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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1215141
審判番号 不服2008-14307  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-06 
確定日 2010-04-15 
事件の表示 特願2002-308319「電子写真による画像形成方法、電子写真用トナーおよびトナー製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月20日出願公開、特開2004-144899〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年10月23日の出願であって、平成20年6月6日付けで拒絶査定に対する不服の審判請求がなされ、当審において、平成21年10月15日付けで通知された拒絶理由に対して、同年12月18日付けで手続補正書及び意見書が提出されたものであって、実質的に「電子写真による画像形成方法」に関するものと認める。


第2 当審の拒絶理由通知の概要
当審において、平成21年10月15日付けで通知した拒絶理由の抜粋は、以下のとおりである。

『 2.記載不備について
本件出願は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号、同条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。 記
(1)発明の明確性について
(a)(略)
(b)(略)
(c)さらに、下記「(2)サポート要件について」で指摘する事項からみても、式「10M/ρ≦h≦10M/A」の技術的意味は、不明確である。
(d)(略)
(e)したがって、請求項1に係る発明は、不明確である。
請求項1を引用する請求項2に係る発明も同様である。

(2)サポート要件について
請求項1の式「10M/ρ≦h≦10M/A」は、請求人も説明するように、実験を行って効果が確認されたデータに基づき、数式化したものである。
しかし、発明の詳細な説明に示される実験データ(実施例、比較例によるデータ)は、次のケースに限られるものである。
印刷媒体上のトナー付着量M:0.3(mg/cm^(2))
トナーの真比重ρ:1.1(g/cm^(3))
トナーの嵩密度A:0.4(g/cm^(3))
このケースから外れるものについては、実験を行っておらず、効果は何ら確認されていない。
これに対し、請求項1では、「Mは0.4以下」と規定されるところ、実施例の0.3でない値、例えば、0.4のときや0.1のときにおいても、トナーの真比重ρ(結着樹脂、顔料の種類や配合割合により異なってくる)や嵩密度Aの値の大小に関係なく、式「10M/ρ≦h≦10M/A」の範囲全体に渡って、本願発明の効果を奏するかどうかは、全く不明である。
・・・(中略)・・・
そうすると、出願時の技術常識に照らしても、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容(効果が確認された事項に限られることは当然である。)を拡張ないしは一般化することはできないものである。

よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。請求項1を引用する請求項2に係る発明も同様である。

(3)実施可能要件について
(略)』


第3 手続補正書、意見書の内容
これに対して、請求人より、平成21年12月18日付けで手続補正書及び意見書が提出されたところ、それには以下の内容が含まれる。

(ア)補正された特許請求の範囲
特許請求の範囲は、次の記載になった。

「【請求項1】
印刷媒体上のトナー付着量(M)で形成された単色ソリッド部の画像において、印刷媒体上における定着後の画像のトナー層厚み(h)が下記式、
10M/ρ ≦ h ≦ 10M/A
(式中、
M:印刷媒体上のトナー付着量(mg/cm^(2)、但しMは0.4以下)、
h:印刷媒体上における定着後の画像のトナー層厚み(μm)、
ρ:トナーの真比重(g/cm^(3))、
A:嵩密度測定器JIS-K5101で規定された測定方法で測定されたトナーの嵩密度(g/cm^(3)))を満たし、
トナー組成物中に含まれる顔料の濃度が5?20重量%であり、
1/2フロー軟化点温度(Tm)が95℃?130℃であり、
トナー粒子は、体積平均粒径が3?10μmで粒度分布をしており、体積平均粒径D50に対し、0.5×D50以下の粒子が20pop%以下、2×D50以上の粒子が2vol%以下であるように調整されたトナー粒子を用いることを特徴とする電子写真による画像形成方法。
【請求項2】
トナー中顔料の溶融混練分散処理において、加熱部を有する混練ロールと冷却部を有する混練ロールの2本のロールが微小な間隔を置いて平行に配置され、異方向回転により混練物にロール間通過時に剪断力を加えることができ、さらに該ロールには材料搬送させるための溝構造を有する混練機で製造することを特徴とする請求項1に記載の電子写真による画像形成方法。」

この補正により、請求項1には、下線部の「嵩密度測定器JIS-K5101で規定された測定方法で測定された」が追加され、「A:トナーの嵩密度(g/cm^(3))」の測定方法が限定された。


