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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1215858
審判番号 不服2009-4933  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-05 
確定日 2010-04-30 
事件の表示 特願2003-282756「黒トナー」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月11日出願公開、特開2004- 78206〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成15年7月30日(優先権主張 平成14年7月30日)の出願であって、平成21年1月30日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年4月3日付で特許請求の範囲及び明細書に係る手続補正がなされたものである。
その後、当審にて審尋がなされたところ、平成22年1月7日に回答書が提出されている。

(なお、その優先権主張出願に係る特願2002-220975号に記載の発明は、有機金属化合物が必須であったり、カーボンブラックの粒径の限定があったり、と発明の構成要件が一部異なり、発明の根拠となる実施例も差し替えられているので、本願発明は、優先権主張の効果は奏しない。)

第2.平成21年4月3日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年4月3日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の概要
平成21年4月3日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を以下のとおりとする補正事項を含むものである。(下線は、請求人が付与したとおり。)

「結着樹脂、カーボンブラック、及び離型剤を少なくとも含有するトナー粒子を有するトナーにおいて、
該トナー粒子は、少なくとも一部の結着樹脂とカーボンブラックとを混錬した後、残りの結着樹脂と混錬し、その後、粉砕して製造されたものであり、
該トナー粒子の重量平均粒径が3.5乃至8.0μmであり、
該トナーの酸価とOH価との和が30乃至75mgKOH/gであることを特徴とし、
円相当径が2μm以上のトナーに含まれる粒子の平均円形度が0.915以上0.960以下であり、
誘電損率ε”/誘電率ε’で示されるトナーの損失正接tanδが周波数10^(3)乃至10^(4)Hzの範囲において、
tanδ(10^(3)?10^(4)Hz)≦0.0060
であり、周波数5×10^(4)Hzと周波数10^(5)Hzとの損失正接tanδとの比が
1.05≦tanδ(10^(5)Hz)/tanδ(5×10^(4)Hz)≦1.40
であることを特徴とする黒トナー。」

2.補正の適否の判断
上記補正事項は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項であるトナー粒子に関し、「該トナー粒子は、少なくとも一部の結着樹脂とカーボンブラックとを混錬した後、残りの結着樹脂と混錬し、その後、粉砕して製造されたものであり、 」との限定を付したものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.引用刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2001-142258号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

1A.「【請求項1】 少なくとも結着樹脂、カーボンブラック及び有機金属化合物を含有するトナー粒子と、外添剤とを有する非磁性ブラックトナーであり、
該トナー粒子は、一種以上のアルカリ金属元素を10?200ppm含有し、
該トナー粒子は、有機鉄化合物、有機アルミニウム化合物、有機クロム化合物、有機亜鉛化合物、有機ホウ素化合物又は有機ジルコニウム化合物から選ばれる一種以上の有機金属化合物を含有し、
該トナー粒子は、樹脂成分としてポリエステル樹脂を含有しており、
非磁性ブラックトナーは、重量平均粒径が4?11μmであり、誘電損率ε”/誘電率ε’で示される損失正接tanδが、周波数5×10^(4)Hz,10^(5)Hzにおいて、
tanδ(5×10^(4)Hz)≦0.0125
tanδ(10^(5)Hz)≦0.0105
であり、カーの流動性指数が50以上であり、カーの噴流性指数が65以上であることを特徴とする非磁性ブラックトナー。」

1B.「【0007】また、前記粉砕法及び重合法のどちらにおけるトナーの製造においても、着色剤としてカーボンブラックを使用した場合、多くの課題を有していた。
【0008】第一に、カーボンブラックは他の顔料と比較して一次粒径が小さく、比表面積が大きいため、非常に分散し難く、トナー粒子表面に偏在したり、遊離カーボンブラックが生じたりしやすい。カーボンブラックは粘着性の高い微粉体であるため、遊離カーボンブラックの存在は、トナーの流動性の低下を招き、良好な摩擦帯電の妨げとなり、特にハーフトーン画像の再現性が落ちる。また、カーボンブラックの分散が十分になされていない場合には、十分な画像濃度が得られないといった問題も生じる。
【0009】第二に、カーボンブラックは導電性があるために、トナー表面に存在した場合には、電荷がリークしやすく、このようなトナーを用いて画像形成を行うと、カブリやトナー飛散が生じたり、転写抜けが生じたりしてしまう。
【0010】?【0011】(省略)
【0012】カーボンブラックの分散性を改善する点に関する出願としては、特開昭64-35457号公報及び特開平1-145664号公報等があるが、未だ十分に解決されたとは言えない状況である。
【0013】また、特開平7-64337号公報及び特開平10-186713号公報等では、特定の物性を有するカーボンブラックと特定の構造を有するアゾ系鉄化合物とを組み合わせて用い、カーボンブラックの分散性やトナーの帯電性等を改善することが提案されている。例えば、特開平10-186713号公報に記載の方法は、高着色力で帯電性が安定なトナーが得られる優れた方法ではあるが、高湿環境下でのベタ均一性及び耐久性には若干の課題を残すものであった。」

