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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1215180
審判番号 不服2008-30113  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-27 
確定日 2010-04-15 
事件の表示 特願2003-352288「トナー、フルカラー画像形成方法及びプロセスカートリッジ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月 9日出願公開、特開2004-252416〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年10月10日の出願(特許法第41条に基づく優先権主張 平成14年10月10日及び平成15年1月30日)であって、平成20年10月23日付で拒絶査定がなされ、それに対して平成20年11月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月25日付で明細書及び特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。
その後、該手続補正に基づいて審査官による前置審査に付され、それを受けて、当審において平成21年8月13日付で審尋を行ったところ、審判請求人から同年10月19日に回答書が提出されたものである。

2.平成20年12月25日付手続補正についての補正却下の決定

【補正却下の決定の結論】
平成20年12月25日付の手続補正を却下する。

2-1.理由
(1)補正内容
平成20年12月25日付手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明特定事項
「結着樹脂、着色剤及びワックスを少なくとも含有するトナーであって、
(a)温度120℃における200gの荷重を加えた際の変形量(R200)が45?75%であり、
(b)温度120℃における500gの荷重を加えた際の変形量(R500)が65?85%であり、
(c)示差走査熱量計(DSC)で測定される昇温時のDSC曲線において、60?120℃の範囲に少なくとも1個の吸熱ピーク或いはショルダーを有することを特徴とするトナー。」



「結着樹脂、着色剤及びワックスを少なくとも含有するトナーであって、
該トナーは、(a)温度120℃における200gの荷重を加えた際の変形量(R200)が45?75%であり、
(b)温度120℃における500gの荷重を加えた際の変形量(R500)が65?85%であり、
(c)示差走査熱量計(DSC)で測定される昇温時のDSC曲線において、60?120℃の範囲に少なくとも1個の吸熱ピーク或いはショルダーを有し、
(d)テトラヒドロフラン不溶分が全樹脂成分基準で2?25質量%であり、
該結着樹脂が、
(e)(i)ポリエステル樹脂、(ii)ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットとを有するハイブリッド樹脂、(iii)ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットとを有するハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物、(iv)ポリエステル樹脂とビニル系共重合体との混合物、(v)ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットとを有するハイブリッド樹脂とビニル系共重合体との混合物、(vi)ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットとを有するハイブリッド樹脂、ポリエステル樹脂及びビニル系共重合体の混合物、からなる群より選択される樹脂であることを特徴とするトナー。」
のように補正する内容を含むものである(下線は補正箇所。)。

(2)補正の目的
上記補正は、補正前の請求項1に係る発明について、発明を特定するために必要な事項である「結着樹脂」について(i)?(vi)で表される特定の樹脂に限定するとともに、トナーの特性として、「テトラヒドロフラン不溶分が全樹脂成分基準で2?25質量%」の範囲にあるものに限定するものであるから、平成18年法律第55号改正付則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正付則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(3-1)本願補正明細書の記載
本願補正明細書には、次の記載が認められる。(下線は、当審にて付与。)

a.「【0018】
変形量とは、トナーに圧力をかけて錠剤状のサンプルを形成し、加熱下で、該サンプルに対して圧縮する力を加え、その際、特定の荷重(本発明においては、200g、或いは、500g)におけるサンプルが押し縮められた割合を表したものである。詳細な測定方法については後述する。
【0019】
この変形量は、トナーの定着性と相関があるものと考えられる。また、定着画像の表面性、OHPシートに定着した際の透過性と相関があるものと考えられる。
【0020】
本発明において、上記変形量(R_(200))は45?75%であり、好ましくは50?70%であり、更に好ましくは55?67%である。変形量(R_(200))が45%未満となる場合には、定着画像のグロスの均一性を高めることが困難となり、OHP画像の透明性が低下する傾向にあり、変形量(R_(200))が75%を超える場合には、トナーの溶融・変形が過剰となり、非オフセット温度領域が狭くなる傾向にある。
【0021】
また、本発明において、上記変形量(R_(500))は65?85%、好ましくは70?83%であり、更に好ましくは75?80%である。変形量(R_(500))が65%未満となる場合には、定着画像のグロスの均一性を高めることが困難となり、OHP画像の透明性が低下する傾向にあり、変形量(R_(500))が85%を超える場合には、トナーの溶融・変形が過剰となり非オフセット温度領域が狭くなる傾向にある。」

