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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1215769
審判番号 不服2008-7905  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-02 
確定日 2010-04-30 
事件の表示 特願2002- 20992「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月 5日出願公開、特開2003-220186〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成14年1月30日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成20年1月29日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、同年4月2日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年4月17日に手続補正がなされたものである。
また、当審において、平成21年11月26日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行ったが、請求人からの回答はなかった。

第二.平成20年4月17日付の手続補正書についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成20年4月17日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1(以下「本願補正発明」という。)は以下のように補正された。
「遊技に必要な図柄を変動表示する変動表示手段と、
所定の時点からのゲームの回数を計数する計数手段と、
再遊技に入賞する割合を増大させた高確率再遊技期間を発生させる状況発生手段とを備え、
前記状況発生手段は、前記計数手段の計数値が、所定の値又は当該所定の値よりも小さく且つ複数設けられた特定値になったこと、或いは、所定の役に当選したことを契機として前記高確率再遊技期間を発生させるための回数を決定し、決定した回数を積算し、前記高確率再遊技期間を発生させると決定したことを契機として、前記積算した回数に応じた回数のゲームに亘って前記高確率再遊技期間を発生させることを特徴とする遊技機。」
(下線部は補正によって変更又は追加された箇所)

2.補正要件の検討
a.補正の内容
請求項1の補正は、以下の4点((1)?(4))である。
(1)「前記計数手段の計数値が所定の値になったことを契機として、」を削除した
(2)「前記所定の値よりも小さく」に対して、「所定の値」を追加して「所定の値又は当該所定の値よりも小さく」とした
(3)「高確率再遊技期間を発生させる」ための契機として、「所定の役に当選したこと」を追加した
(4)「前記高確率再遊技期間を発生させるか否かを決定する」を「前記高確率再遊技期間を発生させるための回数を決定し、決定した回数を積算し、前記高確率再遊技期間を発生させると決定したことを契機として、前記積算した回数に応じた回数のゲームに亘って前記高確率再遊技期間を発生させる」に変更した

3.補正の目的についての検討
a.請求項1の(1)、(2)、(4)の補正について
本件補正前の平成20年1月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1(以下、「補正前の請求項1」という。)には、「前記計数手段の計数値が所定の値になったことを契機として、再遊技に入賞する割合を増大させた高確率再遊技期間を発生させる状況発生手段」との記載があり、この記載から、「計数手段の計数値が所定の値」となった場合には、少なくとも1回は「前記高確率再遊技期間を発生させる」ものとなっている。しかしながら、上記(1)の補正による削除によって、「再遊技に入賞する割合を増大させた高確率再遊技期間を発生させる状況発生手段」の記載からは、「計数手段の計数値が所定の値」となった場合には、少なくとも1回は「前記高確率再遊技期間を発生させる」ものか否かは特定できなくなってしまった。
上記(1)の補正による「所定の値」についての削除に対し、上記(2)の補正により、「所定の値」が追加されたことで、「状況発生手段」における「契機」については、本件補正によって「前記計数手段の計数値が、所定の値又は当該所定の値よりも小さく且つ複数設けられた特定値になったこと、或いは、所定の役に当選したことを契機として」と変更され、この変更によって、計数手段の計数値が「所定の値」又は「当該所定の値よりも小さく且つ複数設けられた特定値」になったこと、或いは「所定の役に当選したこと」のいずれを契機としても良いものとなった。
しかも、当該「…契機として」に続く「前記高確率再遊技期間を発生させるための回数」については、回数の範囲が特定されておらず、本願出願時の明細書及び図面(特に、段落【0036】、段落【0039】「他方、第1天井、第2天井、及び第3天井では、「補助期間」が発生しない場合もある。」、段落【0109】「実施例では、遊技者にとって有利な状況として、補助期間を採用しているが、これに限られるものではない。例えば、「再遊技」の入賞が成立しやすい状況(いわゆる「高確率再遊技状態」)…を採用するようにしてもよい。」、FIG7.(1)?(3)、参照。)には、計数手段の計数値が「当該所定の値よりも小さく且つ複数設けられた特定値(第1天井?第3天井におけるBB間ゲーム回数カウンタの値“1000”、“1200”、“1400”)」になったことを契機とした場合には、「前記高確率再遊技期間を発生させるための回数」として0回も含む回数が決定されることが開示されているから、本件補正によって本願補正発明は、計数手段の計数値が「所定の値」になったことを契機とした場合においても、同様に「前記高確率再遊技期間を発生させるための回数」として0回を含むものとなった。
すなわち、補正前の請求項1は、「所定の値になったことを契機として、高確率再遊技期間を(必ず)発生させる」ものであったのに対し、本件補正によって「所定の値になったことを契機として、高確率再遊技期間を(必ず)発生させる」ものではなくなってしまった。
したがって、本件補正による「状況発生手段」の補正は、請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、明りょうでない記載の釈明、誤記の訂正、請求項の削除を目的とするものでもない。
b.請求項1の上記(3)について
請求項1の補正によって、「高確率再遊技期間を発生させる」ための条件として、「或いは、所定の役に当選したこと」が加わり、「計数手段の計数値が、所定の値又は当該所定の値よりも小さく且つ複数設けられた特定値になった」場合以外であっても、「高確率再遊技期間を発生させる」ことになるから、請求項1の上記(3)の補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、明りょうでない記載の釈明、誤記の訂正、請求項の削除を目的とするものでもない。

したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成20年4月17日付の手続補正書は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、同年1月29日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される。以下のとおりのものである。
「遊技に必要な図柄を変動表示する変動表示手段と、
所定の時点からのゲームの回数を計数する計数手段と、
前記計数手段の計数値が所定の値になったことを契機として、再遊技に入賞する割合を増大させた高確率再遊技期間を発生させる状況発生手段とを備え、
前記状況発生手段は、前記計数手段の計数値が、前記所定の値よりも小さく且つ複数設けられた特定値になったことを契機として前記高確率再遊技期間を発生させるか否かを決定することを特徴とする遊技機。」

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、パチスロ必勝ガイド1月号,株式会社白夜書房,2002年1月1日発行,第13巻第1号,第59-63頁(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
記載事項1
「一発逆転の可能性を秘める連チャンAT機能…ゴルゴチャンス(以下GC)を搭載し、人気、設置台数ともに右肩上がりを続ける平和の新鋭機「ゴルゴ13」。」(第59頁右)
記載事項2
「1セット13G!通常時は9択の12枚役を完全奪取!!
爆裂AT機能 ゴルゴチャンス
ゴルゴチャンス概要
○継続ゲーム数:13G

通常時9択の12枚役を完全ナビゲートするAT機能…それがGC。突入すると、音声&4リールによって押し順および狙うべき絵柄が指示されるので、それに従って第1リールを止める(残りのリールはフリー打ちする)だけで12枚役の完全奪取が可能。GC1回(13G)の純増枚数は約92枚と少なめだが、それを補って余りある連チャン性があるぞ。」(第59頁左下囲み)
記載事項3
「BIG終了後およそ1500Gで到達する天井は、次回のBIGまでGC突入率が飛躍的に上昇するだけに狙い目。何度GCに当選しても次回のBIGまでその状況は続くぞ(間にREGをハサんでもOK)。(第60頁右上)
記載事項4
「このことから、天井ゲーム以降は強ハズレの約2分の1でGCへ突入すると思われる。」(第60頁左)
記載事項5
「表の見方 …[天井ゲーム以降]BIG終了後およそ1500G?次回BIG [天井2]BR間ストレート2626Gハマリで100%GC当選→30連確定」(第60頁下)
記載事項6
「まずは、大変興味深い大ハマリデータからご覧いただこう。BIG終了後およそ1500Gで到達するとされる天井以降、強ハズレの2回に1回の割合でGCにヒットしまくっている本データ。「天井G以降は何度GCに当選してもBIGに当選するまでは通常時へ転落しない」…この伝聞情報は正解だったわけだ。」(第62頁右上)
記載事項7
「天井は2種類存在!!
天井1…ビッグ後1500G(?)
天井2…ボーナス間(?)2626G 30連確定!!
