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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B05C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B05C
管理番号 1215785
審判番号 不服2008-17752  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-10 
確定日 2010-04-30 
事件の表示 特願2002-344474「塗布工具」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月24日出願公開、特開2004-174395〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成14年11月27日に出願されたものであって、平成19年9月27日付けで拒絶理由が通知され、同年12月7日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成20年6月6日付けで拒絶査定がなされ、それに対して同年7月10日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年8月11日付けで手続補正書が提出されて明細書を補正する手続補正がなされ、同日付で審判請求書の理由を補充する手続補正書が提出され、その後、当審において平成21年8月19日付けで書面による審尋がなされたものである。

第2.平成20年8月11日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成20年8月11日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕
1.本件補正の内容
平成20年8月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関しては、下記の(a)に示す本件補正により補正される前の(すなわち、平成19年12月7日付けで提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1を下記の(b)に示す特許請求の範囲の請求項1へと補正するものである。

(a)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「複数のヘッド部材が組み合わされて構成された工具本体を備え、該工具本体の内部において幅方向に延びるマニホールドの下端から前記工具本体の先端面に開口するスロットが形成されており、前記マニホールドに連通して設けられた供給口から供給された塗布液が、前記マニホールドおよびスロットを通過して前記先端面の開口部から吐出される塗布工具において、
前記塗布液の粘度が1cpsから100cpsの範囲とされ、前記マニホールドの下端の形状が、前記供給口から幅方向に離間するに従い次第に先端方向に向かって直線状に傾斜する傾斜部分と、前記先端面に平行で前記供給口から離れた位置に配置されている平行部分とを有して形成されており、前記傾斜部分においてスロット長さが前記供給口の近傍から幅方向に離間するに従い次第に短くなるとともに前記供給口から離れて位置する前記平行部分においてスロット長さが一定となるように幅方向に渡ってスロット長さが設定されていることを特徴とする塗布工具。」

(b)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1(下線は、補正箇所を明示するためのものである。)
「複数のヘッド部材が組み合わされて構成された工具本体を備え、該工具本体の内部において幅方向に延びるマニホールドの下端から前記工具本体の先端面に開口するスロットが形成されており、前記マニホールドに連通して設けられた供給口から供給された塗布液が、前記マニホールドおよびスロットを通過して前記先端面の開口部から吐出される塗布工具において、前記スロットは、前記マニホールドよりも狭く形成され、前記マニホールドの下端から前記工具本体の先端面では一定の間隔を有し、前記先端面に前記塗布液を吐出する開口部が形成されており、前記塗布液の粘度が1cpsから100cpsの範囲とされ、前記マニホールドの下端の形状が、前記供給口から幅方向に離間するに従い次第に先端方向に向かって直線状に傾斜する傾斜部分と、前記先端面に平行で前記供給口から離れた位置に配置されている平行部分とを有して形成されており、前記傾斜部分においてスロット長さが前記供給口の近傍から幅方向に離間するに従い次第に短くなるとともに前記供給口から離れて位置する前記平行部分においてスロット長さが一定となるように幅方向に渡ってスロット長さが設定されていることを特徴とする塗布工具。」

2.本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1における「スロット」に関して、本件補正後の請求項1における「前記スロットは、前記マニホールドよりも狭く形成され、前記マニホールドの下端から前記工具本体の先端面では一定の間隔を有し、前記先端面に前記塗布液を吐出する開口部が形成されており、」という発明特定事項を追加する補正がなされており、請求項1に関する補正は、本件補正前の請求項1における発明特定事項についての限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.本件補正の適否についての判断
上記2.で検討したように、本件補正は平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、次に、本件補正により補正される補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、単に「本願補正発明」という。)が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて、以下に検討する。

