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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1215946
審判番号 不服2008-27158  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-24 
確定日 2010-05-06 
事件の表示 特願2000-287193「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月26日出願公開、特開2002- 85775〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は平成12年9月21日に出願されたものであって,平成20年9月17日付けで拒絶の査定がされたため,これを不服として同年10月24日付けで本件審判請求がされるとともに,同年11月21日付けで明細書についての手続補正書が提出されたものである。
当審においてこれを審理した結果,平成21年12月17日付けで,上記平成20年11月21日付け手続補正を却下するとともに新たな拒絶の理由を通知したところ,請求人は平成22年2月17日付けで,意見書及び手続補正書を提出した。


第2 当審の判断

1.本願発明の認定

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成22年2月17日付けで補正された明細書における,特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項によって特定されるべきものであり,その記載は次のとおりである。

「遊技の進行を制御する制御装置を備え,
前記制御装置は,特定の入賞部への遊技球入賞の検出に基づいて,遊技者が通常よりも遊技価値を獲得しやすい特別遊技状態となるか否かの抽選を行う遊技機において,
前記制御装置では,前記特別遊技状態の抽選を含むメインルーチンと,このメインルーチンに対する割り込み時間毎の割り込みルーチンが実行され, この割り込みルーチンにおいては,
前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出信号の取り込み処理と,
前記特別遊技状態の抽選のためのカウンタ値に所定値を加算することによって前記カウンタ値を更新するとともに,前記更新されたカウンタ値が所定の上限値以上であれば当該カウンタ値を所定の下限値に設定するカウンタ値更新処理と,
前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出があった場合に前記特別遊技状態の抽選のためのカウンタ値を取得するカウンタ値取得処理と,を実行し,
前記メインルーチンにおいては,
前記カウンタ値取得処理で取得されたカウンタ値に基づいて前記特別遊技状態の抽選を行い,
前記割り込みルーチンでは,
前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出信号の取り込み処理が,当該割り込みルーチンの先頭から一定時間で開始され,
前記特別遊技状態の抽選のためのカウンタ値更新処理の後に,前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出があった場合に前記特別遊技状態の抽選のためのカウンタ値を取得するカウンタ値取得処理が配置され,
前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出信号の取り込み処理が前記カウンタ値更新処理よりも先に実行されるように配置することで,当該割り込みルーチン内で前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出があった場合に前記カウンタ値更新処理と前記カウンタ値取得処理との間で前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出信号の取り込み処理を行わないようにすることを特徴とする遊技機。」


2.引用刊行物の記載事項

当審の拒絶理由に引用した特開平11-267333号公報(以下「引用例1」という。)には,以下ア.?オ.の記載が図示とともにある。なお,下記イ.及びウ.は【従来の技術】としての記載であるが,下記エ.の【発明の実施の形態】において省略された全体構成等の記述を含むものである。

ア.発明の属する技術分野
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,検出信号の取り込みのタイミングに基づいて特定の遊技状態を発生させる遊技機に関し,この検出信号の取り込みのタイミングに偏りが生じないようにすることで,特定の遊技状態発生の確率を合理的に管理し得るようにした改良に関する。」