1507GでREGを引くも、直後の強ハズレがGCを直撃。これにより、天井は「間にREGを挟んでもセーフ」であることが証明された。以降、強ハズレの2回に1回の割合でGCへ突入する本データ。」(第62頁中)
認定事項1
第59頁の右上には、上部に「GOLGO13」、下部に「ゴルゴ13」と書かれたスロットマシンの写真が掲載され、そのスロットマシンには、複数種類の図柄が表示された3つの回転リールが備えられていることが見て取れる。
認定事項2
「GC」は、記載事項2から、スロットマシンの分野における周知の「AT」(アシストタイム)を意味しているものと認められる。
また、数値に付した「G」(例えば、「1500G」)が「ゲーム数」を意味することは、自明である。
認定事項3
記載事項2から、AT(GC)は、1セット13ゲームを行うものであり、記載事項5、7の天井2における「30連確定」について、「セット」と「連」の関係について記載がないものの、スロットマシン等の遊技機の分野において通常の知識を有する者(以下「当業者」という)にとって、「30連」とは、30セット連続して行うことを意味するものであることは自明であるといえるから、記載事項5、7の天井2における「30連確定」についての記載は、「1セット13ゲームのATを30セット連続で行うことが確定」したことを開示するものである。
認定事項4
第60頁右下には、「ゴルゴチャンス突入率」の見出しのある表が記載されており、この表から、設定1?6のどの設定においても、通常時よりも天井G以降の方が、高確率でゴルゴチャンス(GC)突入率が高いことが見て取れる。
さらに、記載事項2から1回のゴルゴチャンスは13ゲームであり、ゴルゴチャンスに突入した場合には、最低でも13ゲーム継続してATを行うものと認められる。
また、天井Gについては、記載事項5から天井2はGCに100%当選するものであるので、天井Gは天井2を除く天井1以降次回のBIGまでのゲーム期間を指しているものと認められる。

以上のことから、スロットマシンに関する常識と摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献1には、
「複数種類の図柄が表示された3つの回転リールと、
BR間ストレート2626ゲーム数で天井2に到達し、天井2に到達すると100%ATに当選して1セット13ゲームのATを30セット連続で行うことが確定し、
BIG終了後およそ1500ゲーム数で天井1に到達し、天井1以降は次回のBIGまで最低でも13ゲーム行うATに高確率で突入するスロットマシン。」
の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

(2)引用発明と本願発明との対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、
引用発明の「複数種類の図柄が表示された3つの回転リール」は、本願補正発明の「遊技に必要な図柄を変動表示する変動表示手段」に相当し、以下同様に、
「ゲーム数」は「ゲームの回数」に、
「スロットマシン」は「遊技機」に、各々相当する。
さらに、引用文献1の記載等からみて、以下のことが言える。

