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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1215825
審判番号 不服2009-3331  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-16 
確定日 2010-04-26 
事件の表示 特願2000-132742「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月 6日出願公開、特開2001-310052〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年5月1日の出願であって、平成21年1月9日付け(1月15日発送) で拒絶査定され、これに対し、同年2月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年3月16日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成21年3月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年3月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]
3.補正の内容
平成21年3月16日付けの手続補正書(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
他の装置に電力を供給する電源基板と、前記電源基板から供給された電力を受けて遊技機の制御を行うCPUを含む制御基板と、前記制御基板をシールドするシールド部材とを備え、
前記電源基板と前記制御基板とが、前記電源基板から前記制御基板に電力を供給するための供給線と、前記電源基板と前記制御基板とに基準電位を与えるためのグランド線とにより接続された遊技機において、
前記シールド部材が前記制御基板の内側において前記グランド線と接続され、
前記制御基板内のCPUを含む回路が接続されたグランドが、ノイズの侵入を阻止可能なコイルを介して前記シールド部材が接続された前記グランド線と接続されていることを特徴とする遊技機。」
に補正された。

本件補正は、補正前(平成20年9月5日付け手続補正による補正)の請求項1における「制御基板」及び「制御基板内の回路」に「CPUを含む」という技術事項を加えて、それぞれ「CPUを含む制御基板」及び「制御基板内のCPUを含む回路」としたものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。

4.引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用文献として引用された特開平4-241889号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ア.「【0007】【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1、図2に示すように、1はパチンコ機の遊技盤、2は前面側からフレーム3内に遊技盤1を取付ける基盤(前面枠とも呼ぶ)、4は遊技盤1の前面を覆うカバーガラス、5は基盤2を支持する機枠である。遊技盤1は係止部材6a,6bにより基盤2のフレーム3内に着脱自由に、カバーガラス4はガラス枠7を介して基盤2に開閉可能に取付けられ、基盤2は機枠5にヒンジ8a,8bにより回動可能に組付けられる。9a,9bは基盤2の施錠フックである。遊技盤1の表面の遊技部には種々の入賞口やアウト口および多数の遊技釘等が配列され、遊技盤1の裏面には各入賞口に入賞した入賞球を案内する集合樋10が形成される。基盤2のフレーム後部には遊技盤1の裏面の構造等に応じて所定の開口部が形成され、開口部後方には遊技盤1の裏面を覆う開閉カバー11が取付けられる。基盤2の図左下部には球供給機構、発射杆12、モータ13等からなる打球発射装置14が配設され、また基盤2のフレーム後面には下部に入賞球処理装置15が、上部から右側部および下部にかけて賞球排出装置16が配設される。」

イ.「【0022】図16、図17、図18には入賞球処理装置15、賞球排出装置16、打球発射装置14等を制御する制御装置200を示す。制御装置200は、内部にROMやRAMを備えるCPU(マイクロコンピュータ)201、CPU201の入出力を処理するインターフェイス202、各入出力端子203?208、タイマ発信回路209、電源回路210等からなり、CPU201のROMには実行すべきプログラムおよび種々のデータを設定し、CPU201のRAMはCPU201のワークエリアやタイマエリアを提供する。制御装置200の各入出力端子203?208には、排出機構42a(排出1側),42b(排出2側)の排出センサ74a,74b(排出センサ1,2)、排出ソレノイド92a,92b(排出Sol1,2)、入賞球処理装置15のセーフセンサ21(セーフセンサ)、賞球排出装置16の球抜きセンサ、球抜きソレノイド116(球抜きSol)、発射モータ13等の各電気機器、主電源(24V)ならびに図示しない遊技盤1側の制御装置が接続され、制御装置200はROMのプログラムデータ、前記各センサならびに遊技盤1側の制御装置等からの信号に基づき、排出Sol1,2、球抜きSol、発射モータ13等を制御する。211は制御装置200のリセットスイッチである。なお、回路中、賞品球の補給センサ53、誘導樋41の半端センサ64、賞球排出樋43のオーバーフロースイッチ109(オーバーフローSW)等は図示省略してある。制御装置200のCPU201には、電源断時にセーフセンサのオン回数(入賞数)ならびに遊技盤1側の制御装置からの賞球信号(後述する)の入力回数を記憶する不揮発性のEEPROMが設けられる。」