イ.弾球遊技機の基本構成(従来の技術その1)
「【0002】
【従来の技術】遊技機(例えば弾球遊技機)には,検出装置からの検出信号を制御装置内に取り込み,この制御装置内への取り込みのタイミングに基づいて,特定の遊技状態(例えば大当たり状態)を発生させるものがある。
【0003】図2には,このような弾球遊技機の正面図を示す。
・・・・・・・・
【0010】これにより,遊技領域10内に打ち込まれた遊技球は,遊技領域10内の各所に配置された風車等の転動誘導部材16により転動方向を変えられながら遊技領域10表面を流下し,特別変動入賞装置12,一般入賞口13,始動口14,排出口15のいずれかに入るようになっている。
【0011】これらの各入賞装置(特別変動入賞装置12,一般入賞口13,始動口14)への入賞は,セーフセンサ45(図3参照)により検出される。そして,遊技を統括制御する遊技制御装置30(図3参照)は,入賞した入賞装置の種類に応じた数の賞球が賞球口6Aから排出されるように,図示されない賞球排出装置51(図3参照)を制御するようになっている。
・・・・・・・・
【0014】また,始動口14には特別図柄始動スイッチ41(図3参照)が設けられ,この特別図柄始動スイッチ41により始動口14への入賞が検知される。
【0015】遊技制御装置30においては,この始動口14への遊技球の入賞(特別図柄始動スイッチ41による入賞検出)ごとに大当たりの抽選が行われ,この入賞のタイミングが所定の大当たりのタイミングでなされたか否かが判定される。詳しくは,入賞検出時点における後述する特別図柄乱数カウンタ値が,大当たり値であるか否かが判定される。
【0016】そして,入賞検出が所定の大当たりのタイミングでなされたときには,特別図柄表示装置11の表示が,始動口14への入賞にともなって変動した後に大当たりを示すものとなり(例えば,3つの図柄が同一の図柄となり),さらに,常態では閉じられていた特別変動入賞装置12の大入賞口が開放され,遊技球が特別変動入賞装置12に入賞し得る状態になる。
【0017】なお,このような大当たり発生の確率(頻度)は,基準時間(例えば600ミリ秒)における大当たり発生のための時間(例えば2ミリ秒)の占める割合で決定される。
【0018】また,この大当たりの発生確率は,通常の遊技においては,所定の確率(例えば1/300)に保たれているが,所定の遊技状態の発生,例えば特定の特別図柄(例えば「777」)による大当たりの発生にともなって変更され,大当たりの発生確率は通常の確率よりも高い確率(例えば1/50)に保たれる確率変動状態となる。なお,この確率変動状態は,引き続く大当たりが確率変動を伴わない大当たり,すなわち特定の特別図柄(例えば「777」)でない特別図柄での大当たりの発生があるまで継続される。」

ウ.遊技制御の基礎手順(従来の技術その2)
「【0034】割り込み信号発生回路36は,CPU31に所定のタイミングで割り込み信号を発信する回路である。詳しく説明すれば,この割り込み信号発生回路36はクロック回路を備えており,このクロック回路で生成された基本パルス信号を分周して所定パルス幅(例えば10マイクロ秒程度)のパルス信号を生成し,このパルス信号を割り込み信号として,一定時間毎(例えば2ミリ秒毎)に発信するようになっている。
・・・・・・
【0037】図4は,遊技制御装置における遊技制御の手順を示すフローチャートである。なお,このフローチャートに示される遊技制御の1サイクルの処理(リセット割り込み処理)は,前述したように割り込み信号発生回路36からの割り込み信号を受信する毎に繰り返されるようになっている。
【0038】ステップS101においては,初期設定処理が実行される(図5参照)。
【0039】続くステップS102においては,イベントカウンタの更新処理が実行され,イベントカウンタが+1だけ更新される。ここで,イベントカウンタとは,0?7の範囲の値で循環して更新されるもので,後述するように,インターフェース関連時分割処理(ステップS103)においてなされる処理およびゲーム関連時分割処理(ステップS106参照)においてなされる処理は,その時点でのイベントカウンタの値から選択される。
・・・・・・
【0045】ステップS104においては,乱数カウンタの更新処理が実行され,特別図柄乱数カウンタと普通図柄乱数カウンタの値が,それぞれ+1づつ更新される。
【0046】ここで,特別図柄乱数カウンタとは,例えば0?299の範囲の値で循環して更新されるもので,これらの特別図柄乱数カウンタ値の内の所定の値(例えば「7」)が大当たりに対応する。さらに詳しく説明すると,特別図柄始動スイッチ41による始動口14への入賞検出(正確には,特別図柄始動スイッチ41による入賞検出に対応した後述のエッジの検出)が,割り込み信号毎に更新される特別図柄乱数カウンタ値がちょうど大当たり値である制御のタイミングで実行されたときに,遊技は大当たり状態となる。すなわち,乱数カウンタが一巡する時間(例えば,300×2ミリ秒=600ミリ秒)の内,乱数カウンタ値が大当たり値である時間(例えば,「7」である2ミリ秒)において始動口14への入賞検出があった場合に,遊技は大当たり状態となる。
・・・・・
【0048】ステップS105においては,入賞監視処理が実行される(図6参照)。
【0049】ステップS106においては,ゲーム関連時分割処理が実行される。このゲーム関連時分割処理は,その時点でのイベントカウンタの値に対応する処理が実行されるものである。したがって,イベントカウンタが0?7まで一巡する周期(すなわち割り込み信号の周期が2ミリ秒であるときには,2ミリ秒×8=16ミリ秒周期)で,1単位の処理が実行されることになる。
【0050】具体的には,イベントカウンタ=0のときには,遊技制御の中核となる特別図柄ゲーム処理が実行され,RAM33の特別図柄乱数記憶領域に記憶された特別図柄乱数カウンタ値に基づく大当たりの判定などがなされる。
【0051】また,イベントカウンタ=1のときには,普通図柄ゲーム処理が実行され,RAM33の普通図柄乱数記憶領域に記憶された普通図柄乱数カウンタ値に基づいて,普通図柄に関する当たりの判定がなされる。」

