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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1215165
審判番号 不服2008-22473  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-02 
確定日 2010-04-14 
事件の表示 特願2000-325199「欠陥検査光学系,欠陥検査装置および欠陥検査方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月19日出願公開,特開2001-194317〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成12年10月25日(優先権主張 平成11年10月27日)の出願であって, 平成20年4月15日付けで拒絶理由通知書が出され,同年6月20日に手続補正がなされ,同年7月28日に拒絶査定がなされ,同年9月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1乃至12に係る発明は,平成20年6月20日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1乃至12に記載されたとおりのものと認められる。そして,その請求項1に係る発明は,次のとおりである。(以下,「本願発明」という。)
「【請求項1】
検査されるディスクの表面を光ビームにより走査し,前記光ビームによる前記表面からの散乱光を受光器により受光してこの受光器が欠陥検出のための信号を発生する欠陥検査光学系において,
リング状の光束を発生する光源と,前記リング状の光束を受けるリング状の受光面を有し受けたリング状の光束を前記光ビームとして前記表面の検査点に集束させる内側が中空の光学部材と,その先端側がこの光学部材の中空部分の内側に配置され前記散乱光を受光する対物レンズと,この対物レンズからの光を受けて前記受光器に走査位置の映像を結像させる結像レンズとを備え,
前記光学部材による前記表面に対する前記リング状の光束の照射角は,前記ディスクの表面からみた仰角で70°以下であってかつ前記ディスク面に上下変動があっても前記リング状の光束の集束点が前記ディスクの裏面側に至らない角度に設定されている欠陥検査光学系。」

第3 引用刊行物について
原査定の拒絶理由に引用され,本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開昭61-191946号公報(以下,「刊行物1」という。)には,下記の記載がある。(なお,下線は,当審にて付記したものである。)
(1-1)「(1)被検査物の表面を照明する光源と,前記光源からの出射光を前記被検査物に対し斜めに照射し照明光とする手段と,前記被検査物の表面に存在する欠陥による前記照明光の散乱光を受けるレンズと,前記被検査物上に焦点位置が来る様に前記レンズのフォーカス制御を行なう手段と前記散乱光を検出するための一次元配列多素子光検出器と,前記散乱光を前記一次元配列多素子検出器上に結像する前記レンズを含む光学的手段よりなる光学系と,前記被検査物を走査する手段と,前記走査の幅を前記一次元配列多素子光検出器の素子数に対応させる手段を有することを特徴とする光学的欠陥検査装置。」(特許請求の範囲第1項)
(1-2)「本発明は,光学的ディスクや機械的ディスク等の被検査物表面の欠陥,キズ,異物の付着を光学的に検査する光学的欠陥検査装置に関するものである」(第2頁左上欄第3?6行)
(1-3)「このことから,本実施例の様に,欠陥による散乱光を対物レンズの開口全部で受ける必要はなく,レンズ開口を制限し,その部分で欠陥検出を行ない,レンズの他の部分を他の目的で使用することが可能となる。
第5図Aは対物レンズを利用して暗視野照明光を得る方法を示している。第1の実施例においては暗視野照明光を得るため,レンズ側面にリング状の集光器21を取付け,これに照明用の光源から出射した光を入射するという方法を採用している。」(第4頁右下欄第1?11行)
(1-4) 第5図(A)には,光源からの光がレンズ17を通過した後,2つのミラー19a,19bにより反射され,かかる反射光が対物レンズ20の側面を集光器として集光され,被検査物11に光が照射されている状態が図示されている。
(1-5) 第5図(B)には,2つのミラー19a,19bにより反射された照明光が円形のスポットとなって対物レンズ20の側面を透過し,対物レンズ20の中央に散乱光が透過している状態が図示されている。
(1-6) 第6図には,2つのミラー19a,19bにより反射された照明光が対物レンズ20の側面を透過し,被検査物11に光が照射され,被検査物11からの散乱光が,対物レンズ20の中央を透過してレンズ22を透過した後に一次元配列多素子光検出器23で検出されるものが図示されている。
(1-7)「第6図は照明用光源とフォーカス制御用光源を同一のものを使用し,単一の光源で実現したものである。第6図において,光源16を出た光はハーフミラー31により2方向に進路を分けられる。直進した光はレンズ16,17,ミラー19a,19bより暗視野照明光となる。」(第5頁左上欄第8?13行)
(1-8)「被検査物11の表面に第2図の様に欠陥11aが在った場合,照明光は欠陥により散乱されて,その散乱光の一部が対物レンズ20に戻る。対物レンズ20とレンズ22は被検査物11の表面を一次元配列光検出器23の上に結像させる結像系を構成しており,欠陥による散乱光からその欠陥の大きさに対応した光スポットが一次元配列光検出器23の上に形成される。ここで対物レンズ20の焦点距離f1==4.2mm,レンズ22の焦点距離f2=252mmなるレンズを使用すれば被検査物11上の1μmの欠陥が一次元配列光検出器23上では60μmの輝点として観測される。」(第3頁左下欄第19行?同頁右下欄第11行)
(1-9)「第1図は本発明の第1の実施例である。第1図において,照明用の光源15(例えばHe-Neレーザー)から出た光はレンズ16,17によって必要な径の平行光になった後,ドーナツ状のミラー18により暗視野照明に必要な部分の光だけを対物レンズ20の方向に反射する。この光が対物レンズ20の側面に取付けられたリング状の集光器21に入射し,その集光器21の出射光が被検査物11の表面の検査される部分を被検査物11に対して斜めに照射する暗視野照明光となる。」(第3頁左下欄第10?19行)

