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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02D
管理番号 1215135
審判番号 不服2008-12904  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-22 
確定日 2010-04-15 
事件の表示 特願2003-390259号「電子制御スロットル装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 9日出願公開、特開2005-147108号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年11月20日の特許出願であって、平成20年 4月14日付けで拒絶査定がなされ、この査定を不服として、同年 5月22日付けで本件審判請求がなされるとともに、同年 6月13日付けで手続補正(前置補正)がなされた。
一方、当審においても平成21年10月27日付けで拒絶理由を通知し、これに対して応答期間内である同年12月25日に意見書が提出されたところである。
そして、この出願の請求項1乃至9に係る発明は、上記平成20年 6月13日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至9に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
絞り弁、および前記絞り弁を駆動する弁駆動モータの収納部とが一体成形されているスロットルボディと、
前記スロットルボディの前記弁駆動モータ収納部に配置されオンオフ駆動される直流モータと、
前記スロットルボディに取付けられ前記直流モータの駆動力を前記絞り弁に伝達する動力伝達装置としての減速ギア機構と、
前記スロットルボディに装着され、前記直流モータと前記動力伝達装置としての減速ギア機構を覆うカバーと、
前記カバーに形成され、前記直流モータの端子を差し込むための中継コネクタと、
前記カバーに埋設され、一端が前記中継コネクタに接続される中継コネクタ側接続導体部と、
前記カバーに形成された外部接続コネクタと、
前記カバーに埋設され、一端が前記外部接続コネクタに接続される外部コネクタ側接続導体部とを備え、
前記中継コネクタ側接続導体部と前記外部コネクタ側接続導体部との間を電気的に直列に接続した状態で、前記減速ギア機構を覆う前記カバーの内側部に機械的に保持されるインダクタンス素子を有し、
前記直流モータの端子を前記中継コネクタに差し込んで、前記減速ギア機構を覆う前記カバーを前記スロットルボディに取付けることによって、前記インダクタンス素子が、前記スロットルボディに取付けられる
ことを特徴とする電子制御スロットル装置。」


2.引用例とその記載事項
(1)これに対して、当審において平成21年10月27日付けで通知した拒絶の理由に引用した本願の出願日前の2000年10月 5日に頒布された刊行物である国際公開第00/58614号(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「本発明は、上記目的を達成するために、次のようなスロットル装置を提案する。
(1)電子制御式スロットル装置に電子制御モジュールを一体化した装置において、絞り弁駆動装置(例えばモータ)および動力伝達装置(例えばギア機構)を保護するカバーと電子制御モジュールハウジングを一体成形した装置を提案する。」(第2頁第12-17行)
(イ)「ボディ1は、絞り弁2の収納部(スロットルチャンバ)とモータ3の収納部(モータハウジング)31とを一体成形してなる。」(第8頁第3-4行)
(ウ)「カバー10は、絞り弁軸8,減速ギア機構4,モータ3等の絞り弁関連部品(以下、絞り弁機構と称する)を保護するために、ボディ1の側壁に形成した絞り弁機構の収容部110を被うように取り付けられる。
すなわち、モータ(絞り弁駆動装置)3及びギア機構(動力伝達装置)4は、一つのカバー10により保護されるように配置されており、モータ3については、第13図に示すように、そのモータハウジング31の開口(モータ取り付け用の開口)が絞り弁機構収容部110に形成されて、この開口にモータ3のエンドブラケット3aがねじ111により固定されている(第8図)。」(第14頁第1-10行)
(エ)「本実施例のカバー10の大きな特徴は、絞り弁を制御するための電子制御モジュール11いわゆるTCM11をカバー10自身に取り付けた点にある。」(第15頁第13-15行)
(オ)「カバー10の内面には、開度計9の収容部(開度計ハウジング)10Aと、電子制御モジュール11の収容部(モジュールハウジング)10Bと、モータ(電動アクチュエータ)3のモータ端子33と接続するための中継コネクタ部10Cとが形成され、カバー10の外面に電子制御モジュール11の外部接続用コネクタ部10Dが形成されている。」(第16頁第9-14行)
(カ)「中継コネクタ部10Cは、カバー10の一辺の側壁内面にコネクタハウジング10C′を該カバーと一体成形し、このコネクタハウジング10C′の中にモータ接続用の端子15(第13図参照)をインサート成形してなる。
端子15は、一端がコネクタハウジング10C′の端子差し込み孔10C″に位置し、カバー10をスロットルボディ1に取り付けると、孔10C″に挿入した中継金具16(第13図,第19図)を介してモータ端子33と接続される。
端子15の他端15Aは、第15図,第16図に示すようにコネクタハウジング10C′の左右側面から出てカバー10の内部に露出しており、この露出した端部15Aと電子制御モジュール11に設けた電源出力端子17とをワイヤボンディング18により接続している。」(第16頁第19行-第17頁第8行)
(キ)「また、カバー10(樹脂モールド)には、電子制御モジュール11の回路基板の端子141?160と接続するためのリードフレーム131?150群が整列配置によりインサート成形(埋設)され、これらのリードフレームの一端はカバー10の内面における電子制御モジュール収容部10Bの一辺に隣接した位置で露出し、他端は第12図に示すように外部接続用コネクタ部(コネクタケース)10Dの中のコネクタピン131′?150′となっている。」(第17頁第10-16行)
(ク)「絞り弁機構のカバーに絞り弁開度計ユニット及び電子制御モジュールを簡単に取付けることができる。
上記カバーをスロットルボディに取付けるだけでモータ端子とカバー側の中継端子が自ずと接続する。さらに、電子制御モジュール及び開度計を、絞り弁機構カバーに集約(省スペース化)して取付けることができ、そのカバーに電子制御モジュール,モータ電源,開度計等のハーネス及びコネクタを簡略化,短縮化して設けることができる。」(第20頁第15-22行)

