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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1215918
審判番号 不服2008-8168  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-03 
確定日 2010-05-06 
事件の表示 平成11年特許願第132007号「ADM光モジュール及び光通信線路の試験方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月24日出願公開、特開2000-324065〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成11年5月12日の出願であって、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。) は、平成20年1月31日に補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 入力光(S_(IN))のうち、1.55μm帯の通信光(Ss)とは異なる波長の1.31μm帯の試験光(St)をアレー導波路回折格子からなるADM部(10)に対して迂回伝送する試験光迂回部(11)を備え、
該試験光迂回部は、入力光を迂回用光伝送路(12)に分岐させる光分岐器(13)と、前記迂回用光伝送路上に設けられ試験光のみを通過させる光フィルタ(14)と、該光フィルタを通過した試験光をADM部の出力光と結合させる光結合器(15)とからなることを特徴とするADM光モジュール。」

2.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-1631号公報(以下、「刊行物1」という。)には、
ア 「〔発明が解決しようとする課題〕
上記のOTDR方式による光ケーブルの障害位置標定方式では、標定可能距離は約100Kmと長いものである。そして、端局と中継装置、または中継装置と中継装置とは通常、30?60Km毎に設けられている。従って、OTDR方式によれば、端局から2?3の中継装置を越えて光ケーブルの障害位置の標定を行える筈である。
しかしながら、障害点で後方散乱して戻って来る標定信号は、中継装置の光中継器で逆方向阻止されてしまい中継装置を越えて端局へ戻ることができないので、端局に最も近い中継装置より遠方の区間に有る障害の位置は、標定できないという問題点があった。
従って、本発明は、端局から中継器を越えて障害位置の標定ができるOTDR方式による光ケーブルの障害位置標定が可能な光ケーブル通信方式を提供することを目的とする。」(2頁左下欄9行?右下欄7行)、
イ 「第5図は、第2の本発明に係る光ケーブル通信方式の一実施例を説明する図であり、この方式においては、中継装置は、lは、光中継器2、スルーファイバ3、分波器7及び合波器8を備えている。また、10は端局、20は測定器である。
この構成においては、主信号と測定信号の使用する波長は、それぞれ1.3μm、1.5μmと異なるように設定してある。そして、この構成に使用されている分波器7は、信号をその波長で区分し、波長が1.3μmの主信号は、光中継器2へ送り、波長が1.5μmの測定信号は、スルーファイバ3へ送るとともに、逆方向からの1.3μmと1.5μmの信号は、合波器として作用していずれの信号も、端局10へ送り出すことができるものである。
また、合波器8は、主信号及び測定信号のいずれをも、次の中継装置1へ送り出すことができるもので分波器7とは逆方向の分波器を使用するか、または、単に信号を分配/合波する分配器を使用してもよい。分配器を使用する場合、後方散乱した標定信号は、一部光中継器2へも送られるので測定器20へ戻る標定信号は少し減衰したものとなるが、この場合は、予め減衰分を求めておけば、特に、問題となることは無い。
動作において、通常の光ケーブル通信時には、波長1.3μmの主信号は、分波器7、光中継器2及び合波器8を経て送られている。
障害位置標定時には、波長1.5μmの測定信号は、端局10において光ケーブル13に入力され、分波器7、スルーファイバ3及び合波器8によって光中継器2をバイパスしてその標定可能距離まで進み、障害点で後方散乱した標定信号は、合波器8、スルーファイバ3及び分波器7を経て、端局10を介して測定器20へ戻る。」(4頁右上欄7行?左下欄19行)が記載されている。