(刊行物1記載の発明)
以上の事項から,刊行物1には,次の発明(以下,「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
「光学的ディスク等の被検査物11の表面を照明光により走査する手段と,被検査物の表面からの散乱光を検出するための一次元配列多素子光検出器23により,被検査物表面の欠陥,キズ,異物の付着を光学的に検査する光学的欠陥検査装置において,
光源からの光を,2つのミラー19a,19bにより反射させ,対物レンズ20の側面を集光器として機能させ,該反射光は円形のスポットとなって対物レンズ20の側面を透過して,被検査物11の表面に集光し,対物レンズ20の中央部を前記散乱光を受光する前記対物レンズとして機能させる対物レンズ20と,この散乱光を受光する対物レンズ20からの光を受けて一次元配列多素子光検出器23に走査位置の映像を結像させるレンズ22を設けた暗視野照明の光学的欠陥検査装置」

本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開昭58-16214号公報(以下,「刊行物2」という。)には,以下の事項が記載されている。
(2-1)「本発明は,・・・暗視野顕微鏡等に用いられる環状照明装置に関するものである。」(第1頁左下欄第16?18行)
(2-2)第3図には,円錐プリズム6を用いた環状照明装置が記載されている。
(2-3)「更に,環状光源像8の大きさ(径)の変換について説明する。即ち,第3図に示した如く,円錐プリズム6をコレクターレンズ2の方へ近づけると共に,結像レンズ7の代わりに焦点距離の長い結像レンズ9を配置したとすれば,円錐プリズム6と結像レンズ9との間隔が長くなるので,円錐プリズム6により作られるコーン上の光束の開き角が一定であれば環状光源像8の大きさ(径)が大となる。」(第2頁左下欄第2?13行)

本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平7-281098号公報(以下,「刊行物3」という。)には,以下の事項が記載されている。
(3-1)「光源で発光される光を有効利用できる暗視野照明装置を備えた顕微鏡を提供する。・・・リング状光束を形成するリング状光束形成手段・・・。リング状光束形成手段を円錐部を有するコーンレンズ7を含んで構成し・・・・。」(【要約】)

本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平2-250016号公報(以下,「刊行物4」という。)には,以下の事項が記載されている。
(4-1)「顕微鏡の対物レンズの光軸に対して円環状に照射する落射暗視野照明装置において,・・・円錐状レンズ群とを備えたことを特徴とする顕微鏡の落射暗視野照明装置。」(特許請求の範囲)

