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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01C
管理番号 1215762
審判番号 不服2008-3580  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-14 
確定日 2010-04-30 
事件の表示 特願2002-295228「ナビゲーション装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月30日出願公開、特開2004-132741〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年10月8日の出願であって、平成20年1月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、さらに、平成21年8月4日付けで当審における拒絶理由が通知され、これに対し、同年9月18日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年9月18日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。

「複数のオーディオソースの再生機能を有し、案内地図情報を表示部の画面上に表示して道案内を行うナビゲーション装置であって、
オーディオ動作を制御するための操作メニュー画面の表示を指示する操作入力部と、
前記操作入力部による操作メニュー画面の表示指示があると、前記案内地図情報が表示された画面において当該画面の縁部の近傍に、一のオーディオソースに対応する操作メニュー画面を前記案内地図情報の表示を妨げない程度の大きさで当該案内地図情報が表示された画面上に重畳的に表示させ、当該一のオーディオソースに対応する操作メニュー画面の表示中に前記操作入力部が操作されると、現在表示中のオーディオソースに対応する操作メニュー画面を消去し、他のオーディオソースに対応する操作メニュー画面を表示させる表示制御部と、
前記表示制御部によって表示された操作メニュー画面に対する操作に応じてオーディオ動作を制御するオーディオ動作制御部と、を備え、
前記操作入力部による操作メニュー画面の表示指示及び前記一のオーディオソースに対応する操作メニュー画面の表示中における前記操作入力部の操作は、前記表示部の筐体に形成された単一のキー釦の操作により行われることを特徴とするナビゲーション装置。」


3.引用例
(3-1)引用例1
当審における拒絶の理由に引用された特開平3-137686号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「〔従来の技術〕
自動車等の移動体に装備されるナビゲーション装置は、一般に全国地図や複数に分割された地域地図等を地図情報として地図記憶手段に記憶しておき、操作者の要求に応じて上記地図情報を読出してタッチパネル装置を構成するブラウン管等の表示器に表示することにより、走行のための地図を提供するようになっている。
また、このタッチパネル装置は、表示器の画面にTV映像を表示できるようになっており、このTVや上記ナビゲーション等の機能を任意に選択するために、表示器の前面パネルにファンクションキーを配設している。最近では、このファンクションキーに加え、画面に操作キーをパターン表示したタッチスイッチも広く採用されている。この種のタッチスイッチとしては、画面に複数のエリヤを設け、このエリヤを指でタッチしたとき、赤外光がしゃ断されて、駆動信号を出力する方式が一般で、操作用のスイッチパターンは画面の内周部に設けられるようになっている。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところが、この種のタッチパネル装置におけるスイッチパターンは、ナビゲーションのための地図やTVを映し出す際には上記画面の所定エリヤに表示されるので、このときに表示されているナビゲーションのための地図もしくはTVの映像がスイッチパターンに隠れてしまうという難点があった。従って、画面の視野が狭くなることから、視認性に劣ると共に、必要な情報を得ることができない場合も生じるといった問題が残されていた。
この発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、表示器の画面にスイッチパターンが表示されてから、所定時間内にスイッチパターンが操作されないときは、このスイッチパターンを画面から消去させることにより、画面に表示される情報の視認性を高め得るタッチパネル装置を提供することを目的としている。
〔課題を解決するための手段〕
この発明に係るタッチパネル装置は、画面を有した表示器、上記画面に所望の情報を表示させる情報表示手段、上記画面に表示された情報に重ねて所定のスイッチパターンを表示すると共に、このスイッチパターンから所定範囲内に物体が接近したことを検知して所定の制御動作を実行するスイッチ手段、このスイッチ手段により上記スイッチパターンを表示した後、所定時間後に上記スイッチパターンを消去する消去手段、上記画面から所定範囲に物体が接近したことを検知すると上記スイッチ手段によるスイッチパターンの表示を開始させるスイッチパターン表示開始手段を備えたものである。
〔作用〕
この発明は、画面にナビゲーション用の地図やTV等の情報が表示され、さらにその上に重ねてスイッチパターンが表示されている状態において、スイッチパターンに操作のための物体を接近させると、スイッチ手段が制御動作を実行しそのスイッチパターンに予め割当てられていた役割に応じてその機能を果たす。
この後、スイッチパターンが操作されずに所定時間が経過すると、画面に表示されていたスイッチパターンが消去される。よって、画面の視野が広がるから全ての情報を得ることができるものである。」(1頁右下欄5行?2頁左下欄8行)