エ.遊技制御の改善手順(発明の実施の形態)
「【0123】
【発明の実施の形態】以下,添付図面に基づいて,本発明の実施の形態について説明する。
【0124】なお,以下の実施の形態においては,弾球遊技機の全体構成は,図2,図3に示したものと共通であり,遊技制御の制御手順において異なるのみである。したがって,以下の説明においては,本発明の特徴となる遊技制御の処理手順を中心に説明する。
【0125】図1は,本実施の形態における遊技制御の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される遊技制御の1サイクルの処理(リセット割り込み処理)は,割り込み信号発生回路36からの割り込み信号を受信する毎に繰り返される。
【0126】ステップS1においては,初期設定処理が実行される。
【0127】ここで,この初期化設定処理は,図5のフローチャートに基づいて前述した処理と同様の処理である。そして,この初期設定処理の各ステップ(図5のフローチャートのステップS121?ステップS128)は,例えばCPU31のアセンブラ命令と1対1に対応するものとし,ステップS121?ステップS128の処理のステート数が一定となるようにする。これにより,初期設定処理においては,電源投入時設定処理に分岐しない限り,特別図柄乱数カウンタ値(イベントカウンタ値)によらずに同一の処理が実行されるので,初期化設定処理全体に要する処理時間は常に一定となる。
【0128】ステップS2においては,入力検出処理が実行される。ここで,この入力検出処理は,図7のフローチャートに基づいて前述した処理と同様の処理であり,この入力検出処理において,各種スイッチ(特に特別図柄始動スイッチ41)からの検出信号が,遊技制御装置30へと取り込まれる。このように,本実施の形態においては,初期設定処理に引き続いて入力検出処理が実行されるので,割り込み信号を受信してから入力検出処理が実行されるまでの時間は,初期設定処理の処理時間となり,特別図柄乱数カウンタ値(イベントカウンタ値)によらず一定となる。
【0129】ステップS3においては,信号出力処理が実行される。この信号出力処理においては,前述した図4のフローチャートのステップS109と同様に,RAM33の各種データを,順次,出力ポートに送信し,出力ポートから出力する。
【0130】ステップS4においては,イベントカウンタの更新処理が実行され,イベントカウンタが+1だけ更新される。
【0131】ステップS5においては,インターフェース関連時分割処理が実行される。このインターフェース関連時分割処理は,図4のフローチャートのステップS103と同様の処理であり,その時点でのイベントカウンタの値に応じて,遊技制御装置30から各種装置へ制御信号が送信される。この場合,インターフェース関連時分割処理は,イベントカウンタ値によってステート数が異なり,その結果,処理時間が異なってくる。しかし,本実施の形態では,このインターフェース関連時分割処理は,各リセット割り込み処理において入力検出処理(ステップS2)よりも後で実行されるようになっているので,入力検出処理の実行されるタイミング(したがって,遊技制御装置30における検出信号の取り込みのタイミング)に影響を与えることはない。
【0132】ステップS6においては,乱数カウンタの更新処理が実行され,特別図柄乱数カウンタと普通図柄乱数カウンタの値が,それぞれ+1づつ更新される。
【0133】ステップS7においては,入賞監視処理が実行される。ここで,入賞監視処理とは,図6のフローチャートに基づいて前述した処理と同様の処理であり,この入賞監視処理においては,大当たり判定に使用される特別図柄乱数カウンタ値が記憶される。なお,遊技制御装置30への検出信号の取り込み(すなわちエッジの生成)は,前述した入力検出処理(ステップS2)においてなされており,特別図柄乱数カウンタ値は,この入力検出処理に対して1対1で対応している。したがって,こ入力検出処理のタイミングに偏りがない限り,の入賞監視処理で記憶される特別図柄乱数カウンタ値には偏りが生じることはない。
【0134】ステップS8においては,ゲーム関連時分割処理が実行される。このゲーム関連時分割処理は,図4のフローチャートのステップS106と同様の処理であり,その時点でのイベントカウンタの値に対応して,遊技制御の中核となる各種処理が実行される。この場合,ゲーム関連時分割処理は,イベントカウンタ値によってステート数(したがって処理時間)が異なるものであるが,本実施の形態では,各リセット割り込み処理において入力検出処理(ステップS2)よりも後で処理されるようになっているので,入力検出処理の実行されるタイミング(したがって,遊技制御装置30における検出信号の取り込みのタイミング)に影響を与えることはない。」

