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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01J |
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管理番号 | 1215140 |
審判番号 | 不服2008-14132 |
総通号数 | 126 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-06-06 |
確定日 | 2010-04-12 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第256042号「映像化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 9月25日出願公開、特開平10-253447〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明 本願は、平成9年9月4日(優先権主張平成9年1月8日)の出願であって、平成19年1月31日付け最後の拒絶理由に応答して同年4月9日付けで手続補正がなされたが、同年10月31日付けで再度、最後の拒絶理由が通知され、同年12月27日付けで意見書のみが提出され、平成20年4月24日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月6日に拒絶査定不服審判請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明は、平成19年4月9日付けの手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。) 「 【請求項1】 被支持部及び光作用部を1個の素子として当該素子を複数個有し当該素子が1次元状又は2次元状に配列された光読み出し型放射-変位変換装置と、読み出し光学系と、を備えた映像化装置であって、 前記被支持部は、放射を受けて熱に変換する放射吸収部と、該放射吸収部にて発生した熱に応じて前記基体に対して変位する変位部と、を有し、基体に支持され、 前記光作用部は、読み出し光を受光し、受光した読み出し光に前記変位部の変位に応じた変化を与えて当該変化した読み出し光を出射させ、 前記読み出し光学系は、前記各素子の前記光作用部に一括して同時に前記読み出し光を照射し、前記各素子の前記光作用部から出射された前記変化した読み出し光を光学的に処理して、電気的な処理を介在させることなく、前記各素子の前記変位部の変位に応じた各部分を有する光学像を形成し、 前記光学像における前記各部分の配列は、前記光読み出し型放射-変位変換装置における前記各素子の配列に対応する、 ことを特徴とする映像化装置。」 第2 引用刊行物およびその記載事項 本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平8-184500号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1-ア) 「【0009】【実施例】図1は、この発明のカンチレバーを利用したセンサの基本的構造を示し、この図において、1はバイメタル構造のカンチレバーで、例えば厚さ5μm、長さ200μm、幅35μmのシリコンの薄板2と、その下面側に設けられ、熱膨張係数がシリコン薄板2より大きな金属層3とからなり、シリコンよりなる基台4との間に適宜の間隙5を有するようにその一端側が保持されている。前記金属層3は、例えばアルミニウムを蒸着などの手法で1?10μm程度の厚さに形成してなるものである。そして、このカンチレバー1の遊端側の金属層3の表面には、例えば金を蒸着することによって、0.1?1μm程度の厚みのミラー6が形成してある。 ・・・ 【0011】7は前記基台4を貫通するように設けられる光ファイバで、その上端面7aがミラー6と対向するように配置される。そして、この光ファイバ7の他端側は、図示してないが、単一モードレーザ光干渉計に接続されている。」 (1-イ) 「【0012】上記構成のカンチレバーを利用したセンサの動作を、図2をも参照しながら説明する。赤外光IRがカンチレバー1のシリコン薄板2に入射すると、シリコン薄板2とアルミニウム層3との熱膨張係数の差により、カンチレバー1は、図2において仮想線で示すように、シリコン薄板2側に反り、これに伴ってミラー6が変位する。光ファイバ7を通ってきたレーザ光L1 は、変位するミラー6と光ファイバ7端の内側で反射され、入射側のレーザ光L1 と反射側のレーザ光L2との間には、ミラー6の変位による位相ずれが生じている。この位相ずれは、干渉計に設けられた2個の光ダイオード(図示してない)によって検出することができ、この検出結果に基づいてカンチレバー1の反り量が得られ、この反り量に基づいてカンチレバー1に入射する赤外光IRの大きさを検出することができる。」 (1-ウ) 「【0014】・・・図3(A)、(B)および図4(A)、(B)はそれぞれ、カンチレバーを利用したセンサを微細加工によって二次元的に形成した例を示すものである。」 (1-エ) 「【0017】また、前記二次元アレイを用いることにより、高い機械的安定性と高感度でもって二次元赤外線画像検出を行うことも可能になる。」 (1-オ) 図1、2には、カンチレバー1が、基台4に対して反る構造と、カンチレバー1にレーザ光を入・反射させるためにミラー6に対向するように配置された光ファイバーを有する構造が記載されている。 そうすると、これらの記載と図面を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。 