b.「【0029】
前記ワックスが、示差走査熱量計(DSC)により測定される昇温時のDSC曲線において、温度60?120℃の範囲に少なくとも1個の吸熱ピークもしくはショルダーを有さない場合には、トナーの離型荷重によらずオフセットが生じやすくなり、またオイルの塗布によりオフセットの発生を抑制する場合には、多量のオイルが必要となることがある。
【0030】
DSCにより測定される前記ワックスの熱的特性は、トナーをDSCで測定したときの熱的特性とほぼ同じである。したがって本発明では、トナーの熱的特性についても、ワックスの熱的特性と同様のことが言える。」

c.「【0036】
本発明のトナーに含有される結着樹脂は、トナーとしての変形量に関し規定した範囲を満たすことができるものであれば、特に限定することなく用いることができ、例えば、(i)ポリエステル樹脂、(ii)ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットとを有するハイブリッド樹脂、(iii)ポリエステル樹脂とハイブリッド樹脂との混合物、(iv)ポリエステル樹脂とビニル系共重合体との混合物、(v)ハイブリッド樹脂とビニル系共重合体との混合物、(vi)ポリエステル樹脂、ハイブリッド樹脂及びビニル系共重合体との混合物等の樹脂を用いることができる。中でもグラフト体の如き構造を有するハイブリッド樹脂を含有する樹脂を用いることが好ましい。これはグラフト体の枝分かれ構造が、変形の自由度を高める働きをするため、トナーの変形量を所望の範囲にコントロールしやすいためである。」

d.「【0064】
本発明のトナーは、テトラヒドロフラン(THF)不溶分を全樹脂成分基準で1?30質量%、好ましくは2?25質量%、更に好ましくは5?20質量%含有するとよい。THF不溶分が1質量%未満となる場合には、トナーの離型強度が小さくなる場合があり、30質量%を超える場合には、トナーの変形量が小さくなりすぎ、トナーの変形量を制御することが困難となる傾向にある。」

e.「【0198】
(4)ワックスの吸熱ピーク温度測定 示差走査熱量計(DSC測定装置)であるDSC-7(パーキンエルマー社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。
【0199】
測定試料は5mgを精秤し、これをアルミパンに入れ、リファレンスとしての空のアルミパンを用い、30?200℃の温度範囲で昇温速度10℃/分で測定を行う。この昇温過程で、温度60?120℃の範囲におけるDSC曲線のメインピークの温度をもってワックスの吸熱ピーク温度とする。
【0200】
(5)結着樹脂のガラス転移温度(Tg)測定 示差走査熱量計(DSC測定装置)であるDSC-7(パーキンエルマー社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。
【0201】
測定試料は5mgを精秤し、これをアルミパンに入れ、リファレンスとしての空のアルミパンを用い、30?200℃の温度範囲で昇温速度10℃/分で測定を行う。この昇温過程で、温度40?100℃の範囲におけるDSC曲線にメインピークの吸熱ピークが得られる。吸熱ピーク前後でベースラインを設定し、その中間点の線とDSC曲線との交点をガラス転移温度(Tg)とする。
【0202】
(6)トナーのDSC曲線の測定
上記ワックスの吸熱ピーク温度及び結着樹脂のガラス転移温度測定と同様にして、トナーの昇温過程におけるDSC曲線を測定する。このDSC曲線からもワックスの吸熱ピーク温度及びトナーの結着樹脂のガラス転移温度(Tg)を知ることができる。」

f.「【0212】
(10)トナーの変形量の測定
トナーの成型は、5.0?5.5gのトナーを錠剤成型器により400kgfの圧力で2分間加圧することで、直径25mm、高さ10?11mmの円柱状試料に成型する。測定装置は、PTFEを20?40μmの厚さでコートしたSUS製の直径25mmパラレルプレートを装着したARES(粘弾性測定装置、レオメトリック社製)を使用する。
【0213】
トナーの成型試料をパラレルプレート上に設置し、治具温度を120℃に制御して、試料の温度が120℃に達したことを確認後、試料の高さ(gap)を10.000mmに調整する。MultipleExtensionModeTestのRateModeTestを選択し、Rate=-0.5mm/sに設定してトナー成型試料を圧縮し、試料の高さ(gap)と等速で試料を圧縮するのに必要な荷重(NormalForceと称す)との関係を測定する。
【0214】
NormalForceが200gでの試料の高さ(gap)をG_(200)(mm)とすると、下記式からトナー変形量(R_(200))を算出できる。
(注:式は省略する。)
【0216】
同様にして、NormalForceが500gでの試料の高さG_(500)を用いることにより、トナー変形量(R_(500))を測定することができる。」