オ.効果
「【0139】したがって,各リセット割り込み処理において,遊技制御装置30が特別図柄始動スイッチ41からの検出信号を取り込むタイミング,すなわち入力検出処理においてエッジ検出がなされるタイミングは,割り込み信号があってから一定の時間でなされる。そして,この割り込み信号は一定の周期で繰り返されるものであるから,結局,遊技制御装置30における検出信号取り込みのタイミングは,一定の時間間隔でなされることになる。言い換えれば,例えば図10に示した入力検出処理I?Lの間の間隔α,β,γは総て等しい長さとなる。この結果,遊技制御装置30における大当たりの判定には,検出信号の遊技制御装置30への取り込みのタイミングの偏りに起因する偏りが生じることはない。
【0140】具体的には,入力検出処理間の時間間隔は一定であるので,遊技制御装置30の入力ポートにおける特別図柄始動スイッチ41からの検出信号の物理状態の立ち上がりは,これらの間隔において等しい確率で発生する。一方,検出信号の取り込みは,この物理状態の立ち上がりから2回目の入力検出処理において実行される。また,乱数更新処理は,各入力検出処理の間で1回ずつ実行され,特別図柄乱数カウンタ値は一つずつ更新されて行く。これらの結果として,検出信号の遊技制御装置30への取り込みは,特別図柄始動スイッチ41による入賞検出に対して偏りなくなされ,したがって,検出信号の取り込みのタイミングにおけるものが記憶される特別図柄乱数カウンタ値にも偏りが生じることはない。
【0141】したがって,弾球遊技機における大当たり発生の確率は,意図した正しい値に容易に設定することができる。すなわち,弾球遊技機における大当たりの発生確率を,確実かつ合理的に管理することができる。」


3.引用例1記載の発明の認定

前記記載事項ア.によれば,引用例1には,「検出信号の取り込み」のタイミングに基づいて「特定の遊技状態」を発生させる「遊技機」に関する発明事項が開示されている。
前記記載事項イ.の段落【0002】によれば,「遊技機」としては「弾球遊技機」が,「特定の遊技状態」としては「大当たり状態」が想定されている。なお,前記記載事項イ.及びウ.は【従来の技術】として記載されているが,前記記載事項エ.の段落【0124】にも「なお,以下の実施の形態においては,弾球遊技機の全体構成は,図2,図3に示したものと共通であり,遊技制御の制御手順において異なるのみである。」と記載があるので,弾球遊技機の基本構成についてはこのまま認定を続ける。
前記記載事項イ.によれば,「弾球遊技機」は「遊技球」を用い,「遊技球」が「始動口14」に「入賞」すると,「特別図柄始動スイッチ41」がこれを検出する。そして,「遊技を統括制御する遊技制御装置30」により,「始動口14への遊技球の入賞」ごとに「大当たりの抽選」が行われ,大当たりとなれば「遊技球が特別変動入賞装置12に入賞し得る状態」になる。
前記記載事項ウ.によると,「遊技制御装置30」は,「一定時間毎」の「割り込み信号」を受けて「リセット割り込み処理」を実行し,この点は前記記載事項エ.でも同様である。
前記記載事項エ.によると,上記「リセット割り込み処理」の中では,「ステップS2」の「入力検出処理」が,「割り込み信号」から一定時間後に行われる。また,「ステップS2」の「入力検出処理」より後に,「ステップS6」の「乱数カウンタの更新処理」が行われ,「ステップS6」の「乱数カウンタの更新処理」より後に,「ステップS7」の「入賞監視処理」が行われる。このうち,「ステップS2」の「入力検出処理」では,「特別図柄始動スイッチ41」からの検出信号を「遊技制御装置30」へと取り込む処理が行われる。「ステップS6」の「乱数カウンタの更新処理」では,「特別図柄乱数カウンタ」の値が「+1」更新される。前記記載事項ウ.の段落【0046】によれば,「特別図柄乱数カウンタ」は「例えば0?299の範囲の値で循環して更新されるもの」である。そして,「ステップS7」の「入賞監視処理」では,「ステップS2」で「検出信号の取り込み」があったことに対応して,「大当たり判定」に使用する「特別図柄乱数カウンタ値」を記憶する。前記記載事項エ.の全体,及びここで言及される【図1】に照らしても,これらの処理は,各リセット割り込み処理において毎回行われることが明らかである。
前記記載事項エ.の段落【0134】によると,「遊技制御装置30」は「ステップS8」の「ゲーム関連時分割処理」も実行する。同「ゲーム関連時分割処理」では,前記記載事項ウ.の段落【0049】?【0050】によれば,「特別図柄ゲーム処理」を行う場合があり,その際には「記憶された特別図柄乱数カウンタ値に基づく大当たりの判定など」が実行される。ただし,「ステップS8」中の「特別図柄ゲーム処理」は,「イベントカウンタ=0」の場合に限って行われるものであり,各リセット割り込み処理において毎回行われるものではない。「ゲーム関連時分割処理」として行われる他の処理も,各リセット割り込み処理において毎回行われるものではない。
前記記載事項オ.によると,引用例1がこのような構成を採用する目的は,遊技制御装置30が特別図柄始動スイッチ41からの検出信号を取り込むタイミングを必ず一定の時間間隔とすることにより,検出信号の取り込みのタイミングにおいて記憶される特別図柄乱数カウンタ値に偏りが生じることを防ぐことである。