「シリコン薄板2とアルミニウム層3からなるバイメタル構造を有するカンチレバー1及びミラー6からなるセンサを二次元的に形成した二次元アレイと、レーザ光干渉計とを備えた装置において、 前記カンチレバー1は、赤外光の入射によりシリコン薄膜2とアルミニウム層とが基台4に対して反る構造を有し、基台4に一端側が保持され、 前記ミラー6は、レーザ光L1を反射し、前記ミラー6の変位による位相ずれを与え、 前記レーザ光干渉計は、前記カンチレバー1への入射光と、前記カンチレバー1からの反射光との位相差により、カンチレバー1に入射する赤外光の大きさを検出し、 二次元アレイの各カンチレバー1にレーザ光を入反射させるためにミラー6に対向するように配置された光ファイバーを有した二次元赤外線画像検出を行う装置。」(以下、「引用発明」という。) 第3 当審の判断 (1)対比 (ア) 引用発明と補正発明とを対比すると、その構造・機能からみて、引用発明の「カンチレバー1」、「ミラー6」、「レーザ光干渉計」、「アルミニウム層3」、「シリコン薄板2とアルミニウム層3からなるバイメタル構造」および「基台4」は、それぞれ補正発明の「被支持部」、「光作用部」、「読み出し光学系」、「放射吸収部」、「変位部」および「基体」に相当することが明らかである。 したがって、引用発明の「バイメタル構造を有するカンチレバー1及びミラー6からなるセンサを二次元的に形成した二次元アレイ」は、補正発明の「被支持部及び光作用部を1個の素子として当該素子を複数個有し当該素子が1次元状又は2次元状に配列された光読み出し型放射-変位変換装置」に相当し、引用発明の「前記ミラー6は、レーザ光L1を反射し、前記ミラー6の変位による位相ずれを与え、」は、補正発明の「光作用部は、読み出し光を受光し、受光した読み出し光に前記変位部の変位に応じた変化を与えて当該変化した読み出し光を出射させ」に相当する。 (イ) 引用発明の「二次元赤外線画像検出を行う装置」は、目視不可能な赤外線を検出して可視化していることから、補正発明の「映像化装置」に相当する。 そうすると、両者は、 (一致点) 「被支持部及び光作用部を1個の素子として当該素子を複数個有し当該素子が1次元状又は2次元状に配列された光読み出し型放射-変位変換装置と、読み出し光学系と、を備えた映像化装置であって、 前記被支持部は、放射を受けて熱に変換する放射吸収部と、該放射吸収部にて発生した熱に応じて前記基体に対して変位する変位部とを有し、基体に支持され、 前記光作用部は、読み出し光を受光し、受光した読み出し光に前記変位部の変位に応じた変化を与えて当該変化した読み出し光を出射させる映像化装置。」 である点で一致し、以下の点で相違するといえる。 (相違点1) 読み出し光学系の、各素子の光作用部への読み出し光の照射のタイミングについて、補正発明では「一括して同時」であるのに対して、引用発明では定かでない点。 (相違点2) 各素子の前記光作用部から出射された前記変化した読み出し光、前記各素子の前記変位部の変位に応じた各部分を有する光学像の形成について、補正発明では「光学的に処理して、電気的な処理を介在させることなく、前記光学像における前記各部分の配列は、前記光読み出し型放射-変位変換装置における前記各素子の配列に対応する」のに対して、引用発明では「前記レーザ光干渉計は、前記カンチレバー1への入射光と、前記カンチレバー1からの反射光との位相差により、カンチレバー1に入射する赤外光の大きさを検出し、 二次元アレイの各カンチレバー1にレーザ光を入反射させるためにミラー6に対向するように配置された光ファイバーを有した」点。 (2)相違点についての判断 まず、相違点1を検討するに、 引用発明のような干渉計では、2次元測定を行うことは周知であり、一般的な測定技術として、2次元測定を行う場合、走査をして順次行うことも、一括して同時に行うことも、例示するまでもなく周知の事項である。 してみると、引用発明の干渉計において、上記周知の事項である「2次元測定を一括して同時に行う」ことを採用して、相違点における本願発明の構成とすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計事項にすぎないものと認められる。 次に、相違点2を検討するに、 引用発明は、上記相違点1で検討したように読み出し光の照射を一括して同時に行うのであれば、 レーザ光干渉計での受光も一括して同時に行われることになるのであり、該受光までは、光学的な処理で行われるのであるから「光学的に処理して、電気的な処理を介在させることなく」、に相当し、また、光学的にみて、光ファイバーにより入射した光の反射光は少なくとも光ファイバーの端面に干渉縞等、何らかの光学像を形成するといえる。 そして、引用発明の構成からみて二次元的に形成したレーザ光干渉計での受光部の配列が、二次元的に形成したカンチレバーの配列に対応するといえる。 してみると、上記相違点1の検討のように引用発明を改変することにより相違点2における本願発明の構成が導出されることは当然のことといえる。 そして、本願明細書に記載された効果も、引用発明および周知の事項から、当業者が予測し得る範囲のものであり、格別顕著なものといえない。 第4 むすび したがって、本願発明は、本願優先日前に頒布された刊行物1に記載された発明および周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その他の請求項について言及するまでもなく、本願出願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-02-09 |
結審通知日 | 2010-02-16 |
審決日 | 2010-03-01 |
出願番号 | 特願平9-256042 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平田 佳規 |
特許庁審判長 |
岡田 孝博 |
特許庁審判官 |
居島 一仁 信田 昌男 |
発明の名称 | 映像化装置 |
代理人 | 四宮 通 |