3-1.原査定の拒絶理由に引用された引用文献
3-1-1.特開2001-9342号公報(以下、「引用文献1」という。)
(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、図1及び2とともに次の事項が記載されている。
(a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、連続的に走行するウェブに対して塗工液を塗布するのに使用されるエクストルージョン型のダイヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、エクストルージョン型のダイヘッドは、均一な薄膜塗工が可能であることから種々の分野で広く利用されている。このタイプのダイヘッドは、液入口からの塗工液を幅方向に広がらせるためのマニホールドと、そのマニホールドから塗工液が押し出されるスロット部とを備えている。マニホールドの形状としてはコートハンガータイプ、T型タイプ等があり、チキソ性が大きい塗工液の場合ほどコートハンガータイプがよく用いられている。そして、スロット部からの塗工液の幅方向吐出精度を向上させるためにはマニホールドの形状が重要であり、コートハンガータイプにおいては、例えばマニホールドからダイヘッド先端までの長さを幅方向で変えることで吐出精度をコントロールしている。」(段落【0001】及び【0002】)
(b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】図1はハンガーコートタイプのマニホールドを有する従来のダイヘッドの一例を示すもので、図1(a)は中央での断面図、図1(b)はダイ上板と両側板を外してダイ下板を示す平面図である。図1において1はダイ上板、2はダイ下板、3はマニホールドであり、ダイ下板2に設けられた液入口4からダイヘッド内に供給された塗工液はマニホールド3にて幅方向に広げられ、スロット部5の先端から吐出されて走行するウェブ上に塗工される。ダイヘッドのスロット部5からの塗工液の吐出精度は、マニホールド3から先端までの矢印で示す距離を変化させることで均一とすることができる。」(段落【0003】)
(c)「【0005】図2はハンガーコートタイプのマニホールドを有する従来のダイヘッドの別の例を示すもので、図2(a)は中央での断面図、図2(b)はダイ上板と両側板を外してダイ下板を示す平面図である。このダイヘッドは、内部のマニホールド3を2次曲線状に加工したものであるが、図1に示した直線状のマニホールドに比べてより加工が困難となる。」(段落【0005】)

(2)引用文献1記載の発明
上記(1)並びに図1及び2を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ダイ上板1及びダイ下板2が組み合わされて構成されたダイヘッド本体を備え、該ダイヘッド本体の内部において幅方向に延びるマニホールド3の下流側端部から前記ダイヘッド本体の先端面に開口するスロット部5が形成されており、前記マニホールド3に連通して設けられた液入口4から供給された塗工液が、前記マニホールド3およびスロット部5を通過して前記先端面の開口部から吐出されるダイヘッドにおいて、前記スロット部5は、前記マニホールド3よりも狭く形成され、前記マニホールド3の下流側端部から前記ダイヘッド本体の先端面では一定の間隔を有し、前記先端面に前記塗工液を吐出する開口部が形成されており、前記マニホールド3の下流側端部の形状が、前記液入口4から幅方向に離間するに従い次第に先端方向に向かって2次曲線状に変化するように幅方向に渡ってスロット長さが設定されているダイヘッド。」

3-1-2.特開平9-300430号公報(以下、「引用文献2」という。)
(1)引用文献2の記載事項
引用文献2には、図1とともに次の事項が記載されている。
(a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、合成樹脂等の溶融可塑性材料をフイルム等の薄肉シートに押出し成形するTダイに係り、特にそのマニホールドの形状を組合せ型に形成することにより、成形品質を損うことなく、シート幅を容易に調節することができるように構成した組合せ型マニホールドを備えたTダイに関する。」(段落【0001】)
(b)「【0022】
【実施例】次に、本発明に係る組合せ型マニホールドを備えたTダイの実施例につき、添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。なお、説明の便宜上、図4ないし図6に示す従来の構成と同一の構成部分には、同一の参照符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0023】先ず初めに、本発明の組合せ型マニホールドを備えたTダイの基本的構成は、前記従来の構成と同一である。すなわち、Tダイは、基本的には図1に示すように、中央部供給路10から左右対称にかつ押出し方向へ順次配設されるマニホールド部40、ダイランド部14、リップランド部16およびリップ部18から形成される。そして、前記供給路10からの溶融樹脂が前記各部40、14、16、18を通る各流路20i より押出されることによって、所定のシートに成形されるように構成されている。なお、リップ部18には、その吐出幅を規制する機構(図示せず)が備えられている。
【0024】しかるに、本発明においては、前記構成において、マニホールド部40は、流路20の方向を押出し方向へ向けて漸次傾斜/湾曲すると共に、断面積を前記流路20方向へ漸次縮小したコートハンガ型マニホールド42と、このコートハンガ型マニホールド42に所定の交差接続角度αで接続するように流路20の方向を左右方向に平行させると共に、断面を同一形状とした平行ストレート型マニホールド44とから形成する。そして、前記交差接続部は、コートハンガ型マニホールド42から平行ストレート型マニホールド44に終端すると共に、その位置がインナーディッケル50の中央部への摺動ストローク限である後述する成形シートの最小幅Wmin (B)にかけて折れ線および/または曲線状接続部により構成する。」(段落【0022】ないし【0024】)

