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審決分類 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1216090
審判番号 不服2007-29948  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-02 
確定日 2010-05-06 
事件の表示 特願2003-188275「プラズマ処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年12月 5日出願公開、特開2003-347276〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成9年3月19日に出願した特願平9-66099号(以下、「本願の原出願」という。)の一部を平成15年6月30日に新たな特許出願としたものであって、平成19年10月3日付けで拒絶査定がなされ、平成19年11月2日に拒絶査定を不服とする審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、平成21年10月15日付けで当審において上記手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月21日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成22年1月8日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年2月23日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

[2]本願発明
平成22年2月23日付け手続補正は、特許請求の範囲の請求項1における
「前記処理室内にFを含むガスとBを含むガスを多段ステップで供給してAlを含む積層膜である被エッチング材料を多段ステップでエッチング処理する」を、「前記処理室内にClを含むガスとFを含むガスを多段ステップで供給してAlを含む積層膜である被エッチング材料を多段ステップでエッチング処理する」と補正するものである。
そして、本願明細書(【0030】等)の記載によれば、上記補正前の「Bを含むガス」は、「Clを含むガス」の誤りであることは明らかであり、
上記補正は、誤記の訂正を目的とするものに該当する。

よって、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】
処理室内に処理ガスを導入するガス導入手段およびプラズマ生成装置を有し、導入した処理ガスをプラズマ化して処理室に配置した試料にエッチング処理を施し、更にFを含むガスを用いて処理室内に付着する被エッチング材料を含む堆積物を除去する第1クリーニング処理およびBを含むガスを用いて処理室内に付着する処理室内の内部構成材料のイオンスパッタ物を除去する第2クリーニング処理を施す手段を有するプラズマ処理装置であって、
前記プラズマ処理装置は、前記処理室内にClを含むガスとFを含むガスを多段ステップで供給してAlを含む積層膜である被エッチング材料を多段ステップでエッチング処理することを特徴とするプラズマ処理装置。」

[3]引用刊行物の記載事項
当審において、平成21年10月15日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願が出願されたとみなされる、本願の原出願の日前に頒布された特開平7-130706号公報(以下、「引用刊行物1」という。)、特開平3-62520号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、それぞれ、以下の事項が記載されている。

(1)引用刊行物1
(a)「【請求項1】少なくとも一部がアルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成された反応処理室内に、少なくとも一種類のフッ素を含むガスを導入し、このガスをプラズマ化して被処理体を処理する半導体製造装置であって、
前記反応処理室内に少なくとも一種類の塩素系…のガスを導入するとともにこのガスをプラズマ化し、前記被処理体の処理に伴い反応処理室内に発生した低蒸気圧の反応生成物を高蒸気圧の物質に置換して排気させることを特徴とする半導体製造装置のクリーニング方法。」(【特許請求の範囲】)

(b)「図2は、平行平板電極を使用した従来の反応性イオンエッチング装置を示すものである。反応処理室…は例えばアルミニウムやアルミニウム合金によって構成されている。……
反応処理室…の上部には、アルミニウム合金によって構成された平行平板電極を構成する上部電極…が設けられ、反応処理室…の内部には下部電極…が設けられている。
……
…上記構成において、被処理体…のエッチングを行う場合、上部電極…の複数の透孔…から反応処理室…の内部に反応ガスを導入するとともに、排気パイプ…からこれを排気し、反応処理室…内の圧力を制御する。これとともに、高周波電源…より下部電極……に高周波電力を供給し、上部電極…および下部電極…の相互間にプラズマを生成することにより、被処理体…の被エッチング膜がエッチングされる。」(【0003】-【0004】)

(c)「【発明が解決しようとする課題】…従来の半導体処理装置においては、上部電極…と下部電極…の相互間で、フッ素系ガス例えばCHF_(3)、CF_(4)、SF_(6)等をプラズマ化し、被処理体…をプラズマ処理する。このため、被処理体…のみならず反応処理室…の内壁材までもエッチングしてしまう。このときに発生するAlF_(3) なる反応生成物は非常に蒸気圧が低いため排気されにくく、反応処理室…の内壁に堆積…する現象が発生する。これら反応生成物は処理毎に経時的に厚くなり、パーティクルの発生源となる。」(【0005】)

(d)「…この発明は、上記課題を解決するため、…反応処理室内に少なくとも一種類の塩素系…のガスを導入するとともにこのガスをプラズマ化し、…被処理体の処理に伴い反応処理室内に発生した低蒸気圧の反応生成物を高蒸気圧の物質に置換して排気させている。」(【0008】)

(e)「また、クリーニングのためのプラズマ処理に使用するガスはCl_(2)ガスに限定されるものではなく、BCl_(3)等に代表されるClとの化合物ガスでもよい。」(【0017】)

(2)引用刊行物2
(a)「同じ処理室を用いてAl合金膜とバリアメタルをプラズマエッチングしたときの処理室内のクリーニング方法において、塩素を含むガスによる放電とフッ素を含むガスによる放電とを組合わせて行うことを特徴とする
プラズマクリーニング方法。」(特許請求の範囲)

(b)「〔実施例〕
…エッチングの被処理物として、上層がAl合金膜で下層がバリアメタルの構造をなしたもので、例えば、Al合金膜としてはAl-Si-Cu膜で、バリアメタルとしてはTiWである。
Al-Si-Cu膜は塩素を主体とするガスでエッチングされ、Alの生成物による反応生成物が処理室内に残留しているものと考えられる。また、TiW膜はフッ素系ガスを主体としてエッチングされ、TiおよびWの生成物による反応生成物が、Alの生成物による反応生成物と一緒になって処理室内に残留しているものと考えられる。このような残留反応生成物は、これらのエッチングプロセスを繰り返すことによって、……ベルジャや電極廻りの部品に黒濁して表れてくる。
このような残留反応生成物をクリーニングするに当って、塩素を含むガス、…をプラズマ化して約5分間プラズマクリーニングを行ない、ついで、フッ素ガスを含むガス、…をプラズマ化して約5分間プラズマクリーニングを行なう。」(第2頁左上欄第11行-同頁右上欄第15行)

