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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01G
管理番号 1215160
審判番号 不服2008-21324  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-20 
確定日 2010-04-12 
事件の表示 特願2001- 20841「バルク型レンズを用いた植物栽培装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月13日出願公開、特開2002-223636〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年1月29日の出願であって、平成20年7月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。
その後、平成21年8月10日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年10月19日に回答書が提出された。

第2 平成20年8月20日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成20年8月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成20年8月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、明細書の特許請求の範囲の請求項1を、以下のように補正しようとする補正事項を含むものである。
「バルク型レンズと、LEDチップを覆う樹脂モールドの側部が円筒形をなす発光ダイオードとからなり、
前記バルク型レンズは、頂部と、底部と、外周部と、前記底部から前記頂部に向かって形成された天井部と内周部とからなる凹部とを有し、前記天井部は第1のレンズ面として、前記頂部は第2のレンズ面として、前記内周部は光入射面として、前記底部は反射面として機能し、
前記発光ダイオードは前記バルク型レンズの凹部に収納され、前記バルク型レンズの底部側で前記発光ダイオードの樹脂モールドの側部が前記バルク型レンズの内周部にスペーサーを介して同心的に固定されている、植物栽培装置。」

上記補正事項は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定する「光源」について「LEDチップを覆う樹脂モールドの側部が円筒形をなす発光ダイオード」に限定し、「光源をバルク型レンズの凹部にスペーサーを介して収納」することに関して「バルク型レンズの底部側で前記発光ダイオードの樹脂モールドの側部が前記バルク型レンズの内周部にスペーサーを介して同心的に固定されている」ものに限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

2.引用刊行物
(1)本願出願前に頒布された刊行物である、特開平8-89084号公報(以下、「刊行物1」という。)には、下記の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】一台のLED本体に、青色光、緑色光及び赤色光のLEDを集合し、また各LEDの灯数を変えて青色光、緑色光及び赤色光の比率を植物の種類により調整し得るように設定したことを特徴とする植物育成装置。」
(1b)「【0002】
【従来の技術】従来、植物育成分野で人工光源を利用し、植物を育成することが一部で行なわれている。ところで、植物工場における光源は、一般には高圧放電ランプあるいは高圧ナトリウムランプを配置して構成してある。また近年は、発光ダイオード(以下LEDという)を集合して、植物育成光源として利用されている。」

(2)本願出願前に頒布された刊行物である、特開平9-275779号公報(以下、「刊行物2」という。)には、下記の事項が記載されている。
(2a)「【0002】
【従来の技術】従来、屋内での植物育成用人口光源として、蛍光ランプあるいは高圧放電灯等の高輝度ランプが用いられているが、これらの光源は発光のエネルギー効率が悪く、また、ランプ点灯時における発熱防止のため空調設備の併用が必要であり、更に植物の育成に無関係な波長域の放射により無駄なエネルギーの消費が行われる等の欠点が指摘されていた。
【0003】これらの光源の問題点を解決するものとしてLED(発光ダイオード)が有用的であると考えられていたが、植物の育成に必要である青色光を放射するLEDがなかったため、植物育成用光源としての実用化はほとんど進まなかった。
【0004】1993年に高輝度の青色光を放射するLEDの開発に成功し,LEDによる植物育成の試みが始まった。・・・」