(2)引用文献2記載の発明
上記(1)及び図1を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用文献2記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「Tダイ本体を備え、該Tダイ本体の内部において幅方向に延びるマニホールド部40の下端から前記Tダイ本体の先端面に開口するリップ部18に連通する流路が形成されており、前記マニホールド部40に連通して設けられた供給路10から供給された溶融樹脂が、前記マニホールド部40およびリップ部18を通過して前記先端面の開口部から吐出されるTダイにおいて、前記マニホールド部40の下端の形状が、前記供給路10から幅方向に離間するに従い次第に先端方向に向かって直線状に傾斜するコートハンガ型マニホールド42と、前記先端面に平行で前記供給路10から離れた位置に配置されている平行ストレート型マニホールド44とを有して形成されているTダイ。」

3-2.対比
本願補正発明と引用文献1記載の発明を対比すると、引用文献1記載の発明における「ダイ上板1及びダイ下板2」は、その構造・機能等からみて、本願補正発明における「複数のヘッド部材」に相当し、以下同様に、「ダイヘッド本体」は「工具本体」に、「マニホールド3」は「マニホールド」に、「スロット部5」は「スロット」に、「液入口4」は「供給口」に、「塗工液」は「塗布液」に、「ダイヘッド」は「塗布工具」に、それぞれ相当する。
また、引用文献1記載の発明における「マニホールド3の下流側端部」は、「マニホールドの下流側端部」という限りにおいて、本願補正発明における「マニホールドの下端」に相当し、さらに、引用文献1記載の発明における「マニホールド3の下流側端部の形状が、前記液入口4から幅方向に離間するに従い次第に先端方向に向かって2次曲線状に変化するように幅方向に渡ってスロット長さが設定されている」は、「マニホールドの下流側端部の形状が、前記供給口から幅方向に離間するに従い次第に先端方向に向かって前記先端面の開口部との距離が短くなる部分を有する」という限りにおいて、本願補正発明における「マニホールドの下端の形状が、前記供給口から幅方向に離間するに従い次第に先端方向に向かって直線状に傾斜する傾斜部分と、前記先端面に平行で前記供給口から離れた位置に配置されている平行部分とを有して形成されており、前記傾斜部分においてスロット長さが前記供給口の近傍から幅方向に離間するに従い次第に短くなるとともに前記供給口から離れて位置する前記平行部分においてスロット長さが一定となるように幅方向に渡ってスロット長さが設定されている」に相当する。
そうすると、本願補正発明と引用文献1記載の発明は、
「複数のヘッド部材が組み合わされて構成された工具本体を備え、該工具本体の内部において幅方向に延びるマニホールドの下流側端部から前記工具本体の先端面に開口するスロットが形成されており、前記マニホールドに連通して設けられた供給口から供給された塗布液が、前記マニホールドおよびスロットを通過して前記先端面の開口部から吐出される塗布工具において、前記スロットは、前記マニホールドよりも狭く形成され、前記マニホールドの下流側端部から前記工具本体の先端面では一定の間隔を有し、前記先端面に前記塗布液を吐出する開口部が形成されており、前記マニホールドの下流側端部の形状が、前記供給口から幅方向に離間するに従い次第に先端方向に向かって前記先端面の開口部との距離が短くなる部分を有する塗布工具。」
である点で一致し、次の(1)及び(2)の点で相違する。
(1)本願補正発明の「塗布工具」に使用する「塗布液の粘度が1cpsから100cpsの範囲とされ」ているのに対して、引用文献1記載の発明の「ダイヘッド」に使用する「塗工液」の粘度が不明である点(以下、「相違点1」という。)。
(2)本願補正発明においては、「マニホールドの下端の形状が、前記供給口から幅方向に離間するに従い次第に先端方向に向かって直線状に傾斜する傾斜部分と、前記先端面に平行で前記供給口から離れた位置に配置されている平行部分とを有して形成されており、前記傾斜部分においてスロット長さが前記供給口の近傍から幅方向に離間するに従い次第に短くなるとともに前記供給口から離れて位置する前記平行部分においてスロット長さが一定となるように幅方向に渡ってスロット長さが設定されている」のに対して、引用文献1記載の発明においては、「マニホールド3の下流側端部の形状が、液入口4から幅方向に離間するに従い次第に先端方向に向かって2次曲線状に変化するように幅方向に渡ってスロット長さが設定されている」点(以下、「相違点2」という。)。