(2)原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-247878号公報(以下、「刊行物2」という。)には、
ア 「【請求項1】 上り系と下り系を有し、監視光を当該上り系と当該下り系の間でループバックするようにした光伝送路と、当該光伝送路の両端のトランク局と、当該光伝送路に配置されそれぞれに特定波長をアド/ドロップする1以上の光分岐ユニットと、当該1以上の分岐ユニットのそれぞれに接続する分岐局とからなる光伝送システムであって、当該1以上の光分岐ユニットのそれぞれに、当該監視光を迂回する迂回線路を設けたことを特徴とする光伝送システム。
【請求項2】 当該迂回線路が、上り系と下り系のそれぞれに設けられている請求項1に記載の光伝送システム。
【請求項3】 当該光分岐ユニットが更に、当該特定波長をアド/ドロップする光アド/ドロップ手段と、当該光アド/ドロップ手段において当該特定波長の光信号をアドされた光信号をスルーすると共に、当該光伝送路の下流側から入力する監視光を当該迂回線路に流し込む第1の光結合手段と、当該光伝送路の上流側から入力するドロップすべき光信号を含む入力光を当該アド/ドロップ素子に供給すると共に、当該迂回線路からの監視光を当該光伝送路の上流側に流し込む第2の光結合手段とを具備する請求項1に記載の光伝送システム。」(2頁1欄2行?23行)、
イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光伝送システム、光分岐装置及び光信号処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】光ファイバ伝送システム、特に海底光ファイバ伝送システムのような長距離伝送システムでは、 C-OTDR(Coherent Optical Time Domain Reflectometry)に基づき信号光又は監視用の特別の信号の反射光又は散乱光(以下、監視光と総称する。)を使って光伝走路の状態を遠隔監視する障害探査技術が知られている。
【0003】また、通常、光ファイバ伝送システムは上り用と下り用からなる1対の光伝送路を基本としており、長距離の光増幅中継光伝送システムでは光増幅中継器内に、反射光又は散乱光を上り系から下り系及び下り系から上り系に渡すループバック回路を設ける構成が知られている。このようなループバック回路は上り系の光増幅器の出力光と散乱又は反射による戻り光を下り系に、下り系の光増幅器の出力光と散乱又は反射光を上り系に戻すように構成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来例のループバック回路により、ファイバ伝走路の各部分の伝送特性を伝送端の端局で監視できる。しかし、2点間の接続の場合、これで問題ないが、1以上の分岐局を設ける場合、主光ファイバ伝送路に分岐局を接続するための光分岐ユニット(具体的には、分岐局に割り当てられた特定波長をアド/ドロップするアド/ドロップ回路)とこれに隣接する光増幅中継器(その中のループバック回路)との間について、C-OTDRによる測定又は監視を行なえないという問題点がある。その間の散乱光がアド/ドロップ装置によりカットされてしまうことがあるからである。
【0005】本発明は、このような問題点を解決した光伝送システム、光分岐装置及び光信号処理装置を提示することを目的とする。
【0006】本発明はまた、散乱光を光信号処理手段に入力させずに上流側に戻すことができる簡単な構成の光信号処理装置を提示することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る光伝送システムは、上り系と下り系を有し、監視光を当該上り系と当該下り系の間でループバックするようにした光伝送路に、特定波長をアド/ドロップする1以上の光分岐ユニットを設けた光伝送システムであって、1以上の光分岐ユニットのそれぞれに、監視光を迂回する迂回線路を設けたことを特徴とする。
【0008】これにより、監視光が実質的に当該光分岐ユニットをスルーすることができる。換言すると、監視光が伝送路を迂回線路の部分を除いて連続的に戻ることになり、監視光による伝送状態の監視を実質的に漏れなく行なえるようになる。」(2頁2欄31行?3頁3欄31行)、
ウ 「【0013】本発明に係る光分岐装置は、第1の光伝送路からの入力光から特定波長の光をドロップし、当該特定波長の光をアドして第2の光伝送路に出力する光分岐装置であって、当該特定波長を選択的に反射する反射部材と、当該反射部材を迂回する迂回線路と、4つのポートA,B,C,Dを具備し、ポートAの入力光をポートBから出力し、ポートBの入力光をポートCから出力し、ポートDの入力光をポートAから出力する第1及び第2の光サーキュレータとからなり、当該第1の光サーキュレータは、ポートAが当該第1の光伝送路に接続し、ポートBが当該反射部材の一端に接続し、ポートCがドロップ光出力端子に接続し、ポートDが当該迂回線路の一端に接続し、当該第2の光サーキュレータは、ポートAが当該反射部材の他端に接続し、ポートBが第2の光伝送路に接続し、ポートCが当該迂回線路の他端に接続し、ポートDがアド光入力端子に接続することを特徴とする。
【0014】このような構成により、第1及び第2の光サーキュレータに信号光をアド/ドロップする役割と監視光を迂回させる役割の両方を担わせることになり、少ない光素子で両機能を実現できる。これにより、無用な損失の増加が無く、良好な伝送特性を期待できる。」(3頁4欄27行?48行)、
