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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q
管理番号 1215139
審判番号 不服2008-14096  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-05 
確定日 2010-04-16 
事件の表示 特願2003-103181「機器制御システムおよび機器制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月 4日出願公開、特開2004-312376〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は,平成15年4月7日に出願したものであって,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成19年7月17日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて,その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「移動体の外部に設置された機器と
前記移動体に搭載され,前記機器に指令信号を送信して前記機器を遠隔操作することの可能な移動体端末と,
前記移動体の位置を測定する位置測定手段と,
前記位置測定手段によって測定された前記移動体の位置に基づいて,前記移動体が前記機器の設置位置である基準位置から所定の許容距離以内に位置しているか否かを判断する距離判定手段と,
前記距離判定手段によって前記移動体が前記許容距離以内に位置していると判断されたときに前記機器の遠隔操作を許可し,前記距離判定手段によって前記移動体が前記許容距離以内に位置していないと判断されたときに前記機器の遠隔操作を禁止する遠隔操作管理手段と
を備える機器制御システム。」

2.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願日前である平成13年9月14日に頒布された特開2001-251312号公報(以下,「引用文献」という。)には,図面とともに以下の記載がある。
イ)「【請求項2】前記請求項1に記載のネットワーク接続機器のアクセス管理装置において,
前記アクセス管理テーブルは,前記操作端末の場所に応じたアクセス許可情報を持つことを特徴とするネットワーク接続機器のアクセス管理装置。」(第2頁第1欄),
ロ)「【0017】
【発明の実施の形態】以下,本発明の第1実施形態について,図1乃至図4とともに詳細に説明する。
【0018】図1は本実施形態におけるシステム構成例を示す説明図である。図1において,101はホームネットワーク111に接続される機器の管理や公衆ネットワーク112とホームネットワーク111との接続などをするホームゲートウェイ(以下,HGW),102は各種情報を保管するデータベースである。
【0019】103,104,105,106はホームネットワーク111に接続された端末A,端末B,端末C,端末D,108,109,110は同じくホームネットワーク111に接続された無線端末A,無線端末B,無線端末C,107は無線端末A108,B109,C110を管理するアクセスポイント(AP)である。
【0020】尚,上記端末A103,B104,C105,D106および無線端末A108,B109,C110は,AV機器や,エアコン,湯沸し器等の家屋内にある電機製品や,パソコン等の情報機器,電話等の通信機器,それを操作するためのリモコン,PDA等である。」(第3頁第3欄),
ハ)「【0043】次に,本発明の第3実施形態について,図7及び図8とともに説明するが,上記第1実施形態と同一部分には同一符号を付し,その説明は省略する。
【0044】本実施形態においては,ホームネットワークに接続された機器を操作する機器の場所によってアクセス管理を行なうものであり,主にホームネットワーク外(屋外)からの操作に対するアクセス管理を行なうものである。
【0045】図7は本実施形態におけるアクセス管理テーブルを示す説明図である。このアクセス管理テーブル800は,図7に示すように,上記第1実施形態におけるアクセス管理テーブル200に,操作を行なう場所の情報を追加したものである。
【0046】ここで,操作を行なう場所の情報とは,例えば家と操作端末との距離であり,事前に各ユーザ,各機器毎に操作端末との距離に応じたアクセスの可または不可を決定し,アクセス管理テーブル800に登録しておく。
【0047】図8はホームネットワーク内に接続された機器を操作するための操作端末の一例を示すブロック図である。この操作端末900は,図8に示すように,ユーザに対して情報を提示する表示部901と,文字,画像,音声情報などを入力する入力部902と,ネットワークと接続するネットワークインタフェイス部903と,メモリ部904とを有している。
【0048】さらに,GPSまたは公衆ネットワークの基地局等から送信される位置情報などに基づき,操作端末の位置情報を取得して保存する位置情報取得部905と,上記各部901?905をコントロールする処理部906とを有している。
【0049】上記位置情報取得部905は,一定の時間毎に位置情報を取得して更新するか,入力部902により入力された命令によって位置情報を取得し更新する。
【0050】以下,操作端末900からホームネットワーク111内の機器を操作する時の処理(アクセス管理)について詳しく説明する。
【0051】まず,操作端末900の入力部902から,ユーザ名,パスワード等を入力し,ユーザのログインを行なう。ここでは,操作端末900内のメモリ部904に記録されているユーザ情報により認証を行なうか,ネットワークインターフェイス部909を介して,HGW101にユーザ名,パスワード等を送信して認証を行なう。
【0052】ユーザが認証されると,アクセス管理テーブル200を持つデータベース102またはHGW101などから,ログインしたユーザのアクセス制御テーブルをネットワークインターフェイス部903を介して取得し,メモリ部904に保存した後,操作コマンド入力待ちになる。
【0053】次に,入力部902から,ホームネットワーク111内の機器を操作する制御コマンドが入力されると,ログイン時のユーザ情報と入力されたコマンドとから得られる操作する機器の情報,位置情報取得部905の位置情報を,メモリ部904内のアクセス制御テーブルと照合する。
【0054】照合の結果,アクセス可能であれば,当該機器に対して制御コマンドをネットワークインターフェイス部903を介して送信し,アクセス不可能であれば,当該機器の制御が不可能であることをユーザに対して表示部901より通知し,操作コマンド入力待ちに戻る。」(第4頁第6欄?第5頁第7欄)

