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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M |
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管理番号 | 1214963 |
審判番号 | 不服2007-26826 |
総通号数 | 126 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-10-01 |
確定日 | 2010-04-13 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第124617号「マルチメディア情報サービス・アクセス」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 4月24日出願公開、特開平10-107895〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成9年5月15日(パリ条約による優先権主張1996年5月15日、米国)の出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年11月1日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「主なユーザを含む一人またはそれ以上のユーザに、遠隔地からマルチメディア情報を伝送する方法であって、 該主なユーザと該遠隔地との間に第1の通信ラインを確立するステップであって、該第1の通信ラインがインタネット接続の確立を含む、ステップ、 該遠隔地から該各ユーザにマルチメディア情報を伝送する時間的計画を要求するステップ、 マルチメディア・サーバと該各ユーザへ接続しているブリッジ装置との間に交換ネットワークを介して第2の通信ラインを確立するステップ、及び 該時間的計画に従って、該ブリッジ装置を介して該各ユーザに要求されたマルチメディア情報を伝送するステップ を含むことを特徴とする方法。」 2.引用発明 これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-505956号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「第1図に示した好ましいテレビ放送システム(10)には、中央装置(12)、地上ケーブル(14)、複数の加入者側に備えられた受信器(16)、それに複数の加入者側に備えられた電話器(18)を備えている。 中央装置(12)は、プログラム集中保存装置(20)、複数の信号送信器(22)、信号結合器(24)、請求書の発行と宛名書きを行なうコンピュータ(26)、スケジュール調整コンピュータ(28)、連動する電話器(32)を備えた複数のデータ入力コンピュータの端末器(30)、それにスケジュール出力コンピュータの端末器(34)を備えている。 プログラム集中保存装置(20)には複数のプログラムが保存されており、このプログラムは必要に応じて再生されて地上ケーブル(14)によって同時放送がなされ、加入者が自身の受信器(16)によって視ることができるようになされている。」 (4頁左上欄25行目?同頁右上欄6行目) ロ.「一実施例においては、加入者は地域の電話局に接続されている公知の電話器(18)によってプログラムのリクエストと希望放送時間とを伝達するようにしている。それぞれの顧客サービス係は入ってくる電話を電話器(32)で応答し、その後加入者から受けたデータをそれぞれの端末器(30)にてスケジュール調整コンピュータ(28)に入力する。端末器(30)はそれぞれ公知のデータ入力用のキーボードとディスプレを備えている。 地上ケーブル(14)は、通常中央装置(12)から受信器(16)にプログラムを放送するための同軸ケーブルを有している。受信器(16)は、従来通りそれぞれのケーブル用差し込み(40)にて地上ケーブル(14)に接続されている。 受信器(16)はそれぞれ、制御装置(42)とテレビ(44)とを備えている。制御装置(42)は様々な放送チャンネルのうちの一つにより地上ケーブル(14)から受けたプログラム放送を予じめ選択されたチャンネルで出力に変え、テレビ(44)で受信できるようにするものである。」 (4頁右下欄5行目?17行目) なお、原文では一部「テレビ(24)」と記載されていたが、図面や他の記載箇所より「テレビ(44)」の誤りであることは明らかであるから、「テレビ(44)」と修整してある。 ハ.「加入者はプログラムを選び出すと電話(18)にて中央装置(12)に備えられた電話番号へ通常の電話回線にて電話をかける。顧客サービス係は加入者が伝えるリクエストされるプログラム、希望放送時間、それに加入者名と与えられた秘密の加入者番号など受け付ける。受け付け後、顧客サービス係は端末器(30)にてコンピュータ(28)にそれらのデータを入力する。」 (5頁左上欄8行目?12行目) ニ.「希望された放送時間になるとオペレータは、このビデオカセットレコーダを操作し、変換器/スクランブラ装置(38)によってスクランブル変換されたプログラムを地上ケーブル(14)にて信号コンバイナ(24)に伝送し、選択されたチャンネルで放送される。」 (5頁右上欄12行目?16行目) 上記記載、関連図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、まず、イ.、ロ.及び図1に記載されているように、上記引用例には、受信器(16)と電話機(18)を有する複数の加入者に、中央装置(12)からプログラムを伝送する方法が開示されている。ここで、プログラムを視ることができる一人の加入者を便宜上「主な加入者」と呼ぶことにすると、上記引用例には該「主な加入者」を含む複数の加入者にプログラムを伝送する方法が開示されている。 また、上記ロ.及びハ.に記載されているように、プログラムの視聴を希望する主な加入者は、電話機(18)によって中央装置(12)の電話機(32)に電話をかけて、視聴を希望するプログラムと希望放送時間を伝えている。