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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F21V
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21V
管理番号 1215859
審判番号 不服2009-5805  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-17 
確定日 2010-04-30 
事件の表示 特願2007-272265「照明装置、液晶装置及び電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 3月13日出願公開、特開2008- 60086〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年3月5日に出願された特願2002-59561号に記載された発明に基づいて国内優先権を主張して平成14年12月25日に出願された特願2004-256757号の一部を分割して平成19年10月19日に新たな特許出願としたものであって、平成21年2月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成21年3月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成21年4月14日付けで手続補正がなされたものである。

II.平成21年4月14日付けの手続補正についての却下の決定
[補正却下の結論]
平成21年4月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】光を出射する発光面を備えた光源と、前記光源を支持する基板と、前記光源からの光が入射される入光面を備えた導光体と、を有した照明装置であって、
前記基板は、前記導光体のうち、光が射出される面とは反対側の面に固着され、
前記光源の前記発光面と前記導光体の前記入射面とは、前記基板上で間隙を有した状態で対向して配置されており、
前記基板の前記光源を支持する面のうち、前記光源と前記入光面との間には、前記光源からの光の反射を抑制する光学部材が設けられ、
前記光学部材の前記入光面に沿う方向の幅は、前記光源の前記入光面に沿う方向の幅よりも大きく設定されていることを特徴とする照明装置。」(以下「本願補正発明」という。)と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「基板」に関し、「前記基板は、前記導光体のうち、光が射出される面とは反対側の面に固着され」と限定し、また、「前記光源の前記発光面と前記導光体の前記入射面とは、前記基板上で対向して配置されており」を「前記光源の前記発光面と前記導光体の前記入射面とは、前記基板上で間隙を有した状態で対向して配置されており」と限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例の記載事項
(1)原査定の平成20年9月30日付け拒絶理由で引用した特開平8-234204号公報(以下「引用例1」という)には、以下の事項が記載されている。

a:「【特許請求の範囲】
【請求項1】基板を備えた液晶ディスプレイ装置であって、前記基板の上に、
液晶ディスプレイと、
少なくとも1つの光源と、
前面、後面、側面を有し、且つ、液晶ディスプレイと前記基板の間に配置されて前記少なくとも1つの光源からの光を前記液晶ディスプレイの領域の全面へ分散させるような透明なプレート状部材を備えた、光案内部材と、
前記光案内部材と前記基板の間に配置され、光源に最も近い液晶ディスプレイの複数部分に到達する光の強度を減少させるために異なる光学的反射率の領域パターンを備える光減衰手段と、が取り付けられているような、液晶ディスプレイ装置において、
前記光減衰手段が前記基板上に印刷されていることを特徴とする装置。」

b:「【0002】
【従来の技術】 LCD後方の光案内部材(若しくは「光パイプ」)を用いて、1つ若しくは2つ以上の、発光ダイオード(LED)のような光源から光を分散させることが一般に行われている。光案内部材はプレート状部材を備え、LEDは光案内部材の側面の窪みに配置される。光は、側面を通じて光案内部材に入力され、内部反射によって光案内部材中へ分散される。光案内部材の前面は、減衰を引き起こすように「荒く」されていてもよく、この結果、光はLCD中へ戻される。このように、光案内部材はLCDの幅広い領域にわたって光を分散させるよう機能する。しかしながら、比較的少数の光源が使用される場合には、LCDの全領域にわたって不均一な照射となる傾向がある。一般に、光は、LEDに近づけば近づく程強くなり、遠ざかれば遠ざかるほど弱くなる。欧州特許第0571173号は、不均一な光の分散の問題を光減衰手段を設けることによって解決したものを開示する。光減衰手段はドットパターンの形で光案内部材に隣接して配置されており、光源に最も近いLCDの部分に到達する光の強度を減少させるように構成されている。添付図面の図1?3は、欧州特許第0571173号に開示されたLCD装置と光減衰手段を示す。」

c:「【0003】図1および2に示されているように、この装置は、その後方に平らなメッキ状光案内部材2(一般にはアクリル製)が取り付けられた液晶ディスプレイ装置1を備える。光案内部材へ光を導入するため、多数の発光ダイオード(LED)3が光案内部材2の相対する側面に沿って設けられている。2組のLED3が光案内部材2の側部の各窪み4に配置されている。光減衰手段5は、光案内手段2の下側に配置されており、また、白紙のような反射性物質の薄いシートを備えていてもよく、この白紙の上には、図3に示されているようなドットパターン6が黒インクで印刷されている。ドットパターン6は、LED3の複数の列に隣接する減衰手段5の各端部から延びた2つの半楕円形状を含む。これは、光案内部材2から対応領域のLCD1へ逃れる光量を減衰させる効果を持つ。故に、LCDの全領域にわたってより一様な照射を達成することが可能である。ドットパターン6は、異なる構成の光源にも適合するように、サイズ、形態、密度、若しくは位置に関して変更することができる。ドットの密度をパターンの範囲内で変更して、階調された分散を与えることもできる。これらの特徴の更に詳細については欧州特許第0571173号を参照のこと。」