1C.「【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述の如き問題点を解決した非磁性ブラックトナー及び該トナーを用いた画像形成方法を提供することである。
【0015】本発明の目的は、着色力が高い非磁性ブラックトナー及びそれを用いた画像形成方法を提供することである。
【0016】本発明の目的は、いかなる環境においても迅速な帯電が行われ、かつ良好な帯電量を有する非磁性ブラックトナー及びそれを用いた画像形成方法を提供することである。
【0017】本発明の目的は、重量平均粒径が小さく、粒度分布がシャープな非磁性ブラックトナー及びそれを用いた画像形成方法を提供することである。
【0018】本発明の目的は、粉砕法或いは重合法といった製造法に関わらず、上記の優れた特性を有する非磁性ブラックトナー及びそれを用いた画像形成方法を提供することである。」

1D.「【0022】第一に、特定の有機金属化合物とアルカリ金属元素とを適度に含有せしめることにより、カーボンブラックの分散性が向上することである。第二に、極性を有するポリエステル樹脂とアルカリ金属元素を適度に含有せしめることにより、樹脂とカーボンブラックの親和性が増大し、カーボンブラック表面が樹脂で包まれた状態となり、カーボンブラックの導電性に起因するトナーの抵抗の低下を十分に抑制できるということである。これらの作用により、着色力が高く、いかなる環境でも帯電性が迅速かつ良好なトナーを提供することができる。」

1E.「【0035】次に、トナー粒子の導電性を抑制する作用機構について説明する。カーボンブラックは、粒径が小さく、また炭素が網目状に配列している構造を有しているため、トナー樹脂への親和性が低く、分散が困難である。しかし、本発明のごとくアルカリ金属元素を含有せしめることにより、トナー樹脂とカーボンブラックの間においてアルカリ金属元素がバッファーとして作用し、樹脂とカーボンブラックとの親和性が増す。従ってカーボンブラックが、樹脂で包まれた状態で存在するようになり、トナー粒子中における分散性が高まるため、カーボンブラックのトナー表面への偏在を抑えることが可能となり、またカーボンブラックの遊離を抑制することができる。更にトナー粒子表面に存在しているカーボンブラックがあったとしても、樹脂により覆われているため、電荷をリークすることがなくなり、トナー粒子の導電性が高まるのを抑制することが可能となる。結果、迅速かつ良好な帯電性を有するトナーを得ることが可能となる。」

1F.「【0053】本発明に用いるアルカリ金属元素のトナー粒子中の含有量は10?200ppmであり、好ましくは20?170ppmが良い。アルカリ金属元素の含有量が10ppmより少ないと、カーボンブラックの分散性向上、導電性抑制等の効果が十分に得ることができず、帯電量の低さや分布のブロード化を招き、カブリや飛散、転写性の低下といった弊害が生じる。逆に、アルカリ金属元素の含有量が200ppmより多いと、高湿下でアルカリ金属が水酸化物として存在する割合が大きくなるため、水分の影響を受けやすくなり、帯電量の低下を招き、含有量が少ない場合と同様に、カブリや飛散、転写性の低下といった弊害が生じる。」

1G.「【0077】本発明に用いるポリエステル樹脂は、酸価が5?30mgKOH/g、水酸基価が40mgKOH/g以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の酸価が5mgKOH/gより小さいと、迅速かつ高い帯電性が得られず、逆に酸価が30mgKOH/gより大きいとチャージアップしやすくなり低湿下でのカブリや、画像濃度低下を引き起こしやすくなる。また、水酸基価が40mgKOH/gより大きいと、高湿下での水分の影響を受けやすくなり、帯電量の低下によるカブリやトナー飛散等の弊害が生じやすくなる。
【0078】また、トナーの結着樹脂として、ポリエステル樹脂以外の樹脂成分を主成分として、ポリエステル樹脂を副成分として用いる場合には、ポリエステル樹脂の酸価を5?40mgKOH/gとすることが好ましく、トナーとしての酸価が5?30mgKOH/gとなる様に調整することが好ましい。」

1H.「【0104】本発明の非磁性ブラックトナーの重量平均粒径は4?11μm(好ましくは、6?9μm)である。トナーの重量平均粒径が4μmより小さいと過剰帯電を引き起こし、カブリや画像濃度の低下といった弊害をもたらす。逆に、トナーの重量平均粒径が11μmより大きいと、ドラム上の微細な潜像を忠実に再現することが困難となり、現像画像の画質が劣ったものとなりやすい。 」

