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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q |
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管理番号 | 1215336 |
審判番号 | 不服2007-8168 |
総通号数 | 126 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-06-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-03-22 |
確定日 | 2010-04-22 |
事件の表示 | 特願2004-11696「会計情報システム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年8月4日出願公開,特開2005-208722〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成16年1月20日の出願であって,平成18年8月10日付けの拒絶理由通知に対して,同年10月13日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたが,平成19年2月16日付けで拒絶の査定がなされ,この拒絶の査定を不服として,同年3月22日に審判請求がなされるとともに同年4月6日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成19年4月6日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年4月6日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 平成19年4月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1は, 「【請求項1】 コンピュータを用いて,会計データに基づいて財務諸表を作成する会計情報システムにおいて, 複数会社の複数事業所の複数部門ごとの会計データである仕訳明細を記憶する仕訳明細DBと, 前記部門のうちのどの部門とどの部門とを合わせて仮想会社とするかを定義した合算会社変換マスタDBと, 前記合算会社変換マスタDBに定義してある前記仮想会社を構成する前記部門の会計データを,前記仕訳明細DBから読み出して合算し,該仮想会社の連結財務諸表を作成する財務諸表作成手段とを備え, 前記合算会社変換マスタDBでは,前記仮想会社を構成する部門の定義にあたって,各会社のすべての事業所を表すための事業所コードとして「ALL」を用いて,各会社の部門を問わない場合には部門コードとして「*」を用いており, 前記財務諸表作成手段は,前記合算会社変換マスタDB内の前記「*」および前記「ALL」に基づいて仮想会社の構成を決定し,該構成された仮想会社の連結財務諸表を作成することを特徴とする会計情報システム。」 となった。(アンダーラインは,補正された部分を示すものとして,手続補正書に表示されたものを援用したものである。) 本件補正前と本件補正後の特許請求の範囲の各請求項の記載からみて,本件補正後の請求項1は本件補正前の請求項1を補正したものと認められ,本件補正前の請求項1を本件補正後の請求項1にする本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当すると認められる。 そこで,本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-250382号公報(以下「引用例」という。)には,仮想損益計算装置に関して,以下(a)?(e)の記載がある。 (a)「【0002】【従来の技術】損益計算は,企業,及び,団体,すなわち事業体における収益と費用の関係を会計規則に則って表示するものであり,その結果は損益計算書として,経営上最も重要な会計帳票のひとつとなっている。 【0003】一般的に言われる財務会計の考え方では,損益計算は事業体での決められた組織体系に従って,各組織とその合計,又は,その頂点である事業体で発生した損益をまとめあげて表示するのが通例である。」 (b)「【0005】【発明が解決しようとする課題】従来では,上記の計算は固定化された一定の組織体系に従って積上げを行っている。これは,一般的な財務会計の考え方からすれば,現状の組織体系における損益をチェックするということであり,当然ながら必要なことである。しかし,企業活動が高度化するに伴って,そのような単純なチェックだけでは済まされなくなり,多角的な方面から損益の構造を分析し,把握することが必要となって来ている。その為には,既存の組織体系の枠を越えた様々な組織の連結を仮想することが出来れば理想的である。」 (c)「【0009】なお,ここで作成例として上げる仮想損益計算は,ある会社において,基本的な損益計算の他に,仮に部門の組合せを替えた場合,どのような損益の構造が表れるかを考えて作成した損益計算書という内容である。」 (d)「【0010】まず,計算の基礎である各組織の損益を,組織,損益発生金額の順で,入力装置11より入力し,入力ファイル12に格納する。また,別にその組織をどのように組み替えるかの考え方を,個々の組織とその積上げ先となる仮想組織という組合せで構築した上で,同様に入力装置11より入力し,制御ファイル13に格納する。以上の前準備を経て,仮想損益計算を行うこととなる。まず,入力ファイル12を一件読み込み,入力データ記憶領域15に格納する。次に,入力データ記憶領域15の中の組織をキーに,制御ファイル13より組織の積上げ情報を読み込み,制御データ記憶領域16へ格納する。