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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) F28F |
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管理番号 | 1216224 |
判定請求番号 | 判定2009-600038 |
総通号数 | 126 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2010-06-25 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2009-09-16 |
確定日 | 2010-05-20 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3316492号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面及びイ号写真並びにその説明書に示す「MSエバポレータ」は、特許第3316492号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
1.請求の趣旨 本件判定請求の趣旨は、イ号図面及びイ号写真並びにその説明書で示すイ号物件(「MSエバポレータ」)は、特許第3316492号の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。 2.本件特許発明 本件特許発明は、特許第3316492号の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されたとおりのものであって、その請求項1に記載された発明は次のとおりのものである。 「【請求項1】 一端に流体の出入口タンク部を成形すると共に同出入口タンク部間に流体流路を成形してなるプレス成形プレートを2枚突合せて偏平チューブを形成し、同チューブを多数積層して構成される積層型熱交換器において、前記出入口タンク部のうち出口側タンク部の形状を上半分を楕円形、下半分を長円形とすると共に、同出口側タンク部に上側半分を楕円形、下側半分を長円形にした連通孔を設けたことを特徴とする積層型熱交換器。」 この記載を、請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)について各構成要件ごとに分説すると次のとおりである。(以下「構成要件(A)」などという。) 本件特許発明 (A)一端に流体の出入口タンク部を成形すると共に同出入口タンク部間に流体流路を成形してなるプレス成形プレートを2枚突合せて偏平チューブを形成し、 (B)同チューブを多数積層して構成される積層型熱交換器において、 (C)前記出入口タンク部のうち出口側タンク部の形状を上半分を楕円形、下半分を長円形とすると共に、 (D)同出口側タンク部に上側半分を楕円形、下側半分を長円形にした連通孔を設けた (E)ことを特徴とする積層型熱交換器。 3.イ号物件 (1)イ号写真について 判定請求書には、イ号写真1?3が添付されており、イ号写真1にイ号物件の実物本体を斜めから写した全体概要の写真、イ号写真2にプレートCの実物を写した写真、イ号写真3にプレートCの一端部を更に拡大した写真が、それぞれ示されている。 (2)イ号図面及びイ号物件の説明書 判定請求人は、イ号写真1?3を基に、イ号図面1?9及びイ号物件説明書を作成し、これらを判定請求書に添付している。 一方、判定被請求人は、平成21年11月 5日付け判定請求答弁書において、「イ号の特定に関しては予め請求人、被請求人間で協議し、争わない事としており、本判定事件で被請求人はイ号の特定を争わない。実際、イ号図面は被請求人が作成したものである。」(答弁書第3ページ第19行?第22行)としている。 (3)イ号写真、イ号図面から特定されるイ号物件 イ号写真、イ号図面により示されるイ号物件は、各構成ごとに符号を付し分説して記載すると次のとおりである。(以下、「構成(a)」などという。) 本件特許発明の構成要件に照らして認定できるイ号物件 (a)上下両端に流体の出入りするタンク部を各々2つずつ形成すると共に、上下のタンク部間に流体流路を形成してなるプレートを2枚突合わせて偏平チューブを形成し、 (b)同チューブを多数積層して構成されるエバポレータにおいて、 (c)前記タンク部のうち出口側に近いタンク部の形状を形状bとすると共に、 (d)前記出口側に近いタンク部に形状bの連通孔を設けた、 (e)ことを特徴とするエバポレータ。 4.対比・判断 イ号写真、イ号図面により特定されるイ号物件の構成が、本件特許発明の各構成要件を充足するか否かについて検討する。 (1)本件特許発明とイ号写真、イ号図面により特定されるイ号物件との対比、判断 ア.