1I.「【0108】本発明の非磁性ブラックトナーの特徴として、カーボンブラックの良好な分散性とトナーの高い流動性がある。
【0109】カーボンブラックの分散性の度合いを示す指標として、「カーボンブラックの特性と最適配合および利用技術(技術情報協会発行)」の241頁に示されるように、誘電損率ε”と誘電率ε’の比で表される損失正接tanδがある。この値が小さいほど、カーボンブラックの分散性が良好であることを示している。
【0110】本発明の非磁性ブラックトナーは周波数5×10^(4)Hzにおけるtanδ(5×10^(4)Hz)が0.0125以下であり、10^(5)Hzにおけるtanδ(10^(5)Hz)が0.0105以下であり、好ましくはtanδ(5×10^(4)Hz)が0.0110以下であり、10^(5)Hzにおけるtanδ(10^(5)Hz)が0.0090以下である。
【0111】周波数5×10^(4)Hzにおけるtanδ(5×10^(4)Hz)が0.0125より大きくかつ、10^(5)Hzにおけるtanδ(10^(5)Hz)が0.0105より大きい場合、カーボンブラックの分散性が劣り不均一となるために、トナーの帯電量分布がブロードとなり、低湿下でのチャージアップによる画像濃度薄やカブリや高湿下での帯電量不足によるカブリ、飛散、転写性の低下等の弊害が生じる。
【0112】本発明の非磁性ブラックトナーにおいて、本発明の効果を好適に発現しうるためには、カーの流動性指数が50以上、好ましくは60以上であることが必要であり、カーの噴流性指数が65以上、好ましくは75以上であることが必要である。カーの流動性指数が50より小さく、噴流性指数が65より小さい場合、トナーの十分な帯電がなされず、画質の低下、特にハーフトーン画像の再現性が低下する。」

1J.「【0140】粉砕法による非磁性ブラックトナーの製造としては、結着樹脂、カーボンブラック、有機金属化合物、アルカリ金属塩、その他の添加剤を加え、ヘンシェルミキサーのごとき混合機で均一に混合した後、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練し、互いに相溶分散せしめ、冷却固化後、粉砕及び厳密な分級を行って目的の粘度を有するブラックトナー粒子を製造する方法が挙げられる。溶融混練温度は、120?170℃が良い。
【0141】粉砕法によるトナーの製造において、カーボンブラック、必要に応じて他の成分を結着樹脂の一部に予め添加し分散させた後、上記の分散物を残りの結着樹脂、有機金属化合物、アルカリ金属塩、さらには必要に応じてその他の添加剤を加え、溶融混練、冷却、粉砕、分級をおこなってもよい。予めカーボンブラックを結着樹脂に分散させる工程としては、従来から知られているマスターバッチ法やフラッシング処理法が挙げられる。」

1K.「【0336】
(トナーの製造例43)
・ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2ビス(4-ヒドロキシフェニル) プロパン 15mol%
・ポリオキシエチレン(2.2)-2,2ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン 34mol%
・テレフタル酸 1.5mol%
・フマール酸 36mol%
・トリメリット酸 0.1mol%
これらを4つ口フラスコに仕込み、還流冷却器、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計及び攪拌装置を付し、フラスコ内に窒素を導入しながら縮合重合して、酸価=10.5mgKOH/g、Tg=56℃、Mn=4000、Mw=10500のポリエステル樹脂(A)を得た。
【0337】上記ポリエステル樹脂(A)100部にカーボンブラック(1)6部、ジ-t-ブチルサリチル酸のアルミニウム化合物5部、エステルワックス(総炭素数:36)2部、炭酸カリウム0.02部を75Eヘンシェルミキサーにより1800rpmで8分間の予備混合を行い、二軸押出し混練機を120℃に設定し溶融混練を行った。冷却後ハンマーミルを用いて、約1?2mm程度に粗粉砕した。次いでエアージェット方式による微粉砕機で40μm以下の粒径に微粉砕した。さらに、得られた微粉砕物を分級して黒色トナー粒子を得た。
【0338】得られた黒色トナー粒子100部に対して、BET法による比表面積が98m^(2)/gである疎水性酸化チタン1.1部と重量平均粒径0.7μmのチタン酸ストロンチウム0.2部をヘンシェルミキサーで外添した後、ターボスクリーナーで粗粒を除去し、重量平均粒径7.7μmの黒色非磁性トナー44を得た。このトナーのカリウム量を定量したところ、130ppmであった。また、誘電率測定によるtanδ(5×10^(4)Hz)は0.00528、tanδ(10^(5)Hz)は0.00618であった。さらに、カーの流動性指数は83、カーの噴流性指数は90、接触角は128度であった。」