ウ.「【0028】一方、制御装置200の構造は、図18、図26、図27のようにCPU201、インタフェース202、入出力端子203?208、タイマ発信回路209、電源回路210等の各電気部品を配設、接続した基板223および基板223を収納する金属製のケース224からなる。CPU201等のIC部品、トランジスタや比較的大きいコンデンサ等は基板223の表面に、各入出力端子203?208、リセットスイッチ211は基板223の表面の四方周辺に配置され、小さな抵抗、コンデンサ等は基板223の裏面に配置されている。ケース224の本体226は、長手方向の2つの側面227と1端面228を折り曲げ成形して筺枠としたもので、側面227の内側に平行に小さな溝229が設けられ、この溝229に開口側から基板223をあてがい、差し込むようになっている。本体226の側面227および端面228には、外部から基板223の入出力端子205?208に配線コネクタを着脱すると共に、リセットスイッチ211を操作するための開口部230?232が形成されている。ケース224の蓋233は、本体226に合わせて側面234、端面235,236を折り曲げ成形され、このうち一方の端面236が本体226の開口を覆うように延長され、他の面234,235が本体226の開口部230?232に重ならない高さに形成されている。蓋233の表面には、表示素子LED-A?Oからなる前述のモニタ表示部212が取付けられ、蓋233の端面236には、外部から基板223の入出力端子203,204に配線コネクタを着脱するための開口部237が形成されている。また、蓋233の端面236には、基板223のグランド面に当接する2つの当接片238が内側に折り曲げ成形されている。本体226の側面227には4つの嵌合凹部(小孔)239が設けられ、蓋233の側面234には内側に嵌合凹部239に嵌まる各嵌合凸部240が設けられている。
【0029】基板223を本体226の開口側から溝229に差し込み、その開口側に蓋233の端面236を合わせながら蓋233をかぶせ、蓋233の嵌合凸部240を本体226の嵌合凹部239に嵌め合うと、基板223がケース224内に収納、支持されると共に、ケース224が組付けられる。また、この組付けと同時に蓋233の端面236の当接片238が基板223のグランド面に所定の押圧力で当接し、基板223のグランドがケース224に接続される。これにより、基板223が導電性のケース224によってシールドされる。この制御装置200は、図1のように基盤2の裏面に配設されるが、この場合基盤2側に2組の弾性掛止部材(図示しない)が設けられ、その弾性掛止部材の間にケース224を押し込むことで、ケース本体226の突起241つまり溝229の加工による外面側の突起241が掛止され、取付けられる。そして、この制御装置200のケース224の蓋233の表面に、前記誘導樋41の導電性プレート59a,59bにつながる配線部材62がネジ242を介して締結、接続される(図5参照)。なお、制御装置200の基板223は制御装置200の主電源(24V)とグランドを兼ねている。」

エ.「【0030】このように制御装置200は、コンパクトな基板223をケース本体226の溝229に差し入れ、蓋233をかぶせて嵌合凸部240を嵌合凹部239に嵌めることで、基板223をケース224に的確に収納、支持でき、かつケース224を容易に組付けることができる。このため、制御装置200を小型化、軽量化できると共に、ネジ等の止着部材を必要とせずに制御装置200を簡単に組立てることができ、組付工程を大幅に削減できる。また、制御装置200の基板223は、ケース224を組付ければ、蓋233の端面236の当接片238が基板223のグランド面に所定の押圧力で当接するので、接続にネジ、アース線等を用いずとも、基板223を収納する導電性のケース224にてシールドすることができる。このため、導電性のケース224全体にて基板223を簡単にシールドすることができ、このシールドによって外部からのノイズがケース224を透過して基板223のIC部品等に影響を及ぼすことを確実に防止できる。また、この制御装置200は基盤2の裏面に配設されるが、小型のため、取付け位置の設定が容易であり、基盤2を設計する上での自由度が高まる。なお、基盤2への取付け、取外しは、ケース本体226の溝229の裏側の突起241を利用することで、簡単に行うことができる。」