[4]引用刊行物1発明
上記引用刊行物1の記載(a)-(e)によれば、引用刊行物1には、
「反応処理室内にフッ素を含むガスを導入する手段およびプラズマ生成装置を有し、導入したフッ素を含むガスをプラズマ化して反応処理室に配置した被処理体にエッチング処理を施し、BCl_(2)を用いて処理室内に付着するアルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成される反応処理室の内壁材がエッチングされた時に発生するエッチング反応生成物(AlF_(3) )を除去するクリーニング処理を施す手段を有するプラズマ処理装置。」の発明(以下、「引用刊行物1発明」という。)が記載されているといえる。

[5]対比・判断
本願発明と引用刊行物1発明とを対比すると、
引用刊行物1発明における「反応処理室」、「フッ素を含むガス」、「被処理体」、「BCl_(2)」、「アルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成される反応処理室の内壁材」は、それぞれ、本願発明の「処理室」、「処理ガス」、「試料」、「Bを含むガス」、「処理室内の内部構成材料」に相当する。
そして、本願発明における「処理室内の内部構成材料のイオンスパッタ物」、および引用刊行物1発明における「アルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成される反応処理室の内壁材がエッチングされた時に発生するエッチング反応生成物(AlF_(3) )」は、共に、「処理室内の内部構成材料を含有する付着物」である点で共通する。

よって、両者は
「処理室内に処理ガスを導入するガス導入手段およびプラズマ生成装置を有し、導入した処理ガスをプラズマ化して処理室に配置した試料にエッチング処理を施し、Bを含むガスを用いて処理室内の内部構成材料を含有する付着物を除去するクリーニング処理を施す手段を有するプラズマ処理装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明では、前記プラズマ処理装置が、前記処理室内にClを含むガスとFを含むガスを多段ステップで供給してAlを含む積層膜である被エッチング材料を多段ステップでエッチング処理するものであり、更にFを含むガスを用いて処理室内に付着する被エッチング材料を含む堆積物を除去する第1クリーニング処理を施す手段を有するのに対し、引用刊行物1発明では、その点が明らかでないこと。

(相違点2)
処理室内の内部構成材料を含有する付着物が、本願発明では、内部構成材料のイオンスパッタ物であるのに対し、引用刊行物1発明では、内部構成材料がエッチングされた時に発生する反応生成物(AlF_(3) )である点。

そこで、上記相違点について検討する。
・(相違点1)について
上記引用刊行物2の記載事項(a),(b)によれば、引用刊行物2にはAl膜、バリアメタル膜からなる被処理物(「Alを含む積層膜である被エッチング材料」に相当)を、塩素を主体とするガス(「Clを含むガス」に相当)とフッ素系ガス(「Fを含むガス」に相当)を多段ステップで供給し、多段ステップでエッチング処理すること、そして、その後、Fを含むガスを用いて、ベルジャ内(「処理室内」に相当)に付着した、被エッチング材料を含む反応生成物(「被エッチング材料を含む堆積物」に相当)を除去することも記載されている。
そして、上記刊行物1発明は、フッ素を含むガスを用いてエッチング処理を行うプラズマエッチング装置に関するものであることから、該エッチング処理として、上記引用刊行物2記載のフッ素を含むガスを使用する多段エッチング処理を適用し、併せてそのエッチング反応生成物のクリーニング処理も採用することに格別の困難性は認められない。

・(相違点2)について
プラズマエッチング処理の際、処理室内のアルミニウムからなる内部構成材料がスパッタされ、処理室内に付着することは下記周知例1、2の記載事項のとおり周知である。そして、プラズマエッチングガスがFを含むガスの場合には、AlF_(3)が形成された状態でスパッタされることも下記周知例1のように周知であるから、引用刊行物1発明における反応生成物AlF_(3)には、内部構成材料のイオンスパッタ物も含まれているものと認められるから、この点において、両者は実質的に相違しない。

※周知例1(特開平4-56770号公報)
「CF_(4)とO_(2)の混合ガスを使用し、これに高周波電圧を加圧してグロー放電し、エッチングにより反応生成物の異物を除去するものであったが、電極のアルミニュームAlとCF_(4)の弗素が化合して弗化アルミニューム(AlF_(3))が生じ、これが1対の電極の中心部にスパッタされて付着する現象があった。」(第2頁左上欄第12-18行)

※周知例2(特開昭63-55939号公報)
「ドライエッチング装置に係り、…塩素を含まないフッ化炭素系ガス(例えばデュポン社の登録商標であるフレオン)をエッチングガスとして用い、SiO_(2)膜のエッチングを行う場合において、処理室内の金属(例えばAl)製部材がプラズマ中のイオンによってスパッタされ、」(第1頁左欄第16行-同頁右欄末行)

そして、本願発明が、引用刊行物1、2に記載された内容および周知技術からは予想しえない効果を奏するものとも認められない。

よって、本願発明は、引用刊行物1、2に記載された発明および周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

[6]むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-05 
結審通知日 2010-03-09 
審決日 2010-03-23 
出願番号 特願2003-188275(P2003-188275)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
P 1 8・ 573- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷部 智寿  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 鈴木 正紀
川真田 秀男
発明の名称 プラズマ処理装置  
代理人 特許業務法人 武和国際特許事務所  

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