1L.「【0342】(トナーの製造例45)製造例43において、炭酸カリウムの添加量を0.09部にする以外は同様にして、重量平均粒径7.8μmの黒色非磁性トナー45を得た。このトナーのカリウム量を定量したところ、198ppmであった。
【0343】?【0344】(省略)
【0345】(トナーの製造例46)製造例43において、粉砕及び多段分割式分級機の条件をそれぞれ変更した以外は同様にして、重量平均粒径5.4μm(4μm以下:24個数%、12.7μm以上:0体積%)の黒色非磁性トナー46を得た。
【0346】?【0348】(省略)
【0349】(トナーの製造例49)製造例43において、分級条件を変更し6.5μmのトナー粒子を得、添加する疎水性酸化チタンを0.3部に変更すること以外は同様にして黒色非磁性トナー49を得た。このトナーのカーの流動性指数は57、カーの噴流性指数は72であった。
【0350】(省略)
【0351】(トナーの製造例50)製造例43において、使用するカーボンブラックとして、製造時の原料油に炭酸カリウム水溶液を添加し燃焼させ製造したカーボンブラック(20)(カリウム含有量300ppm)を用いること以外は同様にして、重量平均粒径7.7μmの黒色非磁性トナー50を得た。このトナーのカリウム量を定量したところ、65ppmであった。」

1M.【0445】【表8】および【0446】【表9】(ともに摘記省略)により、
トナー製造例43は、結着樹脂のポリエステル樹脂の酸価10.5、水酸基価18.6であり、重量平均粒径7.6μm、tanδ(5×10^(4)Hz)0.00528、tanδ(10^(5)Hz)0.00618であることが示されている。
なお、トナー製造例45、46、49、50についても、同じく結着樹脂のポリエステル樹脂の酸価10.5、水酸基価18.6であり、それぞれ、重量平均粒径、tanδ(5×10^(4)Hz)、tanδ(10^(5)Hz)は、
トナー製造例45:7.8μm、0.00501、0.00598、
トナー製造例46:5.4μm、0.00569、0.00651、
トナー製造例49:6.5μm、0.00539、0.00629、
トナー製造例50:7.7μm、0.00518、0.00606
であることが示されている。

1N.「【0423】[実施例45]フェライトキャリアII:92部と黒色非磁性トナー43:8部をV型混合機で混合し、二成分現像剤とした。
【0424】この二成分現像剤を、画像形成装置として市販のキヤノン製カラー複写機CLC1000改造機(加熱ローラ及び加圧ローラを1.2μmのPFA表層を有するローラに変更し、オイル塗布機構を除去した定着装置に変更)のブラックステーションに導入し、実施例1と同様の評価を行った。表11に示すとおり、良好な結果が得られた。」

1O.「【0428】[実施例47]実施例45において、トナー中カリウム量が198ppmの黒色非磁性トナー45を使用する以外は同様にして評価を行ったところ、表11に示すように実施例45に比べ、H/H環境下でのカブリ、トナー飛散、ベタ均一性及び画像濃度安定性に関して、若干劣るものの、実使用上問題のないレベルであった。
【0429】?【0430】(省略)
【0431】[実施例48]実施例45において、粒径5.4μmの黒色非磁性トナー46を使用する以外は同様にして評価を行ったところ、表11に示すように実施例45に比べ、カブリ及びトナー飛散に関して、若干劣るが、問題となるレベルではなかった。
【0432】?【0434】(省略)
【0435】[実施例51]実施例45において、カーの流動性指数が57、カーの噴流性指数が68である黒色非磁性トナー49を使用する以外は同様にして評価を行ったところ、表11に示すように実施例45に比べハイライトの再現性といった画質の点に関して若干劣るものであった。また、カブリも若干発生していた。しかし、実使用上問題となるレベルではなかった。
【0436】(省略)
【0437】[実施例52]実施例45において、カリウムを有するカーボンブラックを含有する黒色非磁性トナー50を使用する以外は同様にして評価を行ったところ、表11に示すように実施例45と同等の画像特性が得られた。」

1P.「【0450】
【発明の効果】本発明によれば、温湿度に左右されることなく、どんな現像方式に適用しても高画像濃度で高精細なブラック画像を得ることができ、さらにフルカラー用のブラックトナーとしても好適に用いることができる。」

