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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K |
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管理番号 | 1215199 |
審判番号 | 不服2007-312 |
総通号数 | 126 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-01-09 |
確定日 | 2010-04-07 |
事件の表示 | 特願2004-108009「ヒンジ装置及びそのヒンジ装置に使用される配線部材」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月 2日出願公開、特開2004-343085〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成15年5月6日を優先日(優先国 韓国(KR))とする平成16年3月31日の出願であって、平成18年9月13日付けで手続補正がされ、同年10月5日付けで拒絶査定がされたものであり、この査定を不服として、平成19年1月9日に審判請求がされるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。 そこで、当審において、平成21年3月5日付けで平成19年1月9日付けの手続補正に対する却下の決定をするとともに、同日付けで拒絶理由を通知したところ、同年6月10日付けで手続補正がされたが、当該補正によって再度の拒絶理由を通知することが必要となったので、同年6月26日付けで最後の拒絶理由を通知した。 第2 本願発明 この出願の請求項1?12に係る発明は、平成21年6月10日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は以下のとおりのものである。 「ヒンジ装置により相互連結される第1及び第2の電子機器を電気的に連結させる配線部材において、 前記第1及び第2の電子機器は、その各々が携帯用機器本体とディスプレーユニットであり、 前記ヒンジ装置は、前記第1の電子機器に回動可能に連結される第1のヒンジ部と前記第1のヒンジ部の第1のヒンジ軸に垂直に連結される第2のヒンジ軸を具備する第2のヒンジ部とを含む構成であり、 前記配線部材は、 前記第1のヒンジ軸の外周面を巻く第1の巻き部と、 前記第1の巻き部に対して垂直し、前記第2のヒンジ軸の外周面を巻く第2の巻き部と、 前記第1の巻き部と第2の巻き部とを連結する連結部と、 前記携帯用機器本体の内部に連結されるように前記第1の巻き部に連結される第1の配線部材コネクタと、 前記ディスプレーユニットの内部に連結されるように前記第2の巻き部に連結される第2の配線部材コネクタと、を含み、 前記連結部は、 前記ディスプレーユニットの回動を検知する検知センサーに連結される第3の配線部材コネクタを含むことを特徴とする配線部材。」 以下、この発明を「本願発明」という。 第3 当審における拒絶理由の概要 当審における拒絶理由の一つは、概略、以下のとおりである。 「この出願の請求項1?12に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1?4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 <引用刊行物> 刊行物1:特開2002-354086号公報 刊行物2:特開平8-125299号公報 刊行物3:国際公開第01/84729号 刊行物4:特開2002-125025号公報 」 第4 刊行物1の記載事項 [1a]「【請求項1】情報を入力する入力部を有する第1筐体と、該第1筐体に折り畳み可能に第1ヒンジ部にて連結された中間筐体と、表示部を有し前記第1筐体に対して前記中間筐体とともに折り畳み可能で且つ前記中間筐体に対して回動可能なように前記中間筐体に第2ヒンジ部にて連結された第2筐体と、前記第1筐体内に収納された第1回路基板と、前記第2筐体内に収納された第2回路基板と、前記第1回路基板と前記第2回路基板を接続したフレキシブル基板であって前記第1ヒンジ部の回動軸に沿って巻かれた第1部分と前記第2ヒンジ部の回動軸のまわりに巻かれた第2部分を有する前記フレキシブル基板とを備えたことを特徴とする折り畳み式携帯端末装置。」 [1b]「【0012】図1は本発明の第1の実施の形態における携帯端末装置の要部を示し、図4の外観を示す平面図から、図5の側面図に示すフロントケース11,21とアンテナを取り外し、且つ図4のAーA中央断面図である図2に示す中間筐体3のフロントケース31を取り外して、図5の第1筐体1のリアケース12と第2筐体2のリアケース22および図2の中間筐体3のリアケース32に配置された回路基板71,72およびフレキシブル基板6を示す平面図である。 【0013】このように携帯電話機では、回路基板71,72間の電気的接続を行なうのに、高周波信号に乗る雑音を抑え、スペースを抑えるため、フレキシブル基板(FPC)6が用いられている。第1筐体1内には回路基板71が収容されており、第2筐体2内には回路基板72が収容されており、この2つの回路基板71,72の間をフレキシブル基板6で接続して電気的に結合をしている。フレキシブル基板6は、図1に示すように、第1筐体1から、折り畳みヒンジ部の回動軸49,回動ヒンジ部の回動軸59を経由して、第2筐体2に収納の回路基板72に達する。」 [1c]「【0014】このフレキシブル基板6はその両端が回路基板71および回路基板72に接続されており、途中に折り畳みヒンジ部の回動軸49に沿って巻かれた部分61と、回動ヒンジ部の回動軸59のまわりに巻かれた部分62を有する。フレキシブル基板6は図3に示す形状をしていて、部分61と部分62を1回転させた状態で、図1のように置いた第1筐体1のリヤケース12および第2筐体2のリヤケース22の中に、回路基板71及び回路基板72を置く。そうすると、フレキシブル基板6は、第1筐体1のリヤケース12、第2筐体2のリヤケース22及び中間筐体3のリアケース32の形成するフレキシブル基板6通路用凹部に位置する。」 [1d]【0015】折り畳みヒンジ4部では、第1筐体から中間筐体に渡る時に螺旋上にフレキシブル基板6を長手方向に巻いてその中間に回転の継ぎ目を配置することにより、第1筐体と第2筐体および中間筐体が折り畳まれている時と、開いた時のいずれにおいても、フレキシブル基板6を破損させるような力が加わらず、滑らかに折り畳み動作ができるようにしている。回動ヒンジ部においても、同様にフレキシブル基板6を螺旋状に巻いて滑らかな回動運動を可能にすることができる。 【0016】しかしながら、螺旋状にフレキシブル基板6を巻くと、螺旋の軸方向に長くなるため、本実施形態では、回動軸に直交する面内で、渦巻き状に必要な角度だけ巻き、軸方向の長さを極力短くしている。巻きつけ角度は筐体を閉じた時と開いた時の巻きつけ部の直径の変化量を抑えるために大きい方が望ましく、図1のように開いた状態で1周程度以上が必要である。」 [1e]図1には、折り畳み式携帯端末装置の要部であって、第筐体のリアケースと第2筐体のリアケース及び中間筐体のリアケースに配置された二つの回路基板及びフレキシブル基板が平面図で示され、図3は、図1のフレキシブル基板の平面図が示され、図4は、図1の外観を示す平面図が示されている。 第5 当審の判断 1.刊行物1に記載された発明 刊行物1の[1a]に記載されたフレキシブル基板を備えた折り畳み式携帯端末装置において、[1b]及び[1e]の図1,4の記載によると、第1ヒンジ部(折り畳みヒンジ部4)の回動軸49と、第2ヒンジ部(回動ヒンジ部5)の回動軸59とは、垂直に連結していることが明らかであり、[1c]及び[1e]の図1,3の記載によると、フレキシブル基板6には、第1ヒンジ部の回動軸49に沿って巻かれた部分61と、第2ヒンジ部の回動軸59に沿って巻かれた部分62との間に、両部分を連結する連結する連結部が存在することが明らかである。 