構成要件(A)について 本件特許発明の構成要件(A)とイ号写真、イ号図面により特定されるイ号物件の構成(a)とを対比する。 本件特許の明細書には、 「一端」と「出入口タンク部」に関して、 「【0010】 偏平チューブ1はプレス成形された二枚のプレート2を突き合わせて形成される。偏平チューブ1の一端部(図中の上端部)には出入口タンク部3が形成されている。・・・」 「【0011】 出入口タンク部3は、偏平チューブ1の板幅方向に入口側タンク部6と出口側タンク部7とに仕切られ、エバポレータ5を構成した際、隣接する出入口タンク部3は入口側タンク部6及び出口側タンク部7同士が連通孔8によって連通される。・・・」 「【0018】 上記構造のエバポレータ5においては、出入口タンク部3を構成する入口側タンク部6及び出口側タンク部7が偏平となっているので、高さ方向の寸法を縮減でき、しかも上半分を楕円形としてあるので、強度的にもすぐれたものとなり、所望の繰り返し強度、耐圧強度が得られる。・・・」 という記載がある。 上記記載事項からみて 本件特許発明の「出入口タンク部」は、「入口側タンク部6及び出口側タンク部7から構成されている」ものを示し、「一端に」は「プレス成形された二枚のプレート2を突き合わせて形成される偏平チューブ1の一端部に」を示していることは明らかである。 そうすると、「一端に流体の出入口タンク部を成形する」「プレス成形プレートを2枚突合せて偏平チューブを形成し、」は、「プレス成形された二枚のプレート2を突き合わせて形成される偏平チューブ1の一端部に、入口側タンク部6及び出口側タンク部7から構成された出入口タンク部3を成形し、」を示しているものと認められる。 また、「同出入口タンク部間に流体流路を成形してなる」に関して、本件特許明細書には、 「【0012】 プレート2の内空部は中央部の上下方向に延びる仕切壁9によって2つの室10,11に仕切られている。仕切壁9は下端部が欠如され、プレート2の下端は流体としての冷媒をUターンさせるUターン部12となっている。2枚のプレート2を突き合わせることで、仕切壁9によって、出入口タンク部3が入口側タンク部6と出口側タンク部7とに仕切られると共に、入口側タンク部6に連続する室10と出口側タンク部7に連続する室11とに仕切られる。更に、室10と室11とはUターン部12で連通され、室10,11及びUターン部12で流体通路13が形成されている。」 「【0016】 上述した偏平チューブ1では、入口側タンク部6から流入した流体としての冷媒は、波形インナフィン14で区画された流路16を通ってUターン部12に導かれ、U字状ビード19で区画されたU字状流路18でUターンされ、波形インナフィン15で区画された流路17を通って出口側タンク部7まで流れる。・・・」 という記載がある。 そして、「同出入口タンク部」が上述したとおり「プレートの一端に成形された入口側タンク部6及び出口側タンク部7から構成されている」ものであるから、「同出入口タンク部間に流体流路を成形してなる」は、「プレートの一端に成形された入口側タンク部6と出口側タンク部7との間に流体流路を成形してなる」を示すものと解するのが相当である。 そうすると、本件特許発明の構成要件(A)は、 「一端に入口側タンク部及び出口側タンク部から構成された出入口タンク部を成形すると共に同出入口タンク部の入口側タンク部と出口側タンク部間に流体流路を成形してなるプレス成形プレートを2枚突合わせて形成される偏平チューブを形成し、」と解される。 また、本件特許発明の「出入口タンク部」のうち「入口側タンク部」は、一対のプレート間に成形された室に冷媒を導入し、同室に成形された流体流路に冷媒を送り出す部位をいい、「出口側タンク部」は、当該流体流路を通過した冷媒を受け、当該室から冷媒を導出する部位をいうことにすると、本件特許明細書の段落【0010】?段落【0012】及び図1?図3におけるプレート2に係る記載に合致するから、「入口側タンク部」と「出口側タンク部」をこの定義に従うことにする。 一方、イ号物件の構成要件(a)は、「上下両端に流体の出入りするタンク部を各々2つずつ形成すると共に、上下のタンク部間に流体流路を形成してなるプレートを2枚突合わせて偏平チューブを形成し、」である。 そして、イ号説明書の図面6を参照及び判定請求答弁書第10ページの図面を参照することとして、2枚貼り合わせることによって内部に冷媒流路か形成され複数配置されるプレートはプレートCであり、プレートCには、上端及び下端にタンク部が各々2つずつ形成されている。途中プレートDよりも出入口配管側に位置するプレートC1では、上端の2つのタンク部8A、9Aは、上記定義によれば、いずれも出口側タンク部として機能し、下端の2つのタンク部10A、11Aは、いずれも入口側タンク部として機能する。同様に、途中プレートDよりも出入口側配管側の反対側に位置するプレートC2では、上端の2つのタンク部8B、9Bは、いずれも入口側タンク部として機能し、下端の2つのタンク部10B、11Bは、いずれも出口側タンク部として機能している。 