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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 F02B
管理番号 1215356
審判番号 不服2008-2176  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-29 
確定日 2010-04-22 
事件の表示 特願2001-219322「過給機付きエンジンを搭載した小型滑走艇」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月 7日出願公開、特開2003- 35154〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年7月19日の出願であって、平成18年9月22日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月12日に意見書及び手続補正書が提出され、平成19年1月26日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年3月16日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月25日付けで上記同年3月16日に提出された手続補正書による明細書及び図面の補正が却下されるとともに同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年1月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。


2.本願明細書の補正について
(1)本願明細書
平成19年3月16日に提出された手続補正書による明細書及び図面についての補正は上記の通り却下されたので、本願明細書は、平成18年10月12日に提出された手続補正書により補正されたものである。

(2)新規事項について
平成18年10月12日に提出された手続補正書により補正された本願明細書の特許請求の範囲の請求項1及び発明の詳細な説明の段落【0005】に記載された「過給機の軸受け部の潤滑を行ったオイルの出口と,過給機の軸受けケーシングの冷却を行ったオイルの出口とを別個に設けた」なる点は、原審において平成19年1月26日付けで通知した最後の拒絶の理由に示したとおり、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載された範囲にない事項である。

<原審における平成19年1月26日付けの最後の拒絶理由通知の概略>
オイルジャケット146に設けられたオイル出口146a、146bについて、本願当初明細書等の段落【0029】の記載からみて、「軸受け部の潤滑を行ったオイル」と「ケーシングの冷却を行ったオイル」はオイルジャケット146内にて合流した後、出口146a及び146bから排出されるものと解されるものの、各オイル出口146a、146bについて、「軸受け部の潤滑を行ったオイルの出口」と「軸受けケーシングの冷却を行ったオイルの出口」とを「別個に設けた」ことまで、当初明細書等に記載されていたものとは解されず、また当該2つのオイル出口146a、146bを「別個に設けた」ことが、当初明細書等の記載から自明なこととも認められないので、平成18年10月12日に提出された手続補正書によりなした明細書の補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものではない。
なお、本願当初明細書等の図9が開示する正確な技術を把握することはできない。

<当審の判断>
1)当初明細書等に記載されていた事項
当初明細書等において、発明の詳細な説明及び図面には次のようなことが記載されていた。

a)「ターボチャージャ140のタービン軸受けの冷却および潤滑を行ったオイルは、パイプ25b、25c(図6参照)を経てオイルパン28に回収される。」(段落【0026】)

b)「オイルジャケット146のオイルは、オイルジャケット146のオイル出口146a、および146bから前述したパイプ25b、25c(図6参照)を経てオイルパン28に回収される。また、軸受け部142のオイルは、その出口142bから一旦オイルジャケット146内に入り、前記オイルジャケット146の出口146aおよび146bから前述したパイプ25b、25c(図6参照)を経てオイルパン28に回収される。」(段落【0029】)

c)「過給機140におけるオイル出口146a、146bを、エンジン停止時のオイル面O1より上方に配置してあるので、エンジン20を停止すると(したがってオイルポンプ80の作動が停止すると)、過給機140内のオイルがオイル出口146a、146bから速やかに排出されることとなる。
したがって、エンジン停止後において過給機140内に滞留するオイルを極力少なくしてオイル全体の劣化を低減させることができる。」(段落【0033】)

d)図6には、上記a)の記載に対応して、ターボチャージャ140の下部に出口146a、146b及びパイプ25b、25cが配置されていることが開示されている。

e)図9には、「TURBOCHARGER」なる波線で示されるボックス内に「タービン軸受(冷却)」及び「タービン軸受(潤滑)」なる実線で示される2つのボックスが記載されているとともに、「タービン軸受(冷却)」なるボックスの左側を始端とし「ストレーナスクリーン(パン)」の上側を終端とする「矢印」、及び「タービン軸受(潤滑)」の下側を始端とし、52,52なる符号が付された矢印への接続点を終端とする「矢印」が、記載されている。

f)図10には、「軸受けケーシング141」の下方に「オイル出口146a」が実線で示され、また「オイル出口146b」が波線で円状に描かれている。

g)以上のa)ないしd)及びf)の記載を勘案すると、過給機若しくはその軸受けケーシング141乃至軸受け部142に供給されたオイルは、オイル出口146a及び146bからパイプ25b及び25cを経てオイルパンに回収されること、及び「軸受け部142」に供給されたオイルは「オイルジャケット146」に入り、当該「オイルジャケット146」を経て「出口146a及び146b」から「オイルパン28」に回収されるものであること、が開示されていたとはいえる。

h)一方、e)に挙げた図9については、発明の詳細な説明の段落【0027】等の記載を参酌すれば、一応オイルの流通経路を概略的に示すものであることは理解可能であるが、ターボチャージャ(過給機)140におけるオイルジャケット146、オイル出口146a及び146b、パイプ25b、25c等の具体的配置を示すものではない。

2)当審の判断
上記1)の通り、「軸受け部142」のオイルが、オイルジャケット146を経て「オイル出口146a」及び「オイル出口146b」からオイルパン28に回収されることは記載されているが当該「オイル出口146a」及び「オイル出口146b」について、「軸受け部の潤滑を行ったオイルの出口」と「軸受けケーシングの冷却を行った出口」とを「別個に設けた」ことまでは記載されていたとはいえない。

なお、図9の記載については、上記の「矢印」については発明の詳細な説明の記載において何ら説明がなく、技術的に不自然なこと(矢印の終端の位置がオイルポンプ(スカベジング)80へ向かう回収路51乃至パイプ52に接続されるように記載されていることは、疑義がある)を含む極めて漫然としたものにすぎず、発明の詳細な説明の段落【0029】及び図10等に明示して記載された内容と比べ明らかに明確性に欠けるものであるから、上記の補正が図9の記載から明らか、という平成18年10月12日に提出された意見書及び審判請求書における請求人の主張は妥当なものとはいえない。

また、請求人は、審判請求書において、当初明細書等の段落【0029】及び図10の記載は技術常識に反するものであるから誤記であったと主張するが、図10の記載において一部不明りょうな記載があるものの、請求人が誤記であるとする根拠も明らかでなく、過給機に関する本願出願前の技術常識(例えば、特開平7-174029号公報、特開平9-217630号公報、特開平6-66298号公報、実願昭53-155870号(実開昭55-76433号)のマイクロフィルム等参照)を考慮すれば、格別技術常識に反することはなく一応の理解は可能なものであり、請求人の主張は根拠がない。

以上のことに鑑みて、上記手続補正書によりなした明細書の補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなしたものとは認められない。

(3)むすび
したがって、平成18年10月12日に提出された手続補正書による明細書の補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-01 
結審通知日 2010-02-02 
審決日 2010-03-09 
出願番号 特願2001-219322(P2001-219322)
審決分類 P 1 8・ 55- Z (F02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 粟倉 裕二  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 柳田 利夫
河端 賢
発明の名称 過給機付きエンジンを搭載した小型滑走艇  
代理人 佐渡 昇  

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