a.引用発明の天井1は、BIG間のゲーム数によって到達するものであり、天井2は、BR間のゲーム数によって到達するものであって、「BR」とはスロットマシン等の遊技機の分野において、一般には、ビッグボーナス(以下「BIG」という)とレギュラーボーナス(以下「REG」という)とを合わせた呼称であり、天井1、2の到達を検知するには、ゲーム数を計数する必要があることから、引用発明には、少なくともBIG終了後からのゲーム数を計数する計数手段を有しているものと認められる。
そして、引用発明の「BIG終了」は本願発明の「所定の時点」に相当するから、引用発明と本願発明とは「所定の時点からのゲームの回数を計数する計数手段」を有している点で共通する。
b.引用発明は、BIG終了後において、途中にREGやBIGの当選がなければ2626ゲームで天井2に到達してATの30連が確定するものである。
また、引用発明の「AT」と本願発明の「再遊技に入賞する割合を増大させた高確率再遊技」とは、いずれも、「遊技者にとって有利な状態となる特別ゲーム」で共通する。
また、引用発明は、天井2に到達したときに1セット13ゲームを30セット連続して行うものであるから、「AT遊技期間を発生させる状況発生手段」を有するものと認められる。
以上のことから、上記「a.」で認定した点も踏まえると、引用発明と本願発明とは「計数手段の計数値が所定の値(2626)になったことを契機として、遊技者にとって有利な状態となる特別ゲームを行う期間を発生させる状況発生手段」を備える点で共通する。
c.引用発明の天井1は、BIG終了後およそ1500ゲームで到達するものであり、天井1に到達するゲーム数は明確でないものの、天井2のゲーム数2626ゲームよりも少ない天井1のゲーム数が設定されていることは自明である。
また、記載事項3、5から、仮に、BIG終了後から2626ゲームの間に、BIG又はREGに当選しなかった場合には、天井1の到達以降、2626ゲームまでの間、毎ゲームAT抽選を行っており、AT抽選に当選(突入)したときには、最低でも13ゲームAT遊技を行う期間を有するものと認められる。
以上のことから、引用発明においても、本願発明の「前記所定の値よりも小さく且つ複数設けられた特定値(天井1の到達以降のゲームから2625(=(天井2)-1)ゲームまでのゲーム数)」に相当するものを有し、引用発明と本願発明とは、「前記状況発生手段は、前記計数手段の計数値が、前記所定の値よりも小さく且つ複数設けられた特定値になったことを契機として遊技者にとって有利な状態となる特別ゲームを行う期間を発生させるか否かを決定する」点で共通する。

以上を総合すると、両者は、
「遊技に必要な図柄を変動表示する変動表示手段と、
所定の時点からのゲームの回数を計数する計数手段と、
計数手段の計数値が所定の値になったことを契機として、遊技者にとって有利な状態となる特別ゲームを行う期間を発生させる状況発生手段とを備え、
前記状況発生手段は、前記計数手段の計数値が、前記所定の値よりも小さく且つ複数設けられた特定値になったことを契機として遊技者にとって有利な状態となる特別ゲームを行う期間を発生させるか否かを決定することを特徴とする遊技機。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
遊技者にとって有利な状態となる特別ゲームを行う期間として、本願発明は、「再遊技に入賞する割合を増大させた高確率再遊技期間」であるのに対し、引用発明は、「AT遊技期間」である点

(3)相違点の検討及び判断
遊技者にとって有利な状態となる特別ゲームを行う期間として、再遊技に入賞する割合を増大させた高確率再遊技期間を設けることは、以下の文献A?Dに記載されるように、従来周知の技術(以下「周知技術」という。)である。
文献A:実用新案登録第3074646号公報
特に、段落【0031】を参照。
文献B:特開2001?321489号公報
特に、段落【0034】、【0048】、【0098】を参照。
文献C:パチスロ攻略マガジン2001 2月号増刊VOL.23,2001年1月21日発行,第10巻第3号,第21-23頁
文献D:パチスロ攻略マガジン2000 8月号増刊VOL.17,2000年7月21日発行,第9巻第15号,第13-15頁
そして、引用発明における「AT遊技期間」を周知の「再遊技に入賞する割合を増大させた高確率再遊技期間」に適用することに阻害要因はなく、引用発明において、特別ゲームとしての「AT遊技期間」を周知の「再遊技に入賞する割合を増大させた高確率再遊技期間」に換えることは、当業者にとって適宜設計しうる事項にすぎない。
さらに、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術に基づき、当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3.むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-26 
結審通知日 2010-03-02 
審決日 2010-03-15 
出願番号 特願2002-20992(P2002-20992)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 572- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池谷 香次郎  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 森 雅之
井上 昌宏
発明の名称 遊技機  
代理人 藤田 和子  

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