ここで、引用例1の第2実施例に関する記載である上記記載事項(ウ)においては、モータハウジング31とボディ1を一体成形するとは明記されていないが、第1実施例に関する記載である上記記載事項(イ)では一体成形すると明記されているし、第2実施例に関する図面である第13図等からも一体成形であろうことが看て取れるから、実質的に第2実施例においてもモータハウジング31とボディ1を一体成形しているものと認められる。
また、引用例1においては、モータ3の駆動について「オンオフ駆動」と明記されていないけれども、絞り弁を開閉動作させるものであるのだから、技術常識から鑑みると、当然にモータ3はオンオフ駆動されていることが明らかである。
さらに、モータ接続用の端子15について、上記記載事項(カ)、第13図、第15図をあわせみると、一端は中継コネクタ部10Cの端子差し込み孔10C″に位置し、カバー10に埋設された中間部を経て他端15Aがカバー10内部に露出するものであるから、端子15は、カバー10に埋設され、一端が中継コネクタ部10Cに接続されていることも明らかである。
そして、上記記載事項(カ)、第13図、第15図に加えて上記記載事項(ク)及び第20図をあわせみると、モータ端子33を中継金具16を介して中継コネクタ部10Cに差し込んでカバー10をボディ1に取付けると、自然と電子制御モジュール11がボディ1に取付けられることは明らかである。

してみると、上記記載事項(ア)乃至(ク)から引用例1には、
「絞り弁、および前記絞り弁を駆動する絞り弁駆動装置のモータハウジング31とが一体成形されているボディ1と、
前記ボディ1の前記絞り弁駆動装置のモータハウジング31に配置されオンオフ駆動されるモータ3と、
前記ボディ1に取付けられ前記モータ3の駆動力を前記絞り弁に伝達する動力伝達装置としての減速ギア機構4と、
前記ボディ1に装着され、前記モータ3と前記動力伝達装置としての減速ギア機構4を覆うカバー10と、
前記カバー10に形成され、前記モータ3のモータ端子33を差し込むための中継金具16を介して前記モータ3のモータ端子33と接続される中継コネクタ部10Cと、
前記カバー10に埋設され、一端が前記中継コネクタ部10Cに接続されるモータ接続用の端子15と、
前記カバー10に形成された外部接続用コネクタ部10Dと、
前記カバー10に埋設され、一端が前記外部接続用コネクタ部10Dに接続されるリードフレーム131?150群とを備え、
前記モータ接続用の端子15と前記リードフレーム131?150群との間を電気的に接続した状態で、前記減速ギア機構4を覆う前記カバー10の内側部に機械的に保持される電子制御モジュール11を有し、
前記モータ3のモータ端子33を中継金具16を介して中継コネクタ部10Cに差し込んで、前記減速ギア機構4を覆う前記カバー10を前記ボディ1に取付けることによって、前記電子制御モジュール11が、前記ボディ1に取付けられる
電子制御式スロットル装置。」
の発明(以下「引用発明1」という。)が開示されていると認められる。