本願優先権主張日前に頒布された刊行物である実願昭62-70309号(実開昭63-178807号)のの願書に最初に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルムフィルム(以下,「刊行物5」という。)には,以下の事項が記載されている。
(5-1)「第1図において,顕微鏡本体11には,照明用筒12が水平に形成されているとともに,この照明光路筒12の軸線に対して直角に対物レンズ鏡筒13が取り付けられている。対物レンズ鏡筒13の内部には,観察光軸上に対物レンズ14が収納されるとともに,その対物レンズ14の外周にリング状の暗視野照明レンズ15が収納されている。」(明細書第5頁第12?19行)
(5-2)第1図

本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平11-231225号公報(以下,「刊行物6」という。)には,以下の事項が記載されている。
(6-1)「【0018】中空反射ミラーM2の反射部32で反射された光は,図2に示すように,暗視野照明光束用の対物レンズ22を介して標本21をクリティカル照明する。なお,暗視野照明光束用の対物レンズ22は,全体的に円環状のレンズであり,中央に形成された開口部には明視野照明光束用の対物レンズ20の一部が配置されている。したがって,標本21からの反射光は結像レンズ系である対物レンズ20に入射することなく,標本21からの散乱光だけが対物レンズ20および中空反射ミラーM2の開口部31を介して標本暗視野像を形成し,形成された標本暗視野像はたとえば接眼レンズ系(不図示)を介して観察される。」
(6-2)図2

本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平9-297266号公報(以下,「刊行物7」という。)には,以下の事項が記載されている。
(7-1)「【0003】図2は,従来の暗視野顕微鏡の光学系の構成例を示す図であり,光源から出射された照明光はコリメータレンズによって平行光とされて中心部がくり抜かれた穴あき鏡によって反射され,同じく中心部がくり抜かれたリング型コンデンサレンズを介して試料に照射されるようになっている。また,リング型コンデンサレンズの中心部(くりぬき部)には対物レンズが配置され,照明光が試料に反射して得られる反射光を該対物レンズによって捉えて観察する。ここで,照明光は対物レンズの外側から試料に照射されるため,その正反射光は対物レンズに入射されることはなく,当該対物レズに入射された反射光は試料の表面において散乱された散乱光となる。」
(7-2)図2

本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平10-318935号公報(以下,「刊行物8」という。)には,以下の事項が記載されている。
(8-1)「【0030】・・・また,対物レンズ12の周囲には,リング状の暗視野照明レンズ25が設けられ,リング状完全反射ミラー部24で対物レンズ12の光軸方向に反射した光を,被測定物2の表面に焦点が存在するように斜め方向から照射するように構成されている。・・・」
(8-2)図1

本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平6-180427号公報(以下,「刊行物9」という。)には,以下の事項が記載されている。(9-1)「【0004】「例えばICパターンのように,比較的凹凸のパターンが明確である物体を観察する場合には,照明光の光軸に対する角度が小である方が見え味が良く,又鏡面上の微小な傷を観察する場合には,照明光の光軸に対する角度を大にした方が,より小さな傷をも確認することが出来る。特に鏡面上の微小な傷を確認する方法は,ICウエハーの表面の検査等に応用されているため重要である。例えば特開平2-183147号公報には,上記の角度の大きい暗視野照明を行なうことによって,微小な異物の有無の確認についての開示がなされている。」
(9-2)「【0012】【実施例】図1(A),(B)は,本発明の実施例1の構成を示す図である。この図において,1は対物レンズ系,2はリング状外方偏向部材,3はリング状内方偏向部材,4,5はリング状集光部材,6は物体面である。この実施例において,入射するリング状光束7は,リング状外方偏向部材2とリング状内方偏向部材3を通りリング状集光部材4又は5によって物体面6に集光する。ここでリング状内方偏向部材3とリング状集光部材5とが一体に光軸と平行な方向に移動するようになっている。つまり例えば図1の(A)に示す状態と(B)に示す状態とに変化する。ここで図1(A)はリング状集光部材4と物体面6との距離が長く照明光の光軸に対する角θを小さくした状態,図1(B)はリング状外方偏向部材2とリング状内方偏向部材3との間隔が広がり,これによってリング状光束が広げられ,他のリング状集光部材5が物体面6に近づきθが大になっている。」
(9-3)図1(A)(B)