・「(2)は第1の I/Oインタフェース回路であり、車両の走行を案内するナビゲーション(11)、道路状況を受信する交通情報(12)、自動車用の無線電話(13)、室内空調用のエアコン(14)、映像音響源であるテレビ(15)、ラジオ(16)、テープ(17)およびCD(18)の各モードをファンクションスイッチ(SW1)?(SW8)を介して選択可能とするものである。このファンクションスイッチ(SW1)?(SW8)は、第2図に示すCRT(26)の前面パネル(26b)に配設されており、押圧操作によって駆動信号をCPU(7)に与え、各機器を動作させるようになっている。」(2頁左下欄20行?同頁右下欄10行)

・「(7)はCPUであり、上記ファンクションスイッチ(SW1)?(SW8)の選択操作に基づいて映像音響機器の動作を制御すると共に、上記CD・ROM(25a)から地図情報等を読出してCRT(26)の画面(26a)に表示させるための制御信号をCRT・C(9)に与える。」(3頁左下欄4?8行)

・「(26)は表示器であるCRTであって、上記CRT・C(9)からの映像信号と同期信号とによって特定地区の地図、走行経路および現在位置等をカラー表示するものである。また、後述のタッチスイッチ部の各種操作キーが所定のタッチエリヤに表示されるうえ、上記ファンクションスイッチ(SW5)の押圧操作によりテレビチューナ(22)をオンにしてテレビ映像の表示も可能となっている。」(4頁右上欄16行?同頁左下欄3行)

・「(27)、(29)は出力ポート(6)を介してCPU(7)に接続された発光部、(28)、(30)は入力ポート(5)を介してCPU(7)に接続された受光部であり、上記CRT(26)の表面に配設されていて、スイッチ手段であるタッチスイッチ(31)のタッチパネル部を構成するものである。なお、このタッチパネル部は図示省略しているが行方向と列方向とでなるタッチエリヤを多数に分割しており、このタッチエリヤのうち特定のタッチエリヤがタッチ操作されたとき、行方向と列方向との交点を通過する赤外光がしゃ断されて、各種の指示を与える駆動信号が出力されるようになっている。具体的には、画面(26a)をタッチすると画面(26a)の内周部に上記操作パターンが表示され、さらに、このパターンの何れかをタッチすると各機器の動作開始や停止の設定、時間や数値等の設定を行うことができるものである。」(4頁左下欄4行?20行)

・「まず、自動車の運転開始時にキースイッチをオンすると、車載バッテリからの電源供給を受けて各部の電気系が作動状態となる。そして、制御部(1)のCPU(7)がパワーオンされると安定化電源によって作動し、第4図に示すフローチャートのステップS11において初期化が行われ、同図のメインルーチンに示す演算処理が数10msec程度の周期で繰り返される。つぎに、ステップS12でファンクションキー処理が行われ、続いて、ステップS13によりタッチスイッチの入力処理が行われる。この際、ステップS14において、例えば操作者がラジオ(16)やエアコン(14)等のファンクションスイッチ(SW6)、(SW4)を押圧操作すると、ステップS15に進みCRT(26)の画面(26a)には、第5図に示すようなラジオモードのパターンまたは第6図に示すエアコンモードのパターンが表示される。そして、各々のモードの表示画面に設けられたスイッチパターンをタッチすると、選択した機器を所望の設定通りに動作させることができる。」(4頁右下欄4行?5頁左上欄2行)