エ 「【0021】図1を詳細に説明する。理解を容易にするため、図1には、分岐局14と分岐線路20も併せて図示してある。なお、矢印は単に、信号光の進行方向を示しているだけである。
【0022】30U,30Dは波長λbを選択的に反射するファイバ・グレーティング、32U,34U,32D,34Dは4ポートA,B,C,Dを具備する光サーキュレータである。光サーキュレータ32U,34U,32D,34Dは、ポートAの入力光をポートBから出力し、ポートBの入力光をポートCから出力し、ポートCの入力光をポートDから出力し、ポートDの入力光をポートAから出力する光素子である。このような素子は、例えば、富士電気化学株式会社からYC-115A-130(1.31μm用)及びYC-115A-155(1.55μm用)として市販されており、透過するポート間の挿入損失は1dB以下である。但し、本実施例では、ポートCからポートDへの転送は使用しない。
【0023】36,38は分岐局14との間の分岐線路20を伝播する光信号を増幅する光増幅装置であり、アド光を増幅する光増幅器36A,38A、ドロップ光を増幅する光増幅器36D,38D及びループバック回路36L,38Lからなる。光増幅装置36,38は基本的に、光増幅中継器24と同じ構成及び仕様からなる。光増幅装置36,38は省略されることも、光分岐ユニット18の外に配置されることもあり、分岐線路20上の光中継増幅装置がその代替となることもある。
【0024】光サーキュレータ32UのポートAはトランク局10からの上り光ファイバ線路16Uに接続し、ポートBはファイバ・グレーティング30Uの一端に接続し、ポートCは光増幅装置36の、ドロップ光を増幅する光増幅器36Dの入力に接続し、ポートDはファイバ・グレーティング30Uの迂回線路40Uを介して光サーキュレータ34UのポートCに接続する。
【0025】光サーキュレータ34UのポートAはファイバ・グレーティング30Uの他端に接続し、ポートBはトランク局12に向かう上り光ファイバ線路16Uに接続し、ポートCは上述のように迂回線路40Uを介して光サーキュレータ32UのポートDに接続し、ポートDは、光増幅装置38の、アド光を増幅する光増幅器38Aの出力に接続する。
【0026】光サーキュレータ32DのポートAはトランク局12からの下り光ファイバ線路16Dに接続し、ポートBはファイバ・グレーティング30Dの一端に接続し、ポートCは光増幅装置38の、ドロップ光を増幅する光増幅器38Dの入力に接続し、ポートDはファイバ・グレーティング30Dの迂回線路40Dを介して光サーキュレータ34DのポートCに接続する。
【0027】光サーキュレータ34DのポートAはファイバ・グレーティング30Dの他端に接続し、ポートBはトランク局10に向かう下り光ファイバ線路16Dに接続し、ポートCは上述のように迂回線路40Dを介して光サーキュレータ32DのポートDに接続し、ポートDは、光増幅装置36の、アド光を増幅する光増幅器36Aの出力に接続する。
【0028】光増幅装置36の光増幅器36Aの入力及び光増幅器36Dの出力はそれぞれ分岐線路20の光ファイバ伝送路20d,20aを介して分岐局14に接続し、光増幅装置38の光増幅器38Aの入力及び光増幅器38Dの出力はそれぞれ分岐線路20の光ファイバ伝送路20b,20cを介して分岐局14に接続する。」(4頁6欄13行?5頁7欄22行)、
オ 「【0032】このようにして、上りファイバ線路16Uからの波長λbの光信号が分岐局14に向けてドロップされ、分岐局14からの波長λbの光信号がファイバ・グレーティング30Uを透過する光にアドされて下流側の上り光ファイバ線路16Uに出力される。
【0033】トランク局12との間の上り光ファイバ伝送路16Uで発生した散乱又は反射により上り光ファイバ伝送路16Uを逆方向に進行する監視光は、アド/ドロップ装置18の光サーキュレータ34UのポートBに入力する。従って、この監視光は光サーキュレータ34UのポートCから出力し、迂回線路40Uを介して光サーキュレータ32UのポートDに入力する。光サーキュレータ32Uは、ポートDに入力した光をポートAから出力するので、結局、トランク局12の側からの監視光は、トランク局10に向かって上り光ファイバ伝送路16Uに送出される。」(5頁8欄4行?19行)、
カ 「【0040】本実施例では、光サーキュレータに特定波長のアド/ドロップの役割と監視光の迂回の役割の両方を果たさせているので、追加的な素子無しで、即ち、追加的な挿入損失無しで監視光を上流側に戻すことができる。監視光により監視できない部分を無くすことができる。
【0041】ファイバ・グレーティング30U,30Dにより特定波長をアド/ドロップするアド/ドロップ装置に適用した実施例を説明したが、本発明は、その他の光処理を実行する光処理デバイスに戻り光を入射したくないような用途にも利用できる。戻り光を迂回させるだけであれば、迂回させたい光処理デバイスの前後にそれぞれ3ポートの光サーキュレータを配置すればよい。
【0042】
【発明の効果】以上の説明から容易に理解できるように、本発明によれば、非常に簡単な構成で監視光を一連の伝送路上をごく一部分を除いて継続的に伝播させることができるので、極く一部を除いて実質的に連続的に、監視光により伝送状態を遠隔監視できる。また、上流側への戻り光を上流側に戻したいが、戻り光を入射させないほうがよい素子がある場合に、非常に簡単な構成で、その素子を迂回して一連の伝送路上に戻すことができるので、伝送損失などを増やすこと無く、その素子の特性劣化及び伝送特性の劣化等を防止できる。」(6頁10欄1行?24行)が記載されている。

