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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) A63F
管理番号 1216223
判定請求番号 判定2009-600048  
総通号数 126 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2010-06-25 
種別 判定 
判定請求日 2009-12-09 
確定日 2010-05-11 
事件の表示 上記当事者間の特許第4183273号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「カップホルダ」は、特許第4183273号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号図面(甲第2号証の1)並びにその説明書(甲第2号証の2、説明書としての実用新案登録第3152072号公報)に示される「容器ホルダ」(以下、これを「イ号物件」という。)は、特許第4183273号発明の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。
なお、本件特許は、被請求人である有限会社木島木工が所有する特許であり、イ号物件は、請求人である株式会社東海コスモが製造販売しているものである。

第2.本件特許発明
本件特許発明は、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであって、請求項1の構成要件を分説すると以下のとおりである。

A.カップを支持するためのリング状部材および前記リング状部材を含む平面と同一平面内に位置するようにリング状部材の外周から直径方向外方に延びたアーム部材を有する本体と、
B.前記本体を収納する筐体と、下端を中心として回転するように前記筐体に取り付けられ、前記本体を回転可能に支持する扉体とを備え、
C.前記筐体の前面に、垂直方向に延び、中心軸線をもつ細長い形状の開口である溝が設けられ、前記溝の下端に、前記中心軸線を跨ぐように第1傾斜面が設けられ、
D.前記溝の下端の上方に、上端に第2傾斜面を有する開口部が設けられており、
E.使用時に、前記扉体を引き出し、前記リング状部材を前記溝を通して筐体の外部に移動させ、前記アーム部材を前記第1傾斜面に接触させて回転させることによって前記リング状部材を水平状態にし、
F.収納時に、前記扉体を押し戻し、前記アーム部材を前記第2傾斜面に接触させて回転させることによって前記リング状部材を垂直状態にして前記筐体内に収納させるように構成されていることを特徴とするカップホルダ。
(なお上記分説は、被請求人が答弁書において主張する請求項1についてした分説に倣って認定したものである。)

第3.イ号物件
請求人は、イ号図面として甲第2号証の1を、その説明書として実用新案第3152072号公報を証拠方法として提出し、一方被請求人は、イ号物件の説明書及び参考図1ないし3を提出しているが、両当事者が提出したイ号物件の構造に関しては実質的な相違はないと認められるので、実用新案第3152072号公報(甲第2号証の2)に記載された「容器ホルダ」の構造に基づいて、イ号物件を次のように認定する。

1.容器を支持するための一対の半円状のループ部(31Lと31Rの32)および前記ループ部を含む平面と同一平面内に位置するようにそれぞれのループ部から延びた一対のアーム部(31Lと31Rの33)を有するホルダ部材(30)と、
2.前記ホルダ部材(30)を収納するケース体(10)と、下端を中心として回転するように前記ケース体(10)に取り付けられ、前記一対の半円状のループ部および前記一対のアーム部それぞれを回転可能に支持する蓋体(20)とを備え、
3.前記ケース体(10)の前面に、垂直方向に延び、中心軸線をもつ細長い形状の開口であるガイド溝(12)が設けられ、前記ガイド溝の下端に、前記中心軸線から左右に分かれるように2つの展開用傾斜面(14a)が設けられ、
4.前記ガイド溝の下端の左右上方に、上端に折り畳み用傾斜面(14b)を有する開口部が設けられており、
5.使用時に、前記蓋体(20)を引き出し、前記一対の半円状のループ部を垂直状態(折り畳まれた状態)で前記ガイド溝(12)を通してケース体(10)の外部に移動させ、前記一対のアーム部それぞれを前記2つの展開用傾斜面(14a)のそれぞれに接触させて各々逆方向に回転させることによって前記一対のループ部を展開して水平状態にし、かつ一対のループ部で容器を保持する円形状のホルダ部材とし、
6.収納時に、前記蓋体(20)を押し戻し、前記一対のアーム部をそれぞれ前記左右の折り畳み用傾斜面(14b)に接触させて反対方向に回転させることによって前記一対のループ部を折り畳んで垂直状態にして前記ケース体(10)内に収納させるように構成されている容器ホルダ。