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。

「テレビチューナ(22)、ラジオチューナ(23)、テープデッキ(24)及びCDデッキ(25)の動作を制御すると共に、地図および自動車の現在位置、走行軌跡等をCRT(26)の画面(26a)に表示して、運転者に走行情報を提供するナビゲーション装置であって、
テレビチューナ(22)、ラジオチューナ(23)、テープデッキ(24)及びCDデッキ(25)の動作を制御するためのスイッチパターンの表示を指示するファンクションスイッチ(SW5)?(SW8)と、
前記ファンクションスイッチ(SW5)?(SW8)によるテレビ、ラジオ、テープ及びCDの各モードのスイッチパターンのいずれかを表示させる指示があると、一のモードのスイッチパターンを表示させ、表示された一のモードのスイッチパターンに対する操作に応じて、テレビチューナ(22)、ラジオチューナ(23)、テープデッキ(24)及びCDデッキ(25)のいずれかの動作を制御する制御部(1)と、を備え、
前記ファンクションスイッチ(SW5)?(SW8)によるテレビ、ラジオ、テープ及びCDの各モードのスイッチパターンのいずれかを表示させる指示は、前記CRT(26)の前面パネル(26b)に配設されたファンクションスイッチ(SW5)?(SW8)の押圧操作により行われるナビゲーション装置。」

(3-2)引用例2
当審における拒絶の理由に引用された特開2001-222271号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
実施の形態1.次に実施の形態を図1乃至図6に基づいて以下に説明する。なお、図1乃至図6において、すでに図7乃至図9で既に説明した構成のものと同一のもの、又は均等なものには同一符号を付してその詳細説明は省略する。すなわち、図において、20は運転席からスイッチ操作するための第1スイッチ群、21は助手席からスイッチ操作するための第2スイッチ群で、それぞれの第1及び第2スイッチ群20,21は、図2に示されるようにセンターコンソールボックス22上のシフトレバー23の左右に設けられ、運転席側から又は助手席側から、例えばエアコンディショナシステム9、オーディオシステム10、ナビゲーションシステム11、電話送受信機24等の各種車載システムのメイン機能を作動させるためのものである。そのために、第1及び第2スイッチ群20,21は、複数のスイッチ20a?20d,21a?21dからなり、対応するスイッチ20aとスイッチ21a、スイッチ20bとスイッチ21b、スイッチ20cとスイッチ21c、スイッチ20dとスイッチ21dが同一機能を有するように設定されている。
【0014】すなわち、前記スイッチ20a,21aはエアコンディショナシステム9用のスイッチ、スイッチ20b,21bはオーディオシステム10用のスイッチ、スイッチ20c,21cは電話送受信機用のスイッチ、スイッチ20d,21dはナビゲーションシステム11用のスイッチである。」

・「【0016】26は選択回路で、前記第1及び第2スイッチ群20,21からの出力を入力して、何れのスイッチ20a?20d,21a?21dがオン操作されたかを判断して、その判断結果を後述の制御部28に供給する。換言すると、同一機能の前記スイッチ20aとスイッチ21a、またスイッチ20bとスイッチ21b、さらにスイッチ20cとスイッチ21c、またさらにスイッチ20dとスイッチ21dの何れのスイッチがオン操作されたかを判断して、どの機能を作動させるための信号かを出力する。」

・「【0017】27はタッチパネルスイッチで、モニタ8の表示面に設けられており、図3及び図4に示されるように前記モニタ8の表示面に表示された複数のスイッチ機能表示部27a?27dの何れかを押圧操作することによってスイッチ入力が行われ、そのスイッチ操作によって何の機能が選択されたかを制御部28に供給する。
【0018】なお、前記スイッチ機能表示部27a?27dは、図5に示されるように階層構造が取られており、通常時は図3(A)に示されるようにモニタ8の表示面には前記複数のスイッチ機能表示部27a?27dの何れも表示されていないが、前記第1及び第2スイッチ群20,21の内の所定のスイッチ、例えばスイッチ20c、または21cを操作することによって図3(A)に示されるようにそのスイッチ操作された機能に対応する画像、例えばナビゲーションが表示される。また、それと同時に図3(B)に示されるように複数のスイッチ機能表示部27a?27dが、図3(A)に示す画像に重複して表示されると共に、図4に示されるように表示面での表示位置が左側又は右側に替えられる。」