オ.「【0031】この一方、図23?図25の遊技盤1のように大当たり遊技が可能なものにあっては、多量の入賞球に対し賞球排出を短時間のうちに行うため、賞球排出系各部と流動するパチンコ球との摩擦により静電気が大量に発生してパチンコ球が帯電してしまうが、この静電気は賞球排出装置16の誘導樋41から導電性プレート59a,59b、配線部材62、減衰器61、制御装置200のケース224、基板223のグランドを介して吸収、放出される。即ち、賞品球の貯留タンク40に続く誘導樋41の通路底面に導電性プレート59a,59bを設け、導電性プレート59a,59bを抵抗器等の減衰器61を介して制御装置200のケース224に接続し、かつケース224を基板223のグランドに接続したので、誘導樋41をパチンコ球が流下する際に、静電気は導電性プレート59a,59bから減衰器61に導かれてエネルギを減衰され、さらに制御装置200のケース224、基板223のグランドを介して制御装置200の主電源側から外部に放出されるのである。このため、パチンコ球が賞球系のセンサ(排出センサ、セーフセンサ等)や遊技盤1側のセンサ(始動スイッチ、サイクルスイッチ、カウントスイッチ等)を通過する際に、パチンコ球から静電気の放電によってセンサが破壊されたり、センサが誤動作することを確実に防止できる。
また、導電性プレート59a,59bに放出された静電気は減衰器61により減衰されるため、静電気のノイズにより制御装置200の基板223に悪影響を及ぼすことはない。また、導電性プレート59a,59bを基盤2のフレーム側に接続して静電気をフレームに吸収させ自然放電させる方式だと、静電気の量が多い場合等には大地アースを接続しなければならないが、このように制御装置200の主電源側から放出するため、静電気を確実に逃がすことができ、高い信頼度が得られる。また、このように制御装置200の主電源側から放出するため、静電気を遊技盤1側の制御装置側から放出する場合のように、制御装置の構造によってノイズを吸収する性能が異なったり、遊技盤1を入れ替える毎に導電性プレート59a,59bの接続を行わなければならないといった不具合はない。なお、導電性プレート59a,59bは、賞品球の貯留タンク40の底壁や排出機構42a,42bの各樋部に設けても良い。」

5.引用例1記載の発明の認定
記載事項ア.によれば、引用例1が遊技機(パチンコ遊技機)に関する文献であることが分かる。

記載事項イ.には、遊技機に設けられた排出Sol1,2、球抜きSol、発射モータ13等を制御する制御装置200は内部にCPU201を備え、主電源と接続される点が記載されている。

記載事項ウ.によれば、制御装置200は、基板223と該基板223を収納する金属製ケース224とからなり、前記基板223にはCPU201等のIC部品、トランジスタや比較的大きいコンデンサ等は基板223の表面に、各入出力端子203?208、リセットスイッチ211は基板223の表面の四方周辺に配置されること、さらに前記基板223のグランド面が、(金属製ケース224の)蓋233に設けられた当接片238に当接することで、基板223のグランドがケース224に接続され、基板223が導電性の金属製ケース224によってシールドされること、及び基板223は制御装置200の主電源とグランドを兼ねていることが記載されている。

記載事項エ.によれば、基板223が金属製ケース224内に収納されシールドされることによって外部からのノイズが金属製ケース224を透過して基板223のIC部品に影響を及ぼすことを防止できることが記載されている。

記載事項オ.によれば、賞球排出系においてパチンコ球の流動によって発生した静電気のノイズは、(賞品球の)誘導樋41の底面に設けた導電性プレート59a,59b、減衰器61、金属製ケース224、基板223のグランドを介して、制御装置200の主電源側から放出されることが記載されている。