・摘記事項イ)?ハ)の「操作端末」は「機器」を操作しているから,当然,「端末装置」から制御コマンドが送信されている。
・摘記事項ハ)の「操作」は,機器の直接操作ではないから,遠隔操作のことである。
・摘記事項ハ)の「各機器毎に操作端末との距離に応じたアクセスの可または不可」(段落【0046】)との記載及び図7によれば,「アクセスの可」の条件は,操作端末が家との所定の許容距離以内にあることを意味し,また,操作端末に対して家は前記「距離」の基準位置であり,「所定の許容距離以内にあること」の判断は,「照合」(段落【0053】)により実行されており,その実行のためには,距離判定手段が当然に備わっている。
・摘記事項ハ)の段落【0054】によれば,所定の許容距離以内にあることの判断結果に基づいて,(遠隔)操作の許可,禁止を行っているといえ,そのためには,自明的に遠隔操作管理手段が備わっているということもできる。
そして,これらのアクセス管理は,全体として,機器を制御するシステムを構築しているから,機器制御システムと称することができる。
したがって,上記引用文献の記載及び技術常識によれば,上記引用文献には,
「機器と
前記機器に制御コマンドを送信して前記機器を遠隔操作することの可能な操作端末と,
前記操作端末の位置を測定する位置情報取得部と,
前記位置情報取得部によって測定された前記操作端末の位置に基づいて,前記操作端末が前記機器の所属するホームネットワークが配備された家の設置位置である基準位置から所定の許容距離以内に位置しているか否かを判断する距離判定手段と,
前記距離判定手段によって前記操作端末が前記許容距離以内に位置していると判断されたときに前記機器の遠隔操作を許可し,前記距離判定手段によって前記移動体が前記許容距離以内に位置していないと判断されたときに前記機器の遠隔操作を禁止する遠隔操作管理手段と
を備える機器制御システム。」(以下,「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。

3.対比
そこで,本願発明と引用発明とを対比する。
a)引用発明の「制御コマンド」は機器に送信されるものであるから,信号であり,本願発明の「指令信号」と実質的な差異はない。
b)本願発明の「移動体端末」の位置は「移動体」の位置と事実上同じであるから,端末に着目すると引用発明の「操作端末の位置」と同じである。
c)引用発明の「位置情報取得部」はGPS等を含むものであるから,本願発明の「位置測定手段」に相当する。
d)引用発明において,「家」は機器が設置された場所であり,本願発明の機器の設置位置とは若干概念上異なるが,機器に係る位置という点では共通する。