これら記載(特に、1A.請求項1および1L.1M.トナー製造例43)によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「少なくとも結着樹脂、カーボンブラック及び有機金属化合物を含有するトナー粒子と、外添剤とを有する非磁性ブラックトナーであり、
該トナー粒子は、炭酸カリウムであるアルカリ金属元素を10?200ppm含有し、
該トナー粒子は、ジ-t-ブチルサリチル酸のアルミニウム化合物である有機金属化合物を含有し、
該トナー粒子は、樹脂成分としてポリエステル樹脂を含有しており、
該ポリエステル樹脂の酸価は、10.5mgKOH/g、水酸基価は、18.6mgKOH/gであり、
非磁性ブラックトナーは、重量平均粒径が7.7μmであり、
誘電損率ε”/誘電率ε’で示される損失正接tanδが、周波数5×10^(4)Hz,10^(5)Hzにおいて、それぞれ、tanδ(5×10^(4)Hz)0.00528、tanδ(10^(5)Hz)0.00618であり、
カーの流動性指数が83であり、カーの噴流性指数が90である、
トナー粒子は、ポリエステル樹脂、カーボンブラック、ジ-t-ブチルサリチル酸のアルミニウム化合物、エステルワックス、炭酸カリウムを混練、粉砕して得たものである、
非磁性ブラックトナー。」

4.対比、判断
本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。
・刊行物1発明の「非磁性ブラックトナー」は、本願補正発明の「黒トナー」あるいは「トナー」に相当する。ここで、刊行物1発明の「外添剤を有する」点は、本願補正発明にも包含される構成で、実施例等も外添剤を包含するので、相違点とはならない。
・刊行物1発明の「非磁性ブラックトナーは、重量平均粒径が7.7μm」である点は、外添後の粒径であるが、外添剤の粒子径寄与分を参酌しても、本願補正発明の「トナー粒子の重量平均粒径が3.5乃至8.0μm」に該当することは明らかである。
・刊行物1発明の「該ポリエステル樹脂の酸価は、10.5mgKOH/g、水酸基価は、18.6mgKOH/g」である点と、本願補正発明の「トナーの酸価とOH価との和が30乃至75mgKOH/gであること」とは、「トナーの酸価とOH価に関する規定を有する」点で共通する。
・刊行物1発明は、「誘電損率ε”/誘電率ε’で示される損失正接tanδが、周波数5×10^(4)Hz,10^(5)Hzにおいて、それぞれ、tanδ(5×10^(4)Hz)0.00528、tanδ(10^(5)Hz)0.00618」であることは、「tanδ(10^(5)Hz)/tanδ(5×10^(4)Hz)」は1.17であるから、本願補正発明の、「周波数5×10^(4)Hzと周波数10^(5)Hzとの損失正接tanδとの比が
1.05≦tanδ(10^(5)Hz)/tanδ(5×10^(4)Hz)≦1.40
であること」に相当する。
・刊行物1発明の「混練、粉砕して得たもの」である点と、本願補正発明の「該トナー粒子は、少なくとも一部の結着樹脂とカーボンブラックとを混錬した後、残りの結着樹脂と混錬し、その後、粉砕して製造されたもの」である点とは、「混錬し、その後、粉砕して製造されたもの」である点で共通する。
・刊行物1発明の「エステルワックス」は本願補正発明の「離型剤」に相当する。
また、刊行物1発明の必須の構成である、「ジ-t-ブチルサリチル酸のアルミニウム化合物である有機金属化合物」は、本願補正発明でも、その実施例のすべてに含まれており、相違点とはならない。
・刊行物1発明が、「カーの流動性指数」、「カーの噴流性指数」を規定している点については、トナーの流動性を表す指標であり、一般に、トナーにおいて、ある程度の流動性を有することが技術常識であることから、相違点とはならない。

よって、本願補正発明と刊行物1発明とは、下記の一致点にて一致し、下記相違点1?5にて相違すると認められる。

[一致点]
「結着樹脂、カーボンブラック、及び離型剤を少なくとも含有するトナー粒子を有するトナーにおいて、
該トナー粒子は、混錬し、その後、粉砕して製造されたものであり、
該トナー粒子の重量平均粒径が3.5乃至8.0μmであり、
トナーの酸価とOH価に関する規定があり、
誘電損率ε”/誘電率ε’で示されるトナーの損失正接tanδの、
周波数5×10^(4)Hzと周波数10^(5)Hzとの損失正接tanδとの比が
1.05≦tanδ(10^(5)Hz)/tanδ(5×10^(4)Hz)≦1.40
である黒トナー。」

[相違点1]アルカリ金属元素に関して、
本願補正発明では、記載されていないのに対し、
刊行物1発明では、「アルカリ金属元素を10?200ppm含有」することを必須の構成とする点。

[相違点2]トナー粒子の製造の、混練に関して、
本願補正発明では、「少なくとも一部の結着樹脂とカーボンブラックとを混錬した後、残りの結着樹脂と混錬し」たのに対し、
刊行物1発明は、結着樹脂を段階的に混練したものではない点。

[相違点3]トナーの酸価とOH価に関して、
本願補正発明は、「トナーの酸価とOH価との和が30乃至75mgKOH/gである」のに対し、
刊行物1発明は、ポリエステル樹脂の酸価は、10.5mgKOH/g、水酸基価は、18.6mgKOH/gである点。