d:「【0008】本発明に従って形成される光減衰手段のある特定の一例を図4および5を参照して記述する。図4は、図1および2の基板7に対応する印刷回路ボード(PCB)10の一部を示す。PCB10の表面に形成されているのは、光減衰パターンの一部を与える第1、第2の銅パッド12、14である。銅パッド12、14は、印刷回路の導電性銅トラック(図示していない)と同時に形成され得るが、その回路の一部を形成するものではなく、また、金属グレーカラーを得るために熱気ハンダレベルですず/鉛メッキされる。パッド12、14は、組立装置の光案内部材によって覆われる領域の側端の内部に且つ隣接に配置されており、LEDによって占有されるであろう位置16(図5)に隣接している。・・・」

e:「【0009】光減衰パターンは、LED位置16に隣接するパッド12、14とバックグラウンド18の一部の上に黒色ドット20のパターンをシルクスクリーン印刷することによって完成される。この結果、完成された光減衰パターンは、3つの異なる集成反射率を備えた領域を提供する。即ち、ドット20を用いて重ね印刷され、LEDの位置に最も近接する領域に最も低い集成反射率を提供するようなパッド12、14と、ドット20を用いてパッド12、14の隣接で重ね印刷されて中間集成反射率を提供するバックグラウンド18の領域と、最も高い集成反射率を提供する無地のバックグラウンド領域とである。・・・」

よって、上記記載から引用例1には、
「光を出射する発光面を備えた光源と、前記光源を支持する基板と、前記光源からの光が入射される入光面を備えた光案内部材と、を有した液晶ディスプレイ装置であって、
前記基板は、前記光案内部材のうち、光が射出される面とは反対側の面に固着され、
前記光源の前記発光面と前記光案内部材の前記入射面とは、前記基板上で間隙を有した状態で対向して配置されており、
前記基板の前記光源を支持する面には光減衰手段が設けられている液晶ディスプレイ装置」(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(2)原査定の平成20年9月30日付け拒絶理由で引用した実願平5-48642号(実開平7-14435号)のCD-ROM(以下「引用例2」という)には、以下の事項が記載されている。

f:「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】透明板の端部に光源が配置された導光板内に光を導き、背面に施された散光処理により前方方向を照明して成る液晶表示器用のバックライト装置において、前記導光板の背面であり且つ光源が配置された近傍の中央側の部分には適宜面積とした平坦部が設けられ、該平坦部には必要に応じる黒色処理が施されていることを特徴とする液晶表示器用のバックライト装置。」

g:「【0001】【産業上の利用分野】
本考案は液晶表示器を背面から照明を行うときに用いられるバックライト装置に関するものであり、詳細には前記バックライト装置における照明ムラの防止手段に係るものである。」

h:「【0012】
続いて、黒色処理7の作用について説明を行えば、この黒色処理7は基本的に前記平坦部6により生じる反射光の減光手段、言い換えれば照明ムラの解消の更なる微調整として行われるものであり、前述のように前記平坦部6が反射面として作用した場合、例えば導光板2の板厚などの条件によっては、この平坦部6で生じる反射光に有効利用が図れず、逆に照明ムラの要因となる場合も生じる可能性がある。
【0013】
このような場合に前記平坦部6に対して行われるのが黒色処理7であり、平坦部6の例えば一部分に黒色塗料の塗装を行うことで成されるものである。このようにすることで前記平坦部6の黒色処理7は、この平坦部6に達した光は吸収され反射を行わせないものとする。よって、前記平坦部6からの反射光が有害である場合にはその部分に黒色処理7を施すことで、目的を達するものとなる。
【0014】
よって、前記黒色処理7は平坦部6の全面に渡り施す必要は必ずしもないものであり、例えば光源4の形状、設けられる位置、光量などに応じて最適な状態が得られるように設定されれば良く、極端な場合には、黒色処理7が施されない平坦部6とされても良いものである。」

3.対比
引用発明の「光案内部材」は、本願補正発明の「導光体」に相当し、引用発明の「光減衰手段」は、本願補正発明の「光源からの光の反射を抑制する光学部材」に相当する。
また、引用発明の「液晶ディスプレイ装置」は液晶ディスプレイとそれを照明する装置とよりなるものであるから、液晶ディスプレイを除いた部分は、本願補正発明の「照明装置」に相当する。
上記の事項を考慮して、引用発明と本願補正発明を対比すると、両者は次の点で一致する。
[一致点]
光を出射する発光面を備えた光源と、前記光源を支持する基板と、前記光源からの光が入射される入光面を備えた導光体と、を有した照明装置であって、
前記基板は、前記導光体のうち、光が射出される面とは反対側の面に固着され、
前記光源の前記発光面と前記導光体の前記入射面とは、前記基板上で間隙を有した状態で対向して配置されており、
前記光源からの光の反射を抑制する光学部材が設けられている照明装置。