・「【0022】次に、上記構成のマイクロコンピュータ30の作動を図6に示すフローチャートに基づいて以下に説明する。すなわち、マイクロコンピュータ30が作動すると、ステップST100からステップST110に進み、図3(A)に示すように初期画面として地図情報が表示され、次のステップST120で第1及び第2スイッチ群20,21のスイッチ20a?20d,21a?21dの何れかがスイッチ操作され選択回路26から制御部28にスイッチ信号が供給されるのを待つ。
【0023】制御部28が、ステップST120でスイッチ操作があったと判断すると、ステップST130において、運転席側に設けられた第1スイッチ群20のスイッチ20a?20dがオン操作されたのか、又は助手席側の第2スイッチ群21のスイッチ21a?21dがオン操作されたのかを供給されてきた信号に基づいて判断し、運転席側に設けられた第1スイッチ群20のスイッチ20a?20dがオン操作されたと判断すると、ステップST160及び170で、モニタ8に表示されるスイッチ機能表示部27a?27dを図4に示すように表示面の右側に表示すると共に、地図情報を左方向に所定量スクロールして表示する。
【0024】またステップST130において、助手席側の第2スイッチ群21のスイッチ21a?21dがオン操作されたと判断すると、ステップST140及び150で、モニタ8に表示されるスイッチ機能表示部27a?27dを図3(B),(C),(D)に示すように表示面の左側に表示すると共に、地図情報を右方向に所定量スクロールして表示する。
【0025】次のステップST180で、モニタ8にメニュー表示された前記スイッチ機能表示部27a?27dの何れが選択されたかをタッチパネルスイッチ27からの信号で読み取り、ステップST190ではステップST180で読み取られたメニュー、例えばスイッチ機能表示部27bの機能にサブメニュー(下の階層メニュー)があるか否かを制御部28に内蔵されたROMから読み取り、サブメニューがあれば、ステップST200に進み、図2(C)に示されるように現在メニュー表示されているスイッチ機能表示部27a?27dを縮小表示し、ステップST210でサブメニューを表示して、ステップST180に戻る。
【0026】一方、ステップST190でサブメニューがない場合には、ステップST220に進み、ステップST180で選択された機能、すなわちエアコン表示、オーディオ表示、電話送受信表示又はナビゲーション表示が行われると共に、第1階層のメニュー表示が行われ、ステップST230で前記スイッチ機能表示部27a?27dの何れかが選択されるのを待ち、何れのスイッチ機能表示部27a?27c又は27dが押圧操作されたと判断すると、ステップST240で表示されているメニューを消去し、次のステップST250で表示画像の中心線を表示画面の中心線に一致させ、ステップST110に戻る。
【0027】
【発明の効果】この発明によれば、表示器の表示面にメニュー表示されるスイッチ操作表示部を簡単な方法で、表示面のスイッチ操作しやすい位置に容易に切り替え表示できるという効果が発揮される。
【0028】この発明によれば、スイッチ操作表示部の階層が深くなるに伴って階層の浅い方のスイッチ操作表示部の表示面積が小さくなるので、表示面積を必要以上に取らなくて済むという効果が発揮される。また、表示面積が最小必要なだけしか占有しないので、階層を深くできるという効果が発揮される。」