これらの記載ア?カ及び図面図1?図7によれば、刊行物2には、
「監視光を光アド/ドロップ手段に対し迂回する迂回線路(40U)を備えた光アド/ドロップ装置(18)」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(3)原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-65624号公報(以下、「刊行物3」という。)には、
ア 「【0013】以下、STS-1規格の信号とは、SONET(Synchronous optical network、Bellcore TR-NWT-000253参照)で用いられる信号形式であり、主信号の他に監視・制御情報も埋め込んで伝送するものである。具体的には、バイト毎に時分割多重されている領域を監視・制御用の領域(オーバヘッド)と主信号を伝達するための領域(ペイロード)に分けて伝送することにより実現する。ある終端間で内容が変わらずに伝達される区間をパスと呼んでいるが、あるバイト(C1バイト等)には、パスの識別子の情報が格納されており、それを調べることによりパスの識別子を知ることができる。又、あるバイト(B1バイト等)を解析することにより、パリティチェックを行って誤り率を計算することができ、ビット誤り率に関する信号品質を知ることが可能である。従って、STS-1の信号を終端することにより、誤り率等の信号の監視を行うことが可能である。
【0014】第1の発明の実施例について図1を用いて説明する。図1に於いて、100は通信ネットワーク・ノードを表す。101はスイッチ回路網であり、SONETの規格のADM(Add/drop multiplexing)装置やDCS(Digital cross-connect system)装置(Tsong-HoWu、「ファイバ・ネットワーク・サービス・サバイバビリティ」参照)を用いることが可能であり、STS-1フォーマットの信号単位を切り替えて編集したり、add(信号を伝送信号中に付加)したり、drop(伝送信号中からある信号を抜き取る)したりすることが可能である。106、109はSTS-1フォーマットの信号が通る信号線路であり、この線路を通ることにより他ノードに信号を伝送することが可能である。」(3頁4欄38行?4頁5欄18行)、
イ 「【0024】光スイッチ回路網の一部の入出力端には、光信号を電気信号に変換し、STS-1信号を終端する装置を接続し、主信号のadd(光信号を光伝送信号中に付加)/drop(光伝送信号中からある光信号を抜き取る)を行うことが可能であるが、ここでは、説明を簡単にするためにadd/dropした光信号を終端する装置を図2に記載していない。今、1.55μm帯の光信号を主信号に用い、1.31μmの光信号を制御・監視情報の転送用に用いる。203は光受信器(制御管理信号を受信する光受信手段)である。205は1.31μm の光信号を送出する光送信器(制御管理信号を送信する光送信手段)である。202は1.31μm の光信号を光受信器203に、1.55μm 帯の光信号を光スイッチ回路網の入力端に接続するWDMカップラ(光分波手段)である。204はワークステーション(情報処理手段)であり、制御・管理情報の処理を行う。204は、制御管理情報のルータを持っており、制御管理情報のヘッダを参照して、送りたいノードへルーティングを行う。206は、202と同じくWDMカップラ(光合波器)であり、光送信器205からの1.31μm の光信号と光スイッチ回路網201からの1.55μm 帯の光信号を合波する。207は光信号終端装置(光信号監視手段)であり、光-電気変換後、STS-1フォーマットの信号を終端することが可能なものを用いる。従って、207はSTS-1フォーマットの信号の識別子を監視することができ、又、STS-1信号のオーバヘッドの中で、誤り率を計算することができる領域を監視することにより、STS-1信号の信号品質を監視することが可能である。」(5頁7欄11行?39行)が記載されている。