以上を整理すると,引用例1には,

「遊技を統括制御する遊技制御装置30を備え,
前記遊技制御装置30は,始動口14への遊技球の入賞が特別図柄始動スイッチ41に検出されると,遊技球が特別変動入賞装置12に入賞し得る状態となる大当たり状態とするか否かの抽選を行う,弾球遊技機において,
前記遊技制御装置30では,一定時間毎の割り込み信号を受けてリセット割り込み処理を実行するとともに,各リセット割り込み処理で毎回実行する処理と,各リセット割り込み処理で毎回実行するのではない処理とを行い,
各リセット割り込み処理で毎回実行する処理としては,
前記特別図柄始動スイッチ41からの検出信号を前記遊技制御装置30へと取り込む入力検出処理S2と,
例えば0?299の範囲の値で循環して更新される,大当たり判定のための特別図柄乱数カウンタの値を,+1更新する,乱数カウンタの更新処理S6と,
入力検出処理S2で検出信号の取り込みがあったことに対応して,大当たり判定に使用する特別図柄乱数カウンタ値を記憶する,入賞監視処理S7とを実行し,
各リセット割り込み処理で毎回実行するのではない処理としては,
ゲーム関連時分割処理として行われる複数種類の処理を実行し,
上記複数種類の処理の一つとして,記憶された特別図柄乱数カウンタ値に基づく大当たりの判定などを行う特別図柄ゲーム処理を実行し,
各リセット割り込み処理では,割り込み信号から一定時間後に入力検出処理S2を行い,入力検出処理S2より後に乱数カウンタの更新処理S6を行い,乱数カウンタの更新処理S6より後に入賞監視処理S7を行い,
前記遊技制御装置30が前記特別図柄始動スイッチ41からの検出信号を取り込むタイミングを必ず一定の時間間隔とすることにより,検出信号の取り込みのタイミングにおいて記憶される特別図柄乱数カウンタ値に偏りが生じることを防止する,
弾球遊技機。」