・図3及び図4には、地図情報にスイッチ機能表示部27a?27dを重畳して表示することが示されている。

(3-3)引用例3
当審における拒絶の理由に引用された特開平11-283184号公報(以下「引用例3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「【0007】本発明は上記の点に鑑みてなされたものでその目的は、情報画像確認の邪魔にならず、1回の操作でサイマル動作情報表示を確認でき、車の運転中の安全性を向上させることができる車載用音響映像機器のサイマル動作情報表示システムを提供することにある。」

・「【0019】前記表示制御部6は、サイマル動作、すなわち前記オーディオユニット群1と前記情報作成ユニット群2が同時に動作しているときに、前記操作キーの操作に応じて、図2(b)に示すような前記情報作成ユニット群2で作成された画像情報と前記表示画像作成部5で描画された動作情報画像とを前記ディスプレイ上に重ね合わせて表示させる。この際表示制御部6には、図2(b)に示す動作情報画像の重ね合わせ表示を一定時間のみ行うように表示制御する機能を有している。
【0020】図3はサイマル動作中の第1の表示例を示している。図3において、まず図3(a)のようにディスプレイには情報画像(地図)が表示されていて、オーディオとしてはCDが選択されているものとする。ここでCDの操作キーを押下すると、図3(b)のようにディスプレイの画面右上端に、CDの動作情報画像が地図上に重ね合わせられてサイマル動作情報表示される。そして一定時間後、サイマル動作情報表示が消えて、ディスプレイには図3(a)のように地図のみが表示される。
【0021】図4はサイマル動作中の第2の表示例を示している。まずディスプレイには前記と同様に図3(a)のように情報画像(地図)が表示されていて、オーディオとしてはCDが選択されているものとする。ここでCDの操作キーを押下すると、図4(a)→図4(b)のようにディスプレイの画面右端に、CDの動作情報画像が画面右側から左側へスクロール表示され、地図上に重ね合わせられる。このサイマル動作情報表示が図4(c)のように全て表示されると、表示画面は一定時間静止する。そして一定時間経過後、サイマル動作情報表示は図4(b)→図4(a)のように画面右側にスクロールして消え、ディスプレイには前記図3(a)のように地図のみが表示される。」

・図1?4には、地図が表示された画面の縁部の近傍に、CDに関する表示を、当該地図が表示された画面上に重畳的に表示することが示されている。

(3-4)引用例4
当審における拒絶の理由に引用された特開2002-176595号公報(以下「引用例4」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「【0087】以上のように、本実施の形態では、図7に示されるような地図表示画面を表示していても、この地図表示画面中に機能切換ボタン56?58が表示され、更に、これらの機能切換ボタン56?58の何れかに対応したタッチ信号を制御部22が受信することで、空調操作、オーディオ操作、及び車両状態確認の何れかのプログラムに対応した画面に切り換えることができるため、これらの空調操作、オーディオ操作、及び車両状態確認等に属する各操作(作業)の操作性を向上できる。」

・図7には、地図が表示された画面の縁部の近傍に、空調、オーディオ及び車両状態に関する表示を、当該地図が表示された画面上に重畳的に表示することが示されている。


4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを、その機能・作用を考慮して対比する。

・後者の「テレビチューナ(22)、ラジオチューナ(23)、テープデッキ(24)及びCDデッキ(25)の動作を制御する」態様は、前者の「複数のオーディオソースの再生機能を有」する態様に相当し、以下、同様に、「地図および自動車の現在位置、走行軌跡等」は「案内地図情報」に、「CRT(26)」は「表示部」に、「画面(26a)に表示」する態様は「画面上に表示」する態様に、「運転者に走行情報を提供する」態様は「道案内を行う」態様にそれぞれ相当するから、後者の「テレビチューナ(22)、ラジオチューナ(23)、テープデッキ(24)及びCDデッキ(25)の動作を制御すると共に、地図および自動車の現在位置、走行軌跡等をCRT(26)の画面(26a)に表示して、運転者に走行情報を提供する」態様は、前者の「複数のオーディオソースの再生機能を有し、案内地図情報を表示部の画面上に表示して道案内を行う」態様に相当する。