(2)また、同じく当審における拒絶の理由に引用した本願の出願日前の平成 4年 3月19日に頒布された刊行物である特表平4-501650号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ケ)「本発明は、請求項1の前段に記載した特徴を持つ電動モーター、特に車両の風防ガラスのワイパー駆動用小型電動モーターに関する。」(第2頁右下欄第4-6行)
(コ)「2つのコイル41と2つのキャパシタ42とによって形成された雑音制限器が、ここでも、ギヤハウジングのコップ形部22のポケット44の中に置かれた保持デバイス40の2つの室55,56の中に置かれる。」(第6頁右上欄第4-7行)
(サ)「ポケット44の通路43の先に、2つの金属片91が平らなピン端子92としてカバー48に対して直角に突出している。保持デバイス40が室55の前の2つの別の室93の中に2つのレセプタクル94を持ち、これが2つの金属片96と一体に作られており、その各々が室55から室93に導かれ、電気導通状態でコイル41に接続される。」(第6頁左下欄第5-10行)
(シ)「カバー48と保持デバイス40とを互いに装着するとき、絶縁状態でカバー48の中を案内される2つのプラグ65がレセプタクル60に差し込まれる。」(第6頁左下欄第17-20行)

第11図をみると、コイル41は、ピン端子92とレセプタクル60の間で電気的に直列に接続した状態であることが明らかである。
してみると、上記記載事項(ケ)乃至(シ)及び第11図等から引用例2には、
「ワイパー駆動用小型電動モーターの雑音制限器としてのコイル41を、ピン端子92とレセプタクル60の間で電気的に直列に接続すること」
の発明(以下「引用発明2」という。)が開示されていると認められる。


3.本願発明と引用発明1の対比・判断
(1)本願発明と上記引用発明1とを対比すると、両者は、いずれも電子制御されるスロットル装置に関するものであって、引用発明1における「絞り弁駆動装置のモータハウジング31」は本願発明における「弁駆動モータの収納部」に相当し、以下同様に「ボディ1」は「スロットルボディ」に、「減速ギア機構4」は「減速ギア機構」に、「カバー10」は「カバー」に、「モータ端子33」は「端子」に、「中継コネクタ部10C」は「中継コネクタ」に、「モータ接続用の端子15」は「中継コネクタ側接続導体部」に、「外部接続用コネクタ部10D」は「外部接続コネクタ」に、「リードフレーム131?150群」は「外部コネクタ側接続導体部」に、「電子制御式スロットル装置」は「電子制御スロットル装置」にそれぞれ相当するものである。
ここで、引用発明1のモータ3については、直流モータか交流モータか明記されていないが、「絞り弁を駆動するためのモータ」である限りにおいて本願発明の直流モータと共通するものである。
また、モータの端子と中継コネクタの接続関係について、引用発明1においては、中継金具16を介しているけれども、モータの端子と中継コネクタが「電気的に接続されている」点において共通するものである。
そして、引用発明1の電子制御モジュール11と本願発明のインダクタンス素子は、「電気部品」である限りにおいて共通するものである。
そうすると、本願発明と引用発明1の一致点、相違点は以下のように認定できる。