第4.本件特許発明とイ号物件の対比、および属否の判断
請求人および被請求人は、本件特許発明とイ号物件の対比において、構成要件A、構成要件Cおよび構成要件Eについての充足性を争っているので、これらの構成要件について検討する。

(ア)構成要件Aについて
本件特許発明の構成要件Aに係る「本体」は、「カップを支持するためのリング状部材および前記リング状部材を含む平面と同一平面内に位置するようにリング状部材の外周から直径方向外方に延びたアーム部材」からなるものである。
一方、イ号物件に係る容器を保持する機能を果たす「ホルダ部材」は、「一対の半円状のループ部および前記ループ部を含む平面と同一平面内に位置するようにそれぞれのループ部から延びた一対のアーム部」が組み合わされてなるものである。
この点につき、被請求人は、イ号物件の「一対の半円状のループ部」および「一対のアーム部」からなる「ホルダ部材」が、本件発明の「リング状部材」および「アーム状部材」からなる「本体」に対応する旨主張している。
たしかに、イ号物件の水平状態(展開状態)での「一対の半円状のループ部」および「一対のアーム部」が組み合わされた「ホルダ部材」の形状は、本件特許発明の「本体」と類似するものではあるが、イ号物件の「ホルダ部材」は、本件特許発明の「本体」に相当せず、イ号物件は構成要件Aを充足しないと判断する。
その理由は、構成要件Cおよび構成要件Eについての判断の中で述べる。

(イ)構成要件Cおよび構成要件Eについて
まず、本件特許発明において、「本体」が筺体内に収容されている状態から、外部に引き出されてリング状部材がカップを支持できるような水平状態となるまでを、本件明細書の記載に基づき検討する。
扉体16が筺体12の前面から引き出されるとき(本件明細書の図6(a),(b)参照)、筺体12内に収容されている本体(リング状部材およびアーム部材)は、溝14の中心軸線を通り、前記前面と垂直な平面内にあるので、本体は溝14を通りながら外部に引き出される。
このときアーム部材は、溝14の中心軸線上を通りながら下方に移動している。
扉体16がさらに引き出されてアーム部材が溝14の下端部に達すると、アーム部材の横断面長手方向下端部が、溝14の下端部に設けられ中心軸線を跨ぐように形成された第1傾斜面14aに当接し(図8(a)参照)、さらにアーム部材が下方に移動すると(図8(b),(c)参照)、アーム部材の前記下端部が当該斜面に押しつけられて斜面に沿って滑るため、アーム部材の前記下端部に横方向の力が作用し、結果としてアーム部材に回転力が作用してアーム部材は回動(実施例では反時計回り)し、最終的に(図8(d)参照)アーム部材は横断面長手方向を横向きにして溝14の底面部で安定する。
そしてこのとき(図6(d)参照)、アーム部材と一体になったリング状部材も横向きになり、また水平状態になってカップが支持できるようになる。
以上のことからわかるように、本件特許発明は、アーム部材が溝14の中心軸線上を下方に移動し、そしてアーム部材の横断面長手方向下端部と、溝14の中心軸線を跨ぐように形成された第1傾斜面とが前記中心軸線上で当接することによりアーム部材に回転力が発生するものである。
したがって、本件特許発明の、
C.前記筐体の前面に、垂直方向に延び、中心軸線をもつ細長い形状の開口である溝が設けられ、前記溝の下端に、前記中心軸線を跨ぐように第1傾斜面が設けられ、
E.使用時に、前記扉体を引き出し、前記リング状部材を前記溝を通して筐体の外部に移動させ、前記アーム部材を前記第1傾斜面に接触させて回転させることによって前記リング状部材を水平状態にし、
という要件は、
(1)筐体12の前面に、垂直方向に延び、中心軸線をもつ細長い形状の開口である溝14が設けられている。
(2)アーム部材は、溝14の中心軸線上を移動して、当該中心軸線上で第1傾斜面に接触する。
(3)アーム部材の横断面長手方向下端部は、溝14の中心軸線上で、当該中心軸線を跨ぐように設けられた第1傾斜面と接触することによって回転力が生じてアーム部材が回転し、この回転によってリング状部材が水平状態になる。
ことを意味していると解される。

