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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1215770
審判番号 不服2008-8367  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-04 
確定日 2010-04-30 
事件の表示 平成11年特許願第 30245号「空気調和機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月22日出願公開、特開2000-230724〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年2月8日の出願であって、その請求項1に係る発明は、願書に最初に添付された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された次の事項により特定されるものである(以下「本願発明」という。)。

「流路制御用の弁装置、ドライ運転用のキャピラリチューブ及び消音パイプから成る減圧回路を、利用側熱交換器内の配管途中に接続し、前記弁装置を制御することにより、冷房運転・暖房運転・ドライ運転を実行する空気調和機において、
前記利用側熱交換器を構成する冷媒配管を複数の並列回路に分割することによって複数の熱交換部を構成し、各熱交換部内の配管途中に前記減圧回路をそれぞれ接続したことを特徴とする空気調和機。」

2.引用例
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭59-81455号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

ア「本発明は空気調和機の除湿運転方法に関する。」(第1頁左下欄第14行)

イ「公知の冷暖兼用分離型空気調和機においては、第1図回路図に示すように、室外ユニットAおよび室内ユニットBよりなり、室外ユニットAは、圧縮機1、四方切換弁2、室外熱交換器3、室外送風ファン4(以下室外ファンという)、・・・よりなり、室内ユニットBは、再熱用室内熱交換器7、冷却用室内熱交換器12、室内送風ファン8(以下室内ファンという)、二方電磁弁9、逆止弁11、キャピラリチューブ10、配管24?27よりなり、空気流は第2図断面図の矢印に示すように、冷却用室内熱交換器12および再熱用室内熱交換器7を流過するようになっている。」(第1頁左下欄第15行?同右下欄第8行)

ウ「まず冷房運転時は、・・・四方切換弁2、配管22を通り、・・・冷房時は二方電磁弁6は閉じられているので、・・・キャピラリチューブ10の抵抗が大きいので大部分が二方電磁弁9を通り、・・・。次に、暖房運転時は、電磁弁6、9を閉とするので、冷媒は鎖線矢印のように流れる。さらに、除湿運転時は、電磁弁6を開、電磁弁9を閉とし、・・・となる。」(第1頁右下欄第13行?第2頁右上欄第9行)

記載ウから、引用例記載のものは、四方切換弁2、電磁弁6、9を制御することにより、冷房運転・暖房運転・除湿運転を実行していることが窺える。
そして、「電磁弁9」は、冷房運転時、暖房運転時に開弁し、除湿運転時に閉弁することにより流路の制御を行っているものと考えられる。

以上の記載及び図面によると、引用例1には、
「流路制御用の電磁弁9、除湿運転用のキャピラリチューブ10から成る回路を、冷却用室内熱交換器12、再熱用熱交換器7の配管途中に接続し、前記電磁弁9を制御することにより、冷房運転・暖房運転・除湿運転を実行する空気調和機。」(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭56-96469号(実開昭58-2570号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。

ア「まず第1図に頭記ヒートポンプ式冷暖房機の冷凍回路を示す。図において1は圧縮機、2はアキュムレータ、3は冷暖房切換用四方弁、4は室内熱交換器、5は室外熱交換器、6はキャピラリチューブ、7はキャピラリチューブを短絡するバイパス管、・・・。熱交換器4,5はそれぞれ平行に配列する複数本のチューブの両端にヘッダを接続して複数の並列分流回路を形成したプレートフインコイル式熱交換器であり、各チューブごとにそれぞれ1本のキャピラリチューブ6が対応している。」(第1頁第19行?第2頁第11行)

イ「上記の冷凍サイクルにおいて、熱交換器4,5の能力を十分に発揮させるには、それぞれ熱交換器の並列分流回路へ冷媒を均等に分流させることが極めて重要である。
・・・(中略)・・・
またヘッダ42における前記のチューブ41と対向する反対側の側面には、3本の各チューブ41と個々に対向させて3本の消音器を兼ねたパイプ43が開口するように接続配管されており、これに高圧液ライン10よりディストリビュータ9を介して引出した3本のキャピラリチューブ6がそれぞれに接続されている。」(第3頁第3行?第4頁第3行)

ウ「第3図において、第2図と同一符号は同一部材を示す。ところでこの考案により、まず熱交換器4を構成する3本のチューブ41にそれぞれ対応する3本の消音器を兼ねたパイプ44がヘッダ42を左右に貫通して配管されており、このパイプ44の一端にはチューブ41が、他端にはそれぞれ対応するキャピラリチューブ6が接続されている。」(第5頁第19行?第6頁第6行)

エ「上記の構成によれば、・・・各キャピラリチューブ6へ分配された冷媒は、個々にパイプ44を通じて直接各チューブへ送り込まれる。・・・したがって熱交換器4内での各並列分流量は均一になる。・・・、振動騒音の発生も防止できる。」(第6頁第14行?第7頁第6行)