なる発明(以下,「引用発明1」という。)が開示されていると認めることができる。


4.本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1と本願発明とを対比する。
引用発明1が「弾球遊技機」であることは,本願発明が「遊技機」であることに相当する。
引用発明1における「遊技を統括制御する遊技制御装置30」は,本願発明における「遊技の進行を制御する制御装置」に相当する。
引用発明1における「始動口14」は,本願発明における「特定の入賞部」に相当し,引用発明1における「特別図柄始動スイッチ41」による遊技球の入賞の「検出」は,本願発明における「遊技球入賞の検出」に相当する。
引用発明1における「遊技球が特別変動入賞装置12に入賞し得る状態となる大当たり状態」は,本願発明における「遊技者が通常よりも遊技価値を獲得しやすい特別遊技状態」に相当し,引用発明1において当該状態とするか否かの抽選は,本願発明における「抽選」に相当する。
引用発明1において,「一定時間毎の割り込み信号を受けて」実行される「リセット割り込み処理」は,メインルーチンに対するものか否かという点を別とすれば,本願発明における「割り込み時間毎の割り込みルーチン」に相当する。そのため,引用発明1の「遊技制御装置30」が「一定時間毎の割り込み信号を受けてリセット割り込み処理を実行」することは,本願発明の「前記制御装置」が「割り込み時間毎の割り込みルーチン」を実行することに相当する。
また,引用発明1における「記憶された特別図柄乱数カウンタ値に基づく大当たりの判定などを行う特別図柄ゲーム処理」は,本願発明における「前記特別遊技状態の抽選」に相当する。そして,引用発明1において,前述「特別図柄ゲーム処理」を含む,各「リセット割り込み処理」毎に実行されるのでない「ゲーム関連時分割処理」の複数種類の処理と,本願発明における「メインルーチン」中の処理とを比較すると,「メインルーチン」中の処理は必ずしも各「割り込みルーチン」毎に実行されるものではないから,その点において両者は一致する。そのため,引用発明1における「遊技制御装置30」が,「ゲーム関連時分割処理」の複数種類の処理の一つとして前述「特別図柄ゲーム処理」を実行することと,本願発明の「制御装置」が,「前記特別遊技状態の抽選を含むメインルーチン」とを実行することは,「前記制御装置では,前記特別遊技状態の抽選を含む必ずしも各割り込みルーチン毎に実行されるわけではない処理」を実行するという点で一致する。
引用発明1における,「特別図柄始動スイッチ41からの検出信号を前記遊技制御装置30へと取り込む入力検出処理S2」,及び「入力検出処理S2で検出信号の取り込みがあったことに対応して,大当たり判定に使用する特別図柄乱数カウンタ値を記憶する,入賞監視処理S7」は,それぞれ本願発明における「前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出信号の取り込み処理」,及び「前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出があった場合に前記特別遊技状態の抽選のためのカウンタ値を取得するカウンタ値取得処理」に相当する。また,引用発明1における「例えば0?299の範囲の値で循環して更新される,大当たり判定のための特別図柄乱数カウンタの値を,+1更新する,乱数カウンタの更新処理S6」は,本願発明における「前記特別遊技状態の抽選のためのカウンタ値に所定値を加算することによって前記カウンタ値を更新するとともに,前記更新されたカウンタ値が所定の上限値以上であれば当該カウンタ値を所定の下限値に設定するカウンタ値更新処理」に相当すると言うべきである。しかしながら,請求人は引用例1にはカウンタ値が所定の上限値以上であれば下限値に設定することが記載されていない旨を主張しているとともに,引用発明1における「例えば0?299の範囲の値で循環して更新される」は例示であり,また結果としての数値循環範囲を特定するものであるから,必ずしも「+1」の更新を行う「更新処理S6」の中で下限値への設定を行うという処理を直接特定したものではない。そのためここでは,引用発明1と本願発明とは,「前記特別遊技状態の抽選のためのカウンタ値に所定値を加算することによって前記カウンタ値を更新するカウンタ値更新処理」を有する点で一致することとし,下限値への設定については一応の相異点として,後の検討に回すこととする。
引用発明1において,各リセット割り込み処理で毎回,上記した「入力検出処理S2」,「乱数カウンタの更新処理S6」,及び「入賞監視処理S7」を実行することは,本願発明において,「割り込みルーチン」において上述した「検出信号の取り込み処理」,「カウンタ値更新処理」及び「カウンタ値取得処理」とを実行することに相当する。
引用発明1における「各リセット割り込み処理で毎回実行するのではない処理」と,本願発明における「メインルーチン」中の各処理とは,「必ずしも各割り込みルーチン毎に実行されるわけではない処理」である点で一致する。また,引用発明1における「記憶された特別図柄乱数カウンタ値」は,本願発明における「前記カウンタ値取得処理で取得されたカウンタ値」に相当する。そして,引用発明1において,前述したカウンタ値に基づいて「大当たりの判定などを行う特別図柄ゲーム処理を実行」することは,本願発明において,「前記カウンタ値取得処理で取得されたカウンタ値に基づいて前記特別遊技状態の抽選」を行うことに相当する。
引用発明1において,各「リセット割り込み処理」で,「割り込み信号から一定時間後」に「入力検出処理S2」を行うことは,本願発明において,「前記割り込みルーチンでは,前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出信号の取り込み処理が,当該割り込みルーチンの先頭から一定時間で開始され」ることに相当する。引用発明1において,「乱数カウンタの更新処理S6より後」に「入賞監視処理S7」を行うことは,本願発明において,「前記特別遊技状態の抽選のためのカウンタ値更新処理の後に,前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出があった場合に前記特別遊技状態の抽選のためのカウンタ値を取得するカウンタ値取得処理が配置され」ることに相当する。また,引用発明1において,「入力検出処理S2より後」に「乱数カウンタの更新処理S6」を行うことは,本願発明において,「前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出信号の取り込み処理が前記カウンタ値更新処理よりも先に実行されるように配置する」に相当する。
さらに,引用発明1においては,「入力検出処理S2」,「乱数カウンタ更新処理S6」,「入賞監視処理S7」の順序で処理が行われることの帰結として,リセット割り込み処理中に始動口14への遊技球の入賞があった場合であっても,「乱数カウンタ更新処理S6」から「入賞監視処理S7」までの間で「入力検出処理S2」が実行されることはない。このことは,本願発明において,「前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出信号の取り込み処理が前記カウンタ値更新処理よりも先に実行されるように配置すること」の帰結として,「当該割り込みルーチン内で前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出があった場合に前記カウンタ値更新処理と前記カウンタ値取得処理との間で前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出信号の取り込み処理を行わないようにする」点と一致する。なお,請求人はこの点が引用例1には記載も示唆もされていないと主張している。しかしながら,引用発明1と本願発明とがこの点において一致することはここに述べたとおりであるから,この点については請求人の主張をどのように勘案しても,相違点と扱うことはできない。