[相違点4]
本願補正発明は、「円相当径が2μm以上のトナーに含まれる粒子の平均円形度が0.915以上0.960以下」であることを規定するのに対し、
刊行物1発明は、そのような平均円形度に関する規定がない点。

[相違点5]
本願補正発明は、「誘電損率ε”/誘電率ε’で示されるトナーの損失正接tanδが周波数10^(3)乃至10^(4)Hzの範囲において、
tanδ(10^(3)?10^(4)Hz)≦0.0060」であるのに対し、
刊行物1発明は、周波数10^(3)乃至10^(4)Hzの範囲におけるトナーの損失正接tanδに対する規定がない点。

以下、上記相違点1乃至5について、先に相違点2乃至5を検討し、その後相違点1について検討する。

(相違点2について)
「少なくとも一部の結着樹脂とカーボンブラックとを混錬した後、残りの結着樹脂と混錬し」た方法については、刊行物1において、その具体的な製造例には採用されていないものの、発明の詳細な説明に記載されている手段である(1J.)。そして、その混練物の分散性を高める周知慣用手段である。例えば、前置報告書に引用文献7?9として記載された特開平10-319642号公報、特開2001-5232号公報(【0023】、【0052】、【0054】、【0055】)、特開平11-295989号公報(【0112】)に、「少なくとも一部の結着樹脂とカーボンブラックとを混錬した後、残りの結着樹脂と混錬し」た、いわゆるマスターバッチとすることが記載されている。
また、特開2002-311635号公報(【0158】)にも、刊行物1発明と同様の課題のもとに、「少なくとも一部の結着樹脂とカーボンブラックとを混錬した後、残りの結着樹脂と混錬し」た構成を採用したことが示されている。

よって、カーボンブラックの分散性の向上の課題の下に、「少なくとも一部の結着樹脂とカーボンブラックとを混錬した後、残りの結着樹脂と混錬し」た方法を採用することは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、そのカーボンブラックの分散性が向上することに伴う作用効果も刊行物1に記載されていることから予測しうる程度のことである。

(相違点3について)
刊行物1発明では、トナーとしてできあがったものの酸価、OH価の記載はない。
しかしながら、本願明細書【0014】には、の樹脂成分の酸価とOH価の和が重要であること、「トナーの酸価とOH価との和」と同じく、「30乃至75mgKOH/g」が良好な分散性を示すことが記載されており、「トナーの酸価とOH価との和」と樹脂成分の「酸価とOH価との和」との範囲との差異を明確にはしていない。そして、本願明細書の表3に示されたトナーの「酸価+OH価」は、使用した結着樹脂の「酸価+OH価」より高くなる傾向を示すから、刊行物1発明のトナーの「酸価+OH価」としては、本願補正発明の範囲内にある蓋然性が高いと認められる。
また、トナーの酸価OH価の合計が結着樹脂のそれと同程度だとしても、刊行物1記載の結着樹脂の酸価、水酸基を本願補正発明の記載どおりの有効数字2桁でとれば、合計30mg/KOHであり、実質的な差違はない。

仮に、異なるとしても、酸価やOH価をある程度高い結着樹脂を用いることは、周知技術であって、例えば、原査定の引用文献3である、特開2002-169326号公報(【0030】、表1)には、カーボンブラックの分散性、帯電環境安定性の観点から、そのような酸価、OH価のバインダー樹脂を用いること、特開2002-139869号公報(請求項1、表1)には、カーボンブラック含有トナーにおいて帯電性の観点から酸価とOH価の和を本願補正発明程度とすることが記載されている。
よって、必要に応じて、さらに「酸価とOH価の和」が高い結着樹脂を用いて本願補正発明の「トナーの酸価とOH価」を満たす構成とすることに格別の困難性は認められない。
そして、本願明細書において、下限を超える例は、21.2mg/KOHであり、上限を超える例は、80.6mg/KOHであって、分子量分布も異なる樹脂を用いた比較例5、6や、樹脂以外の構成も大きく異なる比較例4,5があるのみで、「トナーの酸価とOH価との和が30乃至75mgKOH/gである」ことの格別顕著な臨界的意義や相乗的作用効果は認められない。

(相違点4について)
トナーの円形度を調整することにより、流動性等を調節することは、周知慣用技術である。
本願補正発明の平均円形度とすることに格別顕著な臨界的意義も認められない。