オ「なお第3図は第1図における室内熱交換器4のP部構造を示したが、室外熱交換器5のQ部についても同様に構成される。
上述のようにこの考案によれば、熱交換器における各チューブと、これに対応するキャピラリチューブとを結んだ各冷媒分流回路が、従来のように途中で切り離れていることがなく、各独立的に連続した管路として構成されており、したがって、・・・キャピラリチューブを通じて各チューブへ供給される冷媒の分流量を均一にできる。またこの場合にはヘッダ内に低圧液冷媒が溜まらず、冷媒の急激な膨張もないので振動騒音が防止できる。」(第7頁第13行?第8頁第6行)

以上の記載及び図面によると、引用例2には、
「室内熱交換器4は、平行に配列する3本のチューブ41を備え、該チューブ41の端に個々に対応させて3本の消音器を兼ねたパイプ44を配管して冷媒を均等に分流させる冷媒分流回路を構成し、それに、それぞれ、キャピラリチューブ6を接続させて、振動騒音を防止するようにしたヒートポンプ式冷凍機。」(以下「引用発明2」という。)が記載されている。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開8-159511号公報(以下「引用例3」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。

ア「【産業上の利用分野】この発明は除湿機能を備えた空気調和機の室内ユニットに関する。」(段落【0001】)

イ「また、冷媒を、上記切り換え手段の、とくに絞り機構に流す場合、その上流側で流れが乱れて流動音が発生し易いということがある。そこで、従来は上記冷媒管の絞り機構近傍の表面に防振ゴムを付着して騒音を吸収するということが行われていた。
しかしながら、防振ゴムを用いた消音は、騒音が冷媒管の表面から放射するのを遮るだけであるから、消音効果が低いということがあり、その消音を効果的に行うことが難しいということがあった。」(段落【0007】、【0008】)

ウ「また、この発明の目的は、冷媒の流れが乱れて騒音が発生するのを効率よく防止できるようにした空気調和機の室内ユニットを提供することにある。
また、この発明の目的は、切り換え手段に電動式の二方弁を用いた場合に、開閉動作時に騒音が発生しずらいようにした空気調和機の室内ユニットを提供することにある。」(段落【0013】)

エ「上記室内熱交換器6の各熱交換器部6A、6Bはそれぞれアルミニウムからなるフィン11を積層するとともにそのフィン11に冷媒管12を蛇行状に貫通させて形成されている。上部熱交換器部6Aと下部熱交換器部6Bに通された冷媒管12は連通しているとともに、その冷媒管12の中途部は外部に導出されている。
図1に示すように、上記冷媒管12の外部に導出された中途部は流出部12aと流入部12bとをなし、この流出部12aと流入部12bとには除湿機能の切り換え部15が後述するごとく接続されている。
上記室内熱交換器6の上部熱交換器部6Aの冷媒管12の入口側となる一端には室内熱交換サイクルを形成する供給管21が第1のコネクタ22を介して接続されている。上部熱交換器部6Aの冷媒管12の他端である、上記流出部12aには第2のコネクタ23を介して上記切り換え部15の流入側に接続されている。この切り換え部15の流出側は第3のコネクタ24を介して上記流入部12bに接続されている。」(段落【0032】?【0034】)

オ「上記バイパス管31の二方弁32より第2のコネクタ23側の部分からは絞り機構を形成する主管33が分岐され、この主管33の中途部には冷媒の流れ方向に沿って緩衝タンク34、消音器35およびキャピラリチュ-ブ36が順次設けられ、バイパス管31の二方弁32より第3のコネクタ24側の部分に接続するよう構成されている。したがって、上記流出部12aから第2のコネクタ23を介して切り換え部15に流入した冷媒は、上記二方弁32が開放されていれば、バイパス管31を流れて流入部12bへ戻り、上記二方弁32が閉じていれば、上記主管33からキャピラリチュ-ブ36を通って上記流入部12bへ戻ることになる。」(段落【0037】)

以上の記載及び図面によると、引用例3には、
「流量制御のための二方弁32、除湿運転用のキャピラリチューブ36及び消音器35から成る回路を、室内熱交換器6の配管中に接続し、前記二方弁を制御することにより、切り換えを行う空気調和機において、前記室内熱交換器6への入口となる冷媒配管を複数の配管12a、12bに分岐し、絞り機構としての主管33、消音器35、キャピラリチューブ36を経由した冷媒配管を、分岐した状態で室内交換器6に接続した、消音機能を備える空気調和機。」(以下「引用発明3」という。)が記載されている。

3.対比・判断
本願発明と引用発明1とを対比する。
本願発明において、ドライ運転時にキャピラリチューブで減圧させるための弁は、「電磁弁16」、「電磁弁17」と考えられ、引用発明1の「電磁弁9」が、これに対応するものと考えられる。