そして、両者は次の点で相違する。
(相違点1)
本願補正発明は、基板の光源を支持する面のうち、光源と入光面との間には、光源からの光の反射を抑制する光学部材が設けられるのに対し、引用発明は、基板の光源を支持する面には、光源からの光の反射を抑制する光学部材が設けられてはいるが、光源と入光面との間に設けられているか否か不明である点。

(相違点2)
本願補正発明は、光学部材の入光面に沿う方向の幅は、光源の入光面に沿う方向の幅よりも大きく設定されているのに対し、引用発明は、光学部材の入光面に沿う方向の幅は、光源の入光面に沿う方向の幅と同程度である点。

4.相違点についての判断
(1)相違点1について。
本願補正発明では、光源と入光面との間には光源からの光の反射を抑制する光学部材が設けられているが、液晶表示装置用の面光源装置において、光源と導光板の入光面の間に光吸収層を設けることは周知の事項であり(例えば、審査過程における平成21年2月6日付け補正却下の決定において周知事項として示した特開2001-84822号公報の図2等参照)、上記相違点1のような構成とすることに何ら困難性は認められず、当業者は容易になし得ることである。

(2)相違点2について。
本願補正発明は、光学部材の入光面に沿う方向の幅は、光源の入光面に沿う方向の幅よりも大きく設定されているが、引用例2の記載事項hにも記載されているように、黒色処理(本願補正発明の光学部材に相当する)は、例えば光源の形状、設けられる位置、光量などに応じて最適な状態が得られるように設定されれば良いものであって、光学部材の幅をどの程度にするかは当業者が適宜容易に定め得るものである。
しかも、引用例2の図2及び3には、光源の入光面に沿う方向の幅よりも大きく設定されている平坦部6を黒色処理することが記載事項hに示されているから、上記相違点2のような構成とすることに何ら困難性は認められず、当業者は容易になし得ることである。

そして、出願人が主張する効果についても何ら格別のものとは認められない。

したがって、本願補正発明は、引用例1及び2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると認められるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.上記補正却下された後の本願発明について
1.本願発明の記載事項
平成21年4月14日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成20年6月5日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】光を出射する発光面を備えた光源と、前記光源を支持する基板と、前記光源からの光が入射される入光面を備えた導光体と、を有した照明装置であって、
前記光源の前記発光面と前記導光体の前記入射面とは、前記基板上で対向して配置されており、
前記基板の前記光源を支持する面のうち、前記光源と前記入光面との間には、前記光源からの光の反射を抑制する光学部材が設けられ、
前記光学部材の前記入光面に沿う方向の幅は、前記光源の前記入光面に沿う方向の幅よりも大きく設定されていることを特徴とする照明装置。」

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は前記II.2に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記II.1で検討した本願補正発明の「前記基板は、前記導光体のうち、光が射出される面とは反対側の面に固着され」が削除され、「基板上で間隙を有した状態で対向して配置されており」が「基板上で対向して配置されており」となるものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含むものに相当する本願補正発明が、前記II.4に記載したとおり、引用例1及び2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、当審の審尋に対する回答書において、本件の請求項1の発明を「[請求項1]液晶パネルに対向して配置される照明装置であって、光を出射する発光面を備えた光源と、前記光源を支持する基板と、前記光源からの光が入射される入光面を備えた導光体と、前記導光体のうち、前記液晶パネルに対向する面の反対側の面に配置される光反射シートを有し、
前記基板は、前記光反射シートを介して、前記導光体のうち、前記液晶パネルに対向する面の反対側の面に固着され、
前記光源の前記発光面と前記導光体の前記入光面とは、前記基板上で間隙を有した状態で対向して配置されており、
前記基板の前記光源が設けられている側の面のうち、前記光源と前記入光面との間、および前記光反射シートを介して前記導光体と重なる領域には、前記光源からの光の反射を抑制する光学部材として光を吸収する光吸収部材が設けられ、
前記光吸収部材の前記入光面に沿う方向の幅は、前記光源の前記入光面に沿う方向の幅よりも大きく設定されていることを特徴とする照明装置。」とする補正案を記載している。
しかし、光反射シートを介して導光体と重なる領域には、光源からの光の反射を抑制する光学部材として光を吸収する光吸収部材を設けることは、特開平11-149817号公報(特に、段落【0017】、図1を参照)に記載されているように公知の事項であり、上記補正案のように補正を行ったとしても、本願発明は依然として特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本件審判の請求は成り立たない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-19 
結審通知日 2010-02-23 
審決日 2010-03-11 
出願番号 特願2007-272265(P2007-272265)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F21V)
P 1 8・ 575- Z (F21V)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 正志  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 植前 津子
中川 真一
発明の名称 照明装置、液晶装置及び電子機器  
代理人 宮坂 一彦  
代理人 須澤 修  
代理人 上柳 雅誉  

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