(3)本願出願前に頒布された刊行物である、実願平1-142391号(実開平3-81653号)のマイクロフイルム(以下、「刊行物3」という。)には、下記の事項が記載されている。
(3a)「リードフレームの先端に搭載された発光ダイオードチツプと、該発光ダイオードチツプを包容するようにリードフレーム先端部に保持されたモールド樹脂とを具備しており、該モールド樹脂が発光ダイオードチツプを包容する層と、その層の外側に被冠された層の複数層よりなることを特徴とする発光ダイオードランプ。」(実用新案登録請求の範囲)、
(3b)「<作用>
本考案にかかる発光ダイオードランプは、モールド樹脂が発光ダイオードチップを包容する層と、その層の外側に被冠された層との複数層よりなるために次のような機能を奏する。
・・・
各層のモールド樹脂間に空隙を設けることにより、レンズの組み合わせ効果による高度な指向角制御が可能になる。」(明細書4頁9行?5頁10行)、
(3c)「 第3図は本考案にかかる発光ダイオードランプの別の例を示す断面図、第4図(a)(b)はその樹脂モールド工程を説明するための断面図である。
モールド樹脂50は二層で、砲弾形をした一層目のモールド樹脂51と、その外側に被冠された同じく砲弾形の二層目のモールド樹脂52とを有し、両層間に空間54を形成した構造になっている。一層目のモールド樹脂51はモールドケース65を使用して成形される。二層目のモールド樹脂52は予め成形したものを保持ケース66内に保持し、これに一層目のモールド樹脂51を嵌め込んだ後、底部を封止樹脂53で封止することによりモールド樹脂51に被冠される。二層目のモールド樹脂52の頭部は凸レンズ状とされている。
樹脂モールド50の層間に空間54を形成した発光ダイオードランプでは、モールド樹脂50を二枚の組み合わせレンズとすることができる。焦点距離f1の凸レンズと焦点距離f2の凸レンズとの組み合わせの場合には、その組み合わせレンズの合成焦点距離fは1/f=1/fl+1/f2であり、薄いレンズで焦点距離を大きく、収差を小さくすることができる。」(同8頁3行?9頁行4行)。
(3d)第3図には、次の図面が記載され、一層目のモールド樹脂51は砲弾形をしており、その側面は円筒形であること、砲弾形の二層目のモールド樹脂は、頂部と、底部と、外周部と、前記底部から前記頂部に向かって形成された天井部と内周部とからなる凹部とを有し、前記天井部は第1のレンズ面として、前記頂部は第2のレンズ面となっていることが記載されている。



(4)本願出願前に頒布された刊行物である、実願昭60-184539号(実開昭62-92504号)のマイクロフイルム(以下、「刊行物4」という。)には、下記の事項が記載されている。
(4a)「前面が開口された外囲器と、この外囲器の前面開口部に設けられた前面レンズと、上記外囲器内に設けられた複数の発光ダイオードとを具備した発光表示装置において、上記前面レンズには、その内面に上記発光ダイオードが収納される収納孔を形成し、この収納孔を囲繞して凹部を形成し、かつこの前面レンズの内面には上記収納孔を除き少なくとも凹部の表面に、この収納孔に収容された上記発光ダイオードから放射される光を前方に向けて反射させる反射膜を設けたことを特徴とする発光表示装置。」(実用新案登録請求の範囲)、
(4b)「本考案は、反射体を不要とし、しかも発光ダイオードから放射される光を効果的に前方に照射させ、かつ前面レンズが全体に亙り均等な明るさとなって視認性も向上する発光表示装置を提供しようとするものである。」(明細書4頁1?5行)、
(4c)「(作用)
上記の構成によると、発光ダイオードから直接前方に向かうビーム角の狭い指向性の強い光は直接前面レンズを透過して前方に照射させられ、また発光ダイオードから前方以外に放射される光は凹部の表面に形成した反射膜により前方に反射されよって、発光ダイオードから出る光を有効に前方照射に利用できるので明るさが増し、しかも凹部1個当りに占める前面に向かう投影面積が小さくてすむから、発光ダイオードの配置密度を高くすることができ、前面レンズ全体として均等で明るい照射が可能になる。」(同4頁14行?5頁5行)、
(4d)「発光ダイオード4…は、発光ダイオードチップを透光性樹脂で覆った発光ダイオードランプよりなり、プリント配線基板3の前面に、全体に亙り均等な分布をなすように配置されている。
上記前面レンズ2はアクリル系などの透光性合成樹脂で形成されており、各発光ダイオード4…と対向する部分の前面に例えば円形のレンズカット部5…を形成してある。また、この前面レンズ2には、上記各レンズカット部5…と対向して内面側(裏側)にはそれぞれ例えば円形の突部6…が一体に形成されている。これら突部6…の中央部には、上記発光ダイオード4…をプリント配線基板3側から挿入可能な収納孔7…が形成されている。
突部6…は裏側に向かって突出するのでその周囲には立ち上がり面をなしており、この立ち上がり面が本考案の凹部に相当し、該立ち上がり面は前方側が拡開されたテーパ形をなしている。
そして前面レンズ2の内面には、上記収納孔7…を除く全面に、アルミなどの金属蒸着よりなる反射膜8が形成されている。反射膜8は、前面レンズ2の肉厚内部を通ってくる光を前方に向けて反射させるものである。」(同5頁18行?6頁20行)、
(4e)「このような構成による実施例の作用について説明する。
収納孔7…に収容された発光ダイオード4…に通電してこれを発光させると,発光ダイオード4はその指向性のため主として軸線方向に光を出す。このような発光ダイオード4…から軸線方向に出る光は直接前面レンズ2の内部を通ってレンズカット部5に達し,このレンズカット部5の制光作用によって略平行光線となって前方に照射される。
また,発光ダイオード4…から前面以外の方向に照射された光は上記突部6の肉厚内を通り,反射膜8で反射され,上記突部6の周面がテーパ形をなしていることから前方に照射される。この光も前面レンズ2の制光作用によって略平行光線となって前方に透過される。
したがって,発光ダイオード4…から出る光は全て前方照射に使用される。・・・」(同7頁5行?8頁1行)。
(4f)第4図には次の図面が記載され、発光ダイオードとレンズの凹部との間に間隙が形成されることが示されている。