また、引用発明1において、「電磁弁9」および「キャピラリチューブ10」は、除湿(ドライ)運転において冷媒を減圧する点で、本願発明の「減圧回路」と共通するものである。

そして、引用発明1の「除湿運転」は本願発明の「ドライ運転」に相当し、以下同様に「冷却用室内熱交換器12」及び「再熱用熱交換器7」は「利用側熱交換器」に、それぞれ相当する。

したがって、両発明は、
「流路制御用の弁装置、ドライ運転用のキャピラリチューブから成る減圧回路を、利用側熱交換器の配管途中に接続し、前記弁装置を制御することにより、冷房運転・暖房運転・ドライ運転を実行する空気調和機。」の点で一致し、次のア、イの点で相違している。

相違点ア
本願発明では、減圧回路において、「キャピラリチューブ及び消音パイプ」を具備するものとしているのに対し、引用発明1では、減圧回路において、「キャピラリチューブ」を具備するものとしている点。

相違点イ
本願発明では、「利用側熱交換器を構成する冷媒配管を複数の並列回路に分割することによって複数の熱交換部を構成し、各熱交換部内の配管途中に前記減圧回路をそれぞれ接続した」ものであるのに対し、引用発明1では、該構成を具備しない点。

そこで、上記相違点について検討する。
まず、相違点アについて検討する。
当該技術分野において、減圧部材であるキャピラリチューブに、消音パイプを併せ備え、接続することは、本願出願前周知の技術(例えば、上記引用発明2の他、拒絶査定において引用した実願昭56-47703号(実開昭57-160025号)のマイクロフィルム参照。)である。

そうすると、引用発明1において、減圧回路において、「キャピラリチューブ」を「キャピラリチューブ及び消音パイプ」とすることは、当業者であれば、容易に想到し得たことである。

次に、相違点イについて検討する。
引用発明2と本願発明とを対比すると、引用発明2の「室内熱交換器4」は本願発明の「利用側熱交換器」に相当し、「消音器を兼ねたパイプ44」は「消音パイプ」に、「ヒートポンプ式冷凍機」は「空気調和機」に、それぞれ相当する。

そうすると、引用発明2は、
「利用側熱交換器は、平行に配列する3本のチューブを備え、該チューブの端に個々に対応させて3本の消音パイプを配管して冷媒を均等に分流させる冷媒分流回路を構成し、それに、それぞれ、キャピラリチューブを接続させ、振動騒音を防止するようにした空気調和機。」と言い換えることができる。

また、引用発明3についてみると、引用発明3の「二方弁32」は本願発明の「弁装置」に相当し、「除湿運転」は「ドライ運転」に、「室内熱交換器6」は「利用側熱交換器」に、「消音器」は「消音パイプ」に、それぞれ、相当している。また、引用発明3の「二方弁32」、「キャピラリチューブ」、「消音器」から成る回路は、本願発明の「減圧回路」に相当する。

したがって、引用発明3は、
「流路制御用の弁装置、ドライ運転用のキャピラリチューブ及び消音パイプから成る減圧回路を、利用側熱交換器内の配管中に接続し、前記弁装置を制御することにより、切り換えを行う空気調和機において、前記利用側熱交換器への冷媒入口となる配管を分岐し、複数の配管に分割し、絞り機構である主管、消音パイプ、キャピラリチューブを経由した冷媒配管を、分岐した状態で利用側熱交換器に接続した、消音機能を備えた空気調和機。」
と言い換えることができる。

また、引用発明1?3は、いずれも空気調和機に関するものであり、共通の技術分野に属するものといえる。

してみると、引用発明1において、引用発明2における技術に倣って、利用側熱交換器を構成する冷媒配管を複数の並列分流回路に分割し、その際、利用側熱交換器配管の入口側の熱交換器と出口側の熱交換器を、分岐させるという引用発明3の技術を採用することにより、利用側熱交換器の冷媒配管を複数の熱交換部を構成するようにした点は、当業者であれば、引用発明1?引用発明3に基づいて容易に想到し得たことである。

そうすると、引用発明1において、利用側熱交換器を構成する冷媒配管を複数の並列分流回路に分割することによって複数の熱交換部を構成し、各熱交換部内の配管途中に前記減圧回路をそれぞれ接続したものは、引用発明1?引用発明3に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明の奏する作用効果を全体としてみても、利用側熱交換器内の冷媒流を分岐させるものであることが引用発明2に示され、利用側熱交換器配管を冷媒の入口と出口で分岐させ複数の熱交換部を設ける技術が引用発明3に示されているのであるから、引用発明1?3及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明1?3及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1?3及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

そうすると、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-24 
結審通知日 2010-03-02 
審決日 2010-03-18 
出願番号 特願平11-30245
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 槙原 進  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 清水 富夫
長崎 洋一
発明の名称 空気調和機  
代理人 ▲角▼谷 浩  

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