3-3.相違点1及び2についての判断
(1)相違点1について
本願補正発明の「塗布工具」に使用する「塗布液」や引用文献1記載の発明の「ダイヘッド」に使用する「塗工液」の粘度を適宜のものとすることは、設計事項にすぎない。しかも、上記粘度として本願補正発明のように「1cpsから100cpsの範囲」とすることは、周知である(必要であれば、特開平9-1021号公報、特開平11-221509号公報、特開平11-314062号公報、特開2000-231206号公報、特開2001-87695号公報、特開2001-252603号公報を参照されたい。)。
(2)相違点2について
本願補正発明と引用文献2記載の発明を対比すると、引用文献2記載の発明における「Tダイ本体」は、その構造・機能等からみて、本願補正発明における「工具本体」に相当し、以下同様に、「マニホールド部40」は「マニホールド」に、「供給路10」は「供給口」に、「前記供給路10から幅方向に離間するに従い次第に先端方向に向かって直線状に傾斜するコートハンガ型マニホールド42」は「前記供給口から幅方向に離間するに従い次第に先端方向に向かって直線状に傾斜する傾斜部分」に、「前記先端面に平行で前記供給路10から離れた位置に配置されている平行ストレート型マニホールド44」は「前記先端面に平行で前記供給口から離れた位置に配置されている平行部分」に、それぞれ相当する。
また、引用文献2記載の発明における「Tダイ」は、「工具」という限りにおいて、本願補正発明における「塗布工具」に相当し、同様に、「溶融樹脂」は「液状物質」という限りにおいて「塗布液」に相当する。
そうすると、引用文献2には、
「工具本体を備え、該工具本体の内部において幅方向に延びるマニホールドの下端から前記工具本体の先端面に開口するリップ部に連通する流路が形成されており、前記マニホールドに連通して設けられた供給口から供給された液状物質が、前記マニホールドを通過して前記先端面の開口部から吐出される工具において、前記マニホールドの下端の形状が、前記供給口から幅方向に離間するに従い次第に先端方向に向かって直線状に傾斜する傾斜部分と、前記先端面に平行で前記供給口から離れた位置に配置されている平行部分とを有して形成されている工具。」
という技術思想が開示されているといえる(以下、「引用文献2記載の技術思想」という。)。
そして、引用文献1記載の発明において、「マニホールド3」の下流側端部の形状として、引用文献2記載の技術思想を採用することにより、引用文献1記載の発明における「マニホールド3」の「下流側端部の形状が、前記供給口から幅方向に離間するに従い次第に先端方向に向かって直線状に傾斜する傾斜部分と、前記先端面に平行で前記供給口から離れた位置に配置されている平行部分とを有して形成され」ることになり、さらにその結果、「前記傾斜部分においてスロット長さが前記供給口の近傍から幅方向に離間するに従い次第に短くなるとともに前記供給口から離れて位置する前記平行部分においてスロット長さが一定となるように幅方向に渡ってスロット長さが設定され」ることになるのである。したがって、引用文献1記載の発明において、引用文献2記載の技術思想を適用することにより、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項を得る程度のことは、当業者が容易に想到することができたことである。

また、本願補正発明を全体としてみても、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術思想の作用効果を加え合わせた以上の格別の作用効果を奏するものとは認められない。

3-4.まとめ
以上のように、本願補正発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術思想に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成20年8月11日付けの手続補正は前述したとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明は、平成19年12月7日付けで提出された手続補正書により補正された明細書及び願書に最初に添付された図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるもの(以下、「本願発明」という。)であり、上記第2.の〔理由〕1.(a)に記載したとおりのものである。

2.引用文献の記載内容
原査定の拒絶理由に引用された引用文献1(特開2001-9342号公報)及び引用文献2(特開平9-300430号公報)の記載事項及び引用文献1記載の発明、引用文献2記載の発明及び引用文献2記載の技術思想は、上記第2.の〔理由〕3.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記第2.の〔理由〕2.で検討したように、実質的に、本願補正発明における一部の発明特定事項を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記第2.の〔理由〕3.に記載したとおり、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術思想に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術思想に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の技術思想に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-12 
結審通知日 2010-02-16 
審決日 2010-03-15 
出願番号 特願2002-344474(P2002-344474)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B05C)
P 1 8・ 575- Z (B05C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土井 伸次  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 志水 裕司
金澤 俊郎
発明の名称 塗布工具  
代理人 高橋 詔男  
代理人 柳井 則子  
代理人 村山 靖彦  
代理人 志賀 正武  

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