さらに,制御データ記憶領域16の組織積上げ情報に入っている各組織,及び仮想組織をキーとして,出力ファイル18から同一キーのレコードを読み込み,それぞれレコード別に,出力データ記憶領域17に格納する。もし,出力ファイル18にキーに該当するレコードが無い場合は,キー部のみのレコード領域を,出力データ領域17に追加作成する。さて,記憶領域への展開が終われば,次は,入力データ記憶領域15の損益発生金額を,出力データ記憶領域17のそれぞれのレコードの損益発生金額合計に,積上げ更新する。仮想損益計算が終了すれば,出力データ記憶領域17のそれぞれのレコードを,元の出力ファイル18へ,有れば更新出力,無ければ追加出力する。上記過程により生成(計算)された出力ファイル18を元に,出力装置19を通して実際の損益計算書等の様式で出力させる。」 (e)「【0011】【発明の効果】以上,説明したように本発明は,仮定される組織の組合せとそのつながり(積み上がり)の情報を登録しておくことにより,現実には存在しない多様な組織の組合せによる損益を作成することができ,今後の事業展開に向けての効果的な組織改正の組合せを考案できるなど,企業活動をより活動的に運営するのに多大な効果を示すものである。」 上記(a)?(e)の記載及び図面の記載から,引用例には, 「会社等の上部組織を構成する複数の部門等の下部組織の各損益発生金額情報を格納した入力ファイルと, 個々の下部組織とその積上げ先となる仮想上部組織との組合せを記述する仮想組織積上情報を格納した制御ファイルと, 制御ファイルから読み出した仮想組織積上情報にしたがって,入力ファイルから読み出した個々の下部組織の損益発生金額情報を累計して,仮想上部組織の損益計算書を作成する処理手段と を備える仮想損益計算装置。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められ,図1をみると, 階層構造をなす下部組織で上部組織を構成すること も記載されていると認められ,さらに,上記(b)をみると, 既存の組織体系の枠を越えた様々な組織の連結を仮想すること も示唆されていると認められる。 小泉修著,図解でわかるデータベースのすべて,日本,株式会社日本実業出版社,1999年10月10日初版第4刷発行,201?203頁(以下「周知例1」という。)には,SQLの問合せ処理に関して,「通常,表を取り出して参照する場合には,SELECTに続けて参照したい列名,さらにそれに続けてFROMと参照すべき列の存在する表名を記述します。また,もし全列を参照する場合には,”*”と書くことが可能です。」(202頁11?13行)と記載されている。 1 対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると, (イ)引用発明の「会社等の上部組織を構成する複数の部門等の下部組織」は,本願補正発明の「複数会社の複数事業所の複数部門」と「上部組織を構成する複数下部組織」として共通し, (ロ)引用発明の「損益発生金額情報」は,本願補正発明の「会計データである仕訳明細」と「会計データ」として共通し, (ハ)引用発明の「入力ファイル」は,その機能からみて,本願補正発明の「仕訳明細DB」と「会計データ情報記憶手段」として共通し, (ニ)引用発明の「仮想上位組織」は,本願補正発明の「仮想会社」と「仮想上位組織」として共通し, (ホ)引用発明の「制御ファイル」は,その機能からみて,本願補正発明の「合算会社マスタDB」と「定義情報記憶手段」として共通し, (ヘ)引用発明の「損益計算書」は,本願補正発明の「連結財務諸表」と財務会計上の書類すなわち「財務会計書類」として共通し, (ト)引用発明の「処理手段」は,その機能からみて,本願補正発明の「財務諸表作成手段」と「財務会計書類作成手段」として共通し, (チ)引用発明の「仮想損益計算装置」は,その機能からみて,本願補正発明の「会計情報システム」と「会計情報システム」として共通している。 したがって,両者は, 「コンピュータを用いて,会計データに基づいて財務会計書類を作成する会計情報システムにおいて, 上部組織を構成する複数下部組織ごとの会計データを記憶する会計データ情報記憶手段と, 前記下部組織のうちのどの下部組織とどの下部組織とを合わせて仮想上部組織とするかを定義した定義情報記憶手段と, 前記定義記憶手段に定義してある前記仮想上部組織を構成する前記下部組織の会計データを,前記会計データ記憶手段から読み出して合算し,該仮想上部組織の財務会計書類を作成する財務会計書類作成手段と を備えたことを特徴とする会計情報システム。」 である点で一致し,以下の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明は,各情報記憶手段がDBであるのに対して,引用発明は,そうではない点。 [相違点2] 本願補正発明は,仕訳明細DBが,複数会社の複数事業所の複数部門ごとの会計データである仕訳明細を記憶し,合算会社変換マスタDBが,前記部門のうちのどの部門とどの部門とを合わせて仮想会社とするかを定義し,財務諸表作成手段が,前記合算会社変換マスタDBに定義してある前記仮想会社を構成する前記部門の会計データを,前記仕訳明細DBから読み出して合算し,該仮想会社の連結財務諸表を作成するものであるのに対して,引用発明は,会計データ情報記憶手段が,上部組織を構成する複数下部組織ごとの各損益発生金額情報を記憶し,定義情報記憶手段が,前記下部組織のうちのどの下部組織とどの下部組織とを合わせて仮想上部組織とするかを定義し,財務会計書類作成手段が,前記定義記憶手段に定義してある前記仮想上部組織を構成する前記下部組織の損益発生金額情報を,前記会計データ記憶手段から読み出して合算し,該仮想上部組織の損益計算書を作成するものである点。 [相違点3] 本願補正発明は,合算会社変換マスタDBが,仮想会社を構成する部門の定義にあたって,各会社のすべての事業所を表すための事業所コードとして「ALL」を用いて,各会社の部門を問わない場合には部門コードとして「*」を用いており,財務諸表作成手段が,前記合算会社変換マスタDB内の前記「*」および前記「ALL」に基づいて仮想会社の構成を決定し,該構成された仮想会社の連結財務諸表を作成するのに対して,引用発明は,そうではない点。 4 判断 [相違点1]について検討する。 情報を記憶するのにDBに記憶することが例示するまでもなく周知のことであるから,引用発明において,各情報記憶手段をDBとすることは,当業者が格別に思考することなくなし得たことである。 [相違点2,3]について検討する。 引用例には,階層構造をなす下部組織で上部組織を構成することも記載されており,一方で,会社を複数事業所で構成し事業所を複数部門で構成することが例示するまでもなく周知のことであり,さらに,引用例には,既存の組織体系の枠を越えた様々な組織の連結を仮想することも示唆されており,一方で,企業グループを単一の事業体とみなして決算を行い連結財務諸表を作成すること,仕訳明細を用いて決算を行うことのいずれもが例示するまでもなく周知のことであるから,引用発明において,上部組織を構成する複数下部組織を複数会社の複数事業所の複数部門とし仮想上部組織を仮想会社として各部門の会計データである仕訳明細を用いて仮想会社の連結財務諸表を作成するべく,会計データ情報記憶手段を,複数会社の複数事業所の複数部門ごとの会計データである仕訳明細を記憶する仕訳明細DBとし,定義情報記憶手段を,前記部門のうちのどの部門とどの部門とを合わせて仮想会社とするかを定義する合算会社変換マスタDBとし,財務会計書類作成手段を,前記合算会社変換マスタDBに定義してある前記仮想会社を構成する前記部門の会計データを,前記仕訳明細DBから読み出して合算し,該仮想会社の連結財務諸表を作成する財務諸表作成手段とすることは,当業者が容易になし得たことである。 その際に,例えば周知例にみられるように,ある集合に属するすべての要素を指定するのに,すべての要素の識別子を記述して指定するかわりに,取り決められた特定の記号を用いて指定することが周知のことであり,異なる集合に応じて異なる特定の記号や文字列を用いることは当業者が格別に思考することなく推考し得ることであるから,合算会社変換マスタDBが,仮想会社を構成する部門の定義にあたって,各会社のすべての事業所を表すための事業所コードとして「ALL」を用いて,各会社の部門を問わない場合には部門コードとして「*」を用いており,財務諸表作成手段が,前記合算会社変換マスタDB内の前記「*」および前記「ALL」に基づいて仮想会社の構成を決定し,該構成された仮想会社の連結財務諸表を作成するようにして,本願補正発明のようにすることは,当業者が容易に想到し得たことである。 そして,本願補正発明の作用効果も,引用発明及び周知の事項の作用効果から,当業者が容易に予測し得たことである。 したがって,本願補正発明は,引用発明及び周知の事項から,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5 むすび 以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成19年4月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成18年10月13日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 コンピュータを用いて,会計データに基づいて財務諸表を作成する会計情報システムにおいて, 複数会社の複数事業所の複数部門ごとの会計データである仕訳明細を記憶する仕訳明細DBと, 前記部門のうちのどの部門とどの部門とを合わせて仮想会社とするかを定義した合算会社変換マスタDBと, 前記合算会社変換マスタDBに定義してある前記仮想会社を構成する前記部門の会計データを,前記仕訳明細DBから読み出して合算し,該仮想会社の連結財務諸表を作成する財務諸表作成手段と を備えたことを特徴とする会計情報システム。」 2 引用例 原査定の拒絶理由に引用された引用例及び該引用例に記載された事項は,上記第2の2に記載したとおりである。 3 対比・判断 上記第2で検討した本願補正発明は,本願発明の「合算会社変換マスタDB」について『前記合算会社変換マスタDBでは,前記仮想会社を構成する部門の定義にあたって,各会社のすべての事業所を表すための事業所コードとして「ALL」を用いて,各会社の部門を問わない場合には部門コードとして「*」を用いており』と限定し,「財務諸表作成手段」について『前記財務諸表作成手段は,前記合算会社変換マスタDB内の前記「*」および前記「ALL」に基づいて仮想会社の構成を決定し,該構成された仮想会社の連結財務諸表を作成する』と限定したものである。 そうすると,本願発明の構成を全て含み,さらに構成を限定した本願補正発明が,上記第2の4に記載したとおり,引用発明及び周知の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明及び周知の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび したがって,本願発明は,引用発明及び周知の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-02-17 |
結審通知日 | 2010-02-23 |
審決日 | 2010-03-08 |
出願番号 | 特願2004-11696(P2004-11696) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川口 美樹 |
特許庁審判長 |
手島 聖治 |
特許庁審判官 |
山本 穂積 小林 義晴 |
発明の名称 | 会計情報システム |
代理人 | 鈴木 弘男 |