一方、イ号物件は、
「3.前記ケース体(10)の前面に、垂直方向に延び、中心軸線をもつ細長い形状の開口であるガイド溝(12)が設けられ、前記ガイド溝の下端に、前記中心軸線から左右に分かれるように2つの展開用傾斜面(14a)が設けられ、」
「5.使用時に、前記蓋体(20)を引き出し、前記一対の半円状のループ部を折り畳まれた状態で前記ガイド溝(12)を通してケース体(10)の外部に移動させ、前記一対のアーム部それぞれを前記2つの展開用傾斜面(14a)のそれぞれに接触させて各々逆方向に回転させることによって前記一対のループ部を展開して水平状態にし、かつ一対のループ部で容器を保持する円形状のホルダ部材とし、」
たものである。
つまり、イ号物件の「ケース体(10)の前面に、垂直方向に延び、中心軸線をもつ細長い形状の開口であるガイド溝(12)」は、本件特許発明の「筐体の前面に、垂直方向に延び、中心軸線をもつ細長い形状の開口である溝」に相当するものの、イ号物件の一対のアーム部は、ガイド溝(12)の中心軸線から左右に外れた位置を上下に移動するものであって、ガイド溝の中心軸線上を移動するものでなく、そして、両アーム部がガイド溝の下端に達したとき、各々アーム部の横断面長手方向下端部は、前記中心軸線から左右に分かれるように設けられた2つの展開用傾斜面(14a)のそれぞれに前記中心軸線から外れた位置で接触するもの(イ号物件のガイド溝の中心軸線上には仕切壁22が存在する)であって、ガイド溝の中心軸線上で、中心軸線を跨ぐように設けられた傾斜面に接触するものではない。
したがって、イ号物件には「前記溝の下端に、前記中心軸線を跨ぐように第1傾斜面が設けられ」ておらず、「前記アーム部材を前記第1傾斜面に接触させて回転させることによって前記リング状部材を水平状態に」するものでもない。
よって、イ号物件は本件特許発明の構成要件CおよびEを充足しない。

ところで、本件特許発明の「カップを支持するためのリング状部材および前記リング状部材を含む平面と同一平面内に位置するようにリング状部材の外周から直径方向外方に延びたアーム部材を有する本体」に対応する構成について、本件特許明細書には、一つのリング状部材と一つのアーム部材とが一体となったものしか記載されておらず、イ号物件の「ホルダ部材」のような「一対の半円状のループ部と一対のアーム部」で分けられたものを含むことを示唆する記載はない。
また、本件特許発明の構成要件DおよびEの要件は、中心軸線上を移動してきたアーム部材が第1傾斜面と接触することにより一方向に回転し、それに伴ってリング状部材が回転して水平状態になることを意味しているから、アーム部材は1つであることを示している(中心軸線上を移動する部材が2つあるとはいえない)。しかもこの1つのアーム部材の回転によってリング状部材が水平になるのであるから、リング状部材全体は、1つのアーム部材と一体に形成されていることを示しているといえる。
一方、イ号物件の「一対の半円状のループ部および前記ループ部を含む平面と同一平面内に位置するようにそれぞれのループ部から延びた一対のアーム部を有するホルダ部材」は、一対のアーム部の別方向の回転によって、一対のループ部それぞれが別方向に回転して水平状態となることにより、全体として円形状のホルダ部材を形成したものであって、1つのアームの回転によってホルダ部材が一体に回転するものではない。
したがって、イ号物件の「ホルダ部材」は、本件特許発明の「本体」に相当するとはいえず、イ号物件は本件特許発明の構成要件Aを充足しない。
以上のとおりであるから、イ号物件は本件特許発明の構成要件A、構成要件Cおよび構成要件Eを充足していない。
なお、被請求人は、イ号物件と本件特許発明について均等の主張を行っているが、構成要件CおよびEに係るイ号物件と本件特許発明の相違は、本質的な部分であって、均等論適用の要件を欠くものである。

第5.むすび
以上のとおり、イ号物件は本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2010-04-26 
出願番号 特願2008-49790(P2008-49790)
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 門田 かづよ  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 小原 博生
澤田 真治
登録日 2008-09-12 
登録番号 特許第4183273号(P4183273)
発明の名称 カップホルダ  
代理人 吉田 芳春  
復代理人 堀越 真弓  
代理人 菅原 正倫  
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