(相違点5について)
刊行物1(1I.)には、損失正接tanδが小さいほどカーボンブラックの分散性が良好であるとの一般的指標が示されており(【0109】、周波数5×10^(4)Hzにおけるtanδ(5×10^(4)Hz)、10^(5)Hzにおけるtanδ(10^(5)Hz)が所定の値より大きい場合、「カーボンブラックの分散性が劣り不均一となるために、トナーの帯電量分布がブロードとなり、低湿下でのチャージアップによる画像濃度薄やカブリや高湿下での帯電量不足によるカブリ、飛散、転写性の低下等の弊害が生じる」(【0111】)との作用効果も記載されている。
よって、周波数10^(3)乃至10^(4)Hzの範囲における同値についても、「カーボンブラックの分散性が劣り不均一となるために、トナーの帯電量分布がブロードとなり、低湿下でのチャージアップによる画像濃度薄やカブリや高湿下での帯電量不足によるカブリ、飛散、転写性の低下等の弊害が生じる」との作用効果を考慮して、適宜調整し得ることである。
また、相違点2、3に係る構成を採用することにより、カーボンブラックの分散性が向上した結果、小さくなる値であって、該構成を採用することにより、達成される値であるということができる。

(相違点1について)
本願補正発明は、アルカリ金属を含有することを構成要件とせず、明細書にも記載がないが、アルカリ金属を特定量含有するものが除外されているわけではないから、実質的には相違点ではない。
しかしながら、刊行物1発明は、アルカリ金属元素を含有することにより、「樹脂とカーボンブラックとの親和性が増」して、「カーボンブラックが、樹脂で包まれた状態で存在するようになり、トナー粒子中における分散性が高まるため、カーボンブラックのトナー表面への偏在を抑えることが可能となり、またカーボンブラックの遊離を抑制することができる」との作用を生じ、アルカリ金属元素が所定量より少ないと、「カーボンブラックの分散性向上、導電性抑制等の効果が十分に得ることができず、帯電量の低さや分布のブロード化を招き、カブリや飛散、転写性の低下といった弊害が生じる。」(1E、1F)というものである。
こうしたことから、刊行物1発明の、カーボンブラックの分散性向上、導電性抑制等の課題のためには欠くことができない構成ではあるので、一応相違点としても検討する。

刊行物1発明において、所定量のアルカリ金属を含有することは、上記のようにカーボンブラックの分散性向上、導電性抑制等の課題のための手段であるから、これに換えて、あるいは、これと併せて同じ課題の別の解決の手段である、上記の相違点2、3、5について検討した手段を採用することは当業者が容易に為しうることである。

以上を総合して、刊行物1発明において、カーボンブラックの分散性の向上に係る相違点1乃至3、5に係る構成および平均円形度を最適化することを併せて採用することに困難性は認められない。

(請求人の主張について)
請求人は、請求の理由において、特許法第29条第2項に係る拒絶理由に対して次のように主張する。

「引用文献1は、本願の出願人によって出願されたものであり、その内容を熟知しております。そして、本願発明者が、引用文献1のトナーの製造例43に従いトナーを製造したところ、tanδ(5×10^(4)Hz)が0.00503、tanδ(10^(5)Hz)が0.00609であり、tan(10^(3)?10^(4)Hz)の最大値が0.00658でありました。
引用文献1のトナーの製造例43においては、マスターバッチ工程を経たトナーの製造を行っておらず、また結着樹脂の酸価とOH価との和も小さいため、カーボンブラックの分散がトナー粒子間やトナー粒子内において均一に近い状態でなされてはいるものの、その分散が一次粒子の状態にまでなっておらず、tan(10^(3)?10^(4)Hz)の最大値が0.0060を超える値になったものと思料します。

まとめ:
よって、上述した通り、本願発明の規定を満たす程度にカーボンブラックの分散性に優れたトナーは、引用文献1には記載されておりません。そして、本願発明に係るトナーは、引用文献1に記載されたトナーに比べて、帯電の安定性に優れ、よりシャープな帯電量分布を有するトナーであります。
また、引用文献2乃至6のいずれにも、トナー中のカーボンブラックの分散状態を高度に改善することは記載されておらず、本願発明における損失正接に係る規定を満たすトナーは、記載されておりません。
即ち、引用文献1乃至6のいずれにも、本願発明の規定を満たす程度にカーボンブラックの分散性に優れたトナーは記載されておりません。そして、本願発明のトナーは、引用文献1乃至6に記載されたトナーと比べて、帯電の安定性に優れ、帯電量分布がよりシャープであるという優れた特性を有するものであります。」