以上を整理すると、引用例1には、
「主電源と、前記主電源と接続され、CPU201等のIC部品を配置した基板223及び、前記基板223をシールドする金属製ケース224とからなる制御装置200を備え、
前記基板223は前記主電源とグランドを兼ねており、
前記金属製ケース224が蓋233に設けられた当接片238によって前記基板223のグランドと接続され、
前記金属製ケース224に導通された静電気のノイズが、前記基板223の前記IC部品に影響を及ぼさないように、前記基板223のグランドを介して前記制御装置200の前記主電源側から放出される遊技機。」
なる発明(以下、「引用発明1」という。)が開示されていると認めることができる。

6.本願補正発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1における「基板223」は、本願補正発明における「制御基板」に相当し、
引用発明1における「金属製ケース224」は、本願補正発明における「シールド部材」に相当する。
ここで、引用発明1における「主電源」は、遊技の制御を司る基板に対して電力を供給していること、遊技機の技術分野において制御基板に電源を供給する電源基板が周知であることを考え併せると、本願補正発明の「他の装置に電力を供給する電源基板」に相当することは自明である。
なお、電源基板の周知技術として、特開平11-347185号公報(電源供給基板31)、特開2000-14867号公報(電源基板150)、特開2000-61046号公報(電源基板10)を例示する。
また、引用発明1の「CPU201等のIC部品」が、主電源から供給された電力を受けて遊技機の制御を行うことも自明であるから、引用発明1は本願補正発明の「電源基板から供給された電力を受けて遊技機の制御を行うCPUを含む制御基板」に相当する構成を備えているといえる。
さらに、引用発明1における「基板223のグランド」は、その基板上にCPU201等が配設されているから、遊技機における制御基板に係る技術常識を考慮すれば、本願補正発明における「制御基板内のCPUを含む回路が接続されたグランド」に相当することも自明である。

以上のことより、引用発明1と本願補正発明とは、
<一致点>
「他の装置に電力を供給する電源基板と、前記電源基板から供給された電力を受けて遊技機の制御を行うCPUを含む制御基板と、前記制御基板をシールドするシールド部材とを備え、
前記電源基板と前記制御基板とが接続され、
前記制御基板内のCPUを含む回路が接続されたグランドが前記シールド部材と接続されている遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
電源基板と制御基板の接続に関して、本願補正発明では「電源基板から制御基板に電力を供給するための供給線と、電源基板と制御基板とに基準電位を与えるためのグランド線とにより接続」されているのに対して、引用発明1では、どのような接続線を用いて接続されているか不明である点。
<相違点2>
シールド部材の接続に関して、本願補正発明では「制御基板の内側においてグランド線と接続」されているが、引用発明1では、相違点1でも述べたとおり「グランド線」の存在が不明であるから、シールド部材とグランド線との接続も、接続される部位も不明である点。
<相違点3>
制御基板内のCPUを含む回路が接続されたグランドとシールド部材の接続に関して、本願補正発明では「ノイズの侵入を阻止可能なコイルを介して」いるのに対して、引用発明1では、そのような部材を介さずに接続されている点。

