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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65B
管理番号 1215923
審判番号 不服2008-14024  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-05 
確定日 2010-05-06 
事件の表示 特願2000-33973「筒体成形器、繊維充填体および繊維充填体の製造方法。」拒絶査定不服審判事件〔平成13年8月14日出願公開、特開2001-219905〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成12年2月10日の出願であって、平成20年4月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年6月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成20年7月7日付けで手続補正がなされたものである。

2 平成20年7月7日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
本件手続補正を却下する。
〔理由〕
(1)補正後の本願発明
本件手続補正により、明細書の特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】ポリプロピレン製不織布からなるシート材が筒状に巻かれ長手方向に接合部が設けられて形成される長棹状の筒体内部に疎水性で油を吸着する繊維からなる繊維集合体が充填されており、前記接合部は、前記シート材の相対する2つの側縁部が周方向に重なり合って熱融着により接合されており、
前記シート材を構成するポリプロピレンの該油吸着用繊維充填体全体に対する割合が、3?5重量%であることを特徴とする油吸着用繊維充填体。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項5に記載された発明を特定する事項である「シート材」について限定する「ポリプロピレン製不織布からなる」及び「前記シート材を構成するポリプロピレンの該油吸着用繊維充填体全体に対する割合が、3?5重量%である」との事項を付加し、同請求項5に記載された発明を特定する事項である「繊維集合体」について限定する「疎水性で油を吸着する繊維からなる」との事項を付加し、同請求項5に記載された発明を特定する事項である「接合」について限定する「熱融着により」との事項を付加し、同請求項5に記載された発明を特定する事項である「繊維充填体」について限定する「油吸着用」との事項を付加するものであり、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項5に記載された発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではない。
したがって、上記補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実公昭46-6220号公報(以下、「引用例」という。)には、次の記載がある。
a「水中で吸油性を有する繊維からなる長尺の芯体1を、連続発泡体製外層2により被覆して構成したオイル捕集材。」(実用新案登録請求の範囲)
b「この考案は、タンカーの座礁あるいは沈没その他の原因により海面上または河川等の水面上に流出した重油、原油、廃油その他の油を捕集するために港湾入口の海面部分あるいは河川等の排水口付近の水面部分等に浮上させて使用するオイル捕集材に関する」(1欄20ないし25行)
c「上記芯体1を構成する繊維の形態はトウ、紡績糸、フイラメント糸あるいはスプリツトフアイバーを集束するかまたはウエブ状にしたものの何れを使用してもよく、かつその繊維の種類は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等のように水中に浸漬した状態で吸油性を有するものであれば何れでもよい」(1欄29行ないし2欄1行)
d「外層2を構成する連続発泡体としては、ポリエチレンその他任意の連続発泡体を使用してもよいが、ポリウレタンフオームが特に適しており、さらにこの考案のオイル捕集材を製造するに当つては、第1図に示したように芯体1となる繊維の周囲に外層2となる連続発泡体の帯状体を巻付けてその接合端面3を接着剤により固着してもよく、あるいは第2図に示したように…その発泡体の重ね合せ縁部を…融着…により固着してもよく」(2欄6行ないし16行)
e「この考案のオイル捕集材は…水面に浮上している油を、通水および通油性の良好な連続発泡体製外層2を通して繊維製芯体1に迅速かつ多量に吸収貯留させることができ…またこの考案のオイル捕集材は繊維製芯体1を連続発泡体製外層2により被覆するだけでよいから構造が簡単で製作も容易である等の効果がある。」(2欄19ないし30行)
そして、第1図には、連続発泡体製外層2をなす連続発泡体の帯状体が筒状に巻かれ長手方向に接合端面3が設けられた筒体の内部に、芯体が充填されたオイル捕集材、が図示されている。
以上の記載及び第1図によれば、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。
「ポリウレタンフオームの帯状体が筒状に巻かれ長手方向に接合端面が設けられた筒体の内部に、水中で吸油性を有するポリエチレン、ポリエステル等の繊維からなる長尺の芯体が充填されたオイル捕集材。」

(3)対比
本願補正発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「帯状体」、「接合端面」、「吸油性を有するポリエチレン、ポリエステル等の繊維からなる長尺の芯体」及び「オイル捕集材」は、それぞれ本願補正発明の「シート材」、「接合部」、「疎水性で油を吸着する繊維からなる繊維集合体」及び「油吸着用繊維充填体」に相当する。
さらに、引用例記載の発明の「筒体」は、その内部に長尺の芯体が充填されており、本願補正発明の「長棹状の筒体」に相当するから、両者は、
「シート材が筒状に巻かれ長手方向に接合部が設けられて形成される長棹状の筒体内部に疎水性で油を吸着する繊維からなる繊維集合体が充填されている油吸着用繊維充填体」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1
本願補正発明では、シート材が、ポリプロピレン製不織布からなり、シート材を構成するポリプロピレンの油吸着用繊維充填体全体に対する割合が、3?5重量%であるのに対して、引用例記載の発明では、シート材がポリウレタンフオームからなる点。
相違点2
本願補正発明では、接合部は、前記シート材の相対する2つの側縁部が周方向に重なり合って熱融着により接合されているのに対して、引用例記載の発明では、接合端面で接合されている点。