(4)原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-285119号公報(以下、「刊行物4」という。)には、
ア 「【0084】図1における波長分離部および波長多重部には、アレー導波路回折格子(AWG:Arrayed-Waveguide Grating)の合分波器が使用される。図4は、AWG合分波器の構造を示している。AWG合分波器は、プレナー光波回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)技術を応用したものであり、シリコン基板上に設けられたスラブ導波路およびAWGなどから構成されている。
【0085】入力された波長λ1?λnの波長多重された光信号は、スラブ導波路で回折して広がり、AWGに等位相で分配される。このAWGには光路長差があるため、出力側のスラブ導波路で干渉しあって、出力側の導波路アレイに波長の異なる光に分けて出力される。いわば一種のプリズムのような役割りを果たす。また、図の出力側から各波長の光信号を入力することにより、波長多重機能としても使用できる。図5にAWG合分波器の特性例を示す。」(20頁38欄7行?23行)が記載されている。

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。
、引用発明の「監視光」、「光アド/ドロップ手段」及び「迂回する」は、本願発明の「試験光」、「ADM部」及び「迂回伝送する」に相当する。
引用発明の「迂回線路(40U)」は、監視光を迂回させる機能部であるから、本願発明の「試験光迂回部(11)」に相当する。
本願発明の「ADM光モジュール」は、上位概念化すると「光アド/ドロップ装置」といえる。

したがって、本願発明と引用発明は、
「試験光をADM部に対して迂回伝送する試験光迂回部を備える光アド/ドロップ装置」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
本願発明では、1.55μm帯の通信光(Ss)、通信光(Ss)とは異なる波長1.31μm帯の試験光(St)を用いているのに対して、引用発明では、信号光、監視光を用いるもののそれぞれの波長については、本願発明で特定される構成を採用していない点。

相違点2
本願発明のADM部は、アレー導波路回折格子からなるのに対し、引用発明では、アレー導波路回折格子からなる構成でない点。

相違点3
本願発明の試験光迂回部では、入力光(S_(IN))のうち、試験光(St)をADM部(10)に対して迂回伝送するのに対し、引用発明では、逆流する監視光を光アド/ドロップ手段に対し迂回する点。
そして、本願発明の試験光迂回部では、入力光を迂回用光伝送路(12)に分岐させる光分岐器(13)と、前記迂回用光伝送路上に設けられ試験光のみを通過させる光フィルタ(14)と、該光フィルタを通過した試験光をADM部の出力光と結合させる光結合器(15)とからなるのに対し、引用発明では、それらの構成を採用していない点。

相違点4
本願発明では、光アド/ドロップ装置が、ADM光モジュールであるが、引用発明では、その構成でない点。

4.当審の判断
以下、相違点1?4について検討する。
相違点1について
引用発明では、信号光、監視光を用いるもののそれぞれの波長については、特定されていないが、刊行物2に「このような素子は、例えば、富士電気化学株式会社からYC-115A-130(1.31μm用)及びYC-115A-155(1.55μm用)として市販されており、透過するポート間の挿入損失は1dB以下である。」(上記刊行物2の記載エ)と、使用する波長について、1.31μm、1.55μmが間接的に例示、示唆されている。
そして、引用発明と同一技術分野に属する刊行物3に、「今、1.55μm帯の光信号を主信号に用い、1.31μmの光信号を制御・監視情報の転送用に用いる。」(上記刊行物3の記載イ)と記載されており、該主信号は通信光、該制御・監視情報の転送用の光信号は試験光といえるから、1.55μm帯の通信光、通信光とは異なる1.31μm帯の試験光を用いることが、開示されている。
してみると、引用発明に刊行物3に記載された事項を採用して、1.55μm帯の通信光、通信光とは異なる波長1.31μm帯の試験光を用いることは、当業者が、容易に想到できたことである。