この主張について検討するに、刊行物1のトナーの製造例43は、tanδ(10^(3)?10^(4)Hz)の最大値が0.0060を超える値0.00658であり、この理由を、「マスターバッチ工程を経たトナーの製造を行っておらず、また結着樹脂の酸価とOH価との和も小さいため」と推定している。
しかしながら、「マスターバッチ工程を経たトナーの製造」および「結着樹脂の酸価とOH価との和」の調整といった相違点に係る構成を採用すること、および、その結果、トナーの分散性が向上することにより、tanδ(10^(3)?10^(4)Hz)の最大値が適当な値に低減されることの容易性について何ら意見を述べるものではない。
また、上記請求人の推定は、逆にいえば、「マスターバッチ工程を経たトナーの製造」および「結着樹脂の酸価とOH価との和」の調整等を採用することにより、tan(10^(3)?10^(4)Hz)の最大値が0.0060以下となることを暗に認めているともいえる。
そして、本願補正発明では、その明細書に記載されたトナー1,6は、ワックスも異なるから一概に評価できないとはいえ、両者のtanδ(10^(3)?10^(4)Hz)の最大値の大小関係からみて、刊行物1発明に、「マスターバッチ工程を経たトナーの製造」を採用した場合に、tan(10^(3)?10^(4)Hz)0.00658が0.0060以下となる蓋然性は十分高いといえる。
単に「マスターバッチ工程を経たトナーの製造」を採用しただけでは0.0060以下にならないとしても、カーボンブラックの分散性の向上という、課題からこれらを最適化するに、tanδ(10^(3)?10^(4)Hz)の0.00658が0.0060以下となることに適宜調整される程度のことである。
そして、本願補正発明の明細書(【0018】)においては、「中でも10^(3)?10^(4)Hzという特定の周波数におけるtanδの値が、帯電の安定性との相関があるということを見出し、更なる検討の結果、以下のように規定するに到った。即ち、本発明の黒トナーは周波数10^(3)?10^(4)Hzにおける“tanδ(10^(3)?10^(4)Hz)”が0.0060以下、好ましくは0.0055以下である。tanδ(10^(3)?10^(4)Hz)が0.0060より大きい場合、トナーの帯電量分布がブロードとなる傾向があり、低湿下でのチャージアップによる画像濃度薄やカブリ、また高湿下での帯電量不足によるカブリ、トナー飛散、転写性の低下等の弊害が生じやすい。」と記載しているものの、その周波数範囲をとる十分な根拠も示さず、臨界性を示す十分なデータも示していない。
なお、回答書では、前置報告書にて原査定審査官の述べた、刊行物1のトナーの製造例43は、tanδ(10^(3)?10^(4)Hz)の最大値が0.0060以下となる蓋然性を有する点について否定するのみで、その容易性を含めて、その他の点についてはなんら主張していない。また、「引用文献7乃至9に関しましては、前置報告書にて初めて示された文献であります。これらの引用文献に基づいて審理を行うのであれば、先ず拒絶理由通知書を発し、出願人に詳細に検討する時間を与えていただきたい」と述べているが、これら、引用文献7乃至9は周知文献の例示であって、引用文献として引用するものではないので、改めて拒絶理由は通知しない。

以上、上記請求人の主張を検討しても、本願補正発明が、刊行物1発明および周知技術に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとの判断に変わりはない。

5.まとめ
したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願の請求項に係る発明
平成21年4月3日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?12に係る発明は、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1?12に記載されたとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という)は次のとおりのものと認める。

「結着樹脂、カーボンブラック、及び離型剤を少なくとも含有するトナー粒子を有するトナーにおいて、
該トナー粒子の重量平均粒径が3.5乃至8.0μmであり、
該トナーの酸価とOH価との和が30乃至75mgKOH/gであることを特徴とし、
円相当径が2μm以上のトナーに含まれる粒子の平均円形度が0.915以上0.960以下であり、
誘電損率ε”/誘電率ε’で示されるトナーの損失正接tanδが周波数10^(3)乃至10^(4)Hzの範囲において、
tanδ(10^(3)?10^(4)Hz)≦0.0060
であり、周波数5×10^(4)Hzと周波数10^(5)Hzとの損失正接tanδとの比が
1.05≦tanδ(10^(5)Hz)/tanδ(5×10^(4)Hz)≦1.40
であることを特徴とする黒トナー。」

2.引用刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された上記刊行物1(特開2001-142258号公報)には、上記「第2.3.」欄に示したとおりの事項が記載されている。

3.対比、判断
本願発明1は、上記「第2. 1.」欄に示した本願補正発明における、「該トナー粒子は、少なくとも一部の結着樹脂とカーボンブラックとを混錬した後、残りの結着樹脂と混錬し、その後、粉砕して製造されたものであり、 」との限定がないものである。

そうすると、本願発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2. 4.?5.」欄に記載したとおり、刊行物1に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明1も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、刊行物1に記載された発明および周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-24 
結審通知日 2010-03-02 
審決日 2010-03-15 
出願番号 特願2003-282756(P2003-282756)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
P 1 8・ 575- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 仁科 努  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 伊藤 裕美
赤木 啓二
発明の名称 黒トナー  
代理人 内尾 裕一  

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