<一致点>
「絞り弁、および前記絞り弁を駆動する弁駆動モータの収納部とが一体成形されているスロットルボディと、
前記スロットルボディの前記弁駆動モータ収納部に配置されオンオフ駆動されるモータと、
前記スロットルボディに取付けられ前記モータの駆動力を前記絞り弁に伝達する動力伝達装置としての減速ギア機構と、
前記スロットルボディに装着され、前記モータと前記動力伝達装置としての減速ギア機構を覆うカバーと、
前記カバーに形成され、前記モータの端子と電気的に接続される中継コネクタと、
前記カバーに埋設され、一端が前記中継コネクタに接続される中継コネクタ側接続導体部と、
前記カバーに形成された外部接続コネクタと、
前記カバーに埋設され、一端が前記外部接続コネクタに接続される外部コネクタ側接続導体部とを備え、
前記中継コネクタ側接続導体部と前記外部コネクタ側接続導体部との間を電気的に接続した状態で、前記減速ギア機構を覆う前記カバーの内側部に機械的に保持される電気部品を有し、
前記モータの端子と前記中継コネクタを電気的に接続し、前記減速ギア機構を覆う前記カバーを前記スロットルボディに取付けることによって、前記電気部品が、前記スロットルボディに取付けられる
ことを特徴とする電子制御スロットル装置。」

<相違点>
相違点A.モータについて、本願発明では「直流モータ」としているのに対して、引用発明1では直流モータか交流モータか明らかでない点。

相違点B.モータの端子と中継コネクタの接続について、本願発明では「前記直流モータの端子を差し込むための中継コネクタ」、「前記直流モータの端子を前記中継コネクタに差し込んで」のように、直流モータの端子が中継コネクタに直接差し込まれる構成となっているのに対して、引用発明1では、中継金具16を介して差し込まれる構成となっている点。

相違点C.電気部品について、本願発明では「インダクタンス素子」を「直列に接続」するとしているのに対して、引用発明1では「電子制御モジュール11」であって、「直列に接続」とは明記されていない点。

(2)上記各相違点について以下に検討する。
<相違点A.について>
自動車に搭載される電装品は、その電源であるバッテリーが直流であることから、特段の事情がない限り直流の電装品がほとんどであることは、文献を示すまでもない技術常識である。
そして、電子制御スロットル装置に用いられるモータも例外ではなく、直流モータを用いることがごく一般的であることを鑑みると、引用発明1においては、あらためて「直流モータ」と明記していないだけで、実質的に直流モータを用いているというべきであるし、そうでないとしても、引用発明1においてモータとして直流モータを選択することは、当業者が適宜選択し得るものである。

<相違点B.について>
コネクタの連結において、中継金具を用いることも用いないこともごく一般的なものであって、設計的な要求に応じて適宜選択すべきものであるから、引用発明1において中継金具を省略し、直流モータの端子を中継コネクタに直接差し込む構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。

<相違点C.について>
引用発明2の「ワイパー駆動用小型電動モーター」は、車載部品の駆動用モータという点で電子制御スロットル装置の「弁駆動モータ」と共通するものであり、「コイル41」はモータから発生するノイズを低減するコイルであるのだから、「インダクタンス素子」に当たるものである。
また、引用発明2の「ピン端子92」が「モータ側の接続導体部」で、「レセプタクル60」が「外部コネクタ側の接続導体部」に当たることは明らかである。
してみると、引用発明2は「車載部品の駆動用モータのノイズを低減するインダクタンス素子を、モータ側の接続導体部と外部コネクタ側の接続導体部の間で電気的に直列に接続すること」ということができる。