g.「【0242】
[実施例1]
以下の方法でトナー1を調製した。
・結着樹脂(HB-1) 100質量部
・ワックス(W-1) 5質量部
・顔料:銅フタロシアニン 4質量部
・3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.5質量部
130℃に加熱された2軸混練押出機によって、上記原料混合物の溶融混練を行った。混練物は放冷後、カッターミルで粗粉砕して18メッシュパスが97質量%、100メッシュオンが92質量%の粉体原料(1)を得た。
【0243】
粉体原料(1)を図3に示すフローチャートに従い、図4に示す装置を用いて、粉砕及び分級を行った。
・・・・・・・
【0251】
中粉体(M-1):100質量部に、n-C_(4)H_(9)Si(OCH_(3))_(3)で処理した疎水性酸化チタン(BET比表面積:110m^(2)/g)1.0質量部を外添しシアントナー(1)を得た。さらにシアントナー(1)と、シリコーン樹脂で表面被覆した磁性フェライトキャリア粒子(体積平均粒径50μm)とを、トナー濃度が7質量%になるように混合し、二成分系シアン現像剤(1)を得た。」

h.「【0259】
[実施例2?4]
実施例1において、ワックスとして(W-2)?(W-4)を使用した以外は同様にして本発明のシアントナー(2)?(4)を得た。シアントナー(2)?(4)の物性値を表3に示す。」

i.「【0261】
[実施例5]
・結着樹脂(HB-2) 105質量部
・顔料:銅フタロシアニン 4質量部
上記、原料混合物を使用した以外は同様にして本発明のシアントナー(5)を得た。シアントナー(5)の物性値を表3に示す。」

j.「【0263】
[実施例6、参考例1?3]
実施例5において、結着樹脂として(HB-3)?(HB-6)を使用した以外は同様にして本発明のシアントナー(6)?(9)を得た。シアントナー(6)?(9)の物性値は表3に示す。」

k.「【0267】
[比較例1]
・ハイブリッド樹脂(HB-1) 100質量部
・水酸基を有する極性ワックス(W-4) 3質量部
・パラフィンワックス(W-1) 3質量部
・顔料:銅フタロシアニン 4質量部
・3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 6質量部
130℃に加熱された2軸混練押出機によって上記原料混合物の溶融混練を行った。混練物は放冷後、カッターミルで組粉砕して18メッシュパスが97質量%、100メッシュオンが92質量%の比較用粉体原料(R-1)を得た。
【0268】
比較用粉体原料(R-1)を、図9に示すフローチャートに従い、図10に示す装置を用いて、粉砕及び分級を行った。但し、衝突式気流粉砕機138は図12に示した粉砕機を用い、第1分級手段(図10中、132)は図11の構成のものを用い、第2分級手段(図10中、137)は図13の構成のものを用いた。
・・・・・・・・
【0275】
上記の分級工程で分級された比較用中粉体RM-1(分級品)は、重量平均粒径が7.6μmであり、粒径4.0μm以下を粒子の19個数%含有し、粒径10.1μm以上の粒子を1.7体積%含有しており、平均円形度は0.947であり、円形度0.950以上の粒子が63.4個数%であった。なお、分級収率は62%であった。
【0276】
この比較用分級品RM-1を用いた以外は実施例1と同様にして比較用シアントナー(1)とした。」

l.「【0279】
[比較例2]
・結着樹脂(P-2) 100質量部
・ポリエチレンワックス(W-3) 2質量部
・顔料:銅フタロシアニン 4質量部
・3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸ジルコニウム化合物 4質量部
上記、原料混合物を使用した以外は比較例1と同様にして比較用分級品(R-2)を得た。この比較用分級品(R-2)を用いた以外は実施例1と同様にして比較用シアントナー(2)を得た。」

m.「【0281】
[比較例3]
・結着樹脂(P-2) 100質量部
・低分子量ポリプロピレン(W-5) 5質量部
・顔料:銅フタロシアニン 4質量部
・3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.5質量部
上記、原料混合物を使用した以外は比較例1と同様にして比較用分級品(R-3)を得た。この比較用分級品(R-3)を用いた以外は実施例1と同様にして比較用シアントナー(3)を得た。」

n.「【0241】 【表2】(省略)」

o.「【0283】 【表3】(省略)」

p.「【0284】 【表4】(省略)」

(3-2)判断
A.結着樹脂における枝分かれ及びTHF不溶分量以外の要因の存在
本願明細書において、実施例1及び比較例1のトナー(上記gk参照)を対比すると、両トナーは以下の点で相違するのみである。