そうすると、イ号物件のプレートCの一端に形成された2つのタンク部は、いずれもが入口側タンク部であるか、もしくは、いずれもが出口側タンク部となっている。 したがって、イ号物件は、「一端に入口タンク部と出口タンク部から構成された出入口タンク部を成形していない」ため、本件特許発明の構成要件(A)を備えていない。 これに対して、請求人は、「熱交換器全体で見た場合、冷媒が外部から導出(審決注:「導入」の誤記)される側に近い側の入口タンク部が「入口側タンク部」であって、冷媒を外部へ導出する側に近い側の出口タンク部が「出口側タンク部」との当業者から見た自然の解釈に基づくものである。 したがって、決して一対のプレート単体で局所的に特定されるものではない。」と主張している(口頭審理陳述要領書の第4ページ第9行?第12行)。 しかしながら、本件特許発明の構成要件(A)は、明確にプレート単位で特定されており、本件特許明細書及び図面の記載もこれと矛盾するものではなく、本件特許明細書には、「入口側タンク部」は、冷媒が外部から導入される側に近いタンク部であり、「出口側タンク部」は、冷媒を外部へ導出する側に近いタンク部であることを示唆する記載もない。 また、イ号物件のプレートCは、上端の2つのタンク部8A、9Aまたは8B、9Bおよび、下端の2つのタンク部10A、11Aまたは10B、11Bは、それぞれ仕切壁により区画されているから、上端の2つのタンク部8A、9A同士または8B、9B同士および、下端の2つのタンク部10A、11A同士または10B、11B同士は、2枚のプレートによって形成される偏平チューブ内では連通していない。 よって、本件特許発明の構成要件(A)の「プレートの一端に成形された2つのタンク部間の流体流路」はプレートCには形成されておらず、プレートCに形成されている流体流路は一端の入口側タンク部と他端の出口側タンク部との間に形成される流体流路である。 したがって、イ号物件は、「プレートの一端に成形された出入口タンク部間の流体流路」を備えていない。 ここで、仮に、請求人の主張する「入口側タンク部」は、冷媒が外部から導入される側に近いタンク部であり、「出口側タンク部」は、冷媒を外部へ導出する側に近いタンク部であることを認容し、イ号物件のプレートCの一端(上端あるいは下端)に形成された2つのタンク部の一方(例えば8A)を入口側タンク部、他方(例えば9A)を出口側タンク部と呼んだとしても、当該両タンク部(例えば8Aと9A)は偏平チューブ内では連通していないから、イ号物件は、本件特許発明の構成要件(A)の「プレートの一端に成形された出入口タンク部間の流体流路」を備えていない。 したがって、請求人の主張は、採用できない。 イ.構成要件(B)について 本件特許発明の構成要件(B)とイ号写真、イ号図面により特定されるイ号物件の構成(b)とを対比する。 本件特許発明の構成要件(B)の「同チューブ」は、構成要件(A)で特定された「偏平チューブ」である。 そして、上述したように、イ号物件のチューブを構成するプレートCは構成要件(A)にて特定された成形プレートに該当しないから、イ号物件の「偏平チューブ」は構成要件(A)で特定された偏平チューブにはあたらない。 したがって、イ号物件は、構成要件(B)の「チューブを多数積層して構成される積層型熱交換器」ではあるものの、「同チューブ」を備えていないため、構成要件(B)を充足しない。 ウ.まとめ 以上のように、イ号写真及びイ号図面により特定されるイ号物件は、構成要件(A)及び(B)を充足しないから、構成要件(C)?(E)を充足するか否かにかかわらず、イ号写真及びイ号図面により特定されるイ号物件は、本件特許発明の構成要件のすべてを充足するとはいえない。 よって、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない 5.結論 以上のように、判定請求人が請求するイ号物件は、本件特許発明の技術的範囲には属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
判定日 | 2010-05-10 |
出願番号 | 特願2000-159768(P2000-159768) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(F28F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 内藤 真徳、小野 孝朗 |
特許庁審判長 |
寺本 光生 |
特許庁審判官 |
横溝 顕範 藤井 昇 |
登録日 | 2002-06-07 |
登録番号 | 特許第3316492号(P3316492) |
発明の名称 | 積層型熱交換器 |
代理人 | 碓氷 裕彦 |
代理人 | 長沢 幸男 |
代理人 | 井口 亮祉 |
代理人 | 田村 爾 |