以上を整理すると,本願発明と引用発明1の一致点は次のとおりである。
<一致点>
「遊技の進行を制御する制御装置を備え,
前記制御装置は,特定の入賞部への遊技球入賞の検出に基づいて,遊技者が通常よりも遊技価値を獲得しやすい特別遊技状態となるか否かの抽選を行う遊技機において,
前記制御装置では,前記特別遊技状態の抽選を含む必ずしも各割り込みルーチン毎に実行されるわけではない処理と,割り込み時間毎の割り込みルーチンが実行され,
この割り込みルーチンにおいては,
前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出信号の取り込み処理と,
前記特別遊技状態の抽選のためのカウンタ値に所定値を加算することによって前記カウンタ値を更新するカウンタ値更新処理と,
前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出があった場合に前記特別遊技状態の抽選のためのカウンタ値を取得するカウンタ値取得処理と,を実行し,
必ずしも各割り込みルーチン毎に実行されるわけではない処理としては,
前記カウンタ値取得処理で取得されたカウンタ値に基づいて前記特別遊技状態の抽選を行い,
前記割り込みルーチンでは,
前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出信号の取り込み処理が,当該割り込みルーチンの先頭から一定時間で開始され,
前記特別遊技状態の抽選のためのカウンタ値更新処理の後に,前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出があった場合に前記特別遊技状態の抽選のためのカウンタ値を取得するカウンタ値取得処理が配置され,
前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出信号の取り込み処理が前記カウンタ値更新処理よりも先に実行されるように配置することで,当該割り込みルーチン内で前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出があった場合に前記カウンタ値更新処理と前記カウンタ値取得処理との間で前記特定の入賞部への遊技球入賞の検出信号の取り込み処理を行わないようにする,
遊技機。」

そして,本願発明と引用発明1との相違点,及び一応の相違点は,以下のとおりとなる。

<相違点1>
本願発明では,「メインルーチン」が存在したうえで,「割り込みルーチン」が「メインルーチンに対する割り込み時間毎の割り込みルーチン」であり,「特別遊技状態の抽選」は「メインルーチン」で行われるのに対して,引用発明1ではそうなっていない点。

<相違点2>
本願発明では,「カウンタ値更新処理」において,「更新されたカウンタ値が所定の上限値以上であれば当該カウンタ値を所定の下限値に設定する」のに対して,引用発明1では「例えば0?299の範囲の値で循環して更新される」という例示はあるものの,必ずしも「乱数カウンタの更新処理S6」において所定の上限値以上であれば下限値へと設定する処理を行うことが直接明記されてはいないこと。
なお,この点は請求人が相違点と主張することに勘案し,一応の相違点と扱うものである。