以上によると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「第1ヒンジ部、中間筐体、第2ヒンジ部により相互連結される第1筐体及び第2筐体の回路基板同士を電気的に連結させるフレキシブル基板において、 前記第1筐体及び第2筐体は、それぞれ折り畳み式携帯端末装置における情報入力部及び表示部であり、 前記第1ヒンジ部は前記中間筐体及び前記第2筐体を前記第1筐体に折り畳み可能に連結し、 前記第2ヒンジ部は前記第2筐体を前記中間筐体に対して回動可能に連結し、 前記第1ヒンジ部の回動軸に対して前記第2ヒンジ部の回動軸は垂直であり、 前記フレキシブル基板は、 前記第1ヒンジ部の回動軸に沿って巻かれた第1部分と、 前記第2ヒンジ部の回動軸に沿って巻かれた第2部分と、 前記第1部分と第2部分とを連結する連結部と、 を含むことを特徴とするフレキシブル基板。」 2.対比 本願発明(前者)と、引用発明(後者)とを対比すると、後者の「第1ヒンジ部、中間筐体、第2ヒンジ部」、「第1筐体」、「第2筐体」、「フレキシブル基板」は、それぞれ前者の「ヒンジ装置」、「第1の電子機器」、「第2の電子機器」、「配線部材」に相当し、後者の「折り畳み式携帯端末装置における情報入力部及び表示部」は、前者の「携帯用機器本体とディスプレーユニット」に相当し、後者の「第1ヒンジ部の回動軸」、「第2ヒンジ部の回動軸」、「第1部分」及び「第2部分」は、それぞれ前者の「第1のヒンジ軸」、「第2のヒンジ軸」、「第1の巻き部」及び「第2の巻き部」に相当する。 そして、後者の「第1ヒンジ部」は、「前記中間筐体及び前記第2筐体を前記第1筐体に折り畳み可能に連結」しているから、「第1筐体に回動可能に連結される」といえるし、後者の「フレキシブル基板」は、第1筐体及び第2筐体の回路基板同士を電気的に連結させているから、「第1部分」に連結して「第1筐体の回路基板を連結する連結部材」、すなわち、「第1の配線部材コネクタ」といえる部材と、「第2部分」に連結して「第2筐体の回路基板を連結する連結部材」、すなわち、「第2の配線部材コネクタ」といえる部材とを含むと認められる。 そうすると、本願発明(前者)と引用発明(後者)との対比において、両者は以下の一致点及び相違点を有するものと認められる。 [一致点] ヒンジ装置により相互連結される第1及び第2の電子機器を電気的に連結させる配線部材において、 前記第1及び第2の電子機器は、その各々が携帯用機器本体とディスプレーユニットであり、 前記ヒンジ装置は、前記第1の電子機器に回動可能に連結される第1のヒンジ部と前記第1のヒンジ部の第1のヒンジ軸に垂直に連結される第2のヒンジ軸を具備する第2のヒンジ部とを含む構成であり、 前記配線部材は、 前記第1のヒンジ軸の外周面を巻く第1の巻き部と、 前記第2のヒンジ軸の外周面を巻く第2の巻き部と、 前記第1の巻き部と第2の巻き部とを連結する連結部と、 前記携帯用機器本体の内部に連結されるように前記第1の巻き部に連結される第1の配線部材コネクタと、 前記ディスプレーユニットの内部に連結されるように前記第2の巻き部に連結される第2の配線部材コネクタと、を含む、 配線部材。」 [相違点] 相違点1:前者は、配線部材の第2の巻き部が第1の巻き部について垂直しているのに対して、後者は、そのように規定されない点 相違点2:前者は、配線部材の連結部が、ディスプレーユニットの回動を検知する検知センサーに連結される第3の配線部材コネクタを含むのに対して、後者はそのような検知センサー及びコネクタを含むか不明である点 3.相違点についての判断 (1)相違点1について 携帯端末装置において、サイズの小型化は周知の課題といえるところ、引用発明の「フレキシブル基板」(以下、「配線部材」という。)は、刊行物1の[1d]、及び[1e]の図1の記載によると、第1ヒンジ部(折り畳みヒンジ部4)ではその回動軸(以下、「第1のヒンジ軸」という。)に螺旋状に巻かれ、第2ヒンジ部(回動ヒンジ部5)ではその回動軸(以下、「第2のヒンジ軸」という。)