3.対比・判断
上記刊行物1、2の上記記載によれば、「発光ダイオードを有する、植物栽培装置。」は、本願出願前周知であったと認められる(以下、「周知発明」という。)。
補正発明と周知発明とを対比すると、補正発明は、植物栽培装置が、請求項1に記載された、バルク型レンズと発光ダイオードからなる特定の構造のものである点で、周知発明と相違する。

上記相違点について検討する。
上記の刊行物3の記載によれば、刊行物3には次の発明が記載されていると認められる(( )内は刊行物3の用語である。)。
「バルク型レンズ(砲弾形をした二層目のモールド樹脂52)と、LEDチップ(発光ダイオードチップ)を覆う樹脂モールド(砲弾形をした一層目のモールド樹脂51)の側部が円筒形をなす発光ダイオードとからなり、
前記バルク型レンズは、頂部と、底部と、外周部と、前記底部から前記頂部に向かって形成された天井部と内周部とからなる凹部とを有し、前記天井部は第1のレンズ面として、前記頂部は第2のレンズ面として、前記内周部は光入射面として機能し、
前記発光ダイオードは前記バルク型レンズの凹部に収納され、前記バルク型レンズの底部を封止樹脂53で封止した発光ダイオードランプ。」(以下、「刊行物3記載の発明」という。)
そして、刊行物3には、これにより、発光ダイオードから照射される光の指向性を調整することが記載されている。
周知発明において、発光ダイオードから照射される光を植物に向けて照射することが望ましいことは明らかであるから、刊行物3記載の発明に示されるバルク型レンズを用いる発光ダイオードランプを、周知発明に採用しようとすることは当業者が容易に想到しうることである。
ところで、刊行物3記載の発明の発光ダイオードランプは、バルク型レンズの底部が反射面であるか否か不明な点、及び、LEDチップを覆う樹脂モールドがバルク型レンズの底部に接している点で補正発明の装置と相違する。
しかし、刊行物4には、バルク型レンズと同様に、発光ダイオードを収納する凹部を有し、光の指向性を調整するレンズにおいて、レンズの底部に反射膜を設けて反射面とし、発光ダイオードから前方以外の方向に放射する光を反射させること、発光ダイオードをレンズの凹部に収納するに際し、LEDチップを覆う樹脂モールドと凹部との間に間隙を形成することが記載されており、刊行物3記載の発明において、バルク型レンズの底部を反射面とすること、及び、発光ダイオードの樹脂モールドの側部を前記バルク型レンズの内周部に間隔を設けて固定することは刊行物4記載の発明に基いて当業者が適宜になしうることであり、その際、発光ダイオードをバルク型レンズの凹部に同心的に固定することは当然のことである。
そして、発光ダイオードの樹脂モールドとレンズの内周部に間隔を設ける手段として底部にスペーサーを設けることは周知の技術であり(例えば、原査定の拒絶の理由で引用された特開昭61-237179号公報参照)、スペーサーを介して固定することも適宜なしうることである。
そうすると、周知発明において、補正発明で特定される構造の発光ダイオード装置を用いることは、刊行物3及び4記載の発明に基いて当業者が容易になしうることである。