5.判断

(1)相違点1について
引用発明1においては,「ゲーム関連時分割処理」として行われる複数種類の処理の各々は,同処理の一つである「特別図柄ゲーム処理」も含めて,一定時間毎の各リセット割り込み処理で毎回実行する必要がないことが明らかであるところ,たとえば当審が拒絶の理由に示した特開2000-229166号公報にも,端的には【図11】に(a)の「メイン処理」と(b)の「割り込み処理」とが図示され,また,

「【0129】図11は,遊技制御用マイクロコンピュータ31により実行されるメイン処理および割り込み処理を示すフローチャートである。図11においては,(a)にメイン処理が示され,(b)に割り込み処理が示されている。
【0130】図11の(a)を参照して,メイン処理においては,まず,スタックポインタの指定アドレスをセットするためのスタックセット処理を行なう(S1)。次いで,初期化処理を行なう(S2)。初期化処理では,遊技制御用マイクロコンピュータ31は,RAM31bにエラーが含まれているか判定し,エラーが含まれている場合には,RAM31bを初期化するなどの処理を行なう。さらに,初期化処理では,後述する割り込み処理を実行するタイミングを規定するタイマ割り込み時間(たとえば0.002秒)をCPU31aに設定する処理がなされる。これにより,電源投入等によるリセット後の最初の割り込み処理の実行タイミング規定のための計時が開始される。
【0131】次に,停止図柄を決定する等のための表示用乱数更新処理を行なう(S3)。具体的に,表示用乱数更新処理においては,図7に示されたランダムカウンタのうちのC RND C,C RND R,C RND RCHが更新され得る。表示用乱数更新処理は,無限ループにより繰返し実行され続けるが,後述する割り込み処理が起動された場合には,表示用乱数更新処理を構成するプログラムのうちの実行中の位置で一時停止され,その割り込み処理が終了すると一時停止したプログラムの位置から実行が再開される。」

とも記載があるように,遊技機の処理にメイン処理と定期的に実行される割り込み処理の両者を設けるとともに,割り込み処理毎に毎回実行すべき処理を割り込み処理内に配置することは,周知技術である。
そして,引用発明1においては,入力検出処理S2を必ず一定期間ごとに実行することにより,検出信号の取り込みのタイミングが揺らいで大当たり抽選が不均一となることを防止することが主たる目的であったことから,入力検出処理S2については,リセット割り込み処理開始後の一定時間で行わせる必要性があるところ,リセット割り込み処理毎に毎回行うべき必要性がない処理については,上記周知技術の如く,リセット割り込み処理外で行わせたところで,特段の支障がないことは明らかである。
そうであれば,引用発明1においても,遊技制御装置30の処理動作として,メイン処理を設けたうえで,一定時間毎に実行されるリセット割り込み処理を,メイン処理に対するリセット割り込み処理とすること,またそれとともに,毎回のリセット割り込み処理で実行する必要がない「ゲーム関連時分割処理」,及びそこに含まれる「特別図柄ゲーム処理」を,リセット割り込み処理内ではなくメイン処理内に配置することは,当業者であれば想到容易である。
したがって,相違点1に係る本願発明の構成を得ることは,上記周知技術に照らして,当業者であれば容易である。

(2)相違点2について
引用発明1において,「例えば0?299の範囲の値で循環して更新される」という記載は例示であるが,カウンタの値を無限に増加させても乱数抽選に支障があることは明らかであるから,「乱数カウンタの更新処理S6」において,単に「+1」の増加処理を実行するのみでなく,カウンタ値が循環させるべき所定範囲を超えると下限値へと設定する処理を併せて行うことは,実際上当然というべきであり,仮にそうでないとしても設計事項と言わざるを得ない。
したがって,一応の相違点とした相違点2は,実際上の相違点ではないか,そうでなくとも設計事項に過ぎない。

(3)進歩性のまとめ
以上のとおり,相違点1?2は,当該相違点に係る本願発明の構成を得ることが当業者にとって容易であるか,または実際上の相違点でないか設計事項程度であり,当該構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって,本願発明は,引用発明1及び前記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。


第3 むすび

本願発明が特許を受けることができない以上,本願は拒絶せざるを得ない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2010-03-03 
結審通知日 2010-03-09 
審決日 2010-03-25 
出願番号 特願2000-287193(P2000-287193)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿南 進一  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 有家 秀郎
小原 博生
発明の名称 遊技機  
代理人 藤井 正弘  
代理人 後藤 政喜  
代理人 飯田 雅昭  
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