本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である国際公開第99/14575号(以下,「刊行物10」という。)には,以下の事項が記載されている。(なお,翻訳文は,国際公開に係る国際出願の指定国である日本における特許出願の公表特許公報である「特表2001-516874号公報」の記載に依る。)
(10-1)「Fig. 1A is a schematic view of a surface 20 of a sample to be inspected and an illumination beam 22 directed in a direction normal to surface 20 to illuminate the surface and a particle 24 on the surface.
Thus, the illumination beam 22 illuminates an area or spot 26 of surface 20 and a detection system (not shown) detects light scattered by particle 24 and by portion or spot 26 of the surface 20. The ratio of the photon flux received by the detector from particle 24 to that from spot 26 indicates the sensitivity of the system to particle detection.
If an illumination beam 28 directed at an oblique angle to surface 20 is used to illuminate spot 26' and particle 24 instead, as shown in Fig. lB, from a comparison between Figs. 1A and lB, it will be evident that the ratio of the photon flux from the particle 24 to that from the illuminated spot will be greater in the case of the oblique illumination in Fig. 1B compared to that in Fig. 1A. Therefore, for the same throughput (spots 26, 26' having the same area), the sensitivity of the oblique incidence beam in detecting small particles is superior and is the method of choice in the detection of small particles. 」(第8頁第33行-第9頁第20行)
(翻訳文)
「【0019】図1Aは,表面および表面上の粒子24を照明するために,被検査試料の表面20および表面20に垂直な方向に向いた照明ビーム22の略図である。このように,照明ビーム22は表面20の領域またはスポット26を照明し,検出システム(図示せず)は粒子24や表面20の一部またはスポット26により散乱された光を検出する。粒子24から検出器が受けた光束とスポット26から受けた光束の割合は,粒子検出のシステムの感度を表す。
【0020】この代わりに図1Bに示すように,斜角で表面20に向かう照明ビーム28を用いてスポット26' および粒子24を照明し,図1Aと図1Bを比較すると,粒子24からの光束と照明スポットからの光束の割合は,図1Aと比較して図1Bの傾斜照明の場合の方が大きくなることが明らかである。このように,スループットが同じでも(スポット26と26' の面積は同じ),微粒子を検出する際の傾斜入射ビームの感度が優れ,微粒子検出の際に選択可能なものとなる。」
(10-2)図1A及び図1B
(10-3)「This invention relates in general to sample inspection systems and, in particular, to an improved inspection system with good sensitivity for particles as well as crystal-originated-particles (COPs). COPs are surface breaking defects in semiconductor wafers which have been classified as particles due to inability of conventional inspect ion systems to distinguish them from real particles.」(第1頁第3?10行)
(翻訳文)
「【0001】
本発明は一般的に試料検査システムに関し,さらに詳しく言えば,粒子および結晶発生粒子(crystal-originated-particles)(COP)用の感度が良好な改良形の検査システムに関する。COPとは,半導体ウェーハの表面が破損した欠陥であり,従来の検査システムでは実際の粒子と区別することが出来なかったため,粒子として分類されていたものである。」

本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平9-133636号公報(以下,「刊行物11」という。)には,以下の事項が記載されている。
(11-1)「【要約】【課題】本発明は,微細化パターンであっても欠陥からの散乱光の感度を高くして確実に欠陥を検出する。
【解決手段】4本の光ファイバー束22a?22dによる照射角を半導体ウエハ14の表面14aに対して10°?20°の角度に配置したので,半導体ウエハ14そのものからの散乱光の光量を低く抑えら,欠陥部分からの散乱光の光量を相対的に大きくして,結果として感度を高くできる。」

第4 本願発明と刊行物1発明の対比・判断
1.対比
本願発明と刊行物1発明を対比すると,
(1)刊行物1発明の「光学的ディスク等の被検査物11」,「被検査物の表面からの散乱光を検出するための一次元配列多素子光検出器」及び「被検査物表面の欠陥,キズ,異物の付着を光学的に検査する光学的欠陥検査装置」は「検査されるディスク」,「前記表面からの散乱光を受光器により受光してこの受光器」及び「欠陥検査光学系」に相当する。
よって,刊行物1発明の「光学的ディスク等の被検査物11の表面を照明光により走査する手段と,被検査物の表面からの散乱光を検出するための一次元配列多素子光検出器23により,被検査物表面の欠陥,キズ,異物の付着を光学的に検査する光学的欠陥検査装置において」は,本願発明の「検査されるディスクの表面を光ビームにより走査し,前記光ビームによる前記表面からの散乱光を受光器により受光してこの受光器が欠陥検出のための信号を発生する欠陥検査光学系において」に相当する。