・後者の「テレビチューナ(22)、ラジオチューナ(23)、テープデッキ(24)及びCDデッキ(25)の動作を制御するためのスイッチパターン」は、前者の「オーディオ動作を制御するための操作メニュー画面」に相当し、後者の「ファンクションスイッチ(SW5)?(SW8)」は、前者の「操作入力部」に相当する。

・後者の「ファンクションスイッチ(SW5)?(SW8)によるテレビ、ラジオ、テープ及びCDの各モードのスイッチパターンのいずれかを表示させる指示」は、前者の「操作入力部による操作メニュー画面の表示指示」に相当し、また、後者の「一のモードのスイッチパターンを表示させる」態様と、前者の「一のオーディオソースに対応する操作メニュー画面を案内地図情報の表示を妨げない程度の大きさで当該案内地図情報が表示された画面上に重畳的に表示させ」る態様とは、「一のオーディオソースに対応する操作メニュー画面を表示させる」との概念で共通する。
そして、後者の「ファンクションスイッチ(SW5)?(SW8)によるテレビ、ラジオ、テープ及びCDの各モードのスイッチパターンのいずれかを表示させる指示があると、一のモードのスイッチパターンを表示させ」る「制御部(1)」は、前者の「表示制御部」に相当する。

・後者の「表示された一のモードのスイッチパターンに対する操作に応じて、テレビチューナ(22)、ラジオチューナ(23)、テープデッキ(24)及びCDデッキ(25)のいずれかの動作を制御する」態様は、前者の「表示制御部によって表示された操作メニュー画面に対する操作に応じてオーディオ動作を制御する」態様に相当する。
そして、後者の「制御部(1)」は、前者の「オーディオ動作制御部」に相当する。

・後者の「CRT(26)の前面パネル(26b)」は、前者の「表示部の筐体」に相当し、後者の「CRT(26)の前面パネル(26b)に配設された」態様は、前者の「表示部の筐体に形成された」態様に相当する。
また、後者の「ファンクションスイッチ」が、押圧操作されることから「キー釦」であることは明らかであり、後者の「ファンクションスイッチ(SW5)?(SW8)の押圧操作により行われる」態様と、前者の「単一のキー釦の操作により行われる」態様とは、「キー釦の操作により行われる」との概念で共通する。

したがって、両者は、
「複数のオーディオソースの再生機能を有し、案内地図情報を表示部の画面上に表示して道案内を行うナビゲーション装置であって、
オーディオ動作を制御するための操作メニュー画面の表示を指示する操作入力部と、
前記操作入力部による操作メニュー画面の表示指示があると、一のオーディオソースに対応する操作メニュー画面を表示させる表示制御部と、
前記表示制御部によって表示された操作メニュー画面に対する操作に応じてオーディオ動作を制御するオーディオ動作制御部と、を備え、
前記操作入力部による操作メニュー画面の表示指示は、前記表示部の筐体に形成されたキー釦の操作により行われるナビゲーション装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
操作メニュー画面を表示することに関し、本願発明が、「案内地図情報が表示された画面において当該画面の縁部の近傍に、一のオーディオソースに対応する操作メニュー画面を前記案内地図情報の表示を妨げない程度の大きさで当該案内地図情報が表示された画面上に重畳的に表示させ」るのに対して、引用発明では、そのような特定はされていない点。

[相違点2]
操作メニュー画面を表示することに関し、本願発明が、「一のオーディオソースに対応する操作メニュー画面の表示中に操作入力部が操作されると、現在表示中のオーディオソースに対応する操作メニュー画面を消去し、他のオーディオソースに対応する操作メニュー画面を表示させる」のに対して、引用発明では、そのような特定はされていない点。

[相違点3]
操作入力部に関し、本願発明が、「操作入力部による操作メニュー画面の表示指示及び一のオーディオソースに対応する操作メニュー画面の表示中における前記操作入力部の操作は、表示部の筐体に形成された単一のキー釦の操作により行われる」のに対して、引用発明では、操作入力部による操作メニュー画面の表示指示が、表示部の筐体に形成された複数のキー釦の操作により行われる点。

