段(69)とを有し、
前記演出制御手段(80a,80b,100)は、短縮条件監視手段(69)の監視結果を受けて、演出動作短縮条件が成立している場合に、演出手段(55,57,115)により実行される演出動作時間を短縮させる演出動作短縮制御手段(86,90,109)を有し、
外部から操作可能な外部指令手段を設け、
前記主制御手段(60)は、前記外部指令手段から外部指令信号を受けた場合に前記短縮条件監視手段(69)を作動させる、
ことを特徴とする弾球遊技機。」

一方、原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-216239号公報に記載された発明(引用発明)は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、演出動作短縮条件についての「保留情報に含まれる保留球の数と、前記始動球検出手段(30)により遊技球の検出時からの所定の経過時間と変動開始後の所定の経過時間の少なくとも一方に基づいて決定される」という限定を除き、また外部指令手段についての「前記短縮条件監視手段(69)を作動させる為に遊技者が操作可能な操作部を有する時短指令操作スイッチ」という限定、さらには短縮条件監視手段を作動させることについての「時短指令操作スイッチから指令信号を受けた場合にのみ短縮条件監視手段を作動させる」という限定を除いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加して発明を限定したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。


(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-04 
結審通知日 2010-02-08 
審決日 2010-02-22 
出願番号 特願2003-123548(P2003-123548)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 池谷 香次郎
小原 博生
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 岡村 俊雄  

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