ここで、車載部品の駆動用モータにおいて、モータから発生するノイズの低減という技術的課題は、引用発明2の他に例えば特表2002-503077号公報等にもあるように、この出願前に周知のものであるし、その技術的課題を解決するための手段として、モータの電源導体部にインダクタンス素子を直列に接続するという解決手段もまた、引用発明2の他に例えば同様に特表2002-503077号公報等にもあるように、この出願前に周知のものである。
してみると、引用発明1において、モータから発生するノイズの低減という周知の課題を解決するために、同様に周知の解決手段であるモータの電源導体部にインダクタンス素子を直列に接続するという構成を採用することは周知技術の採用にすぎないから、引用発明1に引用発明2の構成を適用することに格別の困難性があるとは認められない。
そして、引用発明1は、電子制御モジュール11とはいえ、電気部品をカバー内の中継コネクタ側接続導体部と外部コネクタ側接続導体部との間に配置するという構成をすでに有している上に、電子制御スロットル装置において、カバー内に電気素子を配置することがこの出願前に周知のもの(例えば特開2003-185470号公報、特開2001-289610号公報等参照。)であるのだから、引用発明1に引用発明2の構成を適用するに際して、引用発明1において既に配置されている電気部品と同様に、インダクタンス素子をカバー内に配置することは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
また、引用発明1において中継コネクタ側接続導体部と外部コネクタ側接続導体部との間に配置されている電気部品と同様にインダクタンス素子を配置すれば、インダクタンス素子は必然的に両導体部に直列に接続されることが明らかであるが、そうでないとしても、引用発明2で直列に接続されているインダクタンス素子を適用するのだから、引用発明1に引用発明2のインダクタンス素子を適用するときは、同様に直列に配置しなければならず、よってインダクタンス素子を直列に接続するような配置構成をとることは、当業者が必然的に行わなければならない設計的事項である。
なお、引用発明1において既に配置されている電気部品と同様にインダクタンス素子を配置すれば、他の電気部品と同様に、カバーをスロットルボディに取付けることによってインダクタンス素子がスロットルボディに取付けられることは自明である。

そして、上記相違点A.乃至C.を併せ備える本願発明が奏する作用効果について検討しても、引用発明1、引用発明2及び上記周知の技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別なものではない。

4.審判請求人の主張に対して
審判請求人は、平成21年12月25日付け意見書において、「インダクタンス素子には、このような配線間の短絡が生じないようにしながら電気的配線に直列に素子を組み込まなければならないという制約があります。」、「一般的に、インダクタンス素子は、周知技術として引用された特開2003-185470号公報及び特開2001-289610号公報に記載のコンデンサやホールICとは著しく素子サイズが異なります。このため、電気回路を構成する上で、配置構成の制約が著しく異なります。」、「本願発明にあっては、・・・(中略)・・・当該構成を採用するには、上述のように電気的接続構成の制約や、素子サイズがもたらす制約を克服し、カバーの限られたスペースにインダクタンス素子を配置して組み込まなければなりません。」として、インダクタンス素子ならではの課題(電気的接続の制約、大きな素子サイズの制約)と課題解決手段(素子配置の工夫)をあげた上で、「このように、本願発明において、電子制御スロットル装置のスロットルボディに装着されるカバーの内面にインダクタンス素子を配置する構成、具体的にはモータの中継端子と外部コネクタの端子(中間に制御回路があるものもないものも含め)との間を分断してこの分断部分においてインダクタンス素子をカバーに固定すると共に、インダクタンス素子の両端をこれら導体部の間(モータ中継端子と制御回路の端子接続部もしくはモータ中継端子と外部コネクタの端子)に電気的に直列に接続することは、当業者にとって適宜選択する設計事項とは到底言えないものであると思料されます。」と主張している。
しかしながら、インダクタンス素子ならではの課題が事実であるとしても、その課題解決手段として主張している「カバーの内面にインダクタンス素子を配置する構成」は、上記3.(2)<相違点C.について>で述べたように引用発明1、引用発明2及び周知の技術から容易になし得るものである。
また、同様に課題解決手段として主張している「モータの中継端子と外部コネクタの端子(中間に制御回路があるものもないものも含め)との間を分断してこの分断部分においてインダクタンス素子をカバーに固定すると共に、・・・(中略)・・・電気的に直列に接続すること」は、特に「モータの中継端子と外部コネクタの端子との間を分断」する構成について、本願の請求項1には記載されておらず請求項の記載に基づかない主張であるし、そうでないとしても、そのような構成によって電気的接続の制約や大きな素子サイズの制約といった課題を解決しているとは認められない。
よって、審判請求人の当該主張は、受け入れることができない。


5.むすび
以上によると、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明1、引用発明2及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-15 
結審通知日 2010-02-16 
審決日 2010-03-01 
出願番号 特願2003-390259(P2003-390259)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池本 智之西山 智宏  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 横溝 顕範
藤井 昇
発明の名称 電子制御スロットル装置  
代理人 高田 幸彦  

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