(a)ワックスについて、実施例1では(W-1)を5質量部使用するのに対して、比較例1では(w-1)を3質量部と(W-4)を3質量部使用(比較例1)する点
(b)荷電制御剤として、3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸アルミニウムについて、実施例では0.5質量部使用するのに対して、比較例では4質量部使用する点
(c)微粉砕工程及び分級工程に使用する装置の相違

技術常識に照らすと、これら3つの相違点によって、実施例1及び比較例1のトナーにおける枝分かれやTHF不溶分量がそれほど大きく変化することは、考えられない。しかし、両者を「実施例1:比較例1」と並記して比較すると、
THF不溶分が8:53、
R200が66:42、
R500が78:68、
と大きく異なり、
また、THF可溶分のピーク分子量は不変なのに、
Mw/Mnが26:3650
と、140倍にもなっている(上記o参照)。
また、比較例2と比較例3のトナーを比較すると、両トナーは以下の点で相違するのみである(上記lm参照)。

(d)ワックスについて、比較例2では(W-3)を2質量部使用するのに対して、比較例3ではワックス(W-5)を5質量部使用する点
(e)荷電制御剤として、比較例2では3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸ジルコニウムを4質量部使用するのに対して、比較例3では3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸アルミニウムを0.5質量部使用する点

ここで、比較例2及び3のトナーは、同じ結着樹脂を使用し同じ粉砕?分級工程を経て製造され、ワックス及び荷電制御剤が相違するのみであるから、枝分かれやTHF不溶分量に大きな相違が生じることはあり得ない。しかし、両者を「比較例2:比較例3」と並記して比較すると、
THF不溶分が56:0、
R200が41:81、
R500が63:88、
Mw/Mnが516:3
と、大差が生じている(上記o参照)。
これらの比較検討内容からみて、トナーの特性を示すというR200及びR500を所望の範囲に制御するためには、結着樹脂において枝分かれ及びTHF不溶分量以外の要因の存在が考えられるところ、本願補正明細書の記載からR200、R500の限定範囲を実現するための方法及び手段が明らかであるとは、認められない。また、本願補正発明で規定しているR200及びR500 によっては、トナーの特性を把握することもできない。

B.原料混合物
実施例1では、「原料混合物」として結着樹脂、ワックス、顔料、荷電制御剤を全て含めている(上記g参照)のに対して、実施例5、実施例6、参考例1?3では、「原料混合物」には結着樹脂と顔料のみ含んでいる(上記ij参照)。
それにもかかわらず、両者とも同程度の結果を得ている(上記o参照)。

C.ワックス
実施例5が実施例2?4(上記f参照)の「実施例1において?同様に」という記載を受けて「(実施例1と)同様に」と解釈するのであれば、参考例1は「実施例5において?同様に」すなわち「(実施例1と)同様に」と解釈できるのであるから、ワックスは「(実施例1と)同様に」(W-1)であるはずである。そして、表2では、確かにワックスが「(実施例1と)同様に」(W-1)である(上記o参照)。
しかし、参考例2、3は「実施例5において?同様に」すなわち「(実施例1と)同様に」と解釈できるのであるから、ワックスは「(実施例1と)同様に」(W-1)であるはずである。しかし、表2ではそれぞれワックスがW-2、W-3となっている点で一致していない(上記o参照)。
この点で、トナーがどのように作成されたか、理解不能である。

D.DSCの吸熱ピーク値
本願補正発明では、トナーのDSC曲線の60?120℃の範囲にピーク又はショルダーがあることを規定している。しかし、この規定に対して、実施例や比較例において、トナーのDSC曲線から求めたピークあるいはショルダーについて、具体的な記載がない。

上記の温度範囲のピーク又はショルダーに関して、本願補正明細書では、60?120℃の範囲にピーク又はショルダーがあるものとしてワックスのDSC曲線(上記b参照)を説明している。しかしながら、この記載に基づいて、トナーのDSC曲線の60?120℃の範囲のピーク又はショルダーをトナーの吸熱ピーク値であると理解することには、以下の問題点がある。
まず、ワックスのDSCピーク値を60?120℃で測定する(上記e参照)としながら、ワックス(W-5)のDSCピークは137℃としている(上記n参照)。
次に、DSC曲線の40?100℃の範囲には、結着樹脂のTgに基づくピークやショルダーも出現しうる(上記e参照)と説明されていることに鑑みると、ワックスのピークをもってトナーのピークとすることは必ずしも正確でない。
これらのことから、トナーのDSC曲線の60?120℃の範囲にピーク又はショルダーがあることで規定されている本願補正発明では、トナーの特性を把握することができない。