一般に、電話をかけるときには電話回線の接続を確立しているということができ、これを「第1の通信ライン」と呼ぶことにすると、上記引用例には、主な加入者と中央装置(12)との間に 第1の通信ラインを確立し、該中央装置(12)からユーザにプログラムを伝送する希望放送時間を要求することが開示されている。 また、上記ロ.に記載されているように、上記引用例には、中央装置(12)と加入者との間を地上ケーブル(14)で接続し、該地上ケーブル(14)を介してプログラムを伝送することが開示されている。ここで、中央装置(12)からプログラムを加入者に伝送している状態は、通信ラインが確立しているということができる。この通信ラインを、上記「第1の通信ライン」と区別するために「第2の通信ライン」と呼ぶことにする。また、上記ニ.に記載されているように、希望放送時間に従って加入者にプログラムを伝送している。したがって、上記引用例には、中央装置(12)と加入者との間に地上ケーブル(14)を介して第2の通信ラインを確立し、希望放送時間に従って、加入者に要求されたプログラムを伝送すること、が開示されている。 したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 「主な加入者を含む一人またはそれ以上の加入者に、中央装置(12)からプログラムを伝送する方法であって、 該主な加入者と中央装置(12)との間に第1の通信ラインを確立するステップであって、該第1の通信ラインが電話回線の接続の確立を含む、ステップ、 該中央装置(12)から該各加入者にプログラムを伝送する希望放送時間を要求するステップ、 該中央装置(12)と該各加入者との間に地上ケーブル(14)を介して第2の通信ラインを確立するステップ、及び 該希望放送時間に従って、該各加入者に要求されたプログラムを伝送するステップ、を含む方法。」 3.対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、 a.引用発明の「加入者」はテレビ放送のプログラムを利用する「ユーザ」であり、 b.引用発明の「プログラム」はテレビ(44)で受信されるので「マルチメディア情報」ということができ、 c.引用発明の「中央装置(12)」は上記プログラムを保持し、加入者の電話によるリクエストに応じて伝送するので遠隔地に存在し、 d.引用発明の「希望放送時間」は上記プログラムの伝送を希望する時間であるので「時間的計画」ということができる。 また、引用発明の「電話回線」と「地上ケーブル(14)」は、異なった通信ラインである。 また、引用発明の「中央装置(12)」も本願発明の「マルチメディア・サーバ」も、マルチメディア管理装置である。 したがって、本願発明と引用発明は、 「主なユーザを含む一人またはそれ以上のユーザに、遠隔地からマルチメディア情報を伝送する方法であって、 該主なユーザと該遠隔地との間に第1の通信ラインを確立するステップであって、該第1の通信ラインが接続の確立を含むステップ、 該遠隔地から該各ユーザにマルチメディア情報を伝送する時間的計画を要求するステップ、 マルチメディア管理装置と該各ユーザとの間に第2の通信ラインを確立するステップ、及び 該時間的計画に従って、該各ユーザに要求されたマルチメディア情報を伝送するステップ を含む方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 「第1の通信ライン」に関し、本願発明では「インタネット」であるのに対して、引用発明では「電話回線」である点。 (相違点2) 「マルチメディア管理装置」に関し、本願発明は「マルチメディア・サーバ」であるのに対して、引用発明は「中央装置(12)」である点。 (相違点3) 「第2の通信ライン」に関し、本願発明は「ブリッジ装置」を有し、該「ブリッジ装置」はマルチメディア・サーバと各ユーザに接続されて、マルチメディア・サーバとの間に「交換ネットワークを介した」第2の通信ラインを確立し、マルチメディア情報は該「ブリッジ装置」を介して該各ユーザに伝送されるのに対して、引用発明は「ブリッジ装置」を有さず、また、「第2の通信ライン」は本願発明は「交換ネットワーク」を介して確立されるのに対して、引用発明は「地上ケーブル(14)」を介して確立される点。 まず、相違点1、2について検討するに、ビデオ・オン・デマンドの分野において、番組の要求をインタネットなどの広域デジタルネットワークを介して行うこと、及び、センタ側がビデオサーバ等の「マルチメディア・サーバ」を有することは、例えば特開平7-321748号公報、特開平7-334519号公報、特開平8-55137号公報、あるいは特開平8-115279号公報に記載されているように周知であり、当該周知技術を引用発明に適用する上で阻害要因は何ら見あたらないから、引用発明の「第1の通信ライン」を「インタネット接続の確立を含む」とすること、また、マルチメディア・サーバを有することは、当業者であれば容易になし得る。 また、相違点3の「第2の通信ライン」について検討するに、ネットワークにおけるブリッジ装置等の中継装置の使用、及び、通信ラインとしての交換ネットワークは周知であり、当該周知技術を引用発明に適用する上で阻害要因は何ら見あたらないから、マルチメディア・サーバと各ユーザとの間に「ブリッジ装置」を設け、マルチメディア・サーバと該「ブリッジ装置」との間に「交換ネットワークを介して」第2の通信ラインを確立し、マルチメディア情報を該「ブリッジ装置」を介して各ユーザに伝送するよう構成することは、当業者であれば容易になし得る。 そして、本願発明の作用・効果も引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-11-17 |
結審通知日 | 2009-11-18 |
審決日 | 2009-12-01 |
出願番号 | 特願平9-124617 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 秀樹 |
特許庁審判長 |
山本 春樹 |
特許庁審判官 |
萩原 義則 松元 伸次 |
発明の名称 | マルチメディア情報サービス・アクセス |
代理人 | 朝日 伸光 |
代理人 | 臼井 伸一 |
代理人 | 岡部 正夫 |
代理人 | 越智 隆夫 |
代理人 | 加藤 伸晃 |