(イ)意見書の内容
また、請求人は、意見書にて、上記「第2」で示した拒絶理由に対して、次のように反論している。

『(3)第1の拒絶理由に対して
1)発明の明確性について
(a)審判官殿は、「10M/ρ≦h≦10M/A」は、定着後も定着前のトナー層厚みの最大値を含む規定となっており、技術常識に反する数値範囲を明らかに含んでいる、と指摘されております。
嵩密度は嵩密度測定器JIS-K5101で規定された測定方法で、荷電していないトナーをかつ通常電子写真における一回の現像で使用される量に比して多くの量(10g以上)で測定をしているのに対し、実際の現像時のトナー部分のトナー密度は荷電による粒子同士の反発があること、トナー自体の自重の影響が少ないこと、凹凸を有する紙上との部分的かつ多くの接点を有することなどから、定着前の作成画像のトナー層の厚みは測定されるかさ密度より明らかに大きくなるものであります。また、定着後の画像も紙の繊維中への浸透によりトナー層の厚みが規定範囲より小さくなることがあり、この場合は十分な濃度が確保できない可能性があります。したがって「10M/ρ≦h≦10M/A」は、定着後も定着前もそれぞれトナー層厚みの最小値、最大値を含むものではなく、技術常識に反する数値範囲ではないことは明らかであります。
(b)(略)
(c)審判官殿は、「10M/ρ≦h≦10M/A」の技術的意味が不明確である、と指摘されております。
上記(a)に示した理由から、一定の厚みの範囲であることが少ないトナー量で高濃度かつ鮮明な画像を得る要件であり、「10M/ρ≦h≦10M/A」の技術的意味は明らかであります。
(d)(略)
(e)審判官殿は、上記(a)乃至(d)の理由から、請求項1及び2に係る発明は不明確である、と指摘されております。
しかしながら、上記(a)乃至(d)で説明したように、請求項1及び2に係る発明は明確であり、本願の明細書の記載は、発明の明確性について不備は無いと思料いたします。

2)サポート要件について
(a)審判官殿は、発明の詳細な説明に示される実験データは、M:0.3(mg/cm^(3))、ρ:1.1(g/cm^(3))、A:0.4(g/cm^(3))の場合のみで、請求項1における他の値についての効果は確認されていない、と指摘されております。
本発明は、定着後の画像厚みに技術的意味があります。また、トナーのMは通常使用される主樹脂の真比重が支配的であり、通常の電子写真で使用されるトナーのMは1.1?1.2であり、任意に大きく変化させることはできません。
(b)(略)
(c)(略)
(d)(略)
(e)審判官殿は、上記(a)乃至(d)の理由から、請求項1及び2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない、と指摘されております。
しかしながら、上記(a)乃至(d)で説明したように、請求項1及び2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであり、本願の明細書の記載は、サポート要件について不備は無いと思料いたします。

3)実施可能要件について
(略)』


第4 当審の判断
上記通知した拒絶理由のうち、特にサポート要件について検討する。

(a)まず、印刷媒体上における定着後の画像のトナー層厚み(h)(以下、単に「定着後のトナー層厚みh」という。)に関して、請求項1は、式「10M/ρ≦h≦10M/A。ただし、Mは0.4以下。」を規定しており、発明の詳細な説明では、上記式には次のような意義があることが説明されている。
「【0010】本発明においては印刷媒体上の単色ソリッド部における定着後のトナー画像の厚み(h)が10M/ρ以上かつ10M/A以下の時、画像トナー層における光の散乱や印刷媒体の凹凸などに起因する影響がなく、透明性に優れ高濃度な画像が得られる。10M/Aを超えると画像形成トナー粒子間の溶融状態の不足による定着強度の不足や粒子の界面による光の拡散により所望の光学濃度が得られない等の問題がある。また10M/ρに満たない厚みの場合、印刷媒体の凹凸の影響や印刷媒体自体の反射の影響で所望の濃度が得られない等の問題がある。」

(b)請求項1の式「10M/ρ≦h≦10M/A。ただし、Mは0.4以下。」は、請求人も認めるように、実験を行って効果が確認されたデータに基づき、数式化したものであるところ、
発明の詳細な説明に示される実験データ(すなわち、実施例及び比較例のデータ)は、次のケースに限られるものである。
印刷媒体上のトナー付着量M:0.3(mg/cm^(2))
トナーの真比重ρ:1.1(g/cm^(3))
トナーの嵩密度A:0.4(g/cm^(3))
これら数字を「10M/ρ≦h≦10M/A」に代入すると、「2.7μm≦h≦7.5μm」となる。
これに対して、実測した「定着後のトナー層厚みh」は、実施例1?3では上記範囲に含まれ(上記と同じ、2.7?7.5μmである)、比較例1、2では上記範囲から外れている(比較例1:2.2μm、比較例2:9.3μmである)。
そして、この実験(実施例、比較例)では、「シャープ社製AR-C260を用いで(当審注:「用いで」は「用いて」の誤記。)シャープ社製フルカラー専用紙(品番:PP106A4C)上にトナー付着量が0.3mg/cm^(2)になるように調整して20mm×50mmのソリッド画像を印字させ、加熱定着ローラー径が40mm、加圧ローラーとのニップ幅が8mmでプロセススピードが117mm/secのオイルレス外部定着機を用い、加熱ローラー表面温度150℃で定着した評価画像を作成し」(【0030】)、得られた画像サンプルについて、定着強度の試験、及び光学濃度の測定を行ったものである。
上記実験では、定着後のトナー層厚みhが「2.7μm≦h≦7.5μm」の範囲であれば、定着強度、光学濃度ともに良好であることが確認されている。