(2)刊行物1発明の「光源」と本願発明の「リング状の光束を発生する光源」とは,「光源」という点で共通する。

(3)刊行物1発明の「2つのミラー19a,19bにより反射させ,対物レンズ20の側面を集光器として機能させ,該反射光は円形のスポットとなって対物レンズ20の側面を透過して,被検査物11の表面に集光し,この光学部材の中空部分の内側に配置され前記散乱光を受光する対物レンズ」という特定事項について,対物レンズ20の中央が散乱光を受光する対物レンズとして機能し,かかる対物レンズの先端が散乱光を受光する。
そして,対物レンズ20の中央部を除く,残る周囲の側面が,2つのミラー19a,19bで反射された光を被検査物11の表面に集光する機能する光学部材となっているといえる。
そうすると,前記刊行物1発明の特定事項と本願発明の「前記リング状の光束を受けるリング状の受光面を有し受けたリング状の光束を前記光ビームとして前記表面の検査点に集束させる内側が中空の光学部材と,その先端側がこの光学部材の中空部分の内側に配置され前記散乱光を受光する対物レンズ」とは,「光源からの光を受ける受光面を有し受けた光束を,光ビームとして前記表面の検査点に集束させる光学部材と,その先端がこの光学部材に取り囲まれる空間に配置され前記散乱光を受光する対物レンズ」という点で共通する。

(4)刊行物1発明の「この散乱光を受光する対物レンズ20からの光を受けて一次元配列多素子光検出器23に走査位置の映像を結像させるレンズ22」は,本願発明の「この対物レンズからの光を受けて前記受光器に走査位置の映像を結像させる結像レンズ」に相当する。

(一致点)
以上を総合すると,本願発明と刊行物1発明は,次の点で一致する。
「 検査されるディスクの表面を光ビームにより走査し,前記光ビームによる前記表面からの散乱光を受光器により受光してこの受光器が欠陥検出のための信号を発生する欠陥検査光学系において,
光源と,光源からの光を受ける受光面を有し受けた光束を,光ビームとして前記表面の検査点に集束させる光学部材と,光学部材に取り囲まれる空間に配置され前記散乱光を受光する対物レンズと,この対物レンズからの光を受けて前記受光器に走査位置の映像を結像させる結像レンズとを備た欠陥検査光学系」
そして,次の相違点1乃至相違点3の点で相違する。

(相違点)
(1)相違点1
本願発明が「リング状の光束を発生する光源」であるのに対して,刊行物1発明はリング状の光束を発生する光源を具備していない点。

(3)相違点2
光ビームとして前記表面の検査点に集束させる光学部材と,対物レンズの関係について,本願発明では,「光ビームとして前記表面の検査点に集束させる内側が中空の光学部材と,その先端側がこの光学部材の中空部分の内側に配置され前記散乱光を受光する対物レンズ」となっており,中空の光学部材と対物レンズは別体として構成されているのに対して,刊行物1発明では,光学部材と対物レンズは,一体のものである点

(4)相違点3
本願発明が「前記光学部材による前記表面に対する前記リング状の光束の照射角は,前記ディスクの表面からみた仰角で70°以下であってかつ前記ディスク面に上下変動があっても前記リング状の光束の集束点が前記ディスクの裏面側に至らない角度に設定されている」のに対して,刊行物1発明は係る特定事項が不明な点

(相違点の検討)
(1)相違点1について
暗視野照明のための光源として,リング状の光束を発生する光源が,刊行物2?4に記載されているように本願優先権主張日前に知られており,周知の技術的事項となっていた。
そうすると,刊行物1発明において,暗視野照明のための光源として,周知の技術的事項の前記周知のリング状の光束を発生する光源を採用して,相違点1に記載の本願発明の特定事項の如くすることは,特段の創作力を要することなくなし得たことといえる。