(4)相違点の検討
そこで、上記各相違点について検討する。
《相違点1について》
油吸着体において内容物をポリプロピレン製不織布で包装することは、油吸着体の技術分野において本願の出願前に周知の技術(例えば、特開平11-276885号公報、特開平11-28353号公報参照。)であるから、引用例記載の発明において、油吸着体の内容物である繊維集合体を包装するシート材として、ポリウレタンフオームに代えてポリプロピレン製不織布を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、本願補正発明では、シート材を構成するポリプロピレンの油吸着用繊維充填体全体に対する割合を3?5重量%、と特定している。
該特定事項に関して、本願明細書には、「【0044】…比較例として、綿全体にPPを混入して熱処理することで成形した固形物であって、一辺50cmの正方形で厚さ4mm、重量50gのシート状油吸着材を用いた。【0045】(PP含有割合)比較対象物であるシート状油吸着材は成形性を保つため、PP含有割合が27重量%必要であった。一方、本発明の繊維充填体11は成形性を保つため、繊維充填体11の全体に対するPP含有割合が3?5重量%必要であった。」、「【0040】繊維充填体11は、繊維集合体14を熱融着繊維からなるシート材5(PP製不織布)で包み込んだ構造をしているため、繊維集合体全体に熱融着繊維材である化学繊維(PP)を混合して成形する場合よりも前記化学繊維の含有割合を低減することができる。成形した繊維集合体の全体に対する熱融着繊維材である化学繊維の含有割合を低減することにより、環境上優れたものとなり、また、繊維充填体の製造コストを従来に比べ1/8?1/10に抑えることができる。」、「【0059】さらに、この繊維充填体はシート材にのみ融着性を保持するポリプロピレンからなる不織布が用いられるので、前記化学繊維の使用量を従来より低減することができる。」との記載があり、これらの記載によれば、該特定事項は、ポリプロピレン製不織布からなるシート材で筒体を形成した結果、シート材を構成するポリプロピレンの油吸着用繊維充填体における含有割合が3?5重量%であったということを特定したにすぎず、ポリプロピレンの含有割合が3?5重量%であることにより本願補正発明が格別の効果を奏するものとも認められず、シート材を構成するポリプロピレンの油吸着用繊維充填体における含有割合を3?5重量%とすることは、引用例記載の発明においてシート材としてポリプロピレン製不織布を採用するに当たって、当業者が必要に応じ適宜決め得た設計的事項にすぎない。

《相違点2について》
包装材を筒状に巻き、長手方向の相対する2つの側縁部を周方向に重ねて熱融着により接合することは、包装の技術分野において本願の出願前に周知の技術(例えば、特開平7-125768号公報、特開昭57-96911号公報参照。)であるから、引用例記載の発明において、シート部材の接合部に上記周知の技術を適用して、相違点2に係る本願補正発明の事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願補正発明が奏する効果も、引用例記載の発明及び周知の技術から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用例記載の発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)まとめ
以上のとおり、本件手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件手続補正は却下されたので、本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成19年11月15日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項5は次のとおり記載されている。
「【請求項5】シート材が筒状に巻かれ長手方向に接合部が設けられて形成される長棹状の筒体内部に繊維集合体が充填されており、前記接合部は、前記シート材の相対する2つの側縁部が周方向に重なり合って接合されている、繊維充填体。」
(以下、請求項5に係る発明を、「本願発明5」という。)

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記2(2)に記載したとおりである。

(3)対比・検討
本願発明5は、上記2(1)で検討した本願補正発明から、「シート材」について限定する「ポリプロピレン製不織布からなる」及び「前記シート材を構成するポリプロピレンの該油吸着用繊維充填体全体に対する割合が、3?5重量%である」との事項を省き、「繊維集合体」について限定する「疎水性で油を吸着する繊維からなる」との事項を省き、「接合」について限定する「熱融着により」との事項を省き、「繊維充填体」について限定する「油吸着用」との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明5を特定する事項を全て含み、さらに他の特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2(4)に記載したとおり、引用例記載の発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明5も、同様の理由により、引用例記載の発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-05 
結審通知日 2010-03-09 
審決日 2010-03-23 
出願番号 特願2000-33973(P2000-33973)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65B)
P 1 8・ 121- Z (B65B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 裕一  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 千馬 隆之
谷治 和文
発明の名称 筒体成形器、繊維充填体および繊維充填体の製造方法。  
代理人 水野 勝文  
代理人 岸田 正行  
代理人 高野 弘晋  

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