(c)次に、上記実験データから、請求項1の式「10M/ρ≦h≦10M/A。ただし、Mは0.4以下。」の範囲に含まれるものであれば、実施例と同様な効果(すなわち、定着強度、光学濃度ともに良好であること)が得られるかどうかについて検討する。
検討のために、以下、上記実験の条件とは異なるが、請求項1の上記式の関係を満たす「定着後のトナー層厚みh」の例を2つ挙げる。

(例1)印刷媒体上のトナー付着量Mが少ない場合
印刷媒体上のトナー付着量M:0.2(mg/cm^(2))
トナーの真比重ρ:1.1(g/cm^(3))
トナーの嵩密度A:0.4(g/cm^(3))
これらを上記式に代入すると、「約1.8μm≦h≦5.0μm」となる。

(例2)トナーの嵩密度Aが小さい場合
印刷媒体上のトナー付着量M:0.3(mg/cm^(2))
トナーの真比重ρ:1.1(g/cm^(3))
トナーの嵩密度A:0.3(g/cm^(3))
これらを上記式に代入すると、「約2.7μm≦h≦10.0μm」となる。

(例1)については、印刷媒体上のトナー付着量Mが、上記実験の0.3(mg/cm^(2))よりも小さく、定着後のトナー層厚みhは、下限が約1.8μmとなり、上記実験での、実施例の下限2.7μmを下回り、光学濃度に劣る比較例1の2.2μmをも下回る数値である。
(例1)の下限(約1.8μm)は、比較例1との関係からすると、良好な光学濃度が得られない可能性を否定することができない。そして、(例1)のような、定着後のトナー層厚みhが薄い場合には、本願明細書【0010】(上記(a))でいう「印刷媒体の凹凸の影響や印刷媒体自体の反射の影響で所望の濃度が得られない等の問題」を生じるおそれが十分にあるにもかかわらず、請求人は、(例1)のような場合に問題が生じないことを何ら確認せずに、特許を請求している。

また、(例2)については、トナーの嵩密度Aが、上記実験の0.4(g/cm^(3))よりも小さく、定着後のトナー層厚みhは、上限が10.0μmとなり、上記実験での、実施例の上限7.5μmを上回り、定着強度に劣る比較例2の9.3μmをも上回る数値である。
(例2)の上限10.0μmは、比較例2との関係からすると、良好な定着強度が得られない可能性を否定することができない。そして、(例2)のような、定着後のトナー層厚みhが厚い場合には、本願明細書【0010】(上記(a))でいう「画像形成トナー粒子間の溶融状態の不足による定着強度の不足や粒子の界面による光の拡散により所望の光学濃度が得られない等の問題」を生じるおそれが十分にあるにもかかわらず、請求人は、(例2)のような場合に問題が生じないことを何ら確認せずに、特許を請求している。

そして、(例1)(例2)は通常あり得る例であると思われるが、仮にそれらが当業者の常識から少し外れた例であったとしても、(例1)(例2)以外にも上記実験(実施例、比較例)の条件とは異なる例はいくらでも想定できるのであり(M:0.4,A:0.4の例、M:0.25,ρ:1.2の例など)、そのような想定例においても、効果が確認されていないことには変わりなく、(例1)(例2)の場合と大同小異である。

(d)請求人の主張について
請求人は意見書で「本発明は、定着後の画像厚みに技術的意味があります。また、トナーのMは通常使用される主樹脂の真比重が支配的であり、通常の電子写真で使用されるトナーのMは1.1?1.2であり、任意に大きく変化させることはできません。」と主張するが、
「トナーのM」とは、「印刷媒体上のトナー付着量M」を意味するのではなく、「トナーの真比重ρ」の誤記であると思われるところ、
一般に「トナーの真比重ρ」が「1.1?1.2」程度の範囲に収まるものとしても、請求項1では、「印刷媒体上のトナー付着量M」は「Mは0.4以下」という上限を定めただけであり、「トナーの嵩密度A」は数値範囲の限定がなく、また、技術常識を加味しても、「M」及び「A」は、「ρ」に比べて、かなり広い数値範囲を取り得るものであり、しかも、その広い数値範囲にわたっての効果は何ら確認されていないことは明らかである。

(e)そうすると、出願時の技術常識に照らしても、請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容(効果が確認された事項に限られることは当然である。)を拡張ないしは一般化することはできないものである。

(まとめ)
よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。請求項1を引用する請求項2に係る発明も同様である。

また、式「10M/ρ≦h≦10M/A」の技術的意味は、不明確であるから、請求項1に係る発明は、明確でない。請求項1を引用する請求項2に係る発明についても、同様である。


第5 むすび
以上のとおりであるから、本願は、依然として、特許法第36条第6項1号及び同項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-09 
結審通知日 2010-02-16 
審決日 2010-03-01 
出願番号 特願2002-308319(P2002-308319)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿久津 弘淺野 美奈  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 伏見 隆夫
大森 伸一
発明の名称 電子写真による画像形成方法、電子写真用トナーおよびトナー製造方法  
代理人 渡辺 敏章  
代理人 平木 祐輔  
代理人 関谷 三男  
代理人 今村 健一  

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