(2)相違点2について
リング状の光束を前記光ビームとして前記表面の検査点に集束させる内側が中空の光学部材と,その先端側がこの光学部材の中空部分の内側に配置され前記散乱光を受光する対物レンズは,例えば刊行物5?8に記載されているように暗視野顕微鏡分野において周知である。
刊行物1発明は,暗視野照明と対物レンズを有するから,一種の暗視野顕微鏡であり,刊行物1発明の「対物レンズ20の側面を集光器として機能させ,該反射光は円形のスポットとなって対物レンズ20の側面を透過して,被検査物11の表面に集光し,対物レンズ20の中央部を前記散乱光を受光する前記対物レンズとして機能させる対物レンズ20」とする光学系に代えて,刊行物1と同じ暗視野顕微鏡の技術分野に属する前記周知の技術的事項を採用して,相違点2に記載の本願発明の特定事項の如くすることは,当業者が容易になし得たことといえる。

(3)相違点3について
欠陥検査において,散乱光を大きくするため前記ディスクの表面からみた仰角を小さくした方が,感度が優れ,微小な傷や結晶発生粒子などの欠陥を観察できることは,例えば,刊行物9?11に記載されているように本出願前周知の技術的事項である。
そうすると,刊行物1発明において,散乱光強度を大きくするため,前記周知の技術的事項から本願発明の如く「前記光学部材による前記表面に対する前記リング状の光束の照射角は,前記ディスクの表面からみた仰角で70°以下」とすることは,当業者が容易になし得たことである。
そして,本願発明の「前記ディスク面に上下変動があっても前記リング状の光束の集束点が前記ディスクの裏面側に至らない角度に設定されている」との特定事項について,仰角が小さくなるにつれて,ディスク面の上下変動の影響を受けなくなる。前記周知の技術的事項の如く,仰角をより小さくすれば,散乱高強度が増すとともに,必然的に本願発明の如く「前記ディスク面に上下変動があっても前記リング状の光束の集束点が前記ディスクの裏面側に至らない角度に設定されている」ことになることは明らかである。
よって,刊行物1発明において,仰角を小さくするという前記周知の技術的事項を適用することにより,相違点3に記載の本願発明の特定事項の如くすることは,困難性無くなし得たことといえる。

本願発明の奏する効果について検討すると,本願発明の効果は,明細書に記載のとおり「光学部材による検査ディスクの表面への照射光の集束が検査ディスクの上下変動により裏面にほとんど到達しない角度において中空の光学部材によりリング状の光ビームを表面に集束させて照射し,表面からの散乱光を光学部材の中空部分に配置した対物レンズで受けることで,対物レンズには,検査ディスクの裏面側の欠陥や付着異物の指向性の強い散乱光をあるいは裏面からの反射光をほとんど受けないで済むため,受光器の検出信号のS/N比が向上する。
その結果,裏面の欠陥にほとんど影響されることなく,高い精度で欠陥検出ができる欠陥検出光学系および表面欠陥検査装置を容易に実現できる。」というものである。
前記「相違点(3)について」で検討したとおり,ディスクの表面からみた仰角を小さくした方が,感度が優れ微小な傷を観察できることは,刊行物9?11に記載のように周知の技術的事項である。仰角が小さくなれば,必然的に検査ディスクの上下変動により裏面にほとんど到達しない角度となり,検査ディスクの裏面側の欠陥や付着異物の指向性の強い散乱光をあるいは裏面からの反射光をほとんど受けないで済むことは明白である。
したがって,上記作用効果は,刊行物1及び前記周知の技術的事項から当業者が予測し得るものといえ,格別顕著なものとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1発明及び前記周知の技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-08 
結審通知日 2010-02-16 
審決日 2010-03-01 
出願番号 特願2000-325199(P2000-325199)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊田 直樹  
特許庁審判長 郡山 順
特許庁審判官 後藤 時男
居島 一仁
発明の名称 欠陥検査光学系、欠陥検査装置および欠陥検査方法  
代理人 山本 富士男  
代理人 梶山 佶是  

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