したがって,本願発明と引用発明は,次の点で一致し,相違する。
(一致点)
機器と
前記機器に指令信号を送信して前記機器を遠隔操作することの可能な端末と,
前記端末の位置を測定する位置測定手段と,
前記位置測定手段によって測定された前記端末の位置に基づいて,前記端末が前記機器に係る基準位置から所定の許容距離以内に位置しているか否かを判断する距離判定手段と,
前記距離判定手段によって前記端末が前記許容距離以内に位置していると判断されたときに前記機器の遠隔操作を許可し,前記距離判定手段によって前記移動体が前記許容距離以内に位置していないと判断されたときに前記機器の遠隔操作を禁止する遠隔操作管理手段と
を備える機器制御システム。

(相違点1)
端末が,本願発明では「移動体」に搭載され,「移動体端末」と称しているのに対して,引用発明では移動体に搭載されているのかは不明であって,「操作端末」である。
(相違点2)
本願発明は,機器が「移動体の外部に設置された」と限定されているが,引用発明は,前述のように,移動体を使用しているのか不明であるから,移動体との関連での設置に関した規定は当然にない。
(相違点3)
端末の位置に関して,本願発明は,移動体を基準として規定しているのに対して,引用発明は,(操作)端末そのものの位置で規定されている。
(相違点4)
基準位置が,本願発明では「機器の設置位置」であるのに対して,引用発明では「家の設置位置」である。

4.当審の判断
そこで,相違点について検討する。
(相違点1)?(相違点3)について
原審の拒絶理由通知において引用された特開2002-101474号公報(例えば,請求項1の記載),特開2002-186055号公報,特開平1-202554号公報等に開示されているように,家屋内に設置された機器を操作する操作端末を,車両等の移動体に搭載することは周知技術であるから,引用発明の操作端末を移動体に搭載させ,移動体端末と称する程度のことは,周知技術の単なる付加の域を出ない。そして,その周知技術の付加に伴って,機器は,当然,外部に設置されることになり,また,(操作)端末の位置が,移動体の位置と同一視できることも,自明的に導出される程度の事項にすぎない。
したがって,相違点1?3に係る本願発明の構成は,前記周知技術の単なる付加にすぎない。

(相違点4)について
引用発明は,家屋内に設置された種々の機器の遠隔操作が対象であって,それらが家内のホームネットワークで接続されていること等の事由により,ネットワーク設備のある家の位置を基準位置に設定していると解されところ,本願においても,その発明の詳細な説明の段落【0029】において「自宅」位置すなわち家を基準位置とするものも開示されており,同様の技術的意味合いを有していると解される。してみると,本願発明は,例えば施錠用等の単一の機器のみを対象とするような場合を前提に,(位置)精度の向上という一般的な課題に基づいて,基準位置を機器の設置位置とした程度のことにすぎず,当業者であれば,当然採用する程度の技術的事項にすぎないということができる。また,原審の拒絶理由通知において引用された特開平1-202554号公報には,施錠用の機器のみを遠隔操作対象とし,当該機器を基準位置としたものが開示されており,単一の機器のみを遠隔操作対象とすることも周知ということができ,その場合,当該機器の設置位置を,基準位置とするのも当然の帰結ということができる。
したがって,引用発明において,基準位置を「機器の設置位置」と変更する程度のことに格別な創意工夫を見出すことはできない。

そして,本願発明の効果も,引用発明及び周知技術が有している効果以上の格別なものは認められない。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用文献に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって,結論のとおり審決する
 
審理終結日 2010-02-08 
結審通知日 2010-02-09 
審決日 2010-02-26 
出願番号 特願2003-103181(P2003-103181)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西脇 博志  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 小宮 慎司
新川 圭二
発明の名称 機器制御システムおよび機器制御方法  
代理人 永井 聡  
代理人 久保 貴則  
代理人 伊藤 高順  
代理人 碓氷 裕彦  

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