(3-4)まとめ
本願補正明細書に記載された具体例においては、「変形量(R200)」及び「変形量(R500)」の特性を有するトナーを得るための材料及び製造工程に関する具体的説明について、このように不合理な点が多く、審判請求人が主張する、【0036】や【0064】、実施例、参考例、比較例の記載を参照すれば、枝分かれやTHF不溶分量の調整をすることで、本願補正発明の構成を容易に理解し実施できることが立証されている、とは認められない。
したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、その実施をできる程度に明りょう且つ十分に記載されているものではなく、また、特許を受けようとする発明が明確であるものとも認められないから、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであって、本願補正発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができない。

2-2.むすび
以上のとおり、平成20年12月25日付の手続補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
3-1.本願の請求項に係る発明
平成20年12月25日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至24に係る発明は、願書に最初に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至24に記載されたとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は次のとおりのものと認める。

「結着樹脂、着色剤及びワックスを少なくとも含有するトナーであって、
(a)温度120℃における200gの荷重を加えた際の変形量(R200)が45?75%であり、
(b)温度120℃における500gの荷重を加えた際の変形量(R500)が65?85%であり、
(c)示差走査熱量計(DSC)で測定される昇温時のDSC曲線において、60?120℃の範囲に少なくとも1個の吸熱ピーク或いはショルダーを有することを特徴とするトナー。」

3-2.原査定の拒絶理由の趣旨
拒絶理由の趣旨は、『R_(200)及びR_(500)なる指標は、トナーの弾性または塑性を示すものとして当該技術分野において従来一般的に慣用されている指標ではない。そして、請求項1、6、19に示される変形量は、トナーを構成する材料の種類、トナーの製造工程にどのように依存し、どのような材料及び製造工程により作製されたトナーであれば、本願請求項1、6、19に係る特性を満足するトナーとなるか不明であるため、請求項1、6、19に係るトナーを具体的な物として把握することができない。』というものである。
また、『本願明細書の記載を参酌しても、本願請求項1、6、19に記載の条件を満足するトナーが、トナーの材料、製造工程にどのように依存するものであるかが不明確である。』というものである。
これに対して、審判請求人の主張の趣旨は、【0036】や【0064】、実施例、参考例、比較例の記載をを参照すれば、枝分かれ、THF不溶分量の調整をすることで、本願補正発明の構成を、容易に理解し、実施できる(平成21年2月12日付手続補正書及び平成21年10月19日付回答書参照)というものである。

3-3.判断
本願発明は、上記の本願補正発明に対して、発明を特定するために必要な事項である「結着樹脂」について(i)?(vi)で表される特定の樹脂に限定する点と、トナーの特性として「テトラヒドロフラン不溶分が全樹脂成分基準で2?25質量%」の範囲にあるものに限定する点とを欠くものである。
したがって、トナーの特性として「変形量(R_(200))」及び「変形量(R_(500))」の範囲を限定する点は、依然として発明の構成として残っている。

それに対して、「変形量(R_(200))」及び「変形量(R_(500))」の特性を有するトナーを得るための材料及び製造工程に関する具体的な説明については、上記「2-1.(3-2)判断」の欄に示したとおりであるから、同欄に示した判断は、そのまま本願発明にも該当する。
したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、本願発明の実施をできる程度に明りょう且つ十分に記載されているものではなく、また、特許を受けようとする発明が明確であるものとも認められない。

3-4.むすび
以上のとおり、本願は、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。
なお、審判請求人は、回答書において、結着樹脂についてさらに減縮すると共に、参考例2、3を実施例として復活する旨の補正を求めているが、上記の判断に示した本願明細書の記載不備がそれらの補正によって治癒されることはないから、補正の機会を設けないこととする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-05 
結審通知日 2010-02-09 
審決日 2010-03-02 
出願番号 特願2003-352288(P2003-352288)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G03G)
P 1 8・ 536- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川口 真隆川村 大輔  
特許庁審判長 柏崎 康司
特許庁審判官 伊藤 裕美
伏見 隆夫
発明の名称 トナー、フルカラー画像形成方法及びプロセスカートリッジ  
代理人 内尾 裕一  

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