7.相違点の判断
<相違点1>について
引用発明1の主電源は、基板223に対して電力を供給するものであるから、電源基板と制御基板とは、電力を供給するための供給線が存在することは当然のことである。
また、引用発明1の金属製ケース224に導通された静電気のノイズが、基板223のグランドを介して、基板223のグランドと共通の該制御装置200の主電源側から放出されるという記載、及び基板223は主電源とグランドを兼ねているという記載から、基板223と主電源とは供給線とは異なる接続線を有しており、その接続線は本願補正発明におけるグランド線の機能を有することは当業者にとって自明である。
さらに、 原査定の拒絶の理由において引用された特開平7-51457号公報(以下、「引用例2」という。)には、「制御回路基板10下方には、当該遊技機に電力を供給するための電源ライン30が設けられている。この電源ライン30は、その同軸内に、外側端がアース31に接続されたアース線32を有し、実際は遊技機の外部に延びている。(【0021】)」と記載されており、電源部と制御(回路)基板とを、供給線とグランド線とで接続することが記載されている(以下「引用例2記載の技術」という。)。
よって、相違点1に係る本願補正発明の構成については、引用発明1が実質的に有しているか、もしくは、引用例2記載の技術を適用して、当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点2>について
引用発明1において、金属製ケース224と基板223のグランドとは、金属製ケース224の蓋233に設けられた当接片238が、基板223のグランドに当接することによって接続されている。
そして、上記接続によって金属製ケース224から基板223のグランドに伝えられたノイズを主電源側に放出させる際、上記<相違点1>についての項で検討した、基板223と主電源との間に存在するグランド線に相当する接続線を用いることは当然のことであり、また、シールド部材とグランド線とが電気的に接続されていれば、ノイズはシールド部材からグランド線へ流れるから、引用発明1のように基板223のグランドを介してシールド部材とグランド線を接続するか、本願補正発明のようにシールド部材とグランド線を接続するかは設計的事項である。
さらに、引用発明1においてシールド部材である金属製ケース224は、グランド線に相当する接続線と基板223のグランド上で接続されていることになり、さらに、シールド部材とグランド線との接続部位を相違点2に係る本願補正発明の構成である「制御基板の内側」とすることに格別の技術的困難性はないから、相違点2に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点3>について
上記引用例2には、「制御回路基板10に設けられた内部グランド22と基準線20とアース線32の接続に際して、基準線20とアース線32との間に、コイル状のインダクタンス70を設け、該インダクタンス70によって、前記アース線32から回路側に流れ込もうとする高周波ノイズを低減させる遊技機の制御回路の接地構造(以下「引用発明2」という。)。」が開示されている(【0020】、【0021】、【図1】)。
これは、内部グランド22と該内部グランド22に接続されるノイズの流入路となりうるアース線32との間にコイル状のインダクタンス70を設けることによって、制御回路基板10上の電子回路に流れ込むノイズを吸収、低減させるものであるから、相違点3に係る本願補正発明の構成と軌を一にしており、引用発明1における外部からのノイズの侵入路である金属製ケース224と基板223のグランドとの接続を、引用発明2のコイル状のインダクタンスを介して行うことは当業者が容易に想到し得る程度のことである。
そして、シールド部材とグランド線との接続については、上記<相違点2>についての項で検討したように設計的事項にすぎないから、引用発明1のシールド部材である金属製ケース224と基板223のグランドと接続線の接続態様に、引用発明2のコイル状のインダクタンス70を用いて、相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

以上のように、本願補正発明は、引用発明1、引用例2記載の技術及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

8.本願補正発明についてのまとめ
本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

9.本願発明について
(1)本願発明及び引用文献に記載された発明
平成21年3月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、請求項に係る発明は、平成20年9月5日付け手続補正により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。
そして、その請求項1により特定される発明は次のとおりである。
「【請求項1】
他の装置に電力を供給する電源基板と、前記電源基板から供給された電力を受けて遊技機の制御を行う制御基板と、前記制御基板をシールドするシールド部材とを備え、
前記電源基板と前記制御基板とが、前記電源基板から前記制御基板に電力を供給するための供給線と、前記電源基板と前記制御基板とに基準電位を与えるためのグランド線とにより接続された遊技機において、
前記シールド部材が前記制御基板の内側において前記グランド線と接続され、
前記制御基板内の回路が接続されたグランドが、ノイズの侵入を阻止可能なコイルを介して前記シールド部材が接続された前記グランド線と接続されていることを特徴とする遊技機。」
(この発明を「本願発明」という。)

一方、原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-241889号公報(引用例1)および特開平7-51457号公報(引用例2)に記載された発明は、前記したとおりである。

10.対比・判断
本願発明は 前記2.で検討した本願補正発明の「CPUを含む制御基板」及び「制御基板内のCPUを含む回路」から「CPUを含む」という技術事項を除き、それぞれ「制御基板」及び「制御基板内の回路」としたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記7.に記載したとおり、引用発明1、引用例2記載の技術及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

11.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用例2記載の技術及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-24 
結審通知日 2010-02-25 
審決日 2010-03-12 
出願番号 特願2000-132742(P2000-132742)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 井上 昌宏
吉村 尚
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人アイ・ピー・エス  

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