相違点2について
刊行物2では、引用発明の光アド/ドロップ手段について、光サーキュレータ32U、34Uとファイバ・グレーティング30Uを用いる構成が記載されているが、「ファイバ・グレーティング30U,30Dにより特定波長をアド/ドロップするアド/ドロップ装置に適用した実施例を説明したが、本発明は、その他の光処理を実行する光処理デバイスに戻り光を入射したくないような用途にも利用できる。」(上記刊行物2の記載カ)と記載がある。なお、引用発明の光アド/ドロップ手段は、特定波長λbをドロップ、アドする光波長分割多重技術に属するものといえる。
そして、引用発明と同一技術分野に属する刊行物4に、「図1における波長分離部および波長多重部には、アレー導波路回折格子(AWG:Arrayed-Waveguide Grating)の合分波器が使用される。」(上記刊行物4の記載ア)と記載されており、刊行物4には、アレー導波路回折格子からなるADM部が開示されているといえる。
してみると、引用発明に刊行物4に記載された事項を採用し、光アド/ドロップ手段をアレー導波路回折格子からなるものとすることは、当業者が、容易に想到できたことである。

相違点3について
引用発明は、C-OTDRで逆流する監視光が光アド/ドロップ手段によりカットされるため、逆流する監視光を該手段に対し迂回するものである。
また、引用発明と同一技術分野に属する刊行物1には、「しかしながら、障害点で後方散乱して戻って来る標定信号は、中継装置の光中継器で逆方向阻止されてしまい中継装置を越えて端局へ戻ることができないので、端局に最も近い中継装置より遠方の区間に有る障害の位置は、標定できないという問題点があった。」(上記刊行物1の記載ア)という引用発明のOTDRで逆流する監視光がカットされることと同種の課題を解決するための具体的手段として、「障害位置標定時には、波長1.5μmの測定信号は、端局10において光ケーブル13に入力され、分波器7、スルーファイバ3及び合波器8によって光中継器2をバイパスしてその標定可能距離まで進み、障害点で後方散乱した標定信号は、合波器8、スルーファイバ3及び分波器7を経て、端局10を介して測定器20へ戻る。」(上記刊行物1の記載イ)という「監視光を迂回させる機能部(分波器7、スルーファイバ3及び合波器8)は、入力光のうち、監視光を中継装置に対して迂回伝送する」ことを開示しているといえる。刊行物1の中継装置は、OTDRで逆流する監視光がカットされるものという点では、引用発明の光アド/ドロップ手段と同じ課題を有しているといえる。
また、上記相違点1、2で指摘した事項を、引用発明に採用したとしても、上記引用発明の課題「OTDRで逆流する監視光がカットされること」は、解決しなければいけないものとして残るといえる。
してみると、引用発明に刊行物1に記載された事項を採用し、入力光のうち、試験光をADM部に対して迂回伝送することは、当業者が、容易に想到できたことである。

また、迂回伝送するための構成として、刊行物1には、「分波器7、スルーファイバ3及び合波器8」が記載されており、(1)該分波器7は、光分岐器と光伝送路上に設けられ光フィルタで構成されたものと回路機能上同じであること、(2)スルーファイバ3は、「迂回用光伝送路」といえること、(3)合波器8は、光結合器といえることは技術常識である。
してみると、引用発明に刊行物1に記載された事項を採用し、迂回伝送するための構成を、「入力光を迂回用光伝送路(12)に分岐させる光分岐器(13)と、前記迂回用光伝送路上に設けられ試験光のみを通過させる光フィルタ(14)と、該光フィルタを通過した試験光をADM部の出力光と結合させる光結合器(15)とからなる」ものとしたことは、当業者が、容易に想到できたことである。

相違点4について
一般に、システムを構成する部分で、機能的にまとまった部分をモジュールというが、光伝送システムにおいて、該システムを構成する機能的にまとまった光アド/ドロップ装置をモジュールとすることに、格別困難性は認められない。
してみると、引用発明において、光アド/ドロップ装置をADM光モジュールとすることは、当業者が、容易に想到できたことである。

本願発明の効果について
本願発明の効果は、刊行物1?4に記載された技術事項の効果から予想される範囲内のものであり、格別なものとはいえない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1?4に記載された発明に基づき当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、請求項2に記載された発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する 。
 
審理終結日 2010-03-04 
結審通知日 2010-03-09 
審決日 2010-03-23 
出願番号 特願平11-132007
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 江口 能弘  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 長島 孝志
真木 健彦
発明の名称 ADM光モジュール及び光通信線路の試験方法  
代理人 渡邊 隆  
代理人 志賀 正武  
代理人 高橋 詔男  
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