に直交する面内で渦巻き状に巻かれており、[1d]には、第2の巻き部について、「螺旋状にフレキシブル基板6を巻くと、螺旋の軸方向に長くなるため、本実施例では、回動軸に直交する面内で、渦巻き状に必要な角度だけ巻き、軸方向の長さを極力短くしている。」と記載されているから、第2の巻き部がヒンジ軸に直交する面内で渦巻き状であるのは、第2のヒンジ軸の長さを短くして、携帯端末装置の小型化を図るためと認められる。 そうすると、上記の周知の課題に鑑みて、第1のヒンジ軸の長さも短くして携帯端末装置の一層の小型化を図ろうとすることは、当業者が容易に想到ことであるし、折り畳み式携帯機器の折り畳みヒンジ部において、配線部材をその回動軸に直交する面内で渦巻き状に巻くことは、刊行物2の図5?7に記載されるように何ら阻害されていないから、引用発明の配線部材の第1ヒンジ部における第1の巻き部を、螺旋状ではなく第1のヒンジ軸に直交する面内で渦巻き状に巻くようにすることは、刊行物1の上記記載に基いて当業者が容易になし得る設計変更といえる。 そして、引用発明の第1のヒンジ軸及び第2のヒンジ軸は垂直に連結されているから、上記の設計変更によって、引用発明の配線部材が、第2の巻き部が第1の巻き部について垂直しているものとなることは、自明の事項であるにすぎない。 (2)相違点2について 折り畳みと回動が可能な2つの筐体を有する携帯端末装置において、筐体間の折り畳み又は回動を検知する検知センサーを、ヒンジ装置の折り畳みヒンジ軸に沿った箇所に設け、当該センサーの検知信号を携帯端末装置の制御装置に送信して制御を行うことは、刊行物3の明細書第6頁第16?19行、第10頁第19?28行に記載された公知の事項である。 これに対して、引用発明のフレキシブル基板(配線部材)を内部に有する折り畳みと回動が可能な携帯端末装置においても、筐体間の折り畳みや回動を検知して折り畳み状態や回動状態に適した制御を行うことは、使い勝手や省電力の観点から周知の課題であると認められるから、引用発明に上記の公知の事項を適用し、筐体間の折り畳みや回動を検知する検知センサーを、折り畳みヒンジ部のヒンジ軸に沿った箇所に設け、当該センサーの検知信号を送信して当該携帯端末装置を制御しようとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 ところで、引用発明に係る携帯端末装置の制御装置が、第1筐体又は第2筐体のいずれかの回路基板上に存在することは明らかであるから、検知センサーから検知信号を制御装置に送信するためには、第1筐体又は第2筐体のいずれかの回路基板と検知センサーとを電気的に連結している部材が必要があるところ、引用発明において、ヒンジ装置のヒンジ軸に沿った箇所で第1筐体及び第2筐体の回路基板と電気的に連結している部材は、配線部材であり、その連結部と巻き部である。 そして、巻き部では折り畳みや回動動作に伴う巻き締め、巻き戻しが起こり、検知センサーとの電気的連結部を設けることができないことは、当業者に明らかであるから、引用発明に刊行物3に記載の上記の公知の事項を適用するに当たって、2つの筐体間の折り畳みや回動を検知する検知センサーと配線部材との電気的連結部、すなわち,本願発明における第3の配線部材コネクタを、配線部材の連結部に設けることは、当業者が適宜なし得る設計事項といえる。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-11-05 |
結審通知日 | 2009-11-10 |
審決日 | 2009-11-24 |
出願番号 | 特願2004-108009(P2004-108009) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H05K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 内田 博之 |
特許庁審判長 |
吉水 純子 |
特許庁審判官 |
山本 一正 植前 充司 |
発明の名称 | ヒンジ装置及びそのヒンジ装置に使用される配線部材 |
代理人 | 伊東 忠彦 |