そして、明細書の段落【0048】に記載の「植物の照射強度を大幅に上げることができる」との作用効果はバルク型レンズを用いて光の指向性を調整することによものであり、また「照射熱もほとんどないので、植物の近くに光源を設置しても植物を枯らすことがない。」との効果は、光源として発光ダイオードを使用したことによる効果であって、補正発明全体の効果は、
周知発明並びに刊行物3及び4記載の発明から当業者が予測し得る程度のものである。
なお、本願明細書の段落【0048】には、「光源の発光する実質的に全ての光を収束することができ」と記載されているが、このような効果は、バルク型レンズとして特定の屈折率の材料を使用し、天井部、頂部のレンズ面を特定の形状(式(7)を満たすもの)とした場合の効果であって、補正発明に特有の作用効果ということはできない。

したがって、補正発明は、刊行物1、2に示される周知発明並びに刊行物3及び4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、平成20年8月20日付けの手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成20年8月20日付けの手続補正は上記のとおり補正の却下の決定がされたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成19年11月19日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりである。
「バルク型レンズと光源とからなり、
前記バルク型レンズは、頂部と、底部と、外周部と、前記底部から前記頂部に向かって形成された天井部と内周部とからなる凹部とを有し、
前記天井部は第1のレンズ面として、前記頂部は第2のレンズ面として、前記内周部が光入射面として、前記底部は反射面として機能し、
前記光源を、前記底部においてスペーサーを介して前記内周部に固定して前記凹部に収納した、植物栽培装置。」

1.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である刊行物1ないし4の記載事項は、上記「第2 2.」に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願の請求項1に係る発明は、前記「第2」で検討した本願の補正発明の「LEDチップを覆う樹脂モールドの側部が円筒形をなす発光ダイオード」を上位概念である「光源」とし、光源の収納に関して「バルク型レンズの底部側で前記発光ダイオードの樹脂モールドの側部が前記バルク型レンズの内周部にスペーサーを介して同心的に固定」するとの限定を省略したものであって、補正発明の特定事項を全て含むものである。
そうすると、補正発明が、前記「第2 3.」に記載したとおり、刊行物1、2に示される周知発明並びに刊行物3及び4記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る発明も、同様の理由により、刊行物1、2に示される周知発明並びに刊行物3及び4記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は回答書において、補正案を提示しているが、刊行物3、4記載の発明のレンズも光の波長に対して透明な材料からなり、また発光ダイオ-ドの光束を収束するものと認められ、補正案によっても、本願は特許を受けることができない。

3.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1、2に示される周知発明並びに刊行物3及び4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-02 
結審通知日 2010-02-09 
審決日 2010-02-23 
出願番号 特願2001-20841(P2001-20841)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01G)
P 1 8・ 575- Z (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 昌哉  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 宮崎 恭
山本 忠博
発明の名称 バルク型レンズを用いた植物栽培装置  
代理人 平山 一幸  

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