5.判断
上記相違点について検討する。
[相違点1について]
引用例2には、ナビゲーションシステムにおいて、地図情報にオーディオシステム10用の操作メニュー画面(「スイッチ機能表示部27a?27d」が相当。)を重畳して表示することが示されており、また、引用例3及び引用例4に記載があるように、ナビゲーションシステムにおいて、地図が表示された画面の縁部の近傍に、ナビゲーション以外の機能に関する表示を当該地図が表示された画面上に重畳的に表示させることは、本願の出願前に周知の事項(以下、「周知事項」という。)であるところ、これらは地図情報の確認が妨げられないことを可能とするものであって、ナビゲーションシステムという技術分野において共通する引用発明においても案内地図情報(「地図および自動車の現在位置、走行軌跡等」が相当。)の確認が妨げられないようにするのは望ましい(引用例1の2頁左上欄5行?同頁右上欄1行を参照。)のであるから、引用発明において、上記引用例2に記載された事項及び上記周知事項を適用し、案内地図情報が表示された画面において当該画面の縁部の近傍に、一のオーディオソースに対応する操作メニュー画面を前記案内地図情報が表示された画面上に重畳的に表示させるように構成することは、当業者が容易に着想し得ることと認められる。
さらに、複数の情報を表示する際に、優先する情報の表示を他の情報の表示が妨げないようにすることは通常行われていることであり、一のオーディオソースに対応する操作メニュー画面を案内地図情報の表示を妨げない程度の大きさとすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項と認められる。
してみると、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、上記引用例2に記載された事項及び上記周知事項を適用することにより、当業者が容易に想到することができたものと認められる。

[相違点2について]
複数の機能を選択可能な装置において、一の機能の実行中に他の機能が選択された場合、一の機能の実行を中止し、他の機能を実行することは、本願の出願前に常套手段であるから、引用発明において、一のオーディオソースに対応する操作メニュー画面の表示中に操作入力部が操作されると、現在表示中のオーディオソースに対応する操作メニュー画面を消去し、他のオーディオソースに対応する操作メニュー画面を表示させること、すなわち、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者が適宜なし得る設計的事項と認められる。

[相違点3について]
上記[相違点2について]の判断を踏まえれば、引用発明において、一のオーディオソースに対応する操作メニュー画面の表示中における操作入力部の操作を、表示部の筐体に形成されたキー釦の操作により行うことは当業者が適宜なし得る設計的事項といえる。
そして、複数の機能を選択可能な装置において、機能の選択を単一の釦キーの操作により行うことは、本願の出願前に慣用手段であるから、引用発明において、操作入力部による操作メニュー画面の表示指示及び一のオーディオソースに対応する操作メニュー画面の表示中における前記操作入力部の操作を、表示部の筐体に形成された単一のキー釦の操作により行われるようにすること、すなわち、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到することができたものと認められる。
上記慣用手段は、例えば、特開2001-350564号公報(特に、段落【0008】?【0011】、段落【0014】?【0023】、図2?4及び図6)及び特開平3-254492号公報(特に、2頁右下欄17行?3頁右上欄8行、第1図及び第2図)に開示されている。

そして、本願発明の全体構成により奏される作用効果は、引用発明、上記引用例2に記載された事項、上記周知事項、上記常套手段及び上記慣用手段から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、上記引用例2に記載された事項、上記周知事項、上記常套手段及び上記慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、上記引用例2に記載された事項、上記周知事項、上記常套手段及び上記慣用手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-01 
結審通知日 2010-03-02 
審決日 2010-03-15 
出願番号 特願2002-295228(P2002-295228)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 片岡 弘之  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 槙原 進
冨江 耕太郎
発明の名称 ナビゲーション装